
Gemini Enterprise のエージェント作成とは、プログラミングをせずに、社内の資料やメールを使って決まった仕事をこなすAIエージェントを自分たちで作り、社内に配れる機能のことです。Business・Standard・Plus・従量課金制のエディションであれば一般の社員でも作れますが、その前に管理者が機能をオンにし、共有の範囲とつなぐデータを決めておく必要があります。製品そのものの全体像はGemini Enterpriseとは|できることをエディション別に整理で紹介しており、ここでは会社としてエージェントを作り、配るまでに何が必要かに絞ってお伝えします。
結論:Business 以上なら、ノーコードで作って社内に配れる
会社としてノーコードのエージェントを作って配れるのは、Business・Standard・Plus・従量課金制の4つのエディションになります。Frontline エディションでは、ほかの方が作ったエージェントを使うことは出来ても、自分で作って公開することは出来ません。エディションごとの機能の全体像は親記事に譲り、下の表ではエージェント作成に関わる行だけを抜き出しました。
| 公式の比較表の項目 | Business | Standard | Plus | 従量課金制 | Frontline |
|---|---|---|---|---|---|
| ノーコード ツール(プレビュー)でカスタム エージェントを構築して公開する | 作れる | 作れる | 作れる | 作れる | 不可 |
| そのツールで作られたエージェントを使用する | 使える | 使える | 使える | 使える | 使うだけ |
| カスタム スキルを作成・アップロードする | 可 | 可 | 可 | 可 | 不可 |
| 外部で構築したフルコード エージェントを使用する | 不可 | 可 | 可 | 可 | 管理者が用意したもののみ |
| ユーザー数 | 1〜500人(製品ページでは最大300人と記載) | 1人以上 | 1人以上 | 開始に1シート以上(製品ページでは20シート以上と記載) | Standard か Plus のユーザーが150人以上 |
※2026年10月3日に Google Cloud の公式ドキュメント「エディションの比較」で確認した内容です。表の「作れる」「使うだけ」「不可」は公式の表のチェックの有無を読みやすく言い換えたもので、ノーコード ツールには公式の表でも「プレビュー」と書かれています。
表のとおり、作る機能そのものは Business でも使えます。差が出るのは、開発会社などがコードで作ったエージェントを取り込めるかどうかで、Business ではこれが使えません。比較表ではノーコードのツールに「プレビュー」とありますが、リリースノートでは2026年9月3日に一般提供が告知されています。画面の表示は変わりうる前提で使い始めましょう。
名称の整理:Agent Designer・Workflow Builder・旧 Agentspace
ノーコードでエージェントを作る機能は、公式ドキュメントの中でも Agent Designer と Workflow Builder の2つの名前で書かれています。英語版のリリースノートでは、2026年9月3日付で Workflow Builder(旧 Agent Designer)の一般提供が告知されました。日本語のドキュメントには、Agent Designer 名義の旧ページと、Workflow Builder 名義の新しいページ(「チャット エージェントを作成する」など)が併存しています。ここでは画面の操作を Workflow Builder 名義の現行ページの表記に合わせ、機能の全体を指すときは Workflow Builder(旧 Agent Designer)と呼ぶことにします。
Gemini Enterprise という製品名そのものも、以前は別の名前でした。公式のリリースノートでは、2025年10月9日付で Google Agentspace が Gemini Enterprise の一部になったと告知されています。検索で見つかる Agentspace 名義の解説は名称変更より前の情報をもとにしている場合があり、画面名が今と違うことがあります。
ノーコードの先:コードで作るエージェント(ADK・A2A・Agent Platform)
ノーコードで足りない処理は、開発者がコードで作ったエージェントを取り込む形で補えます。Workflow Builder の一般提供を伝えるリリースノートでは、ADK(Google のエージェント開発キット)や A2A(エージェント同士をつなぐための共通の約束事)で作った既存のエージェントを取り込み、まとめて管理・共有できると説明されています。ただし、外部で作ったフルコードのエージェントを使えるのは Standard・Plus・従量課金制で、Business は対象外となります。開発の土台となる Gemini Enterprise Agent Platform については、公式FAQで Gemini Enterprise app とは個別に購入する必要があると案内されています。社内システムとの深い連携や、決まった計算を正確にこなす処理が必要になった段階で、開発会社に相談する流れで十分でしょう。
作る前の準備:管理者がやること・社員がやること
エージェントを作れるかどうかは、社員の操作より先に、管理者の設定で決まります。ここを曖昧にしたまま社員に作らせると、作れない・共有できないといった問い合わせが情シスに集まってしまいます。
前提:アプリの作成と、管理者による機能のオン
公式ドキュメントの「始める前に」では、必要なデータソースが接続されたウェブアプリがあることと、ウェブアプリで Workflow Builder 機能の切り替えが有効になっていることが前提として挙げられています。管理者は Google Cloud コンソールの [Gemini Enterprise] ページでアプリを選び、[構成] の [機能の管理] タブでウェブアプリの各機能をオンまたはオフに切り替えます。このタブには「チャット エージェントを有効にする」「ワークフローを有効にする」「エージェント共有を有効にする」「管理者の承認なしでのエージェント共有を有効にする」といった項目が並びます。なお、Business エディションの手順は Standard・Plus 向けとは別のヘルプセンターにまとめられているため、画面の名前が異なる場合があります。
管理者と一般社員の分担表
誰が何をするかを先に分けておくと、問い合わせが来たときの切り分けが早くなります。公式ドキュメントの記載をもとに、役割ごとの作業を並べると次のとおりです。
| 作業 | 担当 | 公式ドキュメントでの扱い |
|---|---|---|
| アプリの作成とデータソースの接続 | 管理者 | エージェント作成の前提(始める前に) |
| エージェント作成の機能をオンにする | 管理者 | [機能の管理] タブの「チャット エージェントを有効にする」など |
| エージェント共有の機能をオンにし、承認制にするか決める | 管理者 | 既定では承認なしで組織内の誰とでも共有できる |
| グループ単位の共有を認めるか決める | 管理者 | 既定では個人のメールアドレス単位。グループ単位はページにより記載が異なるため、実際の管理画面で確認 |
| 共有リクエストを承認する | Gemini Enterprise 管理者の IAM ロールを持つアプリ管理者 | 承認制にした場合のみ |
| 使えるデータコネクタとツールを用意する | 管理者 | エージェントが使えるのは管理者が用意したものに限られる |
| エージェントの作成・プレビュー・起動 | 一般社員 | [+ エージェントを作成] から |
| 共有相手の指定 | 作成した社員 | [Agent Gallery] の [共有] |
| スケジュールの設定と14日ごとの更新 | 作成した社員 | [スケジュール] タブ |
| 一時停止したスケジュール実行の承認 | スケジュールを設定した本人 | チャット履歴から [承認] して完了させる |
Workflow Builder の概要ページには、エージェントやワークフローが使えるアクションとツールは、管理者がプロビジョニングしたデータコネクタ・ツール・権限に限られると書かれています。社員が自由に外部のサービスへつなげる仕組みではないため、どのコネクタを開けるかは管理者の判断となります。
作る前に決める社内ルールのチェックリスト
機能をオンにする前に、次の6点を社内で決めておきましょう。
- 作ってよい人の範囲最初は総務・情シスなど数名に絞り、作例がそろってから部署の担当者へ広げる形が無理のない進め方です。
- 共有を承認制にするか既定では、作成者は管理者の承認なしで組織内の誰とでも共有できます。承認制にする場合は、承認する管理者と、承認にかける日数の目安も決めます。
- つないでよいデータソースと、つながない場所人事評価・給与・個人情報を含むフォルダはつながない、と場所の名前で決めておくと迷いが減ります。
- 知識ファイルに入れてはいけない資料[知識] にアップロードしたファイルは、共有すると相手が元のファイルを開けなくても内容を質問できるようになります。コネクタ経由のデータは相手自身の権限の範囲に限られるため、社外秘の資料は知識に入れないことを原則にします。
- 名前の付け方と責任者部署名・用途・作成者が名前から分かるようにそろえ、誰に問い合わせればよいかを説明欄に書くよう決めます。
- 棚卸しの頻度と、異動・退職時の引き継ぎ半年に1回など頻度を決め、使われていないものや作成者がいなくなったものを整理します。
AI利用の社内ルール全体の作り方は生成AIの社内ガイドラインの作り方でも紹介しているので、エージェントの項目を足す形で決めてみてください。
作り方は2通り:プロンプトで生成するか、フロービルダーで設計するか
作り方は、目的を文章で伝えて最初の版を自動で作らせる方法と、フロービルダーで最初から組み立てる方法の2通りがあります。公式ドキュメントは2つを組み合わせてよいとしており、プロンプトで大枠を作ってからフロービルダーで細かく直す進め方が例として紹介されています。初めて作る方は、まずプロンプトの方法から試してみてください。
| 方法 | 向いている場面 | 始め方 |
|---|---|---|
| プロンプトで作る | 基本的なエージェント、より複雑なものを作る出発点 | [+ エージェントを作成] > [チャット エージェント] を選び、目的を書く |
| フロービルダーで作る | サブエージェントの構成や処理の流れを細かく決めたい複数ステップのエージェント | 開いたキャンバスで [ビルダーに進む] を押し、デザイナー モードに切り替える |
操作手順:[+ エージェントを作成] から [作成] まで
プロンプトで作る場合の流れを、公式ドキュメントの手順に沿ってまとめると次のとおりです。
- Gemini Enterprise のウェブアプリを開き、ナビゲーション メニューの [+ エージェントを作成] > [チャット エージェント] をクリックします。
- エージェント キャンバスがチャットモードで開いたら、エージェントの目的と、期待する動きを書きます。
- 必要に応じて [データの管理] で使うデータソースを有効・無効にし、[ファイルを追加] で参考資料をアップロードします。
- [Submit] をクリックするとチャット エージェント キャンバスが表示され、エージェントのライブ プレビューが表示されます。
- [プレビュー] タブで実際に質問し、答え方を確かめます。足りない点は左側のチャットペインで追加の指示を伝えて直します。
- [フロー] タブでメイン エージェントのノードを開くと、[知識] セクションで参考資料を足したり、[パーソナライズ] セクションで利用者に表示する開始プロンプトを追加したり出来ます。
- 定期的に動かしたい場合は [スケジュール] タブで実行の予定を設定します。
- 最後に [作成] をクリックすると、エージェントが起動して使えるようになります。
開始プロンプトはいくつでも登録できますが、画面に一度に表示されるのは最大3つで、ランダムに選ばれます。社員がどう話しかければよいか迷わないよう、代表的な質問を3つ以上登録しておくのがおすすめです。[作成] を押さずにキャンバスを閉じると、エージェントは下書きの状態で残ります。ほかの社員に使ってもらうには、後で説明する共有の手続きが別に必要となります。
※画面名は2026年10月3日時点の公式ドキュメント「チャット エージェントを作成する」の表記です。Agent Designer 名義の旧ページでは [Proceed to builder] [Add subagent] など英語の表記で説明されています。
フロービルダーとサブエージェントで複数の手順に分ける
フロービルダーでは、チャットモードで開いたキャンバスの [ビルダーに進む] を押すと、デザイナー モードに切り替わります。キャンバスには My Agent という名前のメイン エージェントが置かれ、名前・説明・手順・モデル・データとツールを順に設定していきます。[フロー] タブでメインのノードにポインタを合わせて [サブエージェントを追加] を押すと、役割を分けたサブエージェントを足せます。たとえば、問い合わせを受け付けるメインが内容を見て、経費の質問は経費担当のサブへ、勤怠の質問は勤怠担当のサブへ回すといった組み方も出来ます。公式のベストプラクティスにも、大きな作業を小さなサブタスクに分け、サブエージェントごとに役割をはっきりさせるよう書かれています。
データソース・コネクタ・知識ファイルをつなぐ
エージェントに社内の情報を使わせる方法は、アプリに接続済みのデータソースを選ぶ方法と、参考資料のファイルを直接追加する方法の2つになります。プロンプトで作る場合は [データの管理] で使うデータソースを切り替え、[ファイルを追加] で資料を足します。フロービルダーでは、メインのノードの [データソースとツールを追加] からデータソースを選び、[知識] セクションにファイルを追加する形です。接続先として、公式FAQには Google ドライブ・Gmail・Google カレンダーのほか、OneDrive・Outlook・SharePoint、ServiceNow・Jira・Confluence などが挙がっています。
最初は共有ドライブの1フォルダだけをつなぎ、個人情報を含む場所は外しておくのが安全です。また、SharePoint・OneDrive・Outlook などの Microsoft 365 のデータをデータの取り込み(インデックス登録)でつなぐ場合は、Microsoft Entra ID と Workforce Identity 連携の設定が必要と公式ドキュメントに書かれているため、管理者と相談しながら進めましょう。
部署ごとにデータの扱いがばらばらになる前に、使う環境を会社で1つにそろえる方法もあります。UPGEAR AI(アップギアAI)は、ChatGPT・Claude・Gemini・Perplexityを1つの契約で使える法人向けサービスです(人数無制限)。
動くエージェントにするコツ:目標を絞り、プレビューで直す
思いどおりに動くかどうかは、最初に渡す指示の書き方で大きく変わります。公式ドキュメントのベストプラクティスと、管理部門で使うときの工夫を合わせて押さえておきましょう。
ベストプラクティス:目標を絞って小さく始める
公式ドキュメントは、エージェントを作るときの考え方として次の5点を挙げています。
- エージェントに達成させたいことを、はっきりした目標として書く
- 中心の機能だけを持つ基本的なエージェントから始め、安定してから機能を足す
- 複数ステップの場合は、大きな作業を小さなサブタスクに分ける
- 作る段階ごとに、繰り返しテストする
- 指示は具体的かつ簡潔にし、曖昧さを避ける
この5点のうち、管理部門で特に効くのは小さく始めることになります。最初から経費・勤怠・規程のすべてに答えるエージェントを作ると、どこで間違えたのかが見えにくくなってしまいます。1つの質問の型に絞って作り、安定してから範囲を広げていきましょう。
プロンプトの書き方:背景・出力の境界・Gemini に質問させる
公式ドキュメントは、プロンプトを書くときの指針として、あいまいさをなくすだけの背景情報を伝えること、出力の境界や制限を決めること、必要に応じて Gemini に質問させることの3つを挙げています。公式の例文は英語ですが、日本の会社で使うなら、指示の中で回答の言語を日本語と決めておくと安心です。次の雛形は、この3つの指針に沿って項目を分けたものになります。
【目的】(例:社員からの経費精算の質問に、規程に沿って一次回答する) 【使う資料】(例:添付した経費精算規程だけを根拠にする) 【やること】(例:質問に答え、根拠となる条文の番号を添える) 【やってはいけないこと】(例:資料にないことを推測で答えない。個人名や金額の判断はしない) 【出力の形】(例:日本語・3文以内・最後に根拠の条文番号) 【最初に確認すること】(例:作り始める前に、足りない情報があれば私に質問してください)
4つ目の「やってはいけないこと」は、公式が出力の境界と呼んでいる部分にあたります。最後の項目は、Gemini に質問させるという公式の指針を、日本語の一文に置き換えたものです。
プレビューでのテストと指示の手直し
作成画面の [プレビュー] タブでは、起動前のエージェントに実際に質問して答え方を確かめられます。答えがずれたら、左側のチャットペインで追加の指示を伝えて調整します。テストでは、資料に答えがある質問だけでなく、資料にない質問やわざと曖昧な質問も混ぜてみてください。資料にない質問に「分かりません、担当者に確認してください」と返せるかどうかが、社内に配ってよいかの分かれ目となります。
管理部門ですぐ試せる作例3本
ここからは、社員10〜200名の会社の総務・経理でそのまま試せる作例を3本紹介します。いずれも架空の例で、プロンプトは日本語の雛形として自由に書き換えて使ってください。
作例1:経費精算の問い合わせに一次回答するエージェント
経費精算規程のファイルを知識として追加し、社員からの質問に規程の該当箇所を示して答えるエージェントです。つなぐのは規程のファイルだけで、精算データや個人の申請内容にはつなぎません。
社員から届く経費精算の質問に、一次回答するエージェントを作ってください。 根拠は知識に追加した経費精算規程だけにしてください。 回答は日本語で3文以内とし、最後に根拠となる条文の番号を書いてください。 規程に書かれていないことや、個別の申請を認めるかどうかの判断は答えず、経理担当に確認するよう案内してください。 作り始める前に、足りない情報があれば私に質問してください。
共有先は全社員で構いませんが、規程を改定したときに知識のファイルを差し替える担当を決めておきましょう。
作例2:週次の会議メモを要約して自分宛てにメールするエージェント
Google ドライブの会議メモのフォルダをデータソースに選び、[スケジュール] タブで毎週の実行を設定する使い方になります。自分宛てのメール送信のような個人的なタスクは自動で実行され、ほかの人が関わるアクションは自動実行の対象外で、一時停止した実行はチャット履歴から [承認] して完了させると公式ドキュメントに書かれています。部内の全員に配りたい場合も、まずは自分宛てで1か月ほど回し、要約の質を確かめてから広げるのがおすすめです。
毎週月曜の朝に、先週更新された会議メモを要約するエージェントを作ってください。 対象は共有ドライブの会議メモのフォルダだけです。 会議ごとに、決まったこと・担当者・期限を箇条書きで日本語にまとめてください。 メモに書かれていないことは補わず、不明な点は不明と書いてください。 まとめた内容は私宛てにメールで送ってください。
要約の対象にするフォルダには、人事や取引条件など、共有してはいけない会議のメモを置かない運用にしておきましょう。
作例3:社内規程を検索して条文の場所を示すエージェント
就業規則・旅費規程・情報セキュリティ規程などを置いた共有ドライブのフォルダをつなぎ、質問に対して該当する規程の名前と条文の位置を返すエージェントです。答えそのものより、どの規程のどこに書いてあるかを返させる設計にすると、誤った要約が社内に広まるのを抑えられます。
社員が社内規程の該当箇所を探すのを手伝うエージェントを作ってください。 つないだ共有ドライブのフォルダにある規程だけを探してください。 回答には、規程の名前、条文の番号、その条文の要点を1文で日本語で書いてください。 該当する規程が見つからないときは、見つからないと答え、総務に確認するよう案内してください。 法律の解釈や、個別の事情に当てはめた判断はしないでください。
規程のフォルダは改定のたびに古い版が残りやすいため、最新版だけを置く場所を分けてからつなぐようにしましょう。
人の確認が必要な場面と精度の限界
どの作例でも、エージェントの答えをそのまま社外に出したり、支払いの判断に使ったりするのは避けてください。生成AIは資料にない内容をもっともらしく補ってしまうことがあり、金額や日付の計算でずれが出る場合もあります。規程の改定直後や、知識のファイルが古いままの時期は、特に誤答が出やすくなります。最終判断は担当者が行い、エージェントは一次回答と下調べの係として位置づけるのが現実的でしょう。
社内に配る:共有の手順と、見落としやすい落とし穴
作ったエージェントを社員に使ってもらうには、Agent Gallery から共有の手続きを行います。手順そのものは数クリックで終わりますが、何が一緒に共有されるかを知らないまま進めると、思わぬ範囲に情報が広がってしまいます。
共有の手順(Agent Gallery)
- Gemini Enterprise app で [Agent Gallery] を開きます。
- 共有したいエージェントのアクションメニューから [共有] を選びます。
- 共有相手のメールアドレスを入力します。[リンクをコピー] でリンクを渡すことも出来ます。
- [完了] をクリックします。
下書き(draft)の状態のエージェントは共有できません。共有相手は既定では個人のメールアドレス単位で指定します。グループ単位の共有については、共有の手順ページと機能の管理ページで記載が異なるため、実際の管理画面で確かめてから運用を決めてください。既定では、作成者は管理者の承認なしに組織内の誰とでも共有でき、アプリ管理者が設定を変えると、共有時に管理者の確認と承認が必須になります。
※共有の手順と扱いは、2026年10月3日時点の公式ドキュメント「チャット エージェントを共有する」と「ウェブアプリの機能を管理する」で確認した内容です。
共有で渡るのは知識ファイルの中身、コネクタは本人の権限のまま
公式ドキュメントでは、共有したときのデータの扱いが、[知識] にアップロードしたファイルと、コネクタ経由のデータとで分けて説明されています。[知識] のファイルについては、共有された社員が元のファイルを直接開く権限を持っていなくても、その内容をエージェントに質問して表示することが出来ます。一方で、コネクタやデータストアを通したデータは利用者本人のアクセス制御リスト(ACL)と権限が保たれ、その社員自身がアクセスを許されている範囲しか取り出せない仕組みです。機密のファイルを知識に入れたエージェントを全社に共有すると、中身を全社員が質問で引き出せる状態になってしまいます。社内の資料を使わせたいときは、知識へのアップロードより、権限が保たれるコネクタ経由を基本にしましょう。
権限とセキュリティ:仕組みで守れることと、会社が決めること
公式FAQでは、Business・Standard・Plus の各エディションについて、プロンプトや出力などのデータが Google や他のお客様のモデルのトレーニングに使われることはないと案内されています。同じ公式FAQによると、すべてのエディションにプロンプトと回答を検査する Model Armor が含まれます。データの保管場所を日本(asia-northeast1)にする設定は、Standard・Plus 向けのドキュメントで許可リスト付きの一般提供とされ、Google のアカウント チームへの問い合わせが必要です。一方で、共有の範囲とつなぐデータを決めるのは会社自身で、ここを誤ると仕組みが安全でも社内で情報が広がってしまいます。点検の項目は生成AIのセキュリティ対策チェックリストにまとめているので、共有を始める前に照らし合わせてみてください。
スケジュール実行の使い方と、14日ごとの更新という落とし穴
決まった時刻にエージェントを動かすには、作成画面の [スケジュール] タブで頻度・実行時間・タイムゾーン・プロンプトを設定します。頻度は時間単位・日単位・週単位・月単位・年単位から選べます。便利な機能ですが、公式ドキュメントには運用で気をつけたい制限がいくつか書かれています。
| 気をつける点 | 公式ドキュメントの記載 | 会社での対策の例 |
|---|---|---|
| 認証の期限 | スケジュールはユーザー認証情報で動作し、認証情報は14日ごとに期限切れになる。手動で [スケジュールを更新] が必要 | 更新日を作成者の予定表に入れ、不在時の代わりの担当を決める |
| 実行の遅れ | 実行に最大5分の遅延が発生する可能性がある | 9時ちょうどに終わっていないと困る処理には使わない |
| 使える場所 | スケジュールはマルチリージョンのロケーションでのみサポート。日本(asia-northeast1)はロケーションのページで国内リージョンとして扱われている | 日本リージョンを選ぶ場合は、スケジュール実行は使えない前提で計画し、Google に確認する |
| 対象のエージェント | 実行スケジュールは、ワークフローを使用しないチャット エージェントでのみサポート | 定期実行させたい処理は、ワークフローを使わないチャット エージェントとして作る |
| ほかの人が関わる操作 | 自分宛てのメール送信など個人的なタスクは自動実行される。ほかのユーザーが関与するアクションは自動実行の対象外 | 一時停止した実行はチャット履歴で内容を確認し、[承認] して完了させる担当を決める |
認証情報が期限切れになった後は、手動で [スケジュールを更新] を行う必要があります。作成した社員が長期の休みに入ったり異動したりすると、定期実行が止まっていることに誰も気づかない、という事態にもなりかねません。定期実行のエージェントは、作成者の不在時に誰が更新するかまで決めてから動かしましょう。データの保管場所に日本リージョンを選ぶ会社は、スケジュール実行は使えない前提で計画を立て、導入前に Google 側へ確かめておくと安心です。
※2026年10月3日時点の公式ドキュメント「チャット エージェントの実行をスケジュールする」と「データ所在地」のページで確認した内容です。
もう1つ見落としやすいのが、定期実行の結果をどこに届けるかになります。自分宛てのメールのように本人だけで完結する使い方から始め、部署への配信は承認の流れを確かめてから広げていくと、止まったときの影響を小さく抑えられます。
費用の判断:1人ずつの席課金と、会社定額を並べて考える
エージェントを作れる席課金のエディションのうち、最も安いのは Business ですが、料金は1人ずつの席課金になります。2026年9月15日時点の公式ページの表示では、Business は1ユーザーあたり月3,700円でした。社員30名の全員に配ると、月111,000円、年間で1,332,000円の計算となります(年契約の年37,200円なら年間1,116,000円)。作る人が数名でも、作ったエージェントを使う社員も Gemini Enterprise app を使うため、配る範囲がそのまま席の数に響きます。Standard と Plus を含めた人数別の総額は、Gemini Enterpriseの料金|Workspaceとの違いと人数別総額で比べています。
※料金は2026年9月15日時点で Google Cloud の公式ページ(SKU 一覧)に表示されていた金額で、ページに税込・税抜の記載はありません。最新の金額と契約条件は公式ページでご確認ください。計算は1ユーザーあたりの月額×人数×12か月の単純計算です。
会社で安全に使うには:学習・ログ・配布・使い分け
会社で生成AIを安全に使うには、入力が学習に使われない設定、利用ログの管理、社員への配り方、複数のAIの使い分けの4つを、エディション選びと同じ重さで考える必要があります。Gemini Enterprise は学習に使わないことを公式に案内しており、管理者の設定で使える機能の範囲も絞れます。一方で、席課金のサービスでは配る人数を絞るほど費用は抑えられますが、配られなかった社員が個人のアカウントで別のAIを使い始めるおそれが残ってしまいます。会社が把握していないAIの利用は野良AI(シャドーAI)と呼ばれ、情報漏洩の経路になりやすいとされています。
もう1つの考え方が、利用人数を無制限にして、料金を会社全体の利用量に応じたプランで決める会社定額のサービスです。Gemini だけでなく ChatGPT や Claude も業務で使い分けたい会社なら、1人ずつの席課金を複数のサービスで重ねる場合と、会社定額のサービスの総額を並べて比べてみてください。複数のAIを1つの環境で使う形の比べ方は、マルチAIの解説でも整理しています。
Gemini Enterprise が向く会社・別の形が向く会社
| 会社の状況 | 考えやすい形 |
|---|---|
| Google ドライブや Gmail に社内の情報が集まっていて、定型業務をノーコードで自動化したい | Gemini Enterprise のエージェント作成が有力な候補 |
| 社内システムとの深い連携が必要で、開発の体制もある | Standard・Plus でコードのエージェントも取り込む形 |
| エージェント作りより、全社員が複数のAIを安全に使える環境を先に整えたい | 利用人数無制限で利用量に応じたプランの会社定額サービスと、席課金の総額を並べて比べる |
| 使うのは数名で、用途もまだ定まっていない | 急がず、少人数で試してから判断する |
Google のデータを使った定型業務の自動化が目的なら、Gemini Enterprise は十分に検討する価値があります。全社員にAIを配ることが目的であれば、エージェント機能の有無だけで決めず、配る人数と使い方から総額を出して判断してみましょう。
ChatGPT・Claude・Gemini・Perplexityを、会社で1つの環境に
UPGEAR AI(アップギアAI)は、ChatGPT・Claude・Gemini・Perplexityを1画面で使える法人向けサービスです。よく使う指示と手順をBOTにして社内限定で共有できるカスタムプラスや、利用ログ・権限・モデルのON/OFFを扱える管理者ダッシュボードを備え、基盤はAWSの日本リージョンで稼働しています。料金は月額30,000円(税抜)から。どのプランも利用人数は無制限で、料金は利用量に応じたプラン設計です(人数の目安はライト1〜5名、スタンダード6〜20名、プレミアム21〜50名)。初期費用100,000円(税抜)が別途かかります。
UPGEAR AIの詳細を見るよくある質問
Gemini Enterprise の Business エディションでもエージェントは作れますか?
Agent Designer と Workflow Builder は別の機能ですか?
作ったエージェントを共有すると、相手に元のファイルも見えてしまいますか?
スケジュール実行が止まるのはどんなときですか?
プログラミングの知識がなくても作れますか?
作ったエージェントは後から直したり削除したりできますか?
まとめ
Gemini Enterprise のエージェント作成は、Business・Standard・Plus・従量課金制で使えるノーコードの機能です。プロンプトで大枠を作り、[プレビュー] で試しながら指示を直し、必要に応じてフロービルダーでサブエージェントに分けていく流れになります。公式の表ではノーコード ツールに「プレビュー」と書かれているため、仕様の変更にも備えておきましょう。
会社でGeminiを使う場合は、Geminiの個人向けと法人向けの違いを先に確かめておくと安心です。
会社として配るときに大切なのは、作り方より前の準備と、共有の後の管理になります。管理者が機能をオンにし、つないでよいデータと共有の範囲を決めること、共有すると知識にアップロードしたファイルの中身は相手も質問で引き出せること(コネクタ経由のデータは相手自身の権限の範囲に限られます)、スケジュール実行は14日ごとの更新が必要なことを、社内のルールに落とし込んでみてください。
費用は1人ずつの席課金のため、配る人数がそのまま総額に響きます。全社員にAIを配ることが目的なら、利用人数無制限で利用量に応じたプランの会社定額サービスとも並べて判断することをおすすめします。法人のAI活用に関する他の記事はAI活用コラム一覧をご覧ください。
