AI翻訳のおすすめ。翻訳専用ツールか会社の生成AIか、標準を1つに決める判断基準

AI翻訳とは、翻訳専用のエンジンや生成AIを使って、文章やファイルを別の言語に訳す仕組みのことです。社員10〜200名の会社がおすすめを1つに決めるなら、会社で契約している生成AIを翻訳の標準にし、DeepL Proなどの翻訳専用ツールは必要な部署にだけ足す形が無理のない選び方になります。専用ツールを足すかどうかは、月に訳すファイルの数とサイズ、図やスキャンの中の文字を訳す必要があるか、無料版に入れてよい文書か、の3点で決まってきます。どれにも当てはまらない部署なら、翻訳のためだけに別の契約を増やさなくてもよいでしょう。

結論|会社の生成AIを標準にし、翻訳専用ツールは必要な部署にだけ足す

社員から「DeepLを入れてほしい」「おすすめのAI翻訳はどれですか」と聞かれたら、ツールの名前を答える前に、何をどれだけ訳すのかを聞き返すのが近道です。メールや社内資料の文面を訳すだけなら、会社で契約している生成AIの法人向けプランで足りる場面が多くなります。一方で、Word・PDFのファイルを毎月まとまった数だけ訳す部署や、図・スキャンの中の文字まで訳したい部署は、翻訳専用ツールを足したほうが手間を抑えられます。判断に使う問いは、次の3つだけで十分でしょう。

  1. 月に訳すファイルは何本で、1本のサイズはどのくらいか(文章を貼って訳すだけなら0本と数える)
  2. 図・グラフ・スキャンした紙の中にある文字まで訳す必要があるか
  3. 訳したい文書は、無料版の翻訳サービスに入れてよいものか

3つとも答えが軽い部署は、会社の生成AIを翻訳の標準にしてかまいません。ファイルの本数が多い部署や、図の中の文字を訳す部署があれば、その部署で実際に訳す人の数だけ翻訳専用ツールの有料版を足してください。3つ目の問いは、ほかの2つとは性質が違います。無料版に入れられない文書を、社員が無料版で訳している状態は、ツール選びより先に止める必要があります。

ChatGPTで訳す具体的な手順やプロンプト例、学習させない設定そのものは、親記事のChatGPT翻訳の使い方と会社での線引きにまとめました。こちらでは、翻訳専用ツールを別に契約するかどうかと、会社の標準を1つに決める手順に絞って見ていきましょう。

翻訳専用のニューラル機械翻訳(NMT)と生成AI翻訳の違い

翻訳専用ツールと生成AIは、どちらもAIで訳す点は同じでも、作られた目的が違います。ニューラル機械翻訳(NMT)は、原文と訳文の組を大量に学ばせた、訳すことに特化した仕組みのことです。Google Cloud Translationの料金ページでは、BasicとAdvancedのどちらも「NMT」と書かれていて、Google Chatの自動翻訳もヘルプでニューラル機械翻訳モデルを使うと説明されています。

生成AIは、文章を読んで書くこと全般をこなす汎用の仕組みで、翻訳はその用途の1つになります。訳しながら要約したり、読む相手に合わせて敬語の度合いを変えたりと、指示の出し方で結果を動かせるのが持ち味といえます。

翻訳専用ツールは、速さとファイルの扱いが得意

翻訳専用ツールは、原文を貼ればすぐに訳文が返り、Word・PDF・PowerPointのファイルを体裁ごと訳す機能を持つものが多くあります。Google翻訳のドキュメント翻訳は、docx・pdf・pptx・xlsxのファイルを最大10MBまで訳せると公式ヘルプに書かれています。大量の文書を決まった訳し方で処理する作業では、専用ツールのほうが扱いやすいでしょう。

生成AIは同じ原文でも毎回訳が少しずつ変わる

生成AIは、同じ原文を同じ指示で渡しても、言い回しが毎回少しずつ変わることがあります。取引先へのメールのように1通ずつ整える文章なら大きな問題にはなりませんが、マニュアルや仕様書のように訳語をそろえたい文書では、この揺れが手直しの手間になってしまいます。訳語を固定したい言葉は、用語集として毎回一緒に渡すと揺れを抑えられます(用語集の運用は後の節で扱います)。

速さは翻訳専用、文体・トーンの指示は生成AI

使い分けの目安は、速さと量を取るなら翻訳専用、相手に合わせた文体やトーンを取るなら生成AIです。例えば、海外の取引先から届いた長い英文の資料を急いで読むだけなら、翻訳専用ツールで全体を訳して要点をつかめば足ります。反対に、お詫びや値上げのお願いのように言い回しで印象が変わる文面は、読む相手と目的を伝えたうえで生成AIに訳させたほうが、手直しの回数を減らせるでしょう。どちらか一方に決めるより、文書の種類ごとにどちらを使うかを決めておくほうが、社内の迷いは少なくなります。

おすすめのAI翻訳ツールを会社目線で並べる

会社で候補に挙がりやすいのは、DeepL、Google翻訳とGoogle Cloud Translation、ChatGPT・Claude・Geminiなどの生成AI、MicrosoftのAzure Translator、国産エンジンを使った翻訳サービスの5つの系統です。ここでは精度の優劣を並べるのではなく、会社で標準にするときに効いてくる違いを中心に見ていきます。

DeepL(無料版とDeepL Pro)

DeepLには、ブラウザに文章を貼って訳す無料版と、有料のDeepL Proがあります。DeepL Proは Individual・Team・Business・Enterpriseの4つのプランがあり、プランによって1名1か月あたりに訳せる文字数とファイルの本数、1本の最大サイズが決まっています。有料版と無料版では、入力した文章の扱いも違ってきます。この違いは、選び方の軸の節で公式の原文を並べました。

Google翻訳とGoogle Cloud Translation

Google翻訳は、無料で文章・ファイル・ウェブサイトを訳せるサービスです。ファイルを訳すドキュメント翻訳はパソコンのブラウザで使う機能で、公式ヘルプには、小さい画面とモバイルでは現時点でサポートされていないと書かれています。PDFは300ページ以下という条件も付くため、長い報告書は分けて訳すことになるでしょう。これより多い文書や大きな文書を訳す場合、ヘルプはCloud Translation APIを案内しています。Cloud Translationは社内のシステムに組み込んで使う開発者向けのサービスで、使った文字数やページ数に応じた従量課金になります。

ChatGPT・Claude・Gemini(会社で契約する生成AI)

ChatGPT・Claude・Geminiは、翻訳専用ではないものの、日常の翻訳の多くをこなせる生成AIです。OpenAIはChatGPT Translateという翻訳用のページも公開していて、訳文を「より自然な表現に」「ビジネス用にする」といったボタンで整えられます。会社で使うなら、各社の法人向けプランで契約し、社員が個人のアカウントで訳さない状態を作るのが前提になります。ChatGPT・Claude・Geminiの得意分野の違いは、主要4AIの違いと使い分けで比べています。

Microsoft(Azure Translator)と国産エンジン

Microsoftには、開発者向けの翻訳サービスとしてAzure Translatorがあります。公式のデータの扱いの説明では、翻訳のために送られた顧客データはTranslatorに保持されず、ドキュメント翻訳では処理中に一時的に保存したあと完全に削除されると書かれています。これは開発者向けのサービスの説明で、無料で使えるEdgeやBingの翻訳の話ではない点に気をつけてください。

国産のエンジンでは、情報通信研究機構(NICT)の技術があります。総務省の令和6年版情報通信白書は、NICTの多言語翻訳技術が18言語で実用レベルの翻訳精度を実現し、技術移転を通じて30を超える民間サービスが展開されていると紹介しています。取引先や所属する業界から国内の技術を使った翻訳サービスを求められる場合は、この系統から選ぶ方法もあります。

対応言語数の比較は、公式の総数がそろわない

対応言語の数で比べたくなるところですが、2026年9月時点で、DeepLとGoogle翻訳の公式ページには、対応言語の総数を明記した一文が見当たりません。第三者の記事にある言語数は、数え方や時期がそろっていない可能性があります。会社で必要なのは総数ではなく、訳したい言語の組み合わせに対応しているかどうかです。訳したい言語が英語と中国語以外にもある部署は、その言語の短い文を実際に訳して確かめてみてください。

選び方の軸|精度・対応言語・料金・機能・安全性を3つの問いに絞る

AI翻訳の選び方としてよく挙がるのは、精度・対応言語・料金・機能・安全性の5つです。ただ、精度は同じ条件で比べた第三者の結果が手に入りにくく、各社の発表は自己申告の数字になります。例えばGoogleは、Geminiを使ったGoogle翻訳のテキスト翻訳について、機械翻訳のベンチマークでの成績をもとに最先端の品質だと発表していますが、これも同社自身の発表です(発表時点の提供は米国とインドで、日本での提供状況は公式に記載が見当たりません)。

対応言語は、英語と日本語の間ならどのサービスでも訳せるため、会社の標準を決める決め手にはなりにくいでしょう。そこで、会社の実務で差が出る「ファイル」「図の中の文字」「データの扱い」の3つの問いに置き換えて判断していきます。料金はこの3つの答えから必要なプランが決まり、その後で見積もる順番になります。

軸1 月に訳すファイル数とサイズ(Word・PDFのファイル翻訳と無料版の上限)

1つ目の問いは、ファイルのまま訳す文書が月に何本あるかです。DeepLの料金ページでは、1名1か月あたりに訳せるファイルの本数と、1本の最大サイズが、プランごとに次のように決まっています。

  • 無料版 ファイル1本まで・1本5MBまで
  • Individual ファイル3本まで・1本30MBまで
  • Team ファイル20本まで・1本30MBまで
  • Business ファイル100本まで・1本100MBまで

無料版は月に1本しかファイルを訳せないため、ファイル翻訳を仕事で回すなら、実質的に有料プランが前提になります。月に数本ならIndividual、1人が週に数本訳すならTeam、1人で月に20本を超えるならBusinessと、訳す本数でプランが決まる点を押さえておきましょう。

生成AIにもファイルは渡せます。ChatGPTのヘルプでは、1ファイル最大512MBまでアップロードでき、Freeのユーザーは1日3ファイルまでと案内されています。Claudeはチャット1つに20ファイルまで、PDFは1,000ページまでと公式ヘルプに書かれていて、Geminiアプリは1回のプロンプトに10個まで添付できます。ただし、生成AIは訳文を返すのが基本で、元のレイアウトを保ったまま訳したファイルを返すと公式に書かれているわけではありません。体裁ごと訳したファイルが毎月何本も要る部署は、翻訳専用ツールを検討したほうがよいでしょう。生成AIでファイルを訳すときに詰まりやすい点は、親記事のWord・Excel・PowerPoint・PDFのファイル翻訳で扱っています。

軸2 図・スキャンの中の文字を訳す必要があるか

2つ目の問いは、図やグラフ、スキャンした紙の中にある文字まで訳す必要があるかどうかです。文章として入っている文字と、画像として埋め込まれた文字は、AIから見ると別物になります。

ChatGPTのファイルアップロードのヘルプには、PDFファイルのビジュアル検索に対応するのはChatGPT Enterpriseで、その他のプランでは、ファイルからデジタルテキストを抽出して画像は破棄すると書かれています。Enterprise以外のChatGPTでは、スキャンした契約書をPDFで渡しても、画像の部分の文字は読まれない前提で考えましょう。Claudeのヘルプでは、100ページ以下のPDFは文字と図の両方を読み取り、101〜1,000ページのPDFは文字だけを処理すると説明されています。

図入りのPDFや、紙をスキャンした文書を毎月訳す部署は、この条件に合う手段を選ぶことが先になります。翻訳専用ツールでも、図やスキャンの中の文字をどこまで訳せるかはサービスとプランで異なるため、社外秘ではない実物の文書で試してから契約してください。

軸3 無料版に入れてよい文書か(入力データの学習・二次利用)

3つ目の問いは、訳したい文書を無料版に入れてよいかどうかです。DeepLの個人情報保護方針は、無料版について、ニューラルネットワークと翻訳アルゴリズムの訓練と性能向上を目的に、入力済みのテキストやアップロード済みの文書ファイルと訳文を一定期間保存すると書かれています。これに対して有料版については、送信済みのテキストや文書ファイルは永続的に保存されず、訳文の生成と送信に必要な範囲で一時的に保存されるだけで、サービスの向上を目的にお客様のテキストを使用することはないと明記されている点が違いになります。料金ページの比較表でも、データの訓練に使用されないという行にチェックが入っているのは有料プランだけでした。

ChatGPT Translateのページには、ログインしていない状態だと、チャット内容は確認され、AIモデルの改善に使用される場合があるという注記が表示されます。OpenAIは、ChatGPT BusinessやEnterprise、APIといった法人向けのサービスのデータは、既定ではモデルの学習に使わないと公式に説明しています。ClaudeとGeminiの個人向けのアカウントでは、学習に使うかどうかは利用者ごとの設定で決まり、会社から一律にそろえることは出来ません。Geminiアプリのプライバシーハブには、レビュアーに見られたくない機密情報は入力しないようにとの注意書きもあります。

無料のGoogle翻訳については、入力した文章を学習に使うかどうかを明記した一文は公式ヘルプで確認できませんでした。扱いがはっきりしないサービスには、社外秘や個人情報を入れない前提で案内しておくと安全でしょう。どの文書をどこまで入れてよいかの線引きは、親記事の機密情報・個人情報を入力するリスクと文書の線引きが参考になります。

学習の扱いが分かれるAIは、会社で確かめた1つの環境に

サービスごとに入力の扱いが違うなら、社員が使う環境を会社で1つにまとめる方法もあります。UPGEAR AI(アップギアAI)は、ChatGPT・Claude・Gemini・Perplexityを1つの契約で使える法人向けサービスです(人数無制限)。

料金は「実際に訳す人数」で見積もる

翻訳専用ツールの費用は、全社員の人数ではなく、実際にファイルを訳す人の数で掛けて見積もるのが基本です。DeepL Proの税込価格と、1名1か月あたりの上限を並べると次のようになります。

プラン料金(税込・年払いの月額換算)テキストの文字数ファイルの本数1本の最大サイズ
無料版無料50,000字1本5MB
Individual¥1,150300,000字3本30MB
Team1人あたり¥3,7501,000,000字20本30MB
Business1人あたり¥7,500制限なし(公正利用)100本100MB
Enterprise個別の料金設定制限なし個別設定100MB

※料金は2026年9月18日時点でDeepLの公式料金ページ(日本円の表示)に表示されていた金額で、税込・年払いの月額換算です。月払いの金額は年払いの表示からは分かりません。文字数・本数は1名1か月あたりの上限で、2026年9月27日にも同じ構成が表示されていました。

DeepL Proは、訳す人の数だけ掛ける

TeamとBusinessの価格は、ユーザー1人あたりの月額換算で表示されています。例えば、海外営業部で実際にファイルを訳す5人にTeamを渡すと、1か月あたり¥18,750、年払いで年¥225,000になります。これを社員50人の全員に配ると、1か月あたり¥187,500、年¥2,250,000まで膨らんでしまいます。全員に配るのではなく、訳す人を絞ってから掛けるだけで、見積もりは大きく変わってきます。

ファイルの本数の上限は1名ごとに決まっている点にも注意が必要です。5人のTeamでも、1人が月に20本を超えて訳す場合、その人はBusinessでないと足りません。翻訳が特定の2人に集中する部署なら、その2人をBusiness、ほかの3人をTeamにすると、1か月あたり¥26,250、年¥315,000という見積もりになります(プランごとに別の契約になる場合があるため、見積もりの段階でDeepLに確かめてください)。Individualの価格表示には、TeamやBusinessのようなユーザー1人あたりという文言がありません。会社で複数人に配る場合は、TeamかBusinessの料金で見積もるのが無難でしょう。

API従量課金型(Google Cloud Translation・Azure Translator)

社内のシステムや業務の仕組みに翻訳を組み込むなら、使った分だけ払うAPI(システム同士をつなぐ窓口)の従量課金型も候補になります。Google Cloud Translationの料金ページでは、BasicとAdvancedのどちらも、最初の500,000文字が毎月無料で、超えた分は100万文字あたり$20です。Word・PowerPoint・PDFのドキュメント翻訳は1ページあたり$0.08、自社向けに学習させたカスタムモデルを使う場合は1ページあたり$0.25となっています。

例えば、月に300ページのWord・PDFを訳すと$24、テキストを月に500万文字訳すと、無料分を差し引いて$90という計算になります。Azure Translatorも開発者向けの従量課金のサービスなので、料金はAzureの公式ページで確かめてください。どちらも社員がそのまま画面で使う道具ではなく、社内のシステムに組み込む開発が前提になる点は押さえておきましょう。

Google Cloud Translationの無料枠は、BasicとAdvancedの合算

Google Cloud Translationの無料枠には、見落としやすい条件が付いています。料金ページの注記では、毎月の無料分は最大$10のクレジットとして適用され、BasicとAdvancedに一括して使われ、翌月には繰り越されません。さらに、このクレジットはフォーマットされたドキュメントの翻訳には適用されないと書かれています。BasicとAdvancedでそれぞれ500,000文字ずつ無料になるわけではなく、ファイルの翻訳は最初のページから課金される前提で見積もってください。

※Google Cloud Translationの料金は2026年9月18日時点で公式の料金ページに表示されていたドル建ての金額です。円での金額は為替で変わるため、ここではドルのまま記載しています。

見積もりの結果、専用ツールの費用がかかるのは一部の部署だけ、という会社が多いのではないでしょうか。残りの大多数の社員は、メールや資料の文面を訳せれば十分で、その用途なら会社で使う生成AIで賄えます。翻訳のためだけに全員分の専用ツールを契約するより、社員全員が使う生成AIの環境を先に整えるほうが、費用も管理の手間も抑えやすくなります。

社員から「DeepLを入れてほしい」と頼まれたときに聞き返す3つの質問

社員から翻訳ツールの導入を頼まれたときは、すぐに契約するのではなく、次の3つを聞き返してから決めるのがおすすめです。頼んだ社員も、何に困っているのかを言葉にする機会になります。

質問1 何を訳していますか

最初に、訳している文書の種類を聞きます。メール、契約書、マニュアル、図入りのPDF、Webサイトの文章など、種類によって向いている手段が変わるためです。社外に出す文書か、社内で読むだけの文書かも一緒に聞いておくと、3つ目の問いの判断にそのまま使えます。

質問2 月に何件、ファイルのまま訳していますか

次に、月に訳している件数と、そのうちファイルのまま訳している本数を聞いてください。文章を貼って訳すだけなら本数は0本と数えます。ファイルのまま訳す本数が月に数本なのか、20本を超えるのかで、必要なDeepLのプランが変わります。

質問3 図やスキャンの中の文字も訳したいですか

最後に、図・グラフ・スキャンした紙の中の文字まで訳す必要があるかを聞きます。ここが「はい」なら、会社の生成AIのプランで図の中の文字を読めるかを先に確かめることになります。読めない場合は、翻訳専用ツールか、図を読めるプランを検討する流れです。

回答別の返し方

3つの答えがそろえば、返し方はおおむね次のパターンに分かれます。

  • メールや社内の文面が中心で、ファイルは月に数本以下 → 会社の生成AIで訳す方法を案内し、訳した文面の確認の仕方を伝える
  • ファイルのまま訳す本数が多く、体裁も保ちたい → その部署で実際に訳す人の数だけ、本数に合うDeepL Proのプランを見積もる
  • 図入りPDFやスキャンを訳したい → 社外秘ではない実物で、生成AIと翻訳専用ツールの両方を試してから決める
  • すでに無料版に社外秘の文書を入れている → ツールの話より先に使い方を止め、会社で用意した手段に切り替えてもらう

「DeepLを入れてほしい」という頼みの裏には、今の手段では訳しにくい文書がある、というはっきりした困りごとがあります。頼みを断る場合でも、代わりにどの手段で訳せばよいかを具体的に返せば、社員が個人のアカウントや無料版に流れるのを防ぎやすくなります。

翻訳の棚卸しシートで、会社の標準を1つに決める

部署ごとに翻訳の実態を書き出すと、会社の標準をどれにするかは自然に決まってきます。表計算ソフトに次の6つの列を作り、各部署の担当者に1行ずつ埋めてもらってみてください。

  • 部署海外営業、経理、総務、開発など、翻訳が発生している部署を並べます。
  • 文書の種類メール、契約書、マニュアル、図入りPDF、Webサイトの文章などから選びます。
  • 月の件数1か月に訳している件数の目安を書きます。繁忙期があれば、その月の件数も添えます。
  • ファイルか文章かファイルのまま訳しているか、文章を貼って訳しているかを分け、ファイルなら1本のサイズの目安も書きます。
  • 図の中の文字図・グラフ・スキャンした紙の中の文字まで訳す必要があるかを書きます。
  • 社外に出すか訳した文書を取引先などに送るか、社内で読むだけかを書きます。社外に出すものは、人が確認する工程が必要になります。

埋まったシートを見て、ファイルの列と図の中の文字の列がどちらも軽い行ばかりなら、会社の生成AIを標準にして終わりです。重い行がある部署だけを抜き出し、その部署で実際に訳す人の数とファイルの本数から、翻訳専用ツールのプランを決めていきます。社外に出す行が多い部署には、訳した文書を誰が確認するかも合わせて決めておきましょう。

棚卸しは、一度作って終わりにしないことも大切です。取引先が増えたり、海外向けの製品を出したりすると、翻訳の量と種類は変わります。半年に1回ほど同じシートを更新すれば、専用ツールの契約を増やすか減らすかを、実態に合わせて見直せます。

導入前の社内ルールとチェックリスト

標準が決まったら、翻訳に使ってよい手段、入れてはいけない文書、社外に出す前の確認の3つを、短いルールにして配ります。翻訳に限ったルールのひな形は、親記事の翻訳に限った社内ルールのひな形にあり、そのまま下敷きにできます。翻訳に限らない生成AI全体のルールは生成AIの社内ガイドラインの作り方、点検項目は生成AIのセキュリティ対策チェックリストで確かめられます。

訳の品質をそろえる使い方|下訳と仕上げ・用語集・精度のコツ

ツールを決めたあとの訳の品質は、使い方でかなり変わります。ここでは、会社で運用するときに効いてくる3つの工夫を取り上げます。

下訳と仕上げを分ける二段階の使い方

量の多い文書は、翻訳専用ツールで全体の下訳を作り、社外に出す部分だけを生成AIで整える二段階の使い方が向いています。例えば、海外の取引先に送る提案書なら、本文の下訳は専用ツールで一気に作り、冒頭のあいさつや値引きの条件のように言い回しが大事な段落だけを、読む相手と目的を伝えたうえで生成AIに直してもらう形です。訳す作業と整える作業を分けると、それぞれの道具の得意なところだけを使えます。

用語集・ユーザー辞書で訳語をそろえる

社名や製品名、社内で決まった訳語は、用語集としてまとめて管理すると訳がそろいます。翻訳専用ツールには、用語集や辞書の機能を持つものがあります。どのプランで使えるかはサービスごとに違うため、料金ページの比較表で確かめてから選んでください。Google Cloud Translationのように、自社の文書でカスタムモデルを学習させる方法もあり、学習には1時間あたり$45、1ジョブ$300を上限とする料金がかかります。

生成AIの場合は、用語集を原文と一緒に毎回渡すのが基本になります。毎回貼るのが手間なら、ChatGPTのプロジェクトやClaudeのプロジェクトのように、指示と資料をまとめて保存できる機能に用語集を入れておく方法があります。入れられるファイルの数の上限はプランや機能で異なるため、使う前に画面で確かめてください。用語集の厳密な運用が必要な部署、例えば数千語の訳語を毎回そろえる必要がある部署は、翻訳専用ツールの用語集の機能に任せたほうが確実でしょう。

精度を上げるコツ(一文一義・逆翻訳・プロンプト)

訳の精度は、原文の書き方でも変わります。1つの文に1つの内容だけを書く一文一義を心がけ、主語や期限をはっきり書くと、どのツールでも誤訳が減りやすくなります。訳文を別のツールで日本語に訳し戻す逆翻訳は、意味の取り違えを見つけるのに使えます。生成AIへの指示の書き方とプロンプト例は、親記事の精度を上げるプロンプトの書き方とプロンプト例にまとまっています。

誤訳・訳抜けを前提に、重要文書は人が確認する

どのAI翻訳を選んでも、誤訳や訳抜けはなくなりません。取引先に送る文書や契約にかかわる文書は、最後に人が原文と突き合わせる工程を必ず残してください。

ハルシネーション(数値・固有名詞の誤変換)

生成AIがもっともらしい誤りを作ることを、ハルシネーションと呼びます。翻訳では、金額の桁や日付の順番が入れ替わったり、社名や人名が別の綴りになったり、原文にない条件が足されたりする形で現れます。訳文が自然に読めるほど、誤りに気づきにくくなってしまいます。

送る前には、数字・日付・固有名詞・否定の4点だけでも、原文と1つずつ見比べましょう。翻訳専用ツールでも、否定や条件の抜けは起こりえます。確認の項目と、誰が承認するかの決め方は、親記事の誤訳・訳抜け・ハルシネーションを前提にした検収で詳しく扱っています。

外注するなら、ISO 17100で翻訳会社の工程を見る

契約書や上場企業向けの開示資料のように、社内で確認しきれない文書は、翻訳会社に外注する選択肢も残ります。その際の目安の1つが、ISO 17100(日本ではJIS Y 17100)です。これは翻訳サービスを提供する会社の工程や翻訳者の資格の要件を定めた規格で、機械翻訳のエンジンそのものの性能を示す規格ではありません。AIで下訳を作り、人が仕上げる形の外注を頼むときは、エンジンの名前より、誰がどの工程で確認するのかを見積もりの段階で聞いてみてください。

音声・リアルタイム翻訳と、スマホアプリ・ブラウザ拡張

文章やファイルの翻訳とは別に、会話を訳す音声翻訳や、スマホ・ブラウザから手軽に使う翻訳もあります。便利な反面、会社から見えにくい入口になりやすい点に注意が必要です。

音声・リアルタイム翻訳

ChatGPT Translateのページには、ライブ翻訳を始めるボタンがあります。Google Meetの音声翻訳は、2026年9月25日時点のヘルプでは、英語とフランス語・ドイツ語・ヒンディー語・イタリア語・ポルトガル語・スペイン語の間で使える機能で、日本語は含まれていません。日本語と英語の会議で使えるのは、対象のエディションで利用できる字幕の翻訳のほうになります。NICTは、個人旅行者の利用を想定した研究用アプリとしてVoiceTra(ボイストラ)を提供しています。

商談で音声翻訳を使うときは、相手に使うことを伝えてから始め、数字や条件はあとで文字でも確認し直すのが安心です。商談での進め方は、親記事の音声でのリアルタイム翻訳を商談で使う手順にまとめてあります。

スマホアプリ・ブラウザ拡張での利用

スマホのアプリやブラウザの拡張機能として配られている翻訳ツールは、社員が自分の判断で入れやすく、会社が把握しないまま業務の文章が流れる入口になりがちです。ChatGPTのファイルアップロードは、ウェブと対応するモバイルアプリの両方で使えます。GeminiもブラウザのChromeから使えるため、パソコンでもスマホでも、個人のアカウントのまま訳せてしまう状態が生まれます。一方、Google翻訳のドキュメント翻訳はモバイルでは使えないため、ファイルを訳す作業はパソコンに寄せる前提で考えましょう。

スマホやブラウザから使う場合も、会社で決めたアカウントでログインしているかを確かめるよう案内してください。会社が把握していない使い方を見つける方法は、野良AI(シャドーAI)対策で解説しています。

翻訳のために契約を増やす前に、会社の生成AI環境を1つ渡す

翻訳で困っている社員の多くは、会社で安全に使える生成AIがあれば、専用ツールがなくても仕事を進められます。翻訳専用ツールを部署ごとに足していくと、契約・請求・アカウントの発行と停止、学習させない設定の確認を、ツールの数だけ繰り返すことになってしまいます。

会社で生成AIの環境を1つ渡すときに確かめたいのは、次の4点です。

  • 学習させない設定を社員任せにせず、会社側で全員に一律で適用できるか
  • 誰がいつどのAIを使ったかの利用ログを、会社が見られるか
  • 入社や退職に合わせたアカウントの発行と停止を、会社の窓口1か所で管理できるか
  • ChatGPT・Claude・Geminiのように、複数のAIを用途で使い分けられるか

4つがそろえば、翻訳の相談が来ても、まずはこの環境で訳してみるよう案内できます。翻訳は生成AIの用途の1つとして扱い、翻訳のためだけの別ルールは作らないのが運用を軽くするコツになります。

同じ原文を複数のAIに訳させて見比べると、訳が割れた箇所から原文のあいまいさに気づけることもあります。複数のAIを1つの環境でまとめて使う考え方はマルチAIの解説、法人向けの生成AIサービスの料金は法人向け生成AI 38サービスの料金比較で比べられます。

それでも翻訳専用ツールを足すべき場面は残ります。体裁を保ったまま大量のWord・PDFを毎月訳す部署、図やスキャンの中の文字を日常的に訳す部署、数千語の用語集を厳密に運用する部署です。こうした部署には、棚卸しシートで数えた人数分だけ専用ツールを足し、それ以外の社員には会社の生成AIを標準として渡してみてください。

翻訳も、会社が確かめた1つのAI環境で

UPGEAR AI(アップギアAI)は、ChatGPT・Claude・Gemini・Perplexityを1画面で切り替えて使える法人向けAI基盤です。UPGEAR AIでは会話の途中でもモデルを切り替えられるため、同じ原文を複数のAIに訳させて見比べる作業もその場で進められます。全モデルで学習非利用を標準適用し、UPGEAR AI上の誰が・いつ・どのAIを使ったかを管理画面で一覧でき、使わせるAIも会社が選べます。よく使う翻訳の指示は、UPGEAR AIのカスタムプラスでBOTにして社内限定で共有することも出来ます。会話履歴・利用ログ・アカウントは、UPGEAR AIの国内サーバー(AWSの日本リージョン)で管理します。月額30,000円(税抜)から。どのプランも利用人数は無制限で、料金は利用量に応じたプラン設計です(人数の目安はライト1〜5名・スタンダード6〜20名・プレミアム21〜50名)。初期費用100,000円(税抜)が別途かかります。

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よくある質問

AI翻訳のおすすめはどれですか?
社員10〜200名の会社なら、会社で契約している生成AIの法人向けプランを翻訳の標準にし、必要な部署にだけDeepL Proなどの翻訳専用ツールを足す形が無理のない選び方です。専用ツールを足すかどうかは、月に訳すファイルの数とサイズ、図やスキャンの中の文字を訳す必要があるか、無料版に入れてよい文書か、の3点で判断してください。
無料のAI翻訳を仕事に使ってもよいですか?
社外秘や個人情報を含まない文章なら使える場面もありますが、会社としては勧めにくい使い方です。DeepLの個人情報保護方針では、無料版に入力したテキストや文書ファイルを、訓練と性能向上のために一定期間保存すると書かれています。ChatGPT Translateも、ログインしていない状態ではチャット内容がAIモデルの改善に使用される場合があると表示しています。業務の文書は、有料版か会社で契約した生成AIで訳すよう案内してください。
DeepLとGoogle翻訳はどちらがよいですか?
精度を同じ条件で比べた第三者の結果が手に入りにくいため、精度だけで決めるのはおすすめしません。会社で使うなら、ファイルの本数・サイズの上限と、入力データの扱いで比べるのが現実的です。DeepLは有料版のDeepL Proでテキストを訓練に使わないと明記しています。Google翻訳のドキュメント翻訳は無料で10MBまでのファイルを訳せますが、入力した文章を学習に使うかどうかを明記した一文は公式ヘルプで確認できませんでした。
DeepL Proを会社で契約すると月いくらかかりますか?
2026年9月18日時点の公式料金ページでは、Teamがユーザー1人あたり¥3,750、Businessが1人あたり¥7,500(いずれも税込・年払いの月額換算)でした。実際に訳す5人にTeamを渡すと1か月あたり¥18,750、年¥225,000になります。全社員ではなく、実際にファイルを訳す人の数で掛けて見積もってください。
ChatGPTでPDFを翻訳すると、図の中の文字も訳されますか?
OpenAIのヘルプでは、PDFファイルのビジュアル検索に対応するのはChatGPT Enterpriseで、その他のプランではファイルからデジタルテキストを抽出し、画像は破棄すると説明されています。Enterprise以外のプランでは、図やスキャンした部分の文字は訳されない前提で考えてください。
AI翻訳の対応言語数はどれが多いですか?
2026年9月時点で、DeepLとGoogle翻訳の公式ページには、対応言語の総数を明記した一文が見当たりません。第三者の記事の数は数え方や時期がそろっていない可能性があるため、訳したい言語の組み合わせを短い文で実際に試して確かめるのが確実です。
翻訳会社への外注とAI翻訳はどう使い分けますか?
日常のメールや社内資料はAI翻訳で訳し、人が数字・日付・固有名詞・否定を確認する形で十分な場面が多くあります。契約書や開示資料のように社内で確認しきれない文書は、翻訳会社への外注も検討してください。翻訳会社の工程を見る目安として、翻訳サービスの工程と翻訳者の資格の要件を定めたISO 17100(JIS Y 17100)があります。

まとめ

AI翻訳のおすすめを会社で1つに決めるなら、会社で契約した生成AIを翻訳の標準にし、DeepL Proなどの翻訳専用ツールは必要な部署にだけ足す形が無理のない選び方です。専用ツールが必要かどうかは、月に訳すファイルの数とサイズ、図やスキャンの中の文字、無料版に入れてよい文書かの3つの問いで判断できます。

DeepL Proは1名1か月あたりのファイルの本数と最大サイズがプランごとに決まっていて、費用は全社員ではなく実際に訳す人の数で掛けると現実的な金額になります。ChatGPTはEnterprise以外のプランでファイル内の画像を破棄し、DeepLの無料版は入力を訓練のために一定期間保存するといった、公式に書かれた条件を判断の材料にしてください。

まずは棚卸しシートで部署ごとの翻訳の実態を書き出すところから始めてみましょう。ChatGPTで訳す手順や社内ルールのひな形はChatGPT翻訳の使い方、ほかの記事はAI活用コラム一覧からご覧いただけます。