ChatGPT 翻訳|業務で使う手順とプロンプト、情報の線引き

ChatGPTの翻訳とは、チャット画面や翻訳専用ページに原文を入れて、目的・読者・文体を言葉で指定しながら訳文を作らせる使い方です。会社として使うのであれば、訳す速さよりも、どの文書を入れてよいかの線引き、学習に使われない状態の設定、訳文を誰が最終確認するかという3点を先に決めたほうが、結果として早く定着します。この記事では、翻訳の3つのやり方と手順、精度を上げるプロンプトの書き方、DeepL・Google翻訳との料金の横並び、ファイル翻訳で詰まる点、訳文の検収チェックリスト、翻訳に限った社内ルールのひな形までを、社員10〜200名の会社を想定してまとめました。

1. ChatGPTで翻訳する3つのやり方

ChatGPTで翻訳する方法は、大きく3つに分かれます。ふだんのチャット画面に原文を貼る方法、翻訳専用のページであるChatGPT Translateを使う方法、そしてファイルをそのまま添付する方法です。3つは操作が違うだけでなく、指示の出しやすさ、扱える分量、情報の扱いも変わります。業務で使うなら、文書の性質に応じて使い分けるのが現実的です。

まず全体像として、それぞれの向き不向きを整理しておきます。チャットに貼る方法は、背景の説明や条件を何行でも足せるため、社外に出す文書の下訳に向きます。ChatGPT Translateは、より自然な表現に、ビジネス用にする、といった訳文の調整ボタンが用意されているため、短い文の訳し分けを手早く試すのに向きます。ファイル添付は、資料をまるごと読ませて概要をつかむ用途に向きますが、後述するとおりレイアウトや図の中の文字の扱いに制約があります。

ChatGPTで翻訳する基本の手順

基本の手順は4つです。ここを省略して原文だけを貼ると、訳文の調子が毎回変わり、結局は手直しの時間が増えます。

  1. 訳す方向(日本語から英語か、英語から日本語か)と、読む人が誰かを最初の1行で伝える
  2. 文体(敬体か常体か、ビジネス文書か社内メモか)と、守ってほしい決まり(固有名詞は原語のまま、数字と単位は変えない、など)を箇条書きで渡す
  3. 原文を貼る。長い場合は章や見出しの単位で区切り、1回の指示に入れる量を抑える
  4. 出てきた訳文に対し、訳し直しではなく修正指示を出して仕上げる

この4つを毎回書くのが面倒であれば、社内で定型のプロンプトを1つ決めて共有し、原文の部分だけを差し替える運用にすると、担当者が変わっても訳文の調子がそろいます。翻訳の品質のばらつきは、訳す人の英語力よりも、渡している条件の差から生まれることが多いためです。

翻訳専用ページ ChatGPT Translateを使う

ChatGPT Translateは、翻訳だけを切り出した専用ページです。公式ページの表題には、40以上の言語に対応すると記載されています。画面には言語を検出するボタンとライブ翻訳を開始するボタンが置かれ、訳文の調整として、より自然な表現に、ビジネス用にする、5 歳児にもわかるように説明して、といったボタンが用意されています。訳文を出したあとに、押すだけで文体を振り直せるのが、通常のチャットとの違いです。

業務で使ううえで気をつけたいのは、ログインの状態です。ログインしていない状態でこのページを開くと、ページの下部に、チャット内容は確認され、AI モデルの改善に使用される場合があります、という表示が出ます。つまり、サインアウトのまま社内文書を貼ると、入力した内容が改善に使われうる状態になります。会社の文書を扱うのであれば、会社が用意したアカウントにログインし、後述する学習の設定を確認したうえで使う、という順番を守ってください。

ファイルを添付して翻訳する

ファイルの添付は、無料プランと有料プランのどちらでも利用できると公式ヘルプに記載されています。ただし、プランごとの利用上限とアカウント設定が適用されます。代表的な上限は次のとおりです。

  • 1ファイルあたり512MBまで。テキスト・文書ファイルは1ファイルあたり200万トークンまで(スプレッドシートは対象外)
  • CSV・スプレッドシートは約50MB以下、画像は1枚あたり20MBまで
  • アップロードの回数は3時間あたり80ファイルまで。無料プランは1日あたり3ファイルまで
  • 保管容量は利用者1人あたり25GB、組織1つあたり100GB
  • プロジェクトに置けるファイルは、Freeが5、Go・Plusが25、Edu・Pro・Business・Enterpriseが40

対応する形式については、テキストファイル、スプレッドシート、プレゼンテーション、ドキュメントで一般的に使われる拡張子に対応していると記載されています。アップロードしたファイルは、対応するチャットの保存期間中はアカウントに保存され、ファイルを含むチャットやアカウント、カスタムGPTを削除すると、関連するファイルは30日以内にシステムから削除されると案内されています。訳し終えた資料を放置せず、チャットごと消す運用にしておくと、あとから所在を追いやすくなります。

無料版でどこまでできるか

無料版でも、文章を貼って訳させることと、ファイルを添付することはできます。実務で効いてくるのは回数と既定の設定です。無料プランのアップロードは1日あたり3ファイルまでと記載されているため、複数の資料をまとめて処理する使い方には向きません。加えて、Free・Plus・Proの個人用ワークスペースでは、モデルの改善に会話を使う設定が既定で有効と案内されています。無料版で試すのは構いませんが、社外に出せない文書を入れる前に、必ず設定を確認してください。

※ChatGPTのファイルの上限・保存に関する記載は、2026年9月18日にOpenAIの公式ヘルプで確認したものです。ChatGPT Translateの画面の文言と表示は、同日に公式ページで確認しました。仕様はプランや時期によって変わることがあります。

2. 精度を上げるプロンプトの書き方とプロンプト例

訳文の質は、原文の難しさよりも、指示に含めた条件の量で決まります。ChatGPTは文脈を読んで訳し方を変えられる代わりに、条件を渡さないと、どの読者に向けた文章なのかを推測で埋めてしまいます。ここでは、条件の渡し方を4つに分けて説明し、そのままコピーして使えるプロンプト例を4本載せます。

目的・読者・トーンを指定する

同じ英文でも、社内共有用の要約と、取引先に送る返信では、必要な訳文が違います。目的(何のために読むのか)、読者(誰が読むのか、その人の前提知識)、トーン(敬体か常体か、丁寧さの度合い)の3つを毎回書くだけで、訳し直しの回数が減ります。とくに日本語に訳す場合は、社内向けなら要点が先に来る書き方、社外向けなら定型の挨拶を含む書き方、というように文章の型そのものが変わります。

原文を短く区切る

長い原稿を一度に投げると、途中の段落が要約されたり、箇条書きの一部が落ちたりすることがあります。見出しや章の単位で区切り、1回のやり取りで扱う量を抑えてください。区切って訳すと用語がぶれる心配がありますが、これは先に用語集を渡すことで抑えられます。表を含む文書は、表の部分だけを切り出して訳し、行と列の数を数えて突き合わせると、行が消える事故に気づけます。

指示語を避け、主語を補う

日本語から外国語に訳すときに崩れやすいのは、主語が省略された文と、これ・それ・当該といった指示語です。原文の段階で、誰が何をするのかを補い、指示語を具体的な名詞に置き換えてから渡すと、訳文の取り違えが目に見えて減ります。原文を直す時間がない場合は、指示語が指す対象を推測せず、不明な点は訳文の下に確認したい点として挙げる、と条件に書いておくと、危ない箇所が可視化されます。

用語集を先に渡す

製品名、部署名、役職、業界の専門語は、訳し方を先に決めて渡します。社内で使っている対訳の一覧を10語から30語ほど用意し、翻訳の指示の前に貼るだけで、同じ語が別の訳になる問題はかなり抑えられます。用語集は、部署ごとに散らばると意味がないため、共有フォルダに1つだけ置き、追加は担当者を決めて行う形にしてください。

例1|海外取引先からの英文メールを日本語にする

あなたは日本のビジネス文書に慣れた翻訳者です。次の英文メールを日本語に訳してください。
・読者:社内の営業担当。英語は読めない
・目的:先方の要求と期限を取り違えずに社内で共有する
・文体:敬体。過度にかしこまらない
・固有名詞と製品名は原語のまま残し、初出のみ括弧で読みを添える
・金額、数量、日付、曜日はそのまま数字で残し、単位も変えない
・訳文の下に、先方が求めている対応と期限を箇条書きで3行以内にまとめる
・訳しにくい箇所は、確認したい点として箇条書きで挙げる
原文:(ここに貼る)

例2|日本語の返信メールを英語にする

次の日本語のメールを、取引先に送る英文メールに訳してください。
・読者:海外の仕入先の担当者。日本の商習慣は知らない
・トーン:丁寧だが冗長にしない。1文を短くする
・日本語特有の曖昧な言い回し(検討します、前向きに、善処します)は、実際の意味を確認したうえで訳し、判断がつかない場合は訳さずに確認したい点として挙げる
・件名の案を3つ出す
・最後に、英文をもう一度日本語に訳し戻したものを付ける
原文:(ここに貼る)

例3|用語集を先に渡してから訳す

これから翻訳を依頼します。まず用語の対訳表を渡すので、以降の訳文ではこの訳語だけを使ってください。表にない語が出てきた場合は、勝手に訳語を決めず、訳文の下に候補を2つ挙げてください。
用語:〔日本語〕=〔英語〕/〔日本語〕=〔英語〕/(以下続く)
準備ができたら、了解とだけ返してください。次のやり取りで原文を貼ります。

例4|長い資料を区切って訳し、抜けを確認する

これから資料を見出しごとに分けて貼ります。1回につき1つの見出しだけを訳してください。
・訳す前に、原文の段落数と箇条書きの項目数を数えて書く
・訳したあとに、訳文の段落数と項目数を数えて書き、原文と一致しているかを示す
・数が合わない場合は、どこを統合または分割したかを説明する
・表がある場合は、行数と列数を原文どおりに保つ
1つ目の見出し:(ここに貼る)

3. 訳文の手直しの進め方

手直しは、訳し直しを頼むのではなく、直してほしい箇所を指定した修正指示に変えると速くなります。もう一度訳してくださいと頼むと、前の訳文で気に入っていた部分まで変わり、確認のやり直しが発生します。訳文を土台として残し、そこに差分を当てていく進め方が基本です。

訳し直しではなく修正指示を出す

修正指示は、対象・理由・方向の3点を1行にまとめると通りやすくなります。たとえば、第2段落の依頼の文が強すぎるので、相手に選択肢を残す言い方に直してください、というように、どこを、なぜ、どうしたいのかを書きます。文体をそろえたい場合は、全体を敬体に統一し、語尾の重複を避けてください、のように範囲を明示します。訳語だけを直したいときは、この語は今後この訳語に固定してください、と伝えると、以降のやり取りにも反映されます。

修正が3往復を超えても収まらない場合は、原文側に問題があることが多いです。主語が抜けている、条件が二重否定になっている、社内でしか通じない略語が入っている、といった原因が見つかります。訳文を直し続けるより、原文を書き直して一度で訳させたほうが早い、という判断をどこかで入れてください。

逆翻訳で確認する

逆翻訳は、出てきた訳文をもう一度もとの言語に訳し戻し、原文と見比べる確認のしかたです。英語が読めない担当者でも、意味が変わっていないかを日本語どうしの比較で確かめられるため、社内の確認工程に組み込みやすい方法です。手順は次の3つです。

  1. 訳文だけを新しいやり取りに貼り、もとの言語へ訳し戻させる。このとき、原文は見せない
  2. 訳し戻した文と、もとの原文を並べて、数字・固有名詞・否定形・条件(もし〜の場合)・期限の5点を突き合わせる
  3. ずれた箇所だけを、訳文側の修正指示に変えて直す

逆翻訳は万能ではありません。訳文が不自然でも、意味が通っていれば戻した文はきれいになることがあり、文体の問題は見つかりにくいです。数字や条件の取り違えを見つける道具と考え、読みやすさは人が読んで判断してください。なお、逆翻訳を別の会社のサービスで行うと、その分だけ入力先が増えます。どこに入れるかは、後述の線引きに従って決めてください。

4. 対応言語と、日本語の敬語・曖昧表現でつまずきやすい点

対応している言語の数より、日本語という言語の性質のほうが、訳文の質に効きます。ChatGPT Translateの公式ページの表題には、40以上の言語に対応すると記載されています。実務では、扱う言語が英語と中国語、あるいは東南アジアの数言語に限られる会社が多いため、数の多さよりも、自社が使う言語で日本語特有の表現をどう処理するかを決めておくほうが役に立ちます。

公的な資料でも、多言語翻訳は研究開発が続いている分野として扱われています。総務省の令和6年版情報通信白書(2024年版)には、情報通信研究機構(NICT)が開発する多言語翻訳技術について、最新のAI技術を活用することにより、訪日・在留外国人、外交への対応を想定した18言語について実用レベルの翻訳精度を実現している、と記載されています。同じ白書には、同機構が個人旅行者の利用を想定した研究用アプリとしてVoiceTraを提供しているほか、技術移転を通じて30を超える民間サービスが展開され、官公庁のほか防災・交通・医療などの幅広い分野で活用されている、との記載もあります。翻訳技術は完成品ではなく、分野ごとに使われ方が広がっている段階だと理解しておくとよいでしょう。

敬語の階層がずれる

日本語の敬語は、尊敬語・謙譲語・丁寧語の使い分けで、話し手と相手の関係を表します。外国語から日本語に訳すとき、原文には関係の情報が含まれていないため、誰から誰への文かを指定しないと、丁寧さの度合いが文ごとに揺れます。社外の取引先に送る文書なのか、社内の同僚に向けた連絡なのかを最初に伝え、訳文全体で敬語の水準をそろえるよう指示してください。逆に日本語から訳す場合は、過剰な敬語をそのまま訳すと回りくどい文になるため、丁寧さは保ちつつ1文を短くする、と条件に入れると読みやすくなります。

主語の省略と、曖昧表現

日本語は主語を省くことが多く、誰がその行為をするのかが文面から消えます。訳す前に主語を補うか、主語が不明な文は確認したい点として挙げるよう指示してください。また、検討します、前向きに、善処します、難しいです、といった表現は、日本語では断りに近い意味で使われることがあります。これを字義どおりに訳すと、相手には前向きな返事として伝わり、後で行き違いが起きます。曖昧な表現は、訳す前に社内で意味を確定させ、はっきりした言い方に直してから渡すのが安全です。

数・単位・日付の書き方

日本語の万・億は、そのまま訳すと桁がずれることがあります。金額は数字と単位を原文のまま残すよう条件に入れ、訳文が出たあとに人が桁を数えてください。日付も、月と日の順序が言語によって変わるため、年月日を数字で明記させるか、月名を英字で書かせると取り違えを避けられます。単数と複数の区別、冠詞の有無も日本語にはない要素です。これらは機械的に確認できる項目なので、後述の検収チェックリストに入れておくと漏れません。

5. DeepL・Google翻訳との違いと使い分け|料金を横並びにする

3つは競合というより、課金の単位と得意な場面が違う道具です。文脈やトーンを言葉で調整したいならChatGPT、定型の文書を大量に処理するなら翻訳に特化したサービス、自社のシステムに組み込んで自動処理するならAPIの従量課金、という切り分けが実務的です。比べるときは、金額の数字を並べる前に、何に対して課金されるのかをそろえる必要があります。

課金の単位がそろっていない

ChatGPTの有料プランとDeepL Proの有料プランは、利用者1人あたりの月額です。人数が増えれば金額が比例して増えます。一方、Google Cloud Translationは翻訳した文字数とページ数に対する従量課金で、人数では決まりません。さらにDeepLには、消費者向けのDeepL Proとは別に、開発者向けのDeepL APIがあり、こちらも文字数の従量です。同じ社名でも別の料金体系なので、見積もりのときに混同しないでください。なお、ブラウザで使う無料のGoogle翻訳には費用がかからないため、費用の比較対象になるのは開発者向けのGoogle Cloud Translationです。

表示されている金額の性質も違います。ChatGPTの料金ページには税に関する記載がないため、この記事では税を足さずにそのまま記載します。DeepLの価格表には、価格には消費税が含まれていますという注記があるため、表示額が税込です。Google Cloud Translationはドル建てで公表されているため、ドルのまま記載します。この3つを1つの列に並べて合計するような使い方はできません。

料金の横並びと、10名で使った場合の目安

サービス/プラン公表されている料金課金の単位10名で使った場合/一定量を処理した場合の月額の目安
ChatGPT Go¥1,400/月利用者1人あたり(個人向け)¥1,400×10名=月14,000円
ChatGPT Plus¥3,000/月利用者1人あたり(個人向け)¥3,000×10名=月30,000円
ChatGPT Pro月額¥16,800から利用者1人あたり(個人向け)¥16,800×10名=月168,000円(下限額で計算した場合)
ChatGPT Business 標準シート¥3,050/月(年額課金)
¥3,850/月(月額課金)
利用者1人あたり年額課金なら¥3,050×10名=月30,500円
月額課金なら¥3,850×10名=月38,500円
ChatGPT Business プレミアムシート¥15,250/月(年額課金)
¥19,250/月(月額課金)
利用者1人あたり年額課金なら¥15,250×10名=月152,500円、月額課金なら¥19,250×10名=月192,500円
ChatGPT Enterpriseカスタム価格問い合わせ公表されていない
DeepL Individual¥1,150(年払いの月額換算・税込)1契約(個人向け)個人向けのため人数分の想定なし
DeepL Team¥3,750(年払いの月額換算・税込)利用者1人あたり¥3,750×10名=月37,500円(税込表示)
DeepL Business¥7,500(年払いの月額換算・税込)利用者1人あたり¥7,500×10名=月75,000円(税込表示)
DeepL Enterprise個別の料金設定問い合わせ公表されていない
Google Cloud TranslationAdvanced・Basicとも最初の50万文字/月が無料(毎月$10分のクレジットとして適用。クレジットはBasicとAdvancedに一括して適用され、最大$10で繰り越しはありません)、超過は$20/100万文字翻訳した文字数の従量月100万文字を訳す前提なら、無料枠の50万文字を引いた50万文字分で$10
Google Cloud Translation ドキュメント翻訳NMTモデル $0.08/ページ、カスタムモデル $0.25/ページページ数の従量月100ページの前提なら $0.08×100ページ=$8

ドルの金額は円に換算していません。為替と請求の仕組みが会社ごとに違うため、社内で見積もるときは経理の換算ルールに合わせてください。なお、Google Cloud Translationでカスタムモデルを学習させる場合の料金は$45/時間で、1ジョブあたりの上限が$300と公表されています。

※ChatGPTの料金は2026年9月15日から16日にかけて、日本から表示した公式の料金ページの記載です。DeepL Proの料金と上限は2026年9月18日に日本から表示した公式の価格表の記載で、価格には消費税が含まれると注記されています。Google Cloud Translationの料金は2026年9月18日に公式の料金ページで確認した記載です。10名の目安は、各社が公表している単価に人数を掛けた計算値であり、割引や契約条件によって実際の請求額は変わります。なお、ChatGPTの無料版・Go・Plus・Proは料金ページの個人向けのタブに置かれたプランで、よくある質問では無料版・Go・Plusを個人向けに設計されたプランと案内しています。会社として契約する場合はBusiness以上(利用者2名から)が対象で、個人向けプランの10名分の金額は規模感を示す参考値です。Goの欄には広告が表示される場合があると記載されています。

使える分量の上限も見ておく

金額だけでなく、1か月に扱える量も判断材料になります。DeepLの比較表では、1名1か月あたりのテキストの文字数が、無料版50,000、Individual 300,000、Team 1,000,000、Businessは制限なし(公正利用の注記つき)と記載されています。ファイル翻訳の件数は、無料版1、Individual 3、Team 20、Business 100で、1ファイルのサイズは無料版5MBまで、Individual・Team 30MBまで、Business 100MBまでです。同じ比較表のセキュリティの欄には、データの訓練に使用されないという行があり、無料版の列にはチェックがありません。

開発者向けのDeepL APIは別の体系で、Freeが月50万文字、ファイルは10MBかつ50万文字まで、Proが月100万文字、ファイルは100MBかつ100万文字までと公表されています。社内システムやワークフローに翻訳を組み込む検討をしている場合は、こちらの数字で見積もることになります。

どう使い分けるか

  • ChatGPTが向く場面:社外に出す文書の下訳、相手との関係に応じた言い回しの調整、訳文への修正指示、原文の意図の確認、要約と翻訳をまとめて行いたい場合
  • 翻訳に特化したサービスが向く場面:定型の文書を同じ体裁で大量に処理する場合、ファイル単位でレイアウトを保ったまま訳したい場合、文字数の上限で使いすぎを抑えたい場合
  • 従量課金のAPIが向く場面:問い合わせフォームや商品説明など、人が都度操作しない自動処理。人数ではなく処理量で費用が決まるため、利用が少ない月の負担を抑えやすい

複数を併用する会社も少なくありません。その場合は契約と設定の管理先が増えるため、複数のAIを1つの環境でまとめて使う方法もあわせて検討すると、設定の確認漏れを減らせます。法人プランの料金の考え方はChatGPTの法人プランの料金で、他のサービスを含めた横並びは法人向け生成AIの比較で整理しています。

6. 業務での活用場面

翻訳の効果が出やすいのは、これまで英語ができる社員に集中していた作業を、複数人で分担できるようにする場面です。訳す速さそのものより、待ち時間がなくなることの効果が大きいためです。ここでは、社員10〜200名の会社でよく出てくる4つの場面を挙げます。

英文メールの作成と返信

海外の仕入先や顧客からのメールは、読むだけなら概要をつかめれば足ります。まず日本語に訳させ、そのうえで相手が求めている対応と期限を3行でまとめさせると、社内の共有が速くなります。返信を書くときは、日本語で言いたいことを書き、それを英文にしてから、逆翻訳で意味のずれを確認する流れが定着しやすいです。定型の断り、納期の延期依頼、見積もりの照会といったよく使う文面は、訳文を社内のテンプレート集に残して再利用してください。

海外とのオンライン会議

会議では、事前と事後で使い方が変わります。事前は、議題と想定質問を訳しておき、こちらの発言を短い英文で用意しておく使い方です。事後は、会議の文字起こしを訳し、決まったことと持ち帰りを箇条書きにまとめる使い方です。会議中のリアルタイムの翻訳は、相手への断りと録音の扱いという別の論点が出るため、次の章で分けて説明します。

海外資料・文献のリサーチ

海外の調査資料や規制の文書を読むときは、全文を訳す必要はありません。目次と見出しを訳して、読むべき箇所を絞ってから、その部分だけを訳すほうが速く、確認の手間も減ります。ただし、訳した内容をそのまま社内資料に転記すると、原典を確認しないまま数字が一人歩きします。数字と出典は必ず原文に戻って確かめ、資料には原典のURLと確認日を残してください。

社内資料の多言語化

外国籍の社員がいる会社では、就業規則の要点、安全衛生の注意、業務手順書などを複数の言語で用意する必要が出てきます。ここで効くのが用語集です。会社名、職位、部署名、設備の名称を先に固定してから訳すと、言語が増えても表記がそろいます。なお、就業規則や契約に関わる文書は、訳文の内容によって社員の理解が変わるため、後述の承認者の仕組みと、人による最終確認を必ず通してください。

7. 音声でのリアルタイム翻訳を商談で使う手順

音声での翻訳を商談に持ち込むときは、操作の手順より先に、相手への断りと録音の扱いを決めておく必要があります。相手の発言が会社の外のサービスに送られるため、黙って使うと、後で問題になりうるからです。ChatGPT Translateのページには、ライブ翻訳を開始するボタンが用意されていると記載されています。使えること自体は簡単ですが、業務で使う場合は次の順序で準備してください。

使う前に決めておくこと

  1. 誰の発言を、どのサービスに送るのかを一文で説明できるようにする
  2. 録音や文字起こしを残すかどうかを決める。残す場合は、保存場所と保存期間、消す担当者を先に決める
  3. 相手に伝える文面を用意する。たとえば、正確を期すために翻訳の補助を使わせていただきます、音声は録音しません、といった内容を、商談の冒頭で口頭とメールの両方で伝える
  4. 相手が断った場合の代替を用意する。書面でのやり取りに切り替える、通訳者を手配する、といった選択肢を先に決めておく

相手が官公庁や大手企業の場合、先方の社内規程で外部サービスへの音声の送信が制限されていることがあります。断られる前提で代替案を持っておくと、その場で商談が止まりません。

商談中の進め方

  1. 始める前に、通訳の役割を指示するプロンプトを1度だけ入れる。たとえば、これから商談の会話を通訳します、日本語が入力されたら英語に、英語が入力されたら日本語に訳し、訳文だけを出力してください、意見や補足は加えないでください、というように出力の範囲を限定する
  2. 1発言を短く区切る。長く話すと途中が要約されるため、2文から3文で区切って訳させる
  3. 金額・数量・期限が出たら、その場で復唱して相手に確認する。数字は取り違えの影響が大きい項目です
  4. 合意した内容は、その場の訳文で確定させず、商談後に書面にして、訳文を確認したうえで送る

音声の翻訳は、補助として使うものであり、通訳者の代わりとして契約の場に据えるものではありません。とくに条件交渉や契約の締結に関わる場面では、訳文の誤りが直接の損害につながります。合意はその場で確定させず、必ず書面で確認するという運用を、社内のルールに書いておいてください。

8. Word・Excel・PowerPoint・PDFのファイル翻訳

ファイルの翻訳は、資料の中身をつかむ用途では便利ですが、体裁を保ったまま訳した版を作る用途では、期待どおりにいかないことが多いです。理由は、抽出されるのがテキストだけであり、レイアウトは作り直しになるためです。ここを先に知っておくと、無駄なやり直しを避けられます。

基本の流れ

  1. 訳すファイルを添付し、訳す方向・読者・文体・用語集を、これまでと同じ形で指示する
  2. 全文をいきなり訳させず、まず目次と見出しの一覧を出させ、訳す範囲を決める
  3. 範囲を決めたら、章ごとに訳文を出させ、テキストとして受け取る
  4. 訳文を、もとのファイルのコピーに貼り付けて体裁を整える。この作業は人が行う前提で工数を見込む

実務で詰まりやすい点

  • 図の中の文字は読まれない:公式ヘルプには、ChatGPT EnterpriseはPDFファイルのビジュアル検索に対応していると記載される一方、その他のプランと文書ファイルではテキストベースの検索のみがサポートされ、ファイルからデジタルテキストを抽出し、画像は破棄します、と記載されています。図版やスクリーンショットの中に入っている文字は、この扱いでは訳されないことになります。図の中の文字は、別途テキストとして書き出して渡してください
  • スキャンしたPDFは苦手:紙をスキャンしただけのPDFは、文字が画像として入っているため、上と同じ理由で扱えないことがあります。元データのWordやPowerPointを探すほうが早い場合が多いです
  • 訳すと文字数が変わる:日本語から英語にすると行が伸び、英語から日本語にすると詰まります。スライドのテキストボックス、表のセル、ボタンのラベルからはみ出すため、レイアウトの調整が必ず発生します
  • スライドのノート欄や、隠れた要素:発表者ノート、非表示のスライド、Excelの非表示の行や列、コメントは、訳文に含まれないことがあります。訳し終えたあとに、原本のノート欄を開いて確認してください
  • ファイルの上限:1ファイル512MBまで、テキスト・文書ファイルは200万トークンまで、CSV・スプレッドシートは約50MB以下、画像は1枚20MBまでという上限があります。無料プランは1日3ファイルまでのため、複数の資料を一度に処理する運用には向きません
  • 訳した資料の置き場所:アップロードしたファイルは対応するチャットの保存期間中はアカウントに保存され、チャットを削除すると30日以内に削除されると案内されています。訳した資料の正本は社内の共有フォルダに置き、チャット側は残さない運用にすると、所在が散らばりません

結論として、ファイル翻訳は下訳とレイアウト作業に分けて考えてください。下訳の時間は短くなりますが、体裁を整える時間は残ります。ここを見込まずに納期を決めると、公開前日に作業が集中します。

9. 誤訳・訳抜け・ハルシネーションを前提にした検収

訳文は、誤りがある前提で受け取り、人が確認する工程を必ず挟んでください。生成AIは、原文にない内容をもっともらしく補うことがあり、これはハルシネーション(事実に基づかない生成)と呼ばれます。翻訳では、原文にない補足が足される、条件の一部が落ちる、否定が肯定に変わる、といった形で現れます。読みやすい訳文ほど気づきにくいのが難しいところです。

訳文の検収チェックリスト

次の項目は、英語が読めなくても確認できます。社外に出す文書は、この一覧を通してから送付してください。

  • 数字と桁金額、数量、パーセント、年号を原文と1つずつ突き合わせる。万・億の換算、小数点とカンマの位置を確認する
  • 単位と通貨円とドル、キログラムとポンド、日と営業日が入れ替わっていないか。通貨記号が原文のまま残っていないか
  • 日付と期限月と日の順序、曜日、締切の時刻とタイムゾーン。期限が原文より緩く訳されていないか
  • 固有名詞会社名、人名、製品名、部署名、役職。表記のゆれがないか、用語集どおりか
  • 否定形と条件節しない・できない・を除くが保たれているか。もし〜の場合という条件が、無条件の断定に変わっていないか
  • 訳抜け段落数、箇条書きの項目数、表の行数と列数を数えて原文と一致させる。注記と脚注が残っているか
  • 補われた内容原文にない説明や例が足されていないか。丁寧に読むと、原文に根拠のない一文が紛れていることがある
  • 社外に出せない情報下訳の過程で入れた社内メモや、伏せたはずの社名が訳文に残っていないか

誰がOKを出すのかを決める

チェックリストがあっても、最後に承認する人が決まっていないと、誰も止められません。文書の種類ごとに、確認する人と承認する人を分けて決めてください。目安は次のとおりです。

文書の種類確認する人承認する人確認の深さ
社内共有用の要約、参考資料担当者本人不要数字と固有名詞だけ
取引先へのメール、案内文担当者本人上長チェックリスト全項目
見積書、提案書、仕様書担当部署の別の担当者部門責任者チェックリスト全項目と逆翻訳
契約書、規程、公開するWebサイトの文章外部の専門家または翻訳会社役員または法務の担当原文と訳文の全文照合

翻訳を外部に委託している会社であれば、ISO 17100:2015という国際規格の存在を知っている担当者がいるかもしれません。これは翻訳サービス提供者のプロセスや資格要件などを定めた規格で、2015年4月24日に発行され、日本ではJIS Y 17100:2021として技術的に同一の内容が定められています。注意したいのは、これが翻訳サービスを提供する側のプロセスの規格であり、機械翻訳エンジン単体の性能を保証する規格ではないという点です。社内でAIを使って下訳を作る場合も、人が確認する工程をどう定めるかという考え方は参考になります。

減る工程と、残る工程を分けて見積もる

費用の話をするときは、翻訳費が丸ごと不要になるという前提で計算しないでください。減るのは下訳の工程であり、用語の統一と最終確認は残ります。工程で分けると次のようになります。

工程AIを使う前AIで下訳を作る場合
原文の整理(主語の補完、指示語の置き換え)行っていないことが多い新たに発生する。ここを省くと後工程が増える
用語集の作成と維持外注先が持っていることが多い社内で作り、置き場所と更新担当を決める必要がある
下訳外注または英語が得意な社員短くなる
用語の統一外注先の工程に含まれる社内に残る
レイアウトの調整外注に含まれる場合がある社内に残る
最終確認と承認社内社内に残る。むしろ重要度が上がる

この整理をしないまま、社内で全部できるようになったと説明すると、実際には確認の負荷が特定の社員に寄り、その人が休むと止まります。削減できるのは工程の一部だと、最初に社内で共有しておいてください。

10. 機密情報・個人情報を入力するリスクと文書の線引き

翻訳で起きる事故の多くは、訳文の誤りではなく、入力の段階で起きます。訳したい文書には、顧客名、取引条件、未公表の数字が入っていることが多く、それを社員が判断しないまま外部のサービスに貼ってしまうためです。禁止だけを伝えても、訳す必要そのものは消えないため、判断に迷わない一枚の線引きを配るほうが効きます。

区分文書の例扱い
そのまま入れてよい公開済みのプレスリリース、自社サイトに掲載中の文章、市販の製品カタログ、公開されている海外の記事や統計、公表済みの論文の要旨会社が認めた環境であれば、そのまま入れてよい。ただし公開されている記事の全文を訳して社内に配るのは著作権の論点が別にあるため、要旨の把握にとどめる
伏せれば入れてよい社内向けの手順書、社内通知、議事録の要旨、社内の研修資料社名・個人名・金額・取引先名を伏せ字に置き換えてから入れる
承認を得てから入れる取引先名の入った見積書、提案書、契約書のドラフト、仕様書上長の承認を得たうえで、学習に使われない設定を確認済みの環境でのみ扱う
入れない顧客や社員の個人情報(氏名・住所・連絡先・マイナンバー・口座情報)、人事評価や健康に関する情報、未公表の決算資料、他社から預かった資料で第三者への提供が制限されているもの、パスワードやアクセスキー入れない。翻訳が必要な場合は、社内で対応するか、守秘の契約を結んだ外部に委託する

とくに判断が分かれやすいのが、他社から預かった資料です。秘密保持契約で第三者への提供が制限されている資料は、外部のサービスに入力する行為が契約の定めに触れる可能性があります。個別の契約書の条文によって結論が変わるため、迷ったら法務または契約を担当した部署に確認する、と社内ルールに書いておいてください。個人情報の扱いについてはChatGPTに個人情報を入力するときの考え方で整理しています。

線引きを配ったあとは、実際に守られているかを確かめる手段が要ります。法人向けのプラン(例:ChatGPT Business)では、管理者がワークスペース内の会話履歴を閲覧・エクスポート・削除できるという案内がある一方、既定では管理者と所有者がメンバーの非公開チャットをすべて閲覧することはできないという記載もあり、ヘルプの記事によって説明が分かれています。導入前に自社のワークスペースで確かめてください。いずれにしても、社員が個人のアカウントで訳している場合は、会社からは見えません。導入前の点検にはAI利用のセキュリティチェックリストを使うと、確認すべき項目を漏らしにくくなります。

機密文書を訳すなら、入力先を会社が決めておく

社員が思い思いの翻訳サービスに文書を貼ると、社外秘がどこへ渡ったか会社から見えません。UPGEAR AI(アップギアAI)は、ChatGPT・Claude・Gemini・Perplexityを1つの契約で使える法人向けサービスです(人数無制限)。

11. 学習に使われない状態にする設定と、プランごとの既定の違い

ChatGPTを翻訳に使うなら、まず確認するのは学習の設定です。公式ヘルプによると、ウェブ版では、プロフィールアイコンから設定を開き、データコントロールの中にある、すべての人のためにモデルを改善する、という項目をオフにします。オフにすると、新しい会話がモデルの改善に使われなくなると案内されています。ヘルプの中には、データ管理、すべてのユーザー向けにモデルを改善する、という別の表記も見られるため、画面の文言が案内と少し違って見えることがあります。

プランごとの既定が違う

重要なのは、この設定の既定がプランによって違う点です。Free・Plus・Proの個人用ワークスペースでは、既定で有効と案内されています。つまり、個人のアカウントで何も操作していない状態は、会話が改善に使われうる状態です。一方、法人向けのBusiness・Enterprise・Edu、およびAPIについては、既定で学習に使われないと案内されています。ChatGPT Businessの説明には、従業員数2〜200名のチーム向けであること、デフォルトではビジネスデータを学習に使用しませんという記載があります。

ここから運用上の差が出ます。個人向けプランでは、設定をオフにしたかどうかを会社側で確かめる手段は案内されていません。会社としては、社員1人ずつに画面を見せてもらうか、自己申告に頼ることになります。法人向けのプランであれば、既定の状態が会社側に寄るため、社員ごとの操作を前提にしなくて済みます。翻訳のように毎日使う用途では、この差が積み上がります。設定の具体的な手順はChatGPTに学習させない方法で詳しく説明しています。なお、学習をオフにしても会話は引き続きチャット履歴に表示されると案内されています。履歴を残さないためには、チャットの削除や一時チャットの併用が要ります。

見落としやすい3つの経路

  • ログアウトのまま翻訳ページを使う:ChatGPT Translateをログインしていない状態で開くと、ページの下部に、チャット内容は確認され、AI モデルの改善に使用される場合があります、と表示されます。設定をオフにしたアカウントを持っていても、ログインしていなければアカウント側の設定は適用されません。公式ヘルプにはサインアウト時にも同名の設定をオフにできると案内がありますが、業務では会社のアカウントにログインして使う運用にしてください
  • 一時チャット:一時チャットは履歴に残らず学習にも使われないと案内されていますが、安全上の理由からコピーを最長30日間保管する場合がありますとも記載されています。また、一時チャットを保存すると通常のチャットになります
  • フィードバックのボタン:良い回答、良くない回答というボタンを押すと、その会話全体が学習に使われることがあると案内されています。訳文の出来を評価するつもりで押すと、原文を含む会話が対象になりえます

他のサービスの扱いも確認する

翻訳では複数のサービスを併用しがちなので、それぞれの扱いを押さえておいてください。DeepLの個人情報保護方針には、無料版について、ニューラルネットワークと翻訳アルゴリズムの訓練および性能向上を目的として、入力済みのテキストおよびアップロード済みの文書ファイルとそれぞれの訳文やテキストの推敲内容を一定期間保存します、と記載されています。有料版については、送信済みのテキストやアップロード済みの文書ファイルは永続的に保存されず、訳文または推敲済みテキストの生成と送信に必要な範囲内で一時的に保存されます、および、お客様がこれらのサービスを利用される間、DeepLはサービスの向上を目的としてお客様のテキストを使用することはありません、と記載されています。DeepLの価格の比較表でも、データの訓練に使用されないという行は、無料版の列にチェックがありません。

ChatGPTのファイルに関する公式ヘルプにも、APIやChatGPT Enterpriseなどのビジネス向けサービスに送信されたコンテンツを、モデルのパフォーマンス向上に使用することはありません、という記載があります。無料で使い始めた社員が、そのまま社外文書を訳している状態が一番危ういという点は、どのサービスでも共通です。

※学習の設定に関する記載は2026年9月17日、ファイルと料金に関する記載は2026年9月15日から18日にかけて、各社の公式ページおよび公式ヘルプで確認したものです。画面の文言や既定の設定は変更されることがあるため、導入時にあらためて確認してください。

12. AI翻訳が社外で気づかれやすい痕跡

AIで訳したかどうかを判定するツールの話ではなく、読んだ人が違和感を覚える痕跡の話をします。社外に出す文書でAIの下訳がそのまま残っていると、内容の正しさとは別に、手を抜いた印象を与えることがあります。送付前に見るべき箇所は、おおむね次の6つに絞れます。

  • 原文の語順が残っている:英語から日本語に訳した文で、関係代名詞の構造がそのまま長い修飾になっている。1文が3行を超えていたら、区切れるか確認する
  • 敬語の階層がそろっていない:同じ相手に向けた文書の中で、丁寧語と尊敬語が段落ごとに入れ替わっている。冒頭と末尾だけ格式が高く、本文が素っ気ないのもよくある形です
  • 同じ用語の訳し方がぶれている:同一の文書内で、御社と貴社、担当者とご担当、製品名の表記が混在している。区切って訳したときに起きやすい現象です
  • 単位や通貨がそのまま:金額にドル記号が残っている、重量がポンドのまま、日付が月日の順序のまま。数字は訳されても、単位は原文のまま残ることがあります
  • 言い回しが過度に整っている:どの段落も同じ長さで、接続の言葉が繰り返し使われている。文章としては読めるものの、担当者の声が消えて定型文のように見えます
  • 原文にない補足が入っている:親切な説明のように見えて、原文に根拠のない一文が足されている。相手が原文を持っている場合、突き合わせたときに気づかれます

対策は単純で、送付前に声に出して読むことと、自社の過去の文書と並べて比べることです。過去に送った同種の文書を1通そばに置き、語尾と敬語の水準をそろえるだけで、違和感はかなり消えます。AIで下訳を作ったこと自体を隠す必要はありませんが、社外に出す文書は自社の文章として責任を持つ、という形で社内の認識をそろえておいてください。

13. 翻訳に限った社内ルールのひな形

生成AI全般のガイドラインを作るには時間がかかりますが、翻訳に限った短いルールであれば、総務が1日で回覧できます。以下は条文の形にしたひな形です。自社の体制に合わせて、担当部署名と文書の種類を差し替えて使ってください。全般的な方針を整えるときは生成AIガイドラインの作り方もあわせて参照してください。

翻訳業務における生成AI利用取扱要領(ひな形)

第1条(目的)
本要領は、業務上の翻訳に生成AIを利用する際の取扱いを定め、情報の適切な管理と訳文の品質の確保を図ることを目的とする。

第2条(利用できる環境)
翻訳に利用できる生成AIは、会社が指定し、入力した内容がモデルの改善に利用されない設定であることを確認した環境に限る。社員が個人で契約したアカウントを業務上の翻訳に利用してはならない。

第3条(入力してよい情報の範囲)
別表に定める区分に従い、そのまま入力してよい文書、伏せ字に置き換えたうえで入力する文書、上長の承認を得て入力する文書、入力してはならない文書を区分する。判断に迷う場合は、入力前に〔総務部〕に照会する。

第4条(第三者から受領した資料)
取引先その他の第三者から受領した資料であって、秘密保持契約その他の合意により第三者への提供が制限されているものは、生成AIに入力してはならない。翻訳の必要がある場合は、〔総務部〕を通じて契約内容を確認する。

第5条(訳文の確認と承認)
生成AIが出力した訳文は下訳とみなし、そのまま社外に送付してはならない。別に定めるチェックリストにより、数値、単位、日付、固有名詞、否定形、条件、訳抜けを確認し、文書の種類に応じた承認者の承認を得たうえで送付する。

第6条(音声による翻訳)
商談、会議その他の対面またはオンラインの場で音声の翻訳を利用する場合は、事前に相手方へその旨を伝え、了解を得る。録音または文字起こしを保存する場合は、保存場所、保存期間および削除の担当者を定める。合意事項は、その場の訳文で確定させず、書面により確認する。

第7条(保存と削除)
訳文および原文の正本は〔共有フォルダの所定の場所〕に保存する。生成AIのサービス上に残した会話および添付ファイルは、業務の完了後速やかに削除する。

第8条(違反時の取扱い)
本要領に違反して情報を入力したことが判明した場合は、直ちに〔総務部〕に報告する。報告を怠った場合の取扱いは、就業規則の定めによる。

ひな形をそのまま配るのではなく、第3条の別表として、前章の線引きの表を1枚で添えてください。条文だけでは、社員は自分の手元の資料がどの区分にあたるのかを判断できません。判断の例が3つか4つ載っているだけで、照会の件数は減ります。

14. 社員数別の進め方

会社の規模によって、先に手をつけるべき順序が変わります。共通しているのは、禁止を先に出さないことです。翻訳の必要そのものは業務から消えないため、使える環境を用意しないまま禁止すると、会社から見えないところで個人のアカウントが使われる状態になります。会社が把握していないサービスの利用については野良AIの実態と対策で整理しています。

10〜50名・情シスの専任がいない会社

専任がいない会社では、仕組みを増やすほど回らなくなります。次の順序で、3つだけ決めてください。

  1. 使う環境を1つに決める:翻訳に使うサービスを1つ決め、学習に使われない設定になっていることを確認したうえで、その環境を社員に配る。個人のアカウントで訳さなくてよい状態を先に作る
  2. 線引きの表を1枚配る:前章の表をA4で1枚にし、入れてよい文書と入れてはいけない文書を示す。最初は完璧を目指さず、入れない区分だけ確実に伝える
  3. 社外に出す文書の確認者を決める:訳文をそのまま送らない、送る前に上長が見る、という2点だけをルールにする。チェックリストは、数字と固有名詞の2項目から始めてよい

この規模では、用語集の整備まで一度にやろうとすると止まります。最初は、社名と製品名の対訳だけを決めた10行の表で十分です。運用が回り始めてから、よく使う語を足していってください。

50〜200名・総務や情シスの兼任担当がいる会社

兼任の担当者がいる規模では、部署ごとに使い方が分かれ始めます。営業は取引先とのメール、開発は技術文書、総務は規程や社内通知と、扱う文書の性質が違うため、一律のルールだけでは現場が判断できません。次の4つを整えてください。

  1. 部署ごとの用語集を、置き場所を1つにまとめて作る:更新の担当者を部署ごとに決め、四半期に一度は見直す。置き場所が分かれると、同じ語が別に訳される状態に戻ります
  2. 文書の種類ごとに承認者を決める:前章の表を自社の文書名に置き換え、誰がOKを出すのかを名前ではなく役割で決める。担当者が変わっても運用が続きます
  3. 利用の状況を会社が把握できる形にする:誰がいつ使っているかを会社側で確認できる環境にしておくと、線引きが守られているかを点検できます。個人契約が混在していると、この点検ができません
  4. 翻訳の要領を文書にして回覧する:前章のひな形をもとに、総務が回覧できる形にする。生成AI全般のガイドラインより先に、翻訳に限った短い要領から始めるほうが、現場に届きます

ChatGPT Businessの説明には、従業員数2〜200名のチーム向けという記載があります。規模としては合致していても、翻訳以外の用途や、他のサービスとの併用、費用の見通しまで含めて判断することになります。判断の材料として、他のサービスとの比較と料金の考え方を先に整理しておくと、稟議の段階で止まりにくくなります。

※社員数による分け方は目安です。扱う文書の性質(個人情報や医療情報、顧客から預かった機密の量)によっては、50名未満でも50〜200名向けの手順が必要になる場合があります。

社員ごとの設定操作をなくし、会社が確かめた環境で翻訳する

UPGEAR AIは、ChatGPT・Claude・Gemini・Perplexityを1画面で切り替えて使える法人向けAI基盤です。全モデルで学習非利用を標準で適用するため、翻訳のたびに社員が設定を切り替える必要はありません。管理者ダッシュボードでは利用ログ・権限・モデルのON/OFFを管理でき、誰がいつどのAIを使ったかを利用者・日時・利用モデルの単位でたどれます。基盤はAWSの日本リージョンで稼働し、データの保管とログ管理は国内で行っています(国内で保管・管理するのはUPGEAR AI上の会話履歴・操作ログ等で、各AIへの入力データの保存先と保持期間は各提供事業者の仕様に従います)。UPGEAR AIの料金は月額30,000円(税抜)からで、ユーザーごとの課金はありません(人数の目安はライト1〜5名、スタンダード6〜20名、プレミアム21〜50名)。本文で比べた10名の場合は、人数の目安からスタンダード(月50,000円・税抜)が対象になり、初期費用100,000円(税抜)が別途かかります。51名以上は目安の記載がないため、ご相談ください。

UPGEAR AIの詳細を見る

よくある質問

ChatGPTの無料版でも翻訳できますか?
文章を貼って訳させることはできます。ファイルの添付も、無料プランと有料プランの両方で利用できると公式ヘルプに記載されていますが、無料プランは1日あたり3ファイルまでという上限があります。加えて、Free・Plus・Proの個人用ワークスペースでは、モデルの改善に会話を使う設定が既定で有効と案内されているため、社外に出せない文書を入れる前に設定を確認してください。
ChatGPTとDeepLでは、どちらが正確ですか?
どちらが正確かを一般論で決めることはできません。分野や言語の組み合わせ、原文の書き方によって結果が変わるためです。実務では、文脈やトーンを言葉で指定して調整したい文書はChatGPT、定型の文書を同じ体裁で大量に処理したい場合は翻訳に特化したサービス、という切り分けが扱いやすくなります。自社の実際の文書を数本ずつ訳して比べ、確認にかかる時間まで含めて判断してください。
翻訳した内容が学習に使われないようにするには、どうすればよいですか?
ウェブ版のChatGPTでは、プロフィールアイコンから設定を開き、データコントロールの中にある、すべての人のためにモデルを改善する、という項目をオフにします。オフにすると新しい会話が改善に使われなくなると案内されています。Free・Plus・Proの個人用ワークスペースは既定で有効、Business・Enterprise・Edu・APIは既定で学習に使われないと案内されているため、会社として使う場合はプランごとの既定の違いも確認してください。
契約書をChatGPTで翻訳してもよいですか?
社内で扱いを決めてからにしてください。取引先名の入った契約書のドラフトは、上長の承認を得たうえで、学習に使われない設定を確認済みの環境でのみ扱う、という形が現実的です。第三者から受領した資料で、秘密保持契約により第三者への提供が制限されているものは、入力しない区分に置いてください。個別の契約の条文によって結論が変わるため、迷った場合は法務または契約を担当した部署に確認する運用にしておくと安全です。
AIで訳したことは、社外の相手に気づかれますか?
判定ツールの話とは別に、読んだ人が違和感を覚える痕跡はあります。原文の語順が残って1文が長い、敬語の水準が段落ごとにそろっていない、同じ用語の訳し方がぶれている、金額や重量の単位が原文のまま残っている、といった箇所です。送付前に声に出して読み、過去に送った同種の文書と並べて語尾と敬語の水準をそろえるだけで、違和感はかなり減ります。
PDFやPowerPointをそのまま添付して訳せますか?
添付して中身を訳させることはできますが、体裁を保ったまま訳した版が出てくるわけではありません。公式ヘルプには、ChatGPT EnterpriseはPDFファイルのビジュアル検索に対応する一方、その他のプランと文書ファイルではテキストベースの検索のみがサポートされ、ファイルからデジタルテキストを抽出し、画像は破棄します、と記載されています。図の中に画像として入っている文字は訳されないため、別途テキストで渡す必要があります。訳文を受け取ったあとにレイアウトを整える工数も見込んでください。

法人のAI活用に関する他の記事はAI活用コラム一覧をご覧ください。