
LLM(大規模言語モデル)とは、Large Language Modelの略で、膨大な文章を学習し、文章の続きにどの語が来るかを確率で予測できるようにした規模の大きなAIのモデルです。ChatGPT・Claude・Gemini・Copilotは、このLLMを組み込んだサービスであり、会社で使うときに差が出るのはモデルそのものより、どのサービスをどの契約で使うかという点です。この記事では、LLMの意味と仕組み、生成AIやChatGPTとの違い、代表的なモデル、できることと課題を整理したうえで、会社で使い始める前に確かめたい契約とデータの扱いまでを解説します。
LLM(大規模言語モデル)とは|意味をひとことで
LLMは、文章の続きを予測する言語モデルを、学習データ・計算量・パラメータ数の3つの面で大きくしたものです。大きくしたことで、質問への回答、要約、翻訳といった、以前は個別に作り分けていた作業を1つのモデルでこなせるようになりました。
LLMの定義:Large Language Modelの略で、日本語では大規模言語モデル
LLMはLarge Language Modelの頭文字で、日本語では大規模言語モデルと訳されます。Google for Developersの機械学習入門講座はLLMを、トークン(語や語の一部)の並びを予測するモデルとして説明しています。Anthropicも自社のモデル一覧で、Claudeを同社が開発した大規模言語モデルのファミリーと紹介しています。LLMは特定の製品名ではなく、モデルの種類を指す言葉です。
言語モデルの基本(次に来る語を確率で予測する)と「大規模」の中身
言語モデルとは、ある語の並びの後にどの語が続きやすいかを確率として見積もる仕組みです。Google for Developersは、トークンは単語のこともあれば、単語の一部や1文字のこともあるとしています。たとえば「請求書の支払期限は」の後には「月末」や「翌月」が続きやすく、「青空」は続きにくい、という見積もりを積み重ねて文章を組み立てます。大規模という言葉が指すのは、主に次の3つです。
- データ量:学習に使う文章の量。
- 計算量:学習にかかる計算の量。Google for Developersは、LLMの学習には何か月もの期間と膨大な計算資源・電力がかかると述べています。
- パラメータ数:モデルの中で調整される数値の数。2020年のGPT-3の論文は、1,750億のパラメータを持つと記載しています。
国のAI事業者ガイドラインでは、LLMを基盤モデルの代表として扱っている
総務省・経済産業省の「AI事業者ガイドライン(第1.2版)」(2026年3月31日)に、LLMや基盤モデルを独立した用語として定義した項目はありません。ただし脚注で位置づけに触れています。
- 脚注16は、大規模言語モデルに代表される基盤モデルを、様々なサービスを支える個別モデルを生み出すコアの技術基盤と表現しています。
- 脚注36は、大規模言語モデルをはじめとする生成AIでは、利用者がプロンプト(入力する指示文)を与えるだけで、学習済みのパラメータを更新せずに特定の作業をさせられること(コンテキスト内学習)に触れています。
同ガイドラインは事業者をAI開発者・AI提供者・AI利用者に分けており、ChatGPTなどを業務で使う会社はAI利用者にあたります。AI利用者には、出力の精度とリスクの程度を理解して使うこと、個人情報や機密情報を不適切に入力しないよう注意を払うこと、サービス規約を守ることなどが挙げられています。法的拘束力のないソフトローですが、社内ルールの拠り所になります。
LLMと生成AI・ChatGPT・AIの違い
AIという大きな分野の中に生成AIがあり、そのうち文章を扱う中核の技術がLLM、LLMを誰でも使える形にした商品がChatGPTなどのサービス、と整理できます。ChatGPTそのものの仕組みや料金、会社で使うときの注意点はChatGPTとは?会社で使う前に知る料金・学習設定・始め方で解説しています。
生成AIとの違い:LLMは生成AIのうち言語を扱うもの
AI事業者ガイドラインは生成AIを、文章・画像・プログラム等を生成できるAIモデルにもとづくAIの総称と定義しています。生成AIには画像や音声を作るモデルも含まれるため、LLMは生成AIのうち文章(とプログラムのコード)を担うモデルという関係です。生成AI全体の種類は生成AIとはで整理しています。
ChatGPTとの違い:LLMは技術、ChatGPTはそれを使ったサービス
LLMはエンジンで、ChatGPT・Claude・Gemini・Copilotは、そのエンジンに会話画面や履歴の保存、ファイルの読み込みなどを組み合わせた製品です。OpenAIは2022年11月30日の発表で、ChatGPTを対話形式でやり取りするよう学習させたモデルとして公開しました。サービスとモデルが別物であることは、同じ会社の中でも数字の違いとして表れます。
- AnthropicのAPIのモデル一覧では、Claude Opus 5のコンテキストウィンドウ(一度に扱える長さ)は1Mトークンです。一方、Claudeの料金ページにある個人向けプランの比較表では、コンテキストウィンドウは200kです。
- 職場向けのMicrosoft Copilotは、既定ではリアルタイムのルーターがプロンプトに応じて使うモデルを切り替えると管理者向けドキュメントにあります。1つのサービスの裏で動くLLMは1つとは限りません。
※モデル名とコンテキストウィンドウの値は、2026年9月16日時点で各社の公式ドキュメントと料金ページに記載されているものです。APIとアプリの上限は別物で、プランや時期によって変わります。
Copilotの製品ごとの違いはCopilotとは、ChatGPTの会社向けプランはChatGPTの法人向けプランと料金で解説しています。
AI・機械学習・深層学習・自然言語処理との関係(LLMとAIの違い)
LLMとAIの違いは範囲の広さです。AI(人の知的な作業をコンピューターで行う技術全体)の中に、データから規則性を学ぶ機械学習があり、その中に多層のニューラルネットワークを使う深層学習があり、深層学習で作られた言語の大規模モデルがLLMです。自然言語処理は、人の言葉をコンピューターで扱う研究分野の名前で、LLMはその分野で現在広く使われている手法の1つです。
社内ルールでは「生成AI」「LLM」「サービス」「契約」を書き分ける
社内規程でこれらの言葉を混ぜると、何を許可したのかがあいまいになります。
- 生成AI:規程全体の対象を示す総称。
- LLM(モデル):GPT・Claude・Geminiなどサービスの中で動くモデルの名前。数か月単位で入れ替わるため、許可の単位にしない。
- 生成AIサービス:ChatGPT・Copilotなど、社員が画面で触るもの。
- 契約(プラン):個人向けか、会社で契約した法人向けか。入力データの扱いはここで決まる。
許可の対象をモデル名ではなくサービスと契約の組み合わせで指定すると、モデルが新しくなるたびに規程を直さずに済みます。
規程全体の作り方は生成AIの社内ガイドラインの作り方にまとめています。
LLMの仕組み|文章を読んで次の語を選ぶまで
LLMは、入力された文章を細かく区切って数値に変え、語どうしの関係を計算したうえで、次に来る語を1つずつ選んでつなげて文章を出力します。
文章を処理する流れ:トークン化→ベクトル化→文脈の理解→次の語の予測
- トークン化:文章をトークンに区切ります。Google for Developersによると、多くの言語モデルは意味のまとまりを持つ語の一部(サブワード)で区切り、1トークンあたりの文字数は言語で違い、英語では約4文字が目安です。日本語の換算を各社が公式に示した資料は、確認できた範囲では見当たりません。
- ベクトル化:トークンを、意味の近さを計算できる数値の並びに置き換えます。
- 文脈の理解:どの語がどの語と強く関係するかを計算します。同じ「かける」でも、電話なのか保険なのかを前後から判断する段階です。
- 次の語の予測:次に来るトークンの確率を計算して1つ選び、末尾に足してまた次を予測する、を繰り返します。
APIの料金や上限が文字数ではなくトークン数で決まっているのは、この処理単位のためです。
Transformerとセルフアテンション(2017年の論文 Attention Is All You Need)
現在のLLMの多くは、Transformerという構造をもとにしています。Vaswaniら8名の論文「Attention Is All You Need」で提案され、arXivへの初版投稿は2017年6月12日です。Google for Developersは、TransformerをLLMの構築に広く使われている構造と紹介し、文脈を捉えるためにセルフアテンション(自己注意)に大きく依存していると説明しています。セルフアテンションは、文中の各語がほかのどの語にどれだけ注意を向けるべきかをまとめて計算する仕組みで、長い文章の文脈を扱いやすくしました。
事前学習とファインチューニング(追加学習)
- 事前学習:大量の文章で次の語を予測する練習を繰り返し、言語の一般的な知識を身につけさせる段階。一般に、大きな計算資源が必要になる段階です。
- 事後学習:学習済みのモデルに目的に合わせたデータを追加で学ばせる段階。AI事業者ガイドラインは、主な手法としてファインチューニングやデータの追加による再学習を挙げています。
学習が終わったモデルは、学習データの時点より後の出来事を知りません。この区切りを知識のカットオフといい、2026年9月16日時点の公式ドキュメントでは、GPT-6 Astraが2026年4月30日、Claude Opus 5が2026年5月と記載されています。
RAGとの違い:学習し直さずに、社内の資料を参照させる方法
RAG(検索拡張生成)は、LLMそのものではなく使い方の1つです。質問に関係する部分を社内文書などから検索し、その内容を添えてLLMに回答させます。モデルを学習し直さずに、カットオフより新しい情報や社内規程のような会社固有の情報を回答に反映できます。AI事業者ガイドラインの脚注27は、RAGの活用などでハルシネーション(もっともらしい誤り)の抑制や根拠の透明性向上が期待されていると書いています。ただし検索対象に古い版の文書が混ざれば回答も引きずられるため、読ませる文書の整理が先です。仕組みや既製サービスでの使い方、閲覧権限の注意点はRAGとは?仕組みと社内文書で安全に使う方法で解説しています。
LLMの歴史と代表的なモデル
LLMは、2017年のTransformerの提案から数年で大きくなり、2022年のChatGPT公開をきっかけに一般の業務で使われるようになりました。
LLMの歴史:Transformerの提案からChatGPT公開、各社の競争へ
- 2017年6月:Transformerの論文がarXivに投稿される。
- 2020年5月:GPT-3の論文「Language Models are Few-Shot Learners」が投稿される(1,750億パラメータ)。
- 2021年以降:AI事業者ガイドラインの本文が基盤モデルの台頭と表現する時期。汎用的なAIの開発が進む。
- 2022年11月30日:OpenAIがChatGPTを公開。対話形式でLLMを使う形が広がる。
- 2023年以降:国内でもNECのcotomi、NTTのtsuzumiなど日本語に力を入れたLLMが発表される。
代表的なモデルとオープン型・クローズド型の違い
- OpenAI(GPT):API向けモデル一覧は、迷ったらGPT-6 Astraから始めるよう案内し、費用とのバランスにGPT-5.6 Terra、大量処理向けにGPT-5.6 Lunaを挙げています。
- Anthropic(Claude):多くの用途ではClaude Opus 5から始めるよう案内し、ほかにClaude Fable 5.1、Claude Sonnet 5、Claude Haiku 4.5が並びます。
- Google(Gemini):Gemini APIのモデル一覧(英語版)にGemini 3.8 Flashの提供開始が掲示され、Gemini 3.1 Proはプレビュー版として載っています。
※モデル名と各社の案内は、2026年9月16日時点で各社の公式ドキュメントに記載されているものです。モデル名は頻繁に変わります。
会社で使うモデルをどう比べて選ぶかは、AIモデルの比較|会社で使うAIの選び方と部署別の使い分け表で、部署別の割り当て表と社員数別の月額試算を交えて解説しています。
提供のされ方では2つに分かれます。クローズド型は、モデルの中身(重み)を公開せず、提供元のサービスやAPIを通じて使う形で、上の各モデルが該当します。オープン型(オープンウェイト)は重みが公開され、自社のサーバーで動かせる形です。OpenAIも重みを公開したgpt-oss-120bを出しており、1枚のH100 GPUに収まると説明しています。データを外に出さずに済む反面、機材と運用は自社で持つことになります。詳しくはローカルLLMとはとローカルLLMとクラウドの違いで解説しています。
日本語に強いLLM・国産モデル
以下の特徴や数値は、いずれも各社の発表(自己申告)で、第三者が検証したものではありません。
- NTT「tsuzumi 2」:2025年10月20日に提供開始と発表。NTTがゼロから開発した純国産モデルで、1GPUで動く軽さからオンプレミスでの運用もできると説明しています。
- NEC「cotomi」:2023年12月の発表では130億パラメータクラスのモデルと説明。2026年3月には、cotomi v3がデジタル庁のガバメントAIで試用する国内LLMの公募で選定されたと発表しています。
- 富士通「Takane」:2024年9月30日から提供。CohereのLLM「Command R+」をベースに日本語強化の追加学習とファインチューニングを行ったと説明しています。
- SB Intuitions「Sarashina」:2025年11月の発表で、4,600億パラメーター規模の国産LLMと説明しています。
運用面では、NTTはオンプレミスやプライベートクラウドでの運用を、富士通はプライベート環境で使える点を打ち出しています(各社発表)。
同じLLMでも、個人向けの無料版と法人向けの契約では入力データの扱いが変わります。UPGEAR AI(アップギアAI)は、ChatGPT・Claude・Gemini・Perplexityを1つの契約で使える法人向けサービスです(人数無制限)。
LLMでできることと業務での使いどころ
LLMが得意なのは、言葉で書かれた材料を読み、言葉の成果物に作り替える作業です。正確な計算や最新の事実の保証は苦手で、そこは人や別の仕組みで補います。
LLMでできること:文章作成・要約・翻訳・対話・コード生成
- 文章作成:メール、案内文、報告書の下書き。
- 要約:議事録や長い契約書の要点抽出。
- 翻訳:海外とのメール、英文マニュアルの読み下し。
- 対話:質問への回答、アイデア出しの壁打ち。
- コード生成:表計算の関数やマクロ、簡単なプログラムの作成。
部門別の使いどころ(業務での活用例)
総務省「令和8年版情報通信白書(概要)」(2026年7月)は、日本企業の生成AIの使い道として議事録・メール作成補助の回答割合が約7割と最も高かったとしています。文章に関わる日常業務から入るのが現実的です。
- 総務・人事:社内通知の下書き、規程に関する質問への一次回答、求人文の作成。
- 経理:取引先への確認メール、処理方法の下調べ。数値の確認は人が行います。
- 営業:提案書の構成案、商談メモの要約。
- サポート:問い合わせへの回答案、文面のトーン調整。
用途ごとの向き不向きは主要AIの違いと使い分けで比較しています。
LLMが注目される背景と企業の利用状況
LLMが業務で注目されるのは、開発をしなくても文章で指示するだけで多様な作業に使えるためです。同じ白書(概要)では、自社の何らかの業務で生成AIを利用している日本企業は86.4%でした。一方、生成AIによる業務変革に組織的な取り組みはないと答えた日本企業は27.0%で、米国1.4%、ドイツ4.9%、中国2.6%より高い割合です。
※出典:総務省「令和8年版情報通信白書(概要)」。2026年1〜2月のインターネットアンケートで、従業員10名以上かつデジタル化に取り組む企業の管理職以上が回答。利用割合は日本n=477、組織的な取り組みは日本n=497。
使う会社は多い一方、管理が追いついていない会社も少なくありません。会社が把握していない利用については野良AI(シャドーAI)とはで解説しています。
LLMの今後の展望:マルチモーダル化とAIエージェント
LLMは、文章だけでなく画像や音声も扱い、自分で手順を進めるAIへと広がりつつあります。
- マルチモーダル化:Gemini APIのドキュメントは画像・動画・音声もトークンに換算して処理すると説明しており、動画は1秒あたり263トークン、音声は1秒あたり32トークンとしています。NTTもtsuzumi 2に、図表を含む文書を画像として読み込む機能を加えたと発表しています。
- AIエージェント:AI事業者ガイドラインはAIエージェントを、特定の目標を達成するために環境を感知し自律的に行動するAIシステムと定義しています。LLMが回答を返すだけでなく、検索やファイル操作などの手順を自分で進める形です。
エージェントが広がるほど、LLMが触れるデータとシステムの範囲も広がり、何を触らせてよいかを会社が決める必要性が高まります。
LLMの課題とリスク
LLMの課題の多くは仕組みから生じます。次の語を確率で選ぶ仕組みのため誤りをなくすことは難しく、入力した情報の扱いも利用者からは見えにくいためです。
ハルシネーション:もっともらしい誤りと、人による確認
IBMはハルシネーションを、AIがもっともらしく聞こえるが事実として誤った、あるいはでっち上げた出力をする事例と説明しています。OpenAIもChatGPT公開時に、もっともらしいが誤った回答を書くことがあると限界を明記していました。総務省の「生成AIはじめの一歩」には、西日本の高い山を尋ねた回答に実在しない山の名前が含まれた事例が載っており、生成AIに真偽を問うことは適切ではないとしています。
機密情報・個人情報の入力による漏えいと、入力してよい情報の社内ルール
LLMのサービスに入力した文章は提供元のサーバーに送られ、契約によってはモデルの改善に使われることがあります。個人情報保護委員会は2023年6月2日の注意喚起で、本人の同意なく個人データを含むプロンプトを入力し、それが回答の出力以外の目的で扱われると法令違反になる可能性があるとして、提供事業者が機械学習に利用しないこと等を十分に確認するよう求めています。社内ルールでは、入力してよい情報を3段階に分けると現場が判断しやすくなります。
- 入力してよい:公開済みの情報、固有名詞を伏せた文章。
- 会社が契約した環境でのみ可:社内資料、取引条件、未公開の企画。
- 入力しない:マイナンバー、要配慮個人情報、秘密保持を約束した取引先の情報。
入力の区分以外に会社として点検しておきたい項目は、生成AIのセキュリティ対策チェックリストで一覧にしています。
その他の課題:プロンプトインジェクション・バイアス・著作権・コスト
- プロンプトインジェクション:読み込ませた文書やWebページに悪意ある指示を紛れ込ませ、LLMに本来と違う動きをさせる攻撃です。AI事業者ガイドライン第1.2版の脚注には、LLMとLLMを含むAIシステムへの脅威について、開発者と提供者向けの技術的対策例を整理した「AIのセキュリティ確保のための技術的対策に係るガイドライン」を2026年3月に策定したと記されています。
- バイアス:Google for Developersは、LLMも様々なバイアス(偏り)を示しうると述べています。採用や評価など人に関わる判断にそのまま使わないことが基本です。
- 著作権:文化庁の文化審議会著作権分科会法制度小委員会「AIと著作権に関する考え方について」(2024年3月)は、生成物に既存の著作物との類似性と依拠性が認められれば、損害賠償請求などの対象になり得るとしています。
- コスト:Google for Developersは、LLMは推論でも膨大な計算資源と電力を使うとしています。APIはトークン数に応じた料金のため、長い文書を何度も読ませると費用が膨らみます。
同じLLMでも、契約によって入力データの扱いが変わる
入力が学習に使われるかどうかは、モデルではなく、どの窓口からどの契約で使うかで決まります。各社の公式な記載を並べると次のとおりです。
| 提供元 | 個人向けに使う場合 | 会社・開発者向けの契約で使う場合 |
|---|---|---|
| OpenAI | ChatGPTの料金ページの比較表で、学習への使用は無料・Go・Plus・Proとも「無効化可能」(利用者が設定する) | エンタープライズプライバシーのページで、ChatGPT Business・Enterprise等とAPIについて「デフォルトでは、ユーザーのデータを使用してモデルが学習することはありません」 |
| Anthropic | 料金ページの比較表で、Free・Pro・Maxのモデルのトレーニングは「オプトアウト」 | 商用規約(2025年6月17日発効)に「Anthropic may not train models on Customer Content from Services.」(Anthropicはサービスから得た顧客コンテンツでモデルを学習させてはならない)。Team・Enterpriseは料金ページで「デフォルトではなし」 |
| 個人アカウントのGeminiアプリは、プライバシーハブで、アクティビティの保存をオフにすると今後のチャットはAIモデルのトレーニングに使用されない(フィードバックを送った場合を除く)と記載。人間のレビュアーがデータの一部をレビューすることがあるため、見られたくない機密情報は入力しないよう案内 | Gemini APIの有料サービスは、プロンプトや回答をプロダクトの改善に使用しない。Google Workspaceは、コンテンツが許可なくドメイン外で生成AIモデルのトレーニングに使われることはないと明記 | |
| Microsoft | 個人アカウントのCopilotアプリは版で説明が分かれる。2026年8月18日からの新しい版の記事は、プロンプト、応答、ファイルコンテンツを基礎モデルのトレーニングに使用しないと記載。以前の版の記事は、オプトアウトしたユーザー等を除きAIトレーニングに使用すると記載 | 職場のアカウントでは、Microsoft Graph経由でアクセスされるプロンプト、応答、データは基礎モデルのトレーニングに使用されないと明記 |
※2026年9月16日時点で各社の公式ページ・規約・ヘルプに記載されている内容です。GoogleのGemini APIは、無料枠では入力と回答を製品の改良に使い人間のレビュアーが確認する場合があるとして、機密情報や個人情報を送らないよう規約に明記しています。規約は改定されるため、契約前に最新の原文を確認してください。
個人向けでは、学習に使われるかどうかがサービスや版によって異なり、利用者自身の設定に委ねられているものもあります。会社・開発者向けの有料の契約では、4社とも、既定で入力データをモデルの学習や改善に使わない旨を記載しています(範囲や条件は各社の原文によります)。社員が個人のアカウントを業務に使っている場合、その扱いや設定を会社は確かめられません。
会社でLLMを使い始めるときの進め方
会社でLLMを使うときは、モデル選びより先に、目的と範囲、契約、ルールの3つを決めるほうが手戻りが少なくなります。
会社での導入の進め方:目的と範囲を決め、小さく試して段階的に広げる
- 目的と範囲を決める:使う業務を2〜3個に絞り、対象部署と入力してよい情報の範囲を決めます。
- 会社として契約した環境を用意する:個人アカウントでの試行を黙認すると、そのまま定着してしまいます。
- 小さく試す:1部署程度で1〜2か月使い、減った時間と出た誤りを記録します。
- ルールを整え、段階的に広げる:試行の結果をもとに入力の範囲と確認手順を文書にし、対象を増やします。
使い始める前の確認チェックリスト
情報システムの専任者がいない会社でも、項目ごとに担当を決めておけば抜け漏れを防げます。
- 入力データが学習に使われない契約か担当:総務。個人の設定頼みではなく、契約として既定で学習に使われないかを原文で確かめます。
- 入力データと履歴の保存期間、削除の方法担当:総務。学習に使われなくても保存される場合があります。
- データが処理・保管される場所担当:総務。取引先に聞かれたとき答えられるかが基準です。
- 管理者が利用者と利用状況を把握できるか担当:情シス担当。誰がいつ使ったかを確認・書き出せるかを見ます。
- 退職・異動のときにアカウントを止められるか担当:人事と情シス担当。退職手続きに停止の手順を入れます。
- 社外秘・個人情報を入れてよい範囲が決まっているか担当:経営者と部門長。前述の3段階を自社の情報に当てはめます。
- 確認した規約の日付を記録したか担当:総務。規約は改定されるため、年1回程度見直します。
社内で1分で説明するための文面
会社で安全に使うには:学習させない設定・ログ管理・社員への配布・複数LLMの使い分け
- 学習させない設定を全員に:社員ごとの設定に任せず、既定で学習に使われない環境を用意します。
- ログを会社が持つ:誰がいつどのサービスを使ったかを会社側で確認できるようにします。
- 必要な社員に配る:一部にだけ渡すと、渡されなかった社員が個人のアカウントで使い始めます。
- 複数のLLMを使い分けられるようにする:モデルごとに得意な作業が違い、各社のモデル一覧は短い期間で更新されています。ただし部署ごとに別々に契約すると、アカウント台帳、規約の確認、ログの置き場所が契約の数だけ増えます。
複数のLLMを1つの環境で使う形はマルチAIとはで解説しています。
主要な生成AIサービスを、会社の管理下の1つの環境で
UPGEAR AIは、ChatGPT・Claude・Gemini・Perplexityを1画面で切り替えて使える法人向けAI基盤です。全モデルで学習非利用を標準適用し、UPGEAR AI上の誰が・いつ・どのAIを使ったかを管理画面で一覧でき、使わせるAIも会社が選べます。会話履歴・利用ログ・アカウントは国内サーバー(AWSの日本リージョン)で管理します。UPGEAR AIの料金は月額30,000円(税抜)からで、ユーザーごとの課金はありません(人数の目安はライト1〜5名、スタンダード6〜20名、プレミアム21〜50名)。
UPGEAR AIの詳細を見るよくある質問
LLMとChatGPTの違いは何ですか?
LLMとAIの違いは何ですか?
LLMとは具体的に何をするものですか?
LLMとRAGの違いは何ですか?
無料版のLLMサービスを業務で使っても問題ありませんか?
まとめ
LLM(大規模言語モデル)は、大量の文章を学習し、次に来る語を確率で予測することで文章を読み書きするAIのモデルです。Transformerを土台に規模を大きくしたことで、要約、翻訳、文章作成、コード生成までを1つのモデルでこなせるようになりました。生成AIは画像や音声も含む総称で、LLMはそのうち言語を扱う部分、ChatGPTなどはLLMを組み込んだサービスです。
ハルシネーションはなくしきれず、入力データの扱いはモデルではなくサービスと契約で決まります。会社で使うときは、モデルの性能比較より先に、会社として契約した環境を用意し、入力してよい情報と出力の確認手順を決めておくことが、安全に使い続ける近道です。ほかの記事はAI活用コラム一覧からご覧いただけます。
