AIマーケティングは顧客データの線引きと管理された環境から始める

AIマーケティングとは、顧客データの分析、広告の配信調整、メルマガやLPの文章づくりといったマーケティングの仕事に、AIを取り入れて進めることです。結論から言うと、社員10〜200名の会社なら、まず生成AIチャットで文章づくりとアンケート分析から小さく始め、顧客データを入れる前に「何を入れてよいか」の線引きと、学習に使われない・利用ログが残る環境を用意するのが、失敗しにくい順番です。この記事では、できることと活用例、そのまま使えるプロンプト、個人情報・ステマ規制・著作権の注意点、兼任の担当者1〜2人で回す始め方までをまとめます。

AIマーケティングとは|定義と注目される背景

AIマーケティングは特定の製品名ではなく、マーケティングの一連の仕事のどこかにAIを組み込む取り組み全体を指す言葉です。大企業のデータ基盤の話として語られることが多いものの、実際には生成AIチャットに広告文の案を出させることも、広告管理画面の自動入札を使うことも、同じ言葉の範囲に入ります。

AIマーケティングの定義

この記事では、AIマーケティングを「顧客を知る、届ける、伝える、振り返る、というマーケティングの流れの中で、判断や作業の一部をAIに任せること」と定義して話を進めます。AIの役割は大きく2種類に分けて考えると整理しやすくなります。

  • 数字を読むAI:購買履歴やアクセスの記録から傾向を見つけ、配信先や入札額を調整するもの。広告配信の自動化や、MA(マーケティングオートメーション:見込み客へのメール配信などを自動化する仕組み)に組み込まれた予測機能がこれに当たります。
  • 言葉を作るAI:ChatGPT・Claude・Geminiのような生成AIで、メルマガの件名、LPの見出し、SNS投稿、アンケートの要約などを文章で作るもの。専門の設定がなくても、文章で指示するだけで使い始められます。

少人数の会社にとって入口になりやすいのは後者です。前者は広告アカウントやMAの中に機能として含まれていることが多く、意識しないうちに使っている場合もあります。

注目される背景(データの増加と人手不足)

注目が集まる理由は、扱うデータと作るべき制作物が増える一方で、担当する人の数が増えていないことにあります。広告の配信先はGoogle・Meta・LINE・Xなどに分かれ、ホームページ、メルマガ、SNS、口コミサイトと、顧客との接点ごとに数字と文章が必要になりました。社員数十名の会社では、総務や営業がマーケティングを兼任していることも珍しくなく、毎週の投稿や月次の広告レポートだけで手一杯になりがちです。

そこに、文章で指示すれば下書きや集計を返してくれる生成AIが広がり、専門のデータ分析者がいない会社でも、AIを仕事に組み込める条件がそろってきました。

大企業の側でも、AIを前提に仕事の分け方を見直す動きがあります。株式会社メンバーズが従業員1,000名以上の企業でマーケティング業務に関わる課長職以上303名に行ったインターネット調査(2026年7月6日〜9日、同社による自社調査、2026年9月8日公表)では、生成AI活用で重視する方針(複数回答)として「AIを活用した業務の効率化」が64.7%、「ノウハウや知識の形式知化・蓄積」が51.2%、「AIや委託を組み合わせた体制のスリム化」が37.3%、「より上流の業務への人材シフト」が32.0%、「AIリスクを防ぐガバナンスや品質管理」が31.0%でした。大企業の傾向を示す数字で、中小企業にそのまま当てはまるものではありませんが、効率化だけでなく、ノウハウの蓄積や体制の見直し、リスク管理まで方針として挙がっている点は、規模を問わず参考になります。

従来のマーケティング・MAとの違い

従来のマーケティングやMAとの違いは、ルールを人が決めるか、データや指示からAIが案を出すか、という点にあります。MAは「資料をダウンロードした人に3日後にこのメールを送る」のように、人が決めた条件どおりに動く仕組みが基本です。条件の設計も、メールの文面も、人が用意します。

AIを使うと、条件の候補や文面の案をAIが出し、人は選んで直す側に回ります。広告配信のAI機能では、誰に・どこで・いくらで出すかの調整そのものをAIに任せる形になります。そのぶん、なぜその結果になったのかが見えにくくなるため、人の役割は作業から「目的を決める」「結果を確かめる」「出してよいかを判断する」へ移ります。MAとAIは対立するものではなく、MAの中にAI機能が組み込まれていく関係と考えるとわかりやすいでしょう。

AIでできること・活用領域

マーケティングでAIに任せられる仕事は、分析・制作・配信・対応の4つの領域にまとめられます。どの領域から始めるかで、必要な準備とリスクの大きさが変わります。

分析:顧客の声と数字を読み解く

アンケートの自由記述、問い合わせの内容、レビューのコメントのように、件数が多くて人が全部読み切れない文章を、テーマごとに分類して要約する作業は、生成AIが得意とするところです。売上やアクセスの表を渡して、前月との違いや目立つ変化を文章で説明させる使い方もあります。ただし、顧客の氏名や連絡先が入ったデータをそのまま入れるかどうかは、後で説明する線引きに沿って判断します。

制作:文章と画像のたたき台を作る

メルマガの件名と本文、LPの見出し、広告文、SNS投稿、ブログ記事の構成案、商品説明文などの下書きを作ります。1つの案を磨くより、方向の違う案を10本出させて人が選ぶ使い方のほうが、生成AIの強みを生かせます。画像生成AIでバナーのラフを作ることもできますが、公開する画像では著作権の確認が欠かせません。

配信:広告やメールの出し分けを調整する

広告の入札額、配信面、配信する相手の調整を、広告プラットフォームのAI機能に任せる領域です。メールの配信時間を開封されやすい時間に寄せる機能や、閲覧履歴に応じて表示する商品を変える機能もここに入ります。人が決めるのは、目標とする成果、予算、除外したい配信先です。

対応:問い合わせの一次対応と振り分け

よくある質問への自動応答や、問い合わせ内容を読んで担当部署に振り分ける仕組みです。社内の資料を読み込ませて回答させる方法(RAG:社内文書を検索して回答の根拠にする仕組み)を使うと、自社の商品に沿った答えを返しやすくなります。顧客に直接見える領域なので、誤った回答が出たときの対応手順を先に決めてから始めます。

始める順番の目安
社内だけで完結し、公開前に人が必ず目を通せる「制作」と「分析」から始め、顧客に直接届く「対応」は後に回すと、誤りが外に出にくくなります。「配信」は広告アカウントに既にある機能を、目標と予算を決めたうえで試すところから入ります。

広告運用・コンテンツ・SNSでの活用例

活用の場面として代表的なのは、広告運用、コンテンツ制作、SNS運用の3つです。それぞれ、AIに任せる部分と人が残す部分を分けて見ていきます。

広告運用:Google広告のP-MAXとMeta Advantage+

主要な広告プラットフォームは、配信の調整をAIに任せるキャンペーンを用意しています。GoogleのヘルプはP-MAXを目標ベースのキャンペーンタイプとし、1つのキャンペーンからYouTube、ディスプレイ、検索、Discover、Gmail、マップなど、Google広告のすべての広告枠に配信できると説明しています。Metaは、Meta Advantage+をAIと自動化によってキャンペーンの成果向上と最適化を支援する製品群と説明し、セールスキャンペーンではオーディエンス、配置、予算を自動的に最適化するとしています。

※P-MAXとMeta Advantage+の説明は、2026年9月17日時点で各社の公式ページに書かれている内容です。成果の大きさは各社の製品説明であり、この記事では効果を検証していません。

こうした機能を使うとき、人の仕事は3つ残ります。1つ目は、何を成果と数えるかを正しく設定することです。問い合わせ完了が計測されていなければ、AIは誤った目標に向かって調整を続けます。2つ目は、広告文や画像といった素材を用意することで、ここは生成AIで案を増やせます。3つ目は、配信結果を定期的に見て、意図しない配信先や検索語に予算が使われていないかを確かめることです。

コンテンツ:メルマガ・LP・記事の下書き

コンテンツでは、構成案と下書きをAIに作らせ、事実と表現を人が確かめる分担が基本になります。自社の強み、実際の顧客の声、担当者の経験といった、AIが知らない材料を人が渡すほど、どこかで見たような文章から離れられます。

検索からの集客を目的にAIで記事を作る場合は、Googleの考え方も押さえておきます。Googleは、AIを含む自動化を検索結果のランキング操作を主な目的としてコンテンツ生成に使うことはスパムポリシーに違反すると説明する一方、作成方法ではなく内容を評価するという立場を示しています。詳しくはSEOのAI活用で解説しています。

SNS:投稿案づくりと反応の読み取り

SNSでは、1か月分の投稿テーマの洗い出し、投稿文の案出し、ハッシュタグ候補の整理、寄せられたコメントの分類などにAIを使えます。気をつけたいのは、AIの文章が同じ言い回しや型に寄りやすいことです。毎回、箇条書きと決まり文句で締める投稿が続くと、読み手に機械的な印象を与えます。案をそのまま出さず、担当者が自分の言葉に直してから投稿する運用にしておくと安心です。

口コミやレビューに関わる投稿では、後で説明するステマ規制に注意が必要です。AIに第三者の感想のような文章を作らせて、広告であることを示さずに出す使い方は避けてください。

活用事例|社員10〜200名の会社を想定した3つの場面

ここでは、社員10〜200名の会社でよくある業務場面を想定して、AIをどう組み込むかを具体的に描きます。いずれも実在の会社の事例ではなく、進め方を示すための想定例です。

想定例1:社員30名の通販会社で、購入後アンケートを分類する

たとえば社員30名の通販会社で、購入後アンケートの自由記述が毎月数百件たまり、読み切れずに放置されているとします。兼任のマーケ担当者は、まず回答データから氏名・メールアドレス・注文番号の列を削除し、自由記述と商品カテゴリだけを残します。それを生成AIに渡して「不満・要望・称賛」とテーマ別に分類させ、件数と代表的な声を一覧にします。

人が確認するのは、分類が妥当か、少数でも重要な声(安全に関わる指摘など)が埋もれていないか、の2点です。まとめた結果は、商品ページの改善やメルマガのテーマ選びに使います。顧客を特定できる情報を先に外しているため、入力のリスクを小さくしながら、声を仕事に生かせます。

想定例2:社員80名の部品メーカーで、展示会後のお礼メールを作る

社員80名の部品メーカーが展示会に出展し、名刺交換した相手へのお礼メールを送る場面を考えます。営業担当が面談メモに書いた関心事項を、会社名や氏名を伏せたうえで「関心:コスト削減、検討時期:来期」のような項目に整理し、生成AIに関心別の本文テンプレートを3種類作らせます。

宛名や会社名の差し込みは、生成AIではなくメール配信ツール側で行います。AIに渡す情報を減らしつつ、相手の関心に合わせた文面を短時間でそろえられる進め方です。送信前には、製品の仕様や納期などの事実が正しいかを営業担当が確認します。

想定例3:社員15名の地域サービス業で、広告文と口コミへの返信を整える

社員15名の地域密着のサービス業で、代表者がGoogle広告を自分で運用しているとします。生成AIに、サービスの特徴、対応エリア、他社と違う点を渡し、検索広告の見出し案を20本出させて、広告の文字数制限に収まるものを選びます。配信の調整は広告プラットフォームの自動入札に任せ、代表者は月に一度、使われた検索語と問い合わせ数を確認します。

口コミサイトやGoogleビジネスプロフィールに寄せられたレビューへの返信文も、AIに下書きさせることができます。ただし、返信は事業者として名乗って行うものにとどめ、AIで作った文章を顧客の口コミのように投稿することはしません。

3つの想定例に共通する進め方
①AIに渡す前に、顧客を特定できる情報を外す ②AIには案と分類を作らせ、事実と最終判断は人が持つ ③配信や差し込みは、既存の配信ツールや広告管理画面に任せる。この3つをそろえると、少人数でも事故を起こしにくくなります。

業務別のプロンプト例

プロンプト(AIへの指示文)は、目的・読者・材料・出力の形・禁止事項の5つを入れると、使える答えが返りやすくなります。ここでは、マーケティングの担当者がよく使う5つの業務について、そのまま書き換えて使える指示文を紹介します。【】の中は自社の内容に置き換えてください。

メルマガの件名案を出す

あなたはBtoCのメールマーケティング担当です。次のメルマガの件名案を10本出してください。
・読者:【当店で1回以上購入した30〜50代の顧客】
・本文の要点:【秋の新商品3点の紹介、送料無料は9月末まで】
・条件:全角30字以内。煽る表現(今すぐ、絶対、見逃すと損)は使わない。数字を入れた案を3本以上含める。
・出力:件名と、その件名で開封されそうな理由を1行ずつ。

件名は案を多めに出させて、2本を選んでA/Bテストにかけると、AIの案を実際の開封率で確かめられます。

LPの見出し案を出す

次の商品のLP(ランディングページ)のファーストビューに置く見出し案を、訴求の切り口を変えて8本作ってください。
・商品:【社員向けの健康診断予約代行サービス】
・読者:【社員50〜150名の会社の総務担当者】
・読者の悩み:【予約の取りまとめと未受診者への連絡に毎年時間を取られる】
・使ってよい事実:【対応医療機関数や導入社数など、自社で確認済みの数字だけを書く】
・条件:主見出しは全角25字以内、補足の一文は50字以内。「No.1」「業界最安」など根拠を示せない表現は使わない。

根拠を示せない表現が広告やLPに出ると、後から顧客や取引先に根拠を聞かれたときに説明できません。プロンプトの段階で禁止し、使う数字は社内で確認済みのものに限ります。

アンケート自由記述を分類する

次のアンケート自由記述(【120件】)を分類してください。個人名や会社名が含まれていた場合は、出力に書かず【伏せ字】にしてください。
・手順:1)内容から分類テーマを6個以内で作る 2)各回答を1つのテーマに振り分ける 3)テーマごとの件数と、代表的な回答を2件ずつ示す
・注意:どのテーマにも当てはまらない回答は「その他」にまとめ、無理に分類しない。回答にない内容を推測で書かない。
・出力:テーマ名/件数/代表的な回答/改善のヒント1行。
【ここに回答を貼る】

件数はAIが数え間違えることがあります。重要な判断に使う数字は、表計算ソフトで振り分け結果を集計し直して確かめます。

競合サイトを要約する

次に貼り付けるのは、競合【A社】のサービス紹介ページの本文です。社内の検討資料として、次の観点で要約してください。
・観点:対象顧客/主な訴求点/料金の示し方/申し込みまでの流れ/よくある質問で扱っている不安
・条件:ページに書かれていないことは「記載なし」と書き、推測で補わない。文章をそのまま長く引用しない。
・最後に、自社のページと比べて確認したい点を3つ挙げてください。
【ここに本文を貼る】

要約は社内の検討に使うためのものです。競合の文章や構成を自社のページにそのまま写すと著作権の問題になりうるため、自社の表現で書き直します。

広告文の案を出す

Google検索広告のレスポンシブ検索広告に使う見出し案15本と、説明文案4本を作ってください。
・商品:【法人向けの出張整備サービス】
・狙う検索語:【社用車 点検 出張】
・強み:【最短翌日訪問、見積もり無料、対応エリアは県内全域】
・条件:見出しは全角15字以内、説明文は全角45字以内。強みに書いていない内容を足さない。価格や実績の数字を新しく作らない。
・出力:見出しと説明文を別々の番号付きリストで。

※広告の文字数制限は広告プラットフォームや広告の種類ごとに決まっています。入稿前に、各広告管理画面の表示で確認してください。

どのプロンプトにも共通するのは、「書いていないことを足さない」「数字を作らない」という禁止事項を入れておくことです。生成AIは、もっともらしい実績の数字や機能を補ってしまうことがあり、それがそのまま広告に出ると問題になります。

AIマーケティングのメリット

AIをマーケティングに使う利点は、作業時間が減ること、試せる案の数が増えること、少人数でも施策を続けられることの3つにまとめられます。

下書きと集計にかかる時間を減らせる

白紙から文章を書き始める時間や、数百件の回答を読んで分類する時間を、確認と手直しの時間に置き換えられます。浮いた時間を、顧客への聞き取りや企画など、AIに任せにくい仕事に回せる点が大きな価値です。

試せる案の数が増える

人が考えると3案で止まりがちな件名や広告文も、AIなら方向の違う案を短時間でそろえられます。案が増えればA/Bテストの回数を増やせ、担当者の勘だけに頼らない判断に近づけます。

少人数でも施策を止めずに続けられる

兼任の担当者が1〜2人しかいない会社では、繁忙期に投稿やメルマガが止まることが課題になります。プロンプトと手順を社内で共有しておけば、担当者が変わっても一定の品質で続けやすくなり、個人の頭の中にあったノウハウを会社に残すことにもつながります。

ノウハウを会社に残すなら、AIも個人でなく会社の契約で

担当者の個人アカウントで作ったプロンプトや下書きは、異動や退職で会社から消えます。UPGEAR AI(アップギアAI)は、ChatGPT・Claude・Gemini・Perplexityを1つの契約で使える法人向けサービスです(人数無制限)。

デメリットと課題(データの量と質・判断の不透明さ)

AIマーケティングには、入力するデータの質に結果が左右されること、判断の理由が見えにくいこと、誤った情報を出すことがあること、運用の手間と費用がかかることの4つの課題があります。

データの量と質で結果が変わる

広告配信のAI機能は、成果の計測が正しく、十分な件数がそろっていることを前提に調整を進めます。問い合わせフォームの送信完了が計測されていない、テスト送信が成果として数えられている、といった状態では、AIは誤った手がかりをもとに配信を続けてしまいます。生成AIに分析させる場合も、元の表に重複や入力ゆれがあれば、結論もゆがみます。AIを入れる前に、計測とデータの整理を見直すことが必要です。

判断の理由が見えにくい

自動入札や配信先の自動選択では、なぜその配信先に予算が使われたのかを、人が細かくたどれないことがあります。上司や経営者に説明を求められたときに答えられない、という悩みにつながりやすい点です。対策としては、AIに任せる範囲と予算の上限を先に決めること、除外すべき配信先を設定すること、月に一度は配信先や検索語の内訳を人が見ることが挙げられます。

誤情報(ハルシネーション)への対処

生成AIは、事実と異なる内容をもっともらしく書くことがあり、これをハルシネーションと呼びます。マーケティングで特に困るのは、存在しない実績の数字、商品にない機能、実在しない調査結果などが、広告文や記事に入り込むことです。

  • プロンプトで「材料に書いていない数字や機能を足さない」と指示する
  • 数字・日付・固有名詞・法令名は、出典を人が開いて確かめる
  • 商品の仕様や料金は、社内の正式な資料と突き合わせる
  • 公開前に、作った本人以外の1人が読む

この4つを手順として決めておくと、担当者の注意力だけに頼らずに誤りを止めやすくなります。

運用の手間と費用がかかる

AIのツールは契約すれば成果が出るものではなく、プロンプトの整備、出力の確認、社内ルールの周知といった運用の手間がかかります。社員が個人でばらばらにサービスを契約すると、費用の全体像も、誰が何を入力しているかも会社から見えなくなります。法人向けプランの費用の考え方はChatGPTの法人向け料金の記事も参考にしてください。

顧客データと表示のルール|漏えい・個人情報・ステマ・著作権

マーケティングは顧客の情報を扱い、社外に向けて表示を出す仕事なので、AIを使うときは情報の入れ方と、出す表示の両方にルールが必要です。ここでは、情報漏えい、個人情報、ステマ規制、著作権の4つを、公的機関の資料に沿って整理します。

情報漏えいのリスク

情報漏えいのリスクは、入力した情報がサービス提供者のもとでAIの学習などに使われる可能性と、社員が会社の知らないアカウントで顧客情報を扱ってしまう可能性の2つに分けて考えます。前者はサービスとプランの選び方で、後者は社内のルールとアカウントの配り方で防ぎます。会社が把握していないAIの利用(いわゆる野良AI)の実態と対策は野良AIの記事で詳しく扱っています。

顧客データをAIに入れるときの線引き

顧客データは、そのまま入れてよいもの、加工すれば入れてよいもの、入れないものの3段階に分けておくと、担当者が迷わずに済みます。以下は、法人向けプランなど学習に使われない環境を使うことを前提にした、社内ルールのたたき台です。

※商談メモや名刺など、営業の場面で扱う情報の線引きは営業AIの使い方と顧客情報を守る始め方で整理しています。

そのまま入れてよい(公開済み・個人を含まない情報)
  • 自社サイトやカタログで公開している商品説明、料金、会社情報
  • 公開済みの広告文、記事、プレスリリース
  • 個人が特定できない形で集計した数字(月別の問い合わせ件数、商品カテゴリ別の売上比率など)
加工すれば入れてよい(個人や取引先を特定できる部分を外す)
  • アンケートの自由記述:氏名・メールアドレス・電話番号・注文番号の列を削除し、本文中の固有名詞も伏せる
  • 問い合わせや商談のメモ:会社名・担当者名・金額を記号に置き換え、関心事項だけを残す
  • 顧客リストの分析:属性(業種、地域、購入回数の区分など)だけの表にしてから渡す
入れない(加工しても外に出すべきでない情報)
  • 氏名・連絡先がついたままの顧客リストや会員データ
  • 取引先との契約条件、未発表の新商品や価格改定の情報
  • 病歴・信条など、特に配慮が必要な情報を含むデータ
  • 個人向けの無料アカウントなど、学習への利用や保存の扱いを会社が確認していないサービスへの入力全般

加工したデータでも、組み合わせると個人が分かる場合があります。件数の少ない地域や属性で絞り込んだ表は、特定につながらないかを一度考えてから使います。

個人情報保護委員会の注意喚起(2023年6月2日)

個人情報保護委員会は2023年(令和5年)6月2日に「生成AIサービスの利用に関する注意喚起等について」を公表し、事業者が個人情報を含むプロンプトを入力する場合の留意点を示しています。マーケティング担当者が押さえたいのは次の2点です。

  1. 利用目的の範囲内か:個人情報を含むプロンプトを入れるなら、その個人情報について特定した利用目的を達成するのに必要な範囲かを、十分に確かめるよう求めています。購入手続きのために集めたメールアドレスを、別の目的の分析に回してよいかは、プライバシーポリシーなどで示した利用目的と照らして判断します。
  2. 提供事業者が学習に使わないか:本人の同意なく個人データを含むプロンプトを入力し、その個人データが応答結果の出力以外の目的で扱われた場合、個人情報保護法に違反することとなる可能性がある、と委員会は述べています。そのため、提供事業者がその個人データを機械学習に使わないことなどを十分に確認するよう注意を促しています。

この注意喚起は、生成AIの利用を禁止する文書ではありません。個人データを扱うなら、利用目的と、入力先での扱いを先に確かめる、という順番を求めているものと受け止めるとよいでしょう。あわせて委員会は、一般の利用者に対しても、サービス提供者の利用規約やプライバシーポリシーを十分に確認するよう呼びかけています。

ステマ規制(2023年10月1日施行)とAIで作る口コミ風の表示

消費者庁は、広告であるにもかかわらず広告であることを隠す、いわゆるステルスマーケティングについて、2023年(令和5年)10月1日から景品表示法違反になると案内しています(2023年3月28日の内閣府告示第19号)。規制の対象は商品やサービスを供給する事業者(広告主)で、広告の依頼を受けたインフルエンサーなどの第三者は対象外とされています。

消費者庁の運用基準では、事業者が第三者に依頼して口コミサイトやSNSに投稿させる、ECサイトのレビューを依頼する、といった表示も事業者の表示に当たる例として挙げられています。広告であることを明らかにする方法としては、「広告」「宣伝」「プロモーション」「PR」といった表示や、商品の提供を受けて投稿していることを文章で示す方法が例示されています。

告示と運用基準の本文には、AIについての記述はありません。そのうえで、原文は表示を作る手段で区別していないため、AIで作った文章であっても、事業者が内容に関わった自社商品の表示を第三者の感想のように見せれば、同じ枠組みで考える必要があると筆者は考えます。AIに口コミ風の文章を大量に作らせてレビュー欄やSNSに投稿する使い方は、ステマ規制に違反する可能性があるため避けてください。

※消費者庁の特設ページ、告示、運用基準の内容は2026年9月17日時点で公式ページにて確認しています。

著作権・権利侵害の注意点

AIで作った画像やコピーを広告やLPに使うときは、既存の作品の権利を侵害していないかを確認する必要があります。文化庁の文化審議会著作権分科会法制度小委員会が2024年(令和6年)3月15日に取りまとめた「AIと著作権に関する考え方について」は、生成された画像などに既存の著作物との類似性(創作的表現が共通していること)と依拠性(既存の著作物をもとに創作したこと)が認められ、権利制限規定の対象外であれば、著作権侵害になると整理しています。

同じ資料では、AIの学習に既存の著作物が使われていた場合、その著作物に似た生成物ができた場合は、利用者がその著作物を知らなくても、通常は依拠性があったと推認されるとしています。つまり「AIが作ったから知らなかった」は理由になりにくい、ということです。なお、この考え方そのものに法的な拘束力はないと資料自身が明記しています。

  • 特定の作家名、キャラクター名、他社の商品名を指定して画像を作らせない
  • 他社の広告コピーや記事を貼り付けて「似せて書いて」と指示しない
  • 公開する画像は、画像検索などで既存の作品と似すぎていないかを確かめる
  • ロゴや商標に見えるものが入っていないかを確認する

国のガイドラインとGoogleの考え方

AIを事業で使う会社全体の考え方を確認したい場合は、総務省・経済産業省の「AI事業者ガイドライン」があります。最新版は2026年(令和8年)3月31日公表の第1.2版です。社内ルールを作るときの参照先の1つになります。

また、AIで作った記事を検索からの集客に使う場合、Googleは作り方ではなく内容を評価し、ランキング操作を主な目的とした自動生成はスパムポリシー違反とする立場です。AIを使ったこと自体でランキングに特別なメリットはなく、作り方ではなく内容で評価する、とGoogleは説明しています。

※個人情報保護委員会、文化庁、総務省、Googleの資料の内容は、2026年9月17日時点で各公式ページで確認しています。

ツールの種類と選び方

マーケティングで使うAIツールは、生成AIチャット、広告配信のAI機能、MA・CRMに内蔵されたAI、分析ツールの4つの類型に分けて考えると、自社に必要なものを選びやすくなります。

AIマーケティングツールの4つの類型

  • 生成AIチャット:ChatGPT、Claude、Gemini、Perplexityなど。文章の作成、要約、分類、調べものに幅広く使えます。追加の設定なしで始められる一方、入力した情報の扱いはプランによって異なります。
  • 広告配信のAI機能:Google広告のP-MAXやMeta Advantage+のように、広告プラットフォームに組み込まれた自動化。すでに広告を出している会社なら、新たな契約なしに試せる場合があります。
  • MA・CRM内蔵のAI:CRM(顧客管理システム)やMAの中で、見込み度の予測、メール文面の提案、配信時間の調整などを行う機能。顧客データがすでにそのシステムにあることが前提になります。
  • 分析ツール:アクセス解析やSNS分析のデータから、変化の要因の説明や改善案を出す機能。自社で見ている数字の置き場所と合っているかが選ぶポイントです。

選ぶときに確認したい5つの点

  1. 目的に合っているか:文章づくりなのか、広告の最適化なのか、顧客分析なのか。目的が決まらないままツールを選ぶと、使われずに終わりがちです。
  2. 入力データを学習に使わないか:利用規約やプライバシーに関するページで、法人向けプランの扱いを確認します。
  3. 管理者が利用状況を見られるか:誰が、いつ、どのAIを使ったかを会社が把握できるか。
  4. 社員への配布と停止が簡単か:入社・退職時のアカウントの発行と停止を、会社の管理のもとで行えるか。
  5. 費用の全体像がつかめるか:人数が増えたときや、利用量が増えたときの費用の決まり方を確認します。

生成AIチャットについては、ChatGPT・Claude・Gemini・Perplexityで得意な作業が異なるため、1つに決めずに使い分ける方法もあります。それぞれの特徴は生成AIの使い分けの記事にまとめています。

導入の手順(目的設定からスモールスタートまで)

AIマーケティングの導入は、目的を1つに絞り、データとルールを整え、小さな範囲で試してから広げる、という5つの手順で進めると失敗しにくくなります。

手順1:課題を1つに絞り、目的を決める

「AIで何かできないか」から始めると、試しただけで終わります。「メルマガの制作に毎回4時間かかっている」「アンケートを読まずに放置している」のように、今困っている作業を1つ選び、何がどう変われば成功かを決めます。

手順2:使うデータと入力ルールを整理する

その作業にどのデータが必要かを書き出し、先に紹介した3段階の線引きに当てはめます。個人情報が含まれる場合は、利用目的の範囲内か、入力先で学習に使われないかを確かめます。社内のAI利用ルールがまだない場合は、AIガイドラインの作り方を参考に、最低限の決まりを先に作ります。

手順3:ツールと利用環境を選ぶ

目的に合う類型を選び、学習への利用、利用ログ、アカウント管理の3点を確認します。個人のアカウントで試すのではなく、最初から会社として管理できる環境で始めると、後から移し替える手間がかかりません。

手順4:小さく試して効果を測る

1か月など期間を決めて、1つの作業だけで試します。かかった時間、手直しの量、開封率や問い合わせ数などの成果を、AIを使う前と比べます。うまくいったプロンプトは、その場で社内の共有場所に残します。

手順5:手順書にして対象を広げる

効果が確かめられたら、プロンプト、確認の手順、入力してよい情報をまとめた1枚の手順書にして、他の作業や他の担当者に広げます。広げる段階で、利用ルールの研修や、利用状況の定期的な確認を加えます。

社員10〜200名の会社での始め方(兼任1〜2人で回す)

社員10〜200名の会社では、専任のマーケティング部門を置かず、兼任の1〜2人がAIを使って回す体制を前提に考えるのが現実的です。大企業のようなデータ基盤がなくても、役割分担と週の流れを決めれば始められます。

人材・スキル不足への対応

AIに詳しい人材を採用しようとすると、時間も費用もかかります。まずは今の担当者が、AIに渡す材料をそろえる力と、出てきた案の良し悪しを判断する力を身につけることを目指します。この2つは、自社の商品と顧客を知っている人のほうが伸ばしやすい力です。

  • 社内で効果が出たプロンプトを集めた共有ページを作り、全員が同じ指示文から始められるようにする
  • 月に一度、30分程度で、うまくいった使い方と失敗例を共有する場を持つ
  • 入力してよい情報のルールと、公開前の確認手順だけは、全員が研修で一度聞く
  • 広告運用の設定や計測の見直しなど、専門性が高い部分だけを外部に相談する

兼任1〜2人での役割分担

2人で回す場合は、「作る人」と「確かめる人」を分けます。1人しかいない場合は、確認役を代表者や営業責任者に頼み、公開前に必ずもう1人が読む流れにします。

  • 担当者(作る人):AIへの指示、下書きの手直し、配信やアップロードの作業
  • 確認者(確かめる人):数字・事実・表現の確認、広告やステマ規制の観点での確認、公開の承認
  • 代表者・管理者:目的と予算の決定、AIの利用ルールとアカウントの管理

週の回し方の例

兼任の担当者が週に数時間しか割けない場合の一例です。月曜に先週の広告と問い合わせの数字をAIに要約させて気づきを3つ書き出し、火曜にその週のメルマガやSNS投稿の案をまとめて作ります。水曜に確認者が事実と表現をチェックし、木曜に配信と投稿の予約をします。月末には、アンケートや問い合わせの内容をAIで分類し、翌月に扱うテーマを決めます。

このように、AIに任せる作業を曜日ごとに固定すると、担当者が忙しい週でも施策が止まりにくくなります。

会社で安全に使うには|学習・ログ・配布・使い分け

顧客データを扱うマーケティングでAIを使うなら、入力データを学習に使わない環境で、利用ログを会社が確認でき、社員に会社としてアカウントを配る形で使うことが基本になります。ここでは、プランの違い、確認リスト、配布とルール、複数AIの使い分けの順に整理します。

個人向けプランと法人向けプランでは学習の扱いが違う

主要な生成AIの提供元は、法人向けのプランについて、入力したデータを既定ではモデルの学習に使わないと説明しています。

  • OpenAI:ChatGPT Business、ChatGPT Enterprise、ChatGPT Edu、APIについて、デフォルトではユーザーのデータを使ってモデルが学習することはないと説明しています。
  • Anthropic:商用規約で、サービスの顧客コンテンツでモデルを学習しないと定めています。料金ページでは、TeamとEnterpriseの学習への利用は既定でなし、個人向けプランはOpt-out(利用者が自分で除外を選ぶ形)と表示されています。
  • Google Workspace:生成AIのプライバシーに関するページで、顧客のコンテンツが人によってレビューされることも、許可なくドメイン外で生成AIモデルのトレーニングに使われることもないと説明しています。

一方、個人向けのプランは、この法人向けの説明の対象ではありません。学習への利用を止めるかどうかが利用者本人の設定に任される形のものもあり、社員が個人で契約したアカウントでは、会社が設定を確かめることができません。顧客データを扱う業務では、個人向けプランを業務に使わないというルールにしておくのが安全です。

※各社の法人向けプランの学習の扱いは、2026年9月17日時点で各公式ページで確認した内容です。プランの名称や条件は変わることがあるため、契約前に最新の公式ページを確認してください。

学習させない設定・ログ管理の確認リスト

AIの利用環境を選ぶとき、また既に使っている環境を見直すときに、次の項目を1つずつ確認します。

  • 入力データを学習に使わないと、契約するプランの公式ページや規約に書かれているか個人向けプランの説明と取り違えていないかも確かめます。
  • 学習に使わない扱いが、社員ごとの設定ではなく会社全体に適用されるか社員が設定を変え忘れても、学習に使われない状態が保たれるかを見ます。
  • 誰が・いつ・どのAIを使ったかを、管理者が一覧で確認できるか顧客情報の入力が疑われたときに、後から経緯をたどれるかが分かれ目になります。
  • 利用ログを書き出して保管できるか社内の監査や、取引先から管理体制を聞かれたときの説明材料になります。
  • 会話履歴やログがどの国のサーバーで保管されるか、公式に説明があるか取引先との契約で保管場所を問われる業種では、特に確認しておきます。
  • 特定のAIを使わせない、管理者だけに絞る、といった制限ができるか業務に合わないAIを止めるなど、会社として利用範囲を決められるかを見ます。
  • 入社・退職時のアカウントの発行と停止を、会社の管理のもとで行えるか退職者の個人アカウントに、顧客情報のやり取りが残る事態を防ぎます。
  • 社内で入力してよい情報の線引きを文書にし、全員に周知したかそのまま入れてよい・加工すれば可・入れない、の3段階を配っておきます。
  • 公開前に、作った本人以外が事実と表現を確認する手順があるかハルシネーション、ステマ規制、著作権の確認をこの段階で行います。

より広いセキュリティの観点での確認項目は、AIセキュリティチェックリストにまとめています。

社員への配布と利用ルール

安全な環境を用意しても、社員が使いにくければ、結局は個人のアカウントに戻ってしまいます。会社として契約したアカウントを、マーケティングの担当者だけでなく、顧客とやり取りする営業や総務にも配り、「業務でAIを使うならここで」という場所を1つに決めることが、野良AIを防ぐ近道です。

ルールは長く書くより、入力してよい情報の3段階、公開前の確認、困ったときの相談先の3点に絞って1枚にまとめると、兼任の担当者にも守られやすくなります。よく使うプロンプトを社内で共有できる仕組みがあれば、ルールに沿った指示文を最初から配ることもできます。

複数のAIを使い分ける

マーケティングの仕事は、調べもの、文章づくり、長い資料の読み込み、データの整理と幅が広く、1つの生成AIだけでは向き不向きが出ます。たとえば、出典つきで競合や市場を調べる作業、広告文の案を多く出す作業、長いアンケート結果を読み込む作業で、それぞれ別のAIを試して比べる会社もあります。

ただし、AIごとに社員が別々に契約すると、学習の扱いの確認、ログの確認、アカウントの配布と停止を、サービスの数だけ繰り返すことになります。複数のAIを1つの契約と管理画面でまとめて使う考え方は、マルチAIの記事で詳しく解説しています。

顧客データを扱うマーケティングにも、学習非利用とログ管理の環境を

UPGEAR AIは、ChatGPT・Claude・Gemini・Perplexityを1画面で切り替えて使える法人向けAI基盤です。全モデルで学習非利用を標準で適用し、社員ごとの設定操作は不要です。管理者ダッシュボードでは利用ログ・権限・モデルのON/OFFを確認・設定でき、利用状況を利用者・日時・利用モデル単位まで把握できます。会話履歴・利用ログ・アカウントは国内サーバー(AWSの日本リージョン)で管理します。よく使う指示と手順をBOTにして社内限定で共有するカスタムプラスで、メルマガや広告文のプロンプトを担当者間で共有することもできます。UPGEAR AIの料金は月額30,000円(税抜)からで、ユーザーごとの課金はありません(人数の目安はライト1〜5名、スタンダード6〜20名、プレミアム21〜50名)。別途、初期費用100,000円(税抜)がかかります。

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よくある質問

AIマーケティングは、社員数十名の会社でも始められますか?
始められます。大がかりなデータ基盤がなくても、生成AIチャットでメルマガの件名や広告文の案を出す、アンケートの自由記述を分類する、といった作業から取り組めます。すでに広告を出している場合は、広告プラットフォームに組み込まれた自動化機能を試す方法もあります。最初に作業を1つに絞り、入力してよい情報のルールを決めてから始めてください。
顧客リストを生成AIに入れて分析してもよいですか?
氏名や連絡先がついたままの顧客リストは入れないことをおすすめします。個人情報保護委員会の注意喚起は、個人データを含むプロンプトを入力する場合は利用目的の範囲内かを十分に確認し、本人の同意なく入力する場合は提供事業者が機械学習に使わないこと等を十分に確認するよう求めています。分析が目的なら、個人を特定できる列を削除し、属性だけの表にしてから、学習に使われない法人向けの環境で扱う方法が考えられます。
AIで作った口コミ風の文章を広告に使うと問題になりますか?
広告であることを隠して第三者の感想のように見せると、2023年10月1日から施行されたステルスマーケティング規制に違反する可能性があります。消費者庁の告示と運用基準にAIについての記述はありませんが、作る手段で区別していません。そのため、AIで作った文章でも同じ枠組みで考えるのが安全です。広告として出す場合は、広告やPRであることを明示してください。
AIで作った画像をバナーやLPに使っても大丈夫ですか?
使うことはできますが、既存の作品の権利を侵害していないかの確認が必要です。文化庁の文化審議会著作権分科会法制度小委員会による「AIと著作権に関する考え方について」は、既存の著作物との類似性と依拠性が認められ、権利制限規定の対象外であれば著作権侵害になると整理しています。特定の作家名やキャラクター名を指定して作らない、公開前に既存の作品と似すぎていないかを確かめる、といった運用をおすすめします。
ChatGPTなどの無料版や個人向けプランを業務に使ってもよいですか?
顧客データを扱う業務では避けたほうが安全です。各社が入力データを既定で学習に使わないと説明しているのは法人向けプランで、個人向けプランは学習への利用を止めるかどうかが本人の設定に任される形のものもあります。個人のアカウントでは、会社が設定や利用履歴を確認できず、退職時にやり取りが個人の手元に残る問題もあります。会社として契約したアカウントを配って使うことをおすすめします。
広告運用をAIに任せれば、担当者は不要になりますか?
不要にはなりません。P-MAXやMeta Advantage+のような機能は配信の調整を自動化しますが、何を成果として計測するか、予算と目標をどう置くか、広告文や画像をどう用意するか、意図しない配信先に予算が使われていないかの確認は、人が担う仕事として残ります。担当者の役割は、細かな入札の調整から、目的の設定と結果の確認へ移ると考えるとよいでしょう。

まとめ

AIマーケティングは、分析・制作・配信・対応というマーケティングの仕事の一部をAIに任せる取り組みです。広告配信の自動化や生成AIによる文章づくりが広がり、専任の部署を持たない社員10〜200名の会社でも、兼任の担当者1〜2人で取り入れられるようになりました。

始めるときは、困っている作業を1つに絞り、業務別のプロンプトで小さく試し、効果が出たら手順書にして広げます。AIが出す数字や事実は人が確かめ、公開前に作った本人以外が読む流れを作っておくことで、ハルシネーションによる誤りを防ぎやすくなります。

そして、マーケティングは顧客データと社外への表示を扱う仕事です。入力してよい情報を3段階で線引きし、個人情報保護委員会の注意喚起、ステマ規制、文化庁の著作権の考え方を押さえたうえで、学習に使われず利用ログを会社が確認できる環境で使うことが、安心して続けるための土台になります。法人のAI活用に関する他の記事はAI活用コラム一覧をご覧ください。