
基盤モデル(ファウンデーションモデル)とは、幅広い大量のデータで事前に学習し、文章作成や画像の読み取りなど多くの用途に転用(適応)できるAIのモデルのことです。会社で使うChatGPT・Microsoft Copilot・Claude・Geminiは各社の基盤モデルを組み込んだサービスで、LLM(大規模言語モデル)は基盤モデルのうち文章を扱う種類にあたります。同じサービス名でもプランや設定によって裏で動くモデルは変わり、Copilotのように複数社のモデルが動くものもあります。会社として確かめたいのは、性能の順位よりも、入力データが学習に使われない契約か、管理者が使うモデルを決められるか、モデルの入れ替わりに備えられるかという点になります。
LLMそのものの仕組み(Transformer・事前学習)や歴史、国産モデルの話は、LLM(大規模言語モデル)とはで詳しく扱っています。
基盤モデル(ファウンデーションモデル)とは|多くの用途に転用できるAIの土台
基盤モデルは、1つの仕事のために作るAIではなく、多くの仕事の土台として使い回すことを前提にしたAIのモデルになります。英語のfoundation modelを訳した言葉で、カタカナのファウンデーションモデルと漢字の基盤モデルは同じものを指す言葉です。
定義:幅広いデータで事前学習し、さまざまな下流タスクに適応できるモデル
名付け親にあたる論文は、2021年8月16日(UTC)にarXivで公開された初版(v1)で、基盤モデルを次のように定義しています。
論文の定義(初版v1・2021年8月)
A foundation model is any model that is trained on broad data at scale and can be adapted (e.g., fine-tuned) to a wide range of downstream tasks
(訳:基盤モデルとは、大規模な幅広いデータで学習され、さまざまな下流タスクに適応〈例:ファインチューニング〉できるあらゆるモデルのこと)
2022年7月の改訂版(v3)の定義文では、幅広いデータの部分に、一般に大規模な自己教師あり学習によって、という説明が入った文を読むことが出来ます。よく引用される自己教師あり学習入りの定義文は、この改訂版の文言になります。どちらの版でも、定義文のすぐ後に当時の例としてBERT・GPT-3・CLIPの3つが挙げられていました。版をまたいで共通しているのは、幅広いデータで学習し、さまざまな用途に適応できるモデル、という骨組みの部分となります。
ここでいう下流タスクとは、要約・翻訳・質問への回答・画像の説明といった、土台を作った後で取り組ませる個々の仕事のことを指します。土台を先に作り、個々の仕事は後から合わせる、という順番が基盤モデルの考え方の中心にあると言うことが出来ます。
用語の由来:2021年8月、スタンフォード大学の研究者らの論文で名付けられた
基盤モデルという呼び名は、Rishi Bommasaniほか113名の著者による論文 On the Opportunities and Risks of Foundation Models で名付けられました。論文の表紙にはスタンフォード大学のCenter for Research on Foundation Models(CRFM)が記されており、CRFMは同大学のHAI(人間中心のAI研究所)の新しい学際的な取り組みとして設立されたと脚注で説明があります。要旨には、決定的に重要な中心でありながら未完成でもある、という性質を強調するためにこう呼ぶと書かれています。
土台という言葉には、上に多くのものを建てられる強さと、土台に欠陥があれば上の建物すべてに響く危うさの両方が込められていると読めます。基盤モデルは完成品ではなく、上に載せる使い方しだいで価値もリスクも変わる土台です。この見方は、会社でAIサービスを選ぶときにもそのまま役に立つでしょう。
呼び方の揺れ:ファウンデーションモデル・ファンデーションモデル・基盤モデル・FM
日本語では、ファウンデーションモデル、ファンデーションモデル、基盤モデル、基礎モデルと表記が分かれていますが、指しているものは同じになります。英語の頭文字を取ってFMと略す例もあり、FMモデルとは何か、と調べられることもあります。総務省・経済産業省のAI事業者ガイドライン(第1.2版)など国の文書では、基盤モデルという表記が使われています。
社内の規程や研修資料では、どれか1つに表記をそろえ、初出で基盤モデル(ファウンデーションモデル)のように併記しておくと、読み手が迷いにくくなります。ガイドラインが基盤モデルをどう位置づけているかは、冒頭で紹介したLLMの記事で脚注の内容とともに取り上げていますので、あわせて確認してみてください。
従来AIとの違い|1つの仕事に1つのモデルから、1つのモデルを多くの仕事へ
従来のAIとの大きな違いは、仕事ごとにモデルを作り直すのではなく、1つの基盤モデルを多くの仕事に使い回す点にあります。以前は、問い合わせメールの分類、請求書の読み取り、翻訳といった仕事ごとに、専用のデータを集めて別々のモデルを学習させる形が一般的でした。基盤モデルでは、先に幅広いデータで大きな土台を作っておき、個々の仕事には追加の調整や指示の工夫で合わせていく形になります。
会社の側から見ると、1つの契約で文章作成・要約・翻訳・表の読み取りまで頼めるのは、この作り方の変化によるものと言うことが出来ます。1つの土台に多くの仕事を載せる形は、便利さと同時に、土台の弱点が広く出る形でもあります。この裏表の関係は、後半の課題とリスクの節でもう一度取り上げます。
学習の2段階:自己教師あり学習による事前学習と、ファインチューニングなどでの適応
基盤モデルは、大きく分けて事前学習と適応の2段階で作られます。事前学習では、文章の続きを当てるといった、正解をデータ自体から作れる課題(自己教師あり学習)を大量のデータで繰り返し、言葉や画像の一般的な特徴を身に付けさせます。適応の段階では、特定の用途に向けた追加の学習(ファインチューニング)などで、土台を目的の仕事に合わせていく流れです。事前学習とファインチューニングの具体的な仕組みは、LLMの記事の仕組みの節で扱っています。
会社が触るのは、会話向けに調整された後のモデル
事前学習を終えただけの土台(ベースモデルと呼ばれることがあります)と、会社が画面で使うモデルは、同じものではありません。ChatGPTやClaudeの画面で動いているのは、提供元が会話への答え方や安全上の対策を追加で調整し、サービスに組み込んだ後のモデルになります。そのため、同じ系統の基盤モデルでも、どのサービスから、どの契約で使うかによって、答え方の傾向やデータの扱いが変わってくることがあります。
基盤モデルという言葉を聞いて、モデルを自社で学習させる話だと身構える必要はありません。多くの会社にとっては、調整済みのモデルを組み込んだサービスをどう選ぶかの話と考えてみてください。
基盤モデルとLLMの違い|LLMは基盤モデルの一種で、文章を扱うもの
LLMは基盤モデルの一種で、基盤モデルのうち文章(言語)を主に扱うものを指します。基盤モデルは文章に限らず、画像や音声、文章の意味を数値に置き換える埋め込みなど、扱う情報の種類を問わない広い言葉になります。日常の会話では基盤モデルとLLMがほぼ同じ意味で使われる場面もありますが、画像生成や文字起こしのモデルまで含めて話すときは、基盤モデルと呼ぶほうが正確でしょう。
3つの言葉の関係
基盤モデル:幅広いデータで学習した土台(文章・画像・音声などを扱う)
LLM:基盤モデルのうち、文章を扱うもの
生成AIサービス:基盤モデルを組み込み、画面や管理機能を付けて提供するもの(ChatGPT・Copilot・Claude・Geminiなど)
生成AIとの違い:基盤モデルはエンジン、生成AIはその働きを使うサービス
生成AIは、文章や画像を新しく作り出すAIの働き、またはその働きを提供するサービスを指す言葉で、基盤モデルはその中で動くエンジンにあたります。車にたとえると、基盤モデルはエンジン、ChatGPTやGeminiのようなサービスは、エンジンを載せてハンドルや計器を付けた車体と言えます。同じエンジンを積んだ車でも、誰が運転できるか、走行の記録をどこに残すかは車体の側で決まるものです。
会社のAI利用で差が出るのは、多くの場合この車体にあたる契約・管理機能・データの扱いの側になります。エンジンの性能表を比べる前に、車体の仕様を確かめる順番を意識してみましょう。
マルチモーダル化:文章・画像・音声をまとめて扱う基盤モデル
いまの基盤モデルは、文章だけでなく画像も入力として受け取れるものが中心になりつつあります。Anthropicは、現行のClaudeのモデルがすべて文章と画像の入力に対応していると開発者向けの資料で案内しています。Geminiアプリのヘルプにも、Nano Banana 2による画像生成や音声解説といった機能が並んでいます。
社内の会議の録音を文字にする、スキャンした書類を読ませるといった使い方は、この性質を土台にしたものです。LLMのマルチモーダル化の今後については、LLMの記事の展望の節も参考になるでしょう。
文章以外の基盤モデル:埋め込み・文字起こし・画像生成
OpenAIの開発者向けモデル一覧を見ると、会話用のモデルとは別に、埋め込み(Embedding)、画像生成、文字起こし、音声生成の専用モデルが並んでいます。埋め込みモデルは文章を数値の並びに置き換え、2つの文章がどれだけ関連しているかを測るためのもので、同社の説明では検索・分類・推薦などに使われます。社内文書を探して答える仕組み(RAG)や、議事録の自動作成、資料用の画像生成は、LLMとは別の基盤モデルが担っていることがあります。
議事録ツールや社内検索、デザインツールといった業務SaaSの中で、こうした基盤モデルが見えない形で動いている場合もあるでしょう。情シスの方がAIの利用を棚卸しするときは、チャット型のサービスだけでなく、次の点もあわせて見てみましょう。
- そのツールの中でAIの機能を担っている提供元自社開発のモデルか、OpenAI・Anthropic・Googleなど外部の基盤モデルを使っているかを確認します。
- 外部のAI提供元がサブプロセッサー一覧に載っているか処理を委託する先の一覧に、AIの提供元の名前があるかを見ます。
- 入力したデータが学習に使われない条件チャット型のサービスと同じく、契約や利用規約の該当箇所を控えておきます。
- 会議の録音や文書の保存場所と保存期間文字起こしや埋め込みのために送ったデータが、どこにどれだけ残るかを確認します。
社員に1分で伝えるための説明文
研修や社内規程の冒頭では、基盤モデル・LLM・サービスの関係を短く伝えておくと、ルールの意味が伝わりやすくなります。そのまま使える文例を置いておきます。
基盤モデルとは、大量のデータで学習した、AIの土台になるモデルです。文章を扱う基盤モデルをLLMと呼び、ChatGPTやCopilot、Claude、Geminiは、各社の基盤モデルを組み込んだサービスになります。同じサービスでも、個人のアカウントと会社の契約では、入力したデータの扱いが変わります。業務では、会社が契約したアカウントだけを使ってください。
基盤モデルの代表例と応用分野
基盤モデルの代表例は、論文が当初挙げたBERT・GPT-3・CLIPから、いまChatGPT・Claude・Geminiの裏で動く各社のモデル群へと移っています。2026年9月27日時点で、各社の公式ドキュメントに現行として載っている主なモデルは次のとおりです。
- OpenAI:ChatGPTの通常の会話で使われるGPT-5.6の系統(Luna・Sol)とGPT-6 Astra、APIの主力として案内されているGPT-6の系統(Astra・Sol・Luna)
- Anthropic:Claude Fable 5.1・Claude Opus 5.5・Claude Sonnet 5・Claude Haiku 4.5(開発者向けモデル一覧の現行モデル)
- Google:Geminiの系統。Geminiアプリのヘルプでは Flash-Lite・Flash・Pro の区分で案内され、モデルカードでは Gemini 3.8 Flash などの版が公開されている
- 文章以外:OpenAIの埋め込みモデル text-embedding-3-large、画像生成の GPT-Image-2.5、文字起こしの GPT-Transcribe など
※各社のモデル名は2026年9月27日時点の公式ドキュメントの表記です。今回確認した各社の公式ページにパラメータ数の公表値がないため、パラメータ数は記載していません。
モデル名は短い間隔で入れ替わるため、社内の資料に書くときは確認した日付を添えておくことをおすすめします。オープン型・クローズド型の違いや、日本語に強い国産モデルについては、LLMの記事の代表的なモデルの節で整理しています。
応用分野:文書業務・コード生成・社内検索・ロボット
基盤モデルの応用は、文章の作成や要約といった事務の仕事から、プログラムの作成、社内文書の検索、さらにロボットまで広がりつつあります。Anthropicは Claude Opus 5.5 を長時間のエージェント型のコーディングや知識労働向け、OpenAIは GPT-6 Astra を複雑な推論とコーディング向けと案内しており、プログラム作成は各社が挙げる用途のひとつです。経済産業省とNEDOが主導するGENIACの主な取組にも、生成AI基盤モデル開発と並んでロボット基盤モデルの研究開発が掲げられています。
社員10〜200名ほどの会社で身近なのは、問い合わせ対応の返信の下書き、議事録の要約、社内規程の検索、表計算の補助といった文書まわりの仕事でしょう。部署ごとの具体的な使いどころは、主要4AIの違いと使い分けで業務別に整理しています。
文書まわりの仕事で使うAIは、サービスごとに確かめず、会社で1つの環境にまとめる方法もあります。UPGEAR AI(アップギアAI)は、ChatGPT・Claude・Gemini・Perplexityを1つの契約で使える法人向けサービスです(人数無制限)。
会社で使う4サービスの裏で動く基盤モデル|対応表(2026年9月27日確認)
ChatGPTの裏ではOpenAI、ClaudeではAnthropic、GeminiではGoogleの基盤モデルが動き、Microsoft CopilotではOpenAIとAnthropicの両方のモデルが使われています。どのモデルが使われるかは、同じサービスの中でもプランや設定、機能によって変わります。下の表は、各社の公式ヘルプと開発者向け資料に書かれている内容だけをまとめたものになります。
| サービス | 裏で動く基盤モデル(提供元) | モデルの選び方・自動の切り替え | 法人向け契約での入力データの学習 |
|---|---|---|---|
| ChatGPT | OpenAI。通常の会話(Chat)は、無料・Goで既定になりつつあるのがGPT-5.6 Luna、有料の対象プランはGPT-5.6 Solが中心。GPT-6 Astraは対象プランでGPT-6 Proとして提供。WorkとCodexでは、Chatとは別のGPT-6 Sol・GPT-6 Luna | プランとモードで異なる。Plus・ProのInstantは、複雑な依頼でも自動で上の思考レベルに切り替えない(安全上の切り替えは除く)。Businessは即時モードでも推論を自動で追加でき、設定で調整する。Business・Enterpriseでは管理者が使えるモデルを管理できる場合がある | デフォルトでは学習に使わない(OpenAIの法人向けプライバシーのページ) |
| Microsoft Copilot(旧 Microsoft 365 Copilot) | OpenAIのGPT系(Microsoftが運用するAzure OpenAIと、OpenAIがサブプロセッサーとして運用するモデル)と、AnthropicのClaude。Microsoftがホストするほかのモデルが使われる場合もある | Claudeが使われているときは画面に表示が出る。Microsoft 365アプリのCopilotやリサーチツールなどではClaudeを選べる。ExcelのCopilotはモデルの切り替えか[自動]を選べる。管理者は管理センターでモデルをオン・オフできる | プロンプトと応答は、エンタープライズ データ保護の下で基盤モデルの学習に使わない(Copilot FAQ)。ただし、データ保持を備えたAnthropicモデルはMicrosoftの製品条項・DPAの対象外 |
| Claude | Anthropic。現行モデルはClaude Fable 5.1・Claude Opus 5.5・Claude Sonnet 5・Claude Haiku 4.5(開発者向けモデル一覧) | 開発者向け資料は、迷ったらOpus 5.5から始めるよう案内している。アプリで選べる範囲はプランの画面で確認が必要 | サービスから得た顧客コンテンツでモデルを学習しない(商用規約) |
| Gemini(Geminiアプリ・Google Workspace) | Google。アプリのヘルプはFlash-Lite・Flash・Proの区分で案内し、版番号は出していない。Gemini 3.8 Flashのモデルカードは、提供先にGeminiアプリを挙げている | 画面で区分を選ぶ。個人向けのGoogle AIサブスクリプションで上限に達したときは、Flash-Liteで続けられる | Workspaceでは、許可なくドメイン外で生成AIモデルの学習に使わない(生成AIプライバシー ハブ)。個人アカウントでは扱いが異なる |
※各社のモデル名は2026年9月27日時点の公式ドキュメントの表記です。Microsoft Copilotのチャットで既定として使われるGPTの版は、確認したMicrosoft Learnのページに記載がないため書いていません。Geminiアプリの Flash-Lite・Flash・Pro が、それぞれどの版にあたるかも公式ヘルプに記載がありません。
表から読み取れるのは、サービスの名前だけでは、裏のモデルもデータの扱いも決まらないという点です。以下、サービスごとに押さえておきたい点を補います。
同じサービス名でも、プランとモードで裏のモデルが変わる(ChatGPTの例)
ChatGPTでは、無料プランとGoプランではGPT-5.6 Lunaが既定になりつつあり、有料の対象プランではInstant(即時)・Medium・High・Extra Highの各段階をGPT-5.6 Solが動かすと、OpenAIのヘルプに書かれています。GPT-6 Astraは対象プランでGPT-6 Proとして使えるほか、2026年9月22日にはGPT-6 SolとGPT-6 LunaがChatGPTのWorkとCodexに導入され、これらはChatで使えるモデルとは別だとリリースノートに記載があります。
質問の難しさに応じた自動の切り替えも、プランごとに扱いが違ってきます。Plus・Proでは、Instantが複雑な依頼に対して自動で上の思考レベルに切り替わることはなく(安全上の理由による切り替えは除く)、Businessでは即時モードのままでも推論が自動で追加されることがあり、設定>一般の[より高い応答性能]で調整する形です。BusinessとEnterpriseのワークスペースでは、管理者がメンバーの使えるモデルを管理できる場合があるとも案内されています。
ChatGPTはすべての質問を一律に自動でモデルへ振り分ける、と社内で説明するのは正確ではありません。自社のプランのヘルプを確認してから、研修資料や規程に書くようにしましょう。プランごとの料金と管理機能の違いは、ChatGPTの法人プランの料金で比べています。
ClaudeとGeminiは、提供元が自社の基盤モデルを載せている
ClaudeはAnthropic、GeminiはGoogleが、自社で開発した基盤モデルを自社のサービスに載せている形になります。Anthropicの開発者向けモデル一覧には現行の4モデルが並び、どれを使うか迷う場合は多くの用途でClaude Opus 5.5から始めるよう案内されています。Geminiアプリのヘルプは、Flash-Liteをスピードに最適化した効率的なモデル、Flashをスピードと推論のバランスが取れたモデル、Proを複雑な数学やコーディングに強いモデルと説明するだけで、版番号までは出していません。
Gemini 3.8 FlashがGeminiアプリでも提供されていることは、Googleのモデルカードの提供先の欄から分かります。ただし、アプリの画面でどの区分が3.8 Flashにあたるかまでは公式に書かれていないため、社内の資料では区分の名前で書くのが無難でしょう。
1つのサービスの裏で複数社の基盤モデルが動く:Microsoft Copilotの例
Microsoft Copilotは、1つのサービスの中でOpenAIとAnthropicという2社の基盤モデルが動く例です。Microsoftは、AnthropicやOpenAIのモデルなどのサードパーティ製AIモデルをCopilotで提供しており、管理者がこれらのモデルを使うかどうかを決められると公式ドキュメントで説明しています。Anthropicのモデルは、EU/EFTAと英国を除く商用クラウドのほとんどの顧客で既定で有効になっていて、Copilotの画面ではClaudeが使われているときに表示が出る仕組みです。
OpenAIについても、Microsoftが運用するAzure OpenAIに加えて、OpenAIをサブプロセッサー(処理を委託する先)として使う形が加わりました。2026年7月24日以降、Microsoft 365 管理センターの設定で[ユーザーなし]を選んで無効にしない限り、対象となる商用顧客の全ユーザーで有効になると案内されています。
ここで管理者が押さえておきたいのは、どの提供元のモデルが動くかによって、データを処理する事業者や適用される条件が変わりうる点になります。Microsoftは、Claude Fable 5やClaude Mythos 5のようなデータ保持を備えたAnthropicモデルについて、データはAnthropicによって格納され、Microsoftの製品条項やDPA(データ保護補遺)の対象ではないと明記しています。Copilotの中のモデルなら、すべて同じ保護を受けられるとは限りません。
Anthropicのモデルを使うかどうかは、Microsoft 365 管理センターの[Copilot]>[設定]>[すべて表示]から[Microsoft のサブプロセッサとして稼働している AI プロバイダー]を開き、[Available subprocessors for your organization]でAnthropicを選んで保存する手順で設定すると案内されています。この操作にはAI管理者またはグローバル管理者のロールが必要で、Anthropicをオフにすると一部の機能が使えなくなる可能性がある点も、あわせて確認してみてください。
裏のモデルが増えるほど、契約・設定・データの扱いを確かめる場所も増えていきます。サービスを複数契約していれば、その数だけ同じ確認を繰り返すことになってしまいます。
会社として確かめること|モデルの順位より、サービスと契約を選ぶ
社員10〜200名ほどの会社であれば、基盤モデルそのものを選び抜くより、どのサービスをどの契約で使うかを選ぶほうが、結果に大きく響きます。各社のモデルは短い間隔で更新され、今日の順位が数か月後も同じとは限りません。一方で、入力データが学習に使われるかどうか、誰がどのモデルを使えるか、利用の記録を会社が見られるかは、契約と管理機能の側で決まり、あとから変えにくい部分になります。
入力データが基盤モデルの学習に使われない条件を、契約の原文で確かめる
法人向けの契約では、各社とも入力データを基盤モデルの学習に使わない旨を公式に書いています。確認したときは、次のような該当する一文を控えておくと、取引先から聞かれたときに原文で答えられます。
- OpenAI(法人向けのプライバシーのページ):「デフォルトでは、ユーザーのデータを使用してモデルが学習することはありません」
- Anthropic(商用規約):「Anthropic may not train models on Customer Content from Services.」(サービスから得た顧客コンテンツでモデルを学習してはならない)
- Microsoft(Copilot FAQ):「プロンプトと応答は、エンタープライズ データ保護の下で 基盤モデルをトレーニングするために使用されません」
- Google(Workspaceの生成AIプライバシー ハブ):「お客様のコンテンツは、人間によってレビューされることも、許可なくお客様のドメイン外で生成 AI モデルのトレーニングに使用されることもありません」
注意したいのは、同じGeminiでも、対象となるWorkspaceのエディション以外(個人のGoogleアカウントなど)で使うと、Geminiアプリのプライバシーに関するお知らせが適用される点です。この場合、チャットの内容が人間のレビュアーに読まれたり、Googleのサービスの改良に使われたりする場合があると、Googleは管理者向けのヘルプで案内しています。社員が個人のアカウントで業務に使っていないかを確かめる考え方は、野良AI(シャドーAI)の対策にまとめました。
管理者が、使えるモデルの範囲とオン・オフを決められるか
裏のモデルが入れ替わったり増えたりしても、管理者が使えるモデルの範囲を決められれば、社内の方針に合わないモデルを止めておくことが出来ます。ChatGPTのBusiness・Enterpriseでは管理者がメンバーの使えるモデルを管理できる場合があり、Microsoftは管理センターでモデルをオン・オフできると案内しています。契約前の説明の場では、どの画面で、どの権限の人が、どのモデルを止められるのかを具体的に聞いてみましょう。
会社として確かめる項目の一覧
ここまでの話を、契約前と契約後の点検に使える形にまとめると、次の6項目になります。
- 裏で動く基盤モデルの提供元と、選び方(手動・自動)プランやモードごとに、どの会社のモデルが動くかをヘルプで確認します。
- 入力データを学習に使わない条件の原文法人向け契約の規約やプライバシーの記載を、該当する一文ごと控えておきます。
- 提供元ごとに条件が分かれていないかCopilotのデータ保持を備えたAnthropicモデルのように、同じサービスの中でも条件が違う例があります。
- 管理者がモデルのオン・オフを決められるか必要な管理者ロールと、設定画面の場所まで確認します。
- 誰がいつどのAIを使ったかを会社が見られるか利用ログの確認方法と、書き出しの可否を見ます。
- モデルの更新・提供終了の知らせを受け取れるか通知の宛先と、切り替えまでの告知期間を確認します。
情報漏えいの対策まで含めた点検項目は、生成AIのセキュリティ対策チェックリストで整理しています。
モデルは入れ替わり、提供終了する|更新に備える社内チェックリスト
基盤モデルは一度選べば終わりではなく、提供元が新しいモデルを出すたびに入れ替わり、古いモデルは日付を決めて提供を終えていきます。OpenAIは、より安全で高性能なモデルの投入に合わせて古いモデルを定期的に終了すると開発者向けの資料で説明しており、告知の目安は一般提供のモデルで少なくとも6か月前、派生版で少なくとも3か月前、プレビュー版では2週間ほどの短い告知もありうるとの説明です。Anthropicは一般公開モデルの終了を少なくとも60日前に通知するとし、Googleは、Gemini APIの提供終了の表に載せた終了日を最短の日付として、正確な日付を事前に知らせるとしています。
実例として、ChatGPTでは2026年2月13日時点でGPT-4oやGPT-4.1などの提供が終わり、APIでは文字起こし用のwhisper-1やgpt-4o-transcribeが2027年2月26日に削除される予定です。Anthropicのモデル一覧でも、Claude Haiku 4.5には2026年10月15日より前には終了しないという目安の日付が示されています。
更新や提供終了のあとは、同じ指示文(プロンプト)を入れても、出力の書きぶりや長さが変わることがあります。定型の業務でAIを使っている会社ほど、この変化に気づかないまま使い続けてしまうおそれが出てきます。定型業務のプロンプトを数本決めておき、更新のたびに出力を見比べるのが現実的な備えです。具体的には、次のチェックリストを担当者と共有しておくと動きやすくなります。
- 社内の定型業務で使うプロンプトを3〜5本決め、今の出力を保存する議事録の要約、メールの下書き、規程の検索など、毎週使うものから選びます。
- 提供元の告知を誰が見るかを決めるリリースノートや提供終了のページ、管理者宛てのメールを確認する担当を1人置きます。
- 更新を知ったら、保存した出力と新しい出力を見比べる言い回し・長さ・数字の扱いに差がないかを見て、必要なら指示文を直します。
- 社内の手順書や研修資料のモデル名を、確認日つきで書き直す画面の名前が変わると、手順書の通りに操作できなくなることがあります。
- API連携や業務システムで、特定のモデル名を指定していないか確認するAnthropicは、提供を終えたモデルへのリクエストは失敗すると案内しています。Amazon BedrockやGoogle Cloud経由の場合は、それぞれの基盤が独自に終了日程を決めます。
システムカード(モデルカード)の読み方|総務・情シスが見る3つの項目
システムカード(モデルカード)は、提供元が基盤モデルごとに公開する説明書で、総務や情シスの方が見る場所は、知識の時点・想定用途と限界・安全性評価の3つに絞れます。Anthropicはシステムカードを、Claudeのモデルの能力、安全性評価、責任ある提供の判断を記録するものと説明しています。OpenAIはDeployment Safety Hubにシステムカードを載せ、2026年9月3日付のGPT-6 Astraのものなどが並びます。Googleは、モデルの設計と評価の概要をまとめたModel cardsをGoogle DeepMindのサイトで公開中です。
1. 知識の時点(ナレッジカットオフ)
知識の時点は、モデルがどの時期までの情報に詳しいかを示す日付になります。たとえばAnthropicは開発者向けのモデル一覧でClaude Opus 5.5の知識のカットオフを2026年6月とし、OpenAIはGPT-6 Astraを2026年4月30日、GoogleはGemini 3 Proを2025年1月と記載しています。法改正や料金の改定など、それより後の出来事を尋ねる業務では、Web検索を組み合わせるか、答えを公式の情報で確かめる手順を決めておきましょう。
2. 想定用途と限界
Googleのモデルカードには、Intended Usage and Limitations(想定される用途と限界)という項目があり、提供元がどんな使い方を想定しているかが書かれる欄です。社内のAI利用ルールで禁止や要確認とする業務を決めるとき、この欄の内容を参考にすることが出来ます。
3. 安全性評価と学習データの説明
安全性評価は、有害な出力や悪用への備えを提供元がどう試験したかを示す部分で、AnthropicのTransparency HubにはTesting Methods and Resultsという項目があります。評価の多くは提供元自身が行い公表したもので、外部機関の試験を含む場合も範囲や条件は提供元の説明によるものとなります。同じHubの学習データ(Training Data)の欄には、Claude Fable 5.1について、オンライン上の公開情報、公開・非公開のデータセット、ユーザーデータ、他のモデルが生成した合成データを組み合わせて学習したと書かれています。取引先からAIの学習データについて聞かれたときは、こうした提供元の公式の説明を示すのが確実でしょう。
基盤モデルの課題とリスク|土台の弱点は、上のサービスに引き継がれる
基盤モデルの課題は、土台の弱点がその上に作られた多くのサービスにまとめて表れる点にあります。前述の論文の要旨も、基盤モデルの欠陥は下流で適応されたすべてのモデルに引き継がれると指摘しています。
ハルシネーションと知識の時点
もっともらしい誤り(ハルシネーション)は、LLMに限らず文章を生成する基盤モデルに共通する課題です。AI事業者ガイドラインの脚注でも、RAG(検索拡張生成)の活用などにより、ハルシネーションの抑制や根拠の透明性の向上が期待されていると書かれています。知識の時点より後の出来事について、モデルが知らないまま答えを組み立ててしまうこともあるため、日付や数字は人が確かめる運用が欠かせません。
学習データの偏りと、少数の提供元への依存
基盤モデルは幅広いデータから学ぶため、そのデータの偏りが答えの傾向に表れることがあります。また、開発には大規模な計算資源が必要で、経済産業省が基盤モデル開発のための計算資源の調達を支援するほどの規模になっています。作り手が少数の事業者に集まりやすく、利用する会社の側は、その数社の方針や提供の続け方に左右されやすい立場に置かれます。
1社のモデルだけに業務を寄せるほど、提供終了や方針変更の影響をそのまま受けてしまいます。業務を止めないためには、複数のモデルに切り替えられる状態を用意しておくことが効いてきます。複数の生成AIを会社として併用する方法は、マルチAI(複数の生成AIの併用)で整理しました。
法令と国の政策での基盤モデル|EU AI法とGENIAC
法令や国の政策が基盤モデルに向けているのは、主にモデルを開発・提供する側への義務や支援で、利用するだけの会社に直接かかる部分は限られると考えられます。ただし、取引先から規制への対応を聞かれる場面はありうるため、全体像だけは押さえておきたいところです。
EU AI法:汎用目的AI(GPAI)モデルの義務は2025年8月2日から適用
EUのAI法には、基盤モデルに近い考え方として汎用目的AIモデル(GPAIモデル)という区分があり、欧州委員会のページによると、GPAIモデルに関する義務は2025年8月2日から適用されています。AI法そのものは2024年8月1日に発効し、原則的な適用は2026年8月2日からで、GPAIの義務はそれより先に始まった形になります。同法の提供者(provider)の定義には、汎用目的AIモデルを開発して市場に出す者が含まれており、GPAIの義務は主にモデルの提供者に向いたものと読むことが出来ます。
日本の会社でも、EU域内で事業をしている、AIを組み込んだ製品をEUで販売しているといった場合は立場が変わりうるため、該当しそうなときは専門家に確認してみてください。
GENIAC:経済産業省とNEDOによる国内の基盤モデル開発の支援
国内では、経済産業省が2024年2月2日に、基盤モデルの開発に必要な計算資源の支援や関係者間の連携を促すプロジェクトGENIACの開始を発表しました。現在の公式サイトでは、経済産業省とNEDOが主導するプロジェクトとして、生成AI基盤モデル開発の第4期やロボット基盤モデルの研究開発などが主な取組に挙げられています。モデルの開発者とユーザー企業などをつなぐマッチングにも取り組むとされ、国内で開発された基盤モデルを業務で使う選択肢が広がる流れの一つと見ることが出来ます。
4つのAIを、1つの契約と1つの管理画面で
UPGEAR AIは、ChatGPT・Claude・Gemini・Perplexityを1画面で切り替えて使える法人向けAI基盤です。会話の途中でもモデルを切り替えられ、質問に応じて自動で選ぶおまかせ自動選択もあります。全モデルで学習非利用を標準適用し、会話履歴・利用ログ・アカウントは国内サーバー(AWSの日本リージョン)で管理。管理者ダッシュボードで利用ログ・権限・モデルのON/OFFを扱えます。料金は月額30,000円(税抜)から。どのプランも利用人数は無制限で、料金は利用量に応じたプラン設計です(人数の目安はライト1〜5名・スタンダード6〜20名・プレミアム21〜50名)。初期費用100,000円(税抜)が別途かかります。
UPGEAR AIの詳細を見るよくある質問
基盤モデルとファウンデーションモデルは同じものですか?
基盤モデルとLLMの違いは何ですか?
ChatGPTは基盤モデルですか?
Microsoft Copilotの裏ではどの会社のモデルが動いていますか?
会社で基盤モデルを自分で学習させる必要はありますか?
使っているモデルが提供終了したらどうなりますか?
基盤モデルのパラメータ数は比べたほうがよいですか?
まとめ
基盤モデル(ファウンデーションモデル)は、幅広いデータで事前に学習し、多くの用途に適応できるAIの土台で、2021年8月の論文で名付けられました。LLMはそのうち文章を扱う種類で、ChatGPT・Microsoft Copilot・Claude・Geminiは、各社の基盤モデルを組み込んだサービスにあたります。
サービスの裏で動くモデルは、プランやモード、設定によって変わり、Copilotのように1つのサービスで複数社のモデルが動くものもあります。提供元が変われば、データを処理する事業者や適用される条件が変わる場合もあるため、会社としてはモデルの性能の順位より、学習に使われない契約の原文、管理者が決められるモデルの範囲、更新や提供終了への備えを確かめておきたいところです。
モデルは今後も入れ替わっていきます。定型業務のプロンプトを数本決めて出力を見比べる運用と、確認日つきでモデル名を記録する習慣から始めてみてください。法人のAI活用に関するほかの記事はAI活用コラム一覧にまとめています。
