飲食店のAI活用。メニュー説明・求人票・口コミ返信を、会社で管理した環境で下書きする

飲食店のAI活用とは、来店予測や配膳ロボットのような設備型のAIと、ChatGPTなどの生成AIを、店舗と本部の仕事に取り入れることです。社員10〜200名の飲食企業がまず手を付けやすいのは、メニュー説明・求人票・口コミ返信といった文面を生成AIで下書きする使い方になります。ただ、店長が個人のスマホとアカウントで使い始めると、予約客の情報やレシピの原価が会社から見えない場所に入ってしまいます。本部が先に決めておきたいのは、使う環境と、入れてはいけない情報と、公開前に確認する人の3つでしょう。

飲食業の人手不足という背景と最新データ

飲食業の人手不足は、最新の調査では改善に向かいつつも、業種別では上位の水準にとどまっています。数字は調査ごとに数え方が違うため、出典と時点を分けて見ていきましょう。

非正社員の不足は業種別で2番目、ただし3年続けて改善

帝国データバンク「人手不足に対する企業の動向調査(2026年4月)」は、2026年4月16日〜30日に全国2万3,083社を対象に行われ、1万538社が回答した調査です。公表日は2026年5月19日になります。非正社員が不足していると答えた飲食店の割合は59.1%で、前年同月から6.2ポイント下がったものの、業種別では2番目に位置しています。

同じ調査で飲食店の割合をさかのぼると、2024年4月は74.8%、2025年4月は65.3%と下がってきました。報告では、飲食店と旅館・ホテルの改善の背景として「DXやスポットワークの普及による生産性向上」のほか、物価高や中国人観光客の減少で来客数が落ち着いてきたことが挙げられています。74.8%は2024年4月の値で、最新の2026年4月は59.1%となります。改善したとはいえ、非正社員の不足を感じている飲食店は今も半数を超えています。

求人倍率は職業別の表で見る

厚生労働省「一般職業紹介状況(令和8年7月分)」によると、2026年7月の有効求人倍率は全体で1.18倍(季節調整値)でした。同じ公表資料の参考統計表では、飲食物調理の仕事が2.18倍、接客・給仕の仕事が2.30倍(いずれも常用・パート含む)となっています。前年同月と比べると、それぞれ0.20ポイント、0.17ポイント下がりました。

※全体の1.18倍は季節調整値、職業別の2.18倍・2.30倍は参考統計表6(全国・常用(パート含む))の値です。表6の職業計は1.05倍で全体の値と一致しないため、職業別の数字を全体の1.18倍と割り算して比べることは出来ません。数値は2026年9月27日に厚生労働省の公表資料で確認しました。

人が集まりにくい状況は続いているため、文面づくりのような事務の時間をAIで短くする意味は十分にあるでしょう。

訪日客への多言語対応も現場の仕事に

日本政府観光局(JNTO)によると、2025年の訪日外客数は4,268万3,301人(確定値)で、前年から15.8%増えました。一方で、2026年1〜8月の累計は2,762万6,300人で、7月と8月の推計値を含む数字ながら前年同期を2.7%下回りました。増え続けているとは言えない状況ですが、多言語のメニューや案内を求められる場面は、立地によっては日常になっています。

※帝国データバンク・厚生労働省・日本政府観光局(JNTO)の数値は、2026年9月27日に各機関の公式ページと公表資料で確認したものです。JNTOの2026年6月の値は暫定値、7月・8月の値は推計値です。

飲食店のAIは2種類|設備型のAIと文面をつくる生成AI

飲食店のAIは、店の設備や業務システムに組み込まれて動く設備型のAIと、人が文章を頼んで下書きを受け取る生成AIの2つに分けて考えると整理しやすくなります。設備型は機器やシステムの入れ替えを伴うことが多く、生成AIは今日からでも試すことが出来ます。

お店の悩みから逆引きする|人手不足・食品ロス・集客・研修

どちらのAIから手を付けるかは、技術の名前より、いま店で困っていることから選ぶと迷いにくくなります。

  • ピーク時に人手が回らない悩みには、配膳ロボットやセルフオーダーのような設備型のAIと、求人票を早く出すための生成AIが候補になります
  • 食品ロスや仕込みの過不足には、需要予測・自動発注の設備型が向いています
  • 電話の取りこぼしや予約対応の手間には、ネット予約の見直しと電話AIを順に検討します
  • 集客やリピーターづくりには、口コミの分析・返信やSNS投稿の文面づくりに生成AIが使えます
  • 新人研修や外国人スタッフの教育には、マニュアルの言い換えと翻訳に生成AIが向いています
  • メニューの見直しには、POSの売上データを生成AIに読ませる分析から始められます

悩みが2つ以上あるときは、機器の入れ替えがいらない生成AIの文面づくりを先に試し、効果を測ってから設備型を検討する順番が無理のない進め方になるでしょう。

需要予測・在庫管理・自動発注で食品ロスを減らす

需要予測のAIは、過去の売上や曜日、天候、近くの催しなどの情報から、来店数や注文数の見込みを出す仕組みになります。見込みに合わせて仕込み量や発注量を決めれば、作りすぎや仕入れすぎによる食品ロスを減らすことにつながります。在庫管理や自動発注の機能と組み合わせた製品もあり、POSレジや発注システムとつながるかどうかが選ぶときの分かれ目です。

ただし、予測はあくまで過去のデータの延長で、新メニューの投入や急な天候の変化では外れることもあります。最終的な仕込み量は、予測を見たうえで店長が決める運用にしておきましょう。

予約・問い合わせ・電話のAI対応

予約や問い合わせの対応には、WebやLINEで質問に答えるチャットボットと、電話の予約受付を自動で行うAI電話があります。営業時間や駐車場の有無のように答えが決まっている質問ほど、機械に任せやすい分野になります。一方で、アレルギーの相談や大人数の貸切のように判断を伴う問い合わせは、人につなぐ経路を残しておく必要があるでしょう。

電話の予約をAIが受ける仕組みと、お客様が自分で空席を選ぶ通常のネット予約は、別のものとして考えると整理しやすくなります。電話AIの例として、IVRyは2024年10月8日に、リクルートの予約管理・台帳アプリ「レストランボード」と連携したAI電話予約サービスの提供を始めたと発表しました。発表によると、AIが予約日時や人数を聞き取ってレストランボードの空席枠を確かめ、予約できる場合は名前を聞いて予約を完了させます。希望の日時が埋まっているときは、前後の時間や翌日の空いている日時を提案するとされています。

営業時間外の電話を取りこぼしている店にとっては、24時間受け付けられる点が通常のネット予約との大きな違いになります。判断の順番としては、まずネット予約と予約台帳の連携で電話の件数がどこまで減るかを確かめ、それでも時間外の電話を取りこぼしているなら電話AIを検討してみてください。AIが受けた予約・変更・キャンセルは、翌朝に誰が台帳で確かめるかを決めておくと安心です。アレルギーの相談や貸切のように判断が要る電話は、これまでどおり人につなぎましょう。

配膳ロボット・調理ロボット

配膳ロボットは、料理を席まで運ぶ仕事や、下げた食器を戻す仕事を受け持つ機械です。調理ロボットは、決まった手順の調理や盛り付けの一部を自動で行います。通路の幅や段差、席の配置によって使える店と使いにくい店が分かれるため、導入前に実際の店内で試せるかどうかを確かめてください。

セルフオーダー・モバイルオーダー

セルフオーダーは客席のタブレットで、モバイルオーダーはお客様自身のスマートフォンで注文を受ける仕組みになります。注文の聞き取りや伝票の手書きが減り、多言語の画面を用意すれば外国語での注文にも応じやすくなってきます。おすすめ商品を表示する機能にAIを使う製品もありますが、画面に出る文言が店の表示であることに変わりはありません。

売上・POSデータの分析

POSレジに貯まった売上データをAIで分析すると、時間帯別の売れ筋や、一緒に注文されやすい組み合わせが見えてきます。生成AIに集計表を読ませ、気づいた点を文章で書き出してもらう使い方も出来ます。集計そのものはPOSやExcelで済ませ、AIには集計後の表だけを渡すのが安心です。集計表に会員の氏名や電話番号が含まれる場合は、その列を消してから読ませるようにしましょう。

分析の結果は、売れ筋の順位だけでなく、材料費・調理にかかる時間・価格とあわせて読むと使い道が広がります。注文が多くても仕込みに手間のかかる料理は、売れているからと増やすより、仕込みの方法や提供する時間帯を見直す候補になるでしょう。AIに聞くときは、曜日・時間帯・雨の日のように条件を絞って質問すると、答えを店の実感と比べやすくなります。

AIの分析は、メニューを削るための結論ではなく、次に試すことを決めるための仮説として扱いましょう。仮説を1つ選んで数週間試し、POSの数字で結果を確かめてから他の店舗に広げていくと、外れたときにも元に戻しやすいでしょう。

シフト作成の支援

シフト作成のAIは、スタッフの希望と必要な人数、労働時間の決まりをもとに、割り当ての案を出す仕組みです。案はあくまで下書きで、希望の偏りや人間関係まで機械が汲み取れるわけではありません。休み希望の理由や体調のような事情は、生成AIに書き込まずに店長が手元で調整してください。

文面をつくる生成AI(ChatGPT・Gemini・Claude)

ChatGPT・Gemini・Claudeのような生成AIは、頼んだ内容に沿って文章を書いたり、長い文書を要約したり、別の言語に訳したりする道具になります。飲食店の仕事でいえば、メニュー説明、求人票、口コミ返信、SNS投稿、マニュアルの言い換えが向いている分野です。設備型のAIと違って機器の入れ替えがいらず、本部の1人から試し始めることも出来ます。各AIの違いと向く仕事は主要4AIの違いと使い分けで整理しているので、あわせてご覧ください。

大手チェーン・店舗の導入事例を読むときの見方

大手チェーンの導入事例は参考になる一方で、数字の出どころと会社の規模を確かめてから読む必要があります。飲食店のAI活用を紹介する記事には、大手チェーンの需要予測や配膳ロボット、AI電話の事例と、売上や食品ロスの改善率がよく並びます。その多くは導入した会社やAIを提供する会社の発表で、第三者が同じ条件で確かめた数字とは性格が違っています。

  • 数字は誰の発表か導入企業の発表か、AIを提供する会社の発表か、第三者の調査かを見分けます。提供会社の事例紹介は、うまくいった例が選ばれやすい点も頭に入れておきます。
  • 店舗数と投資の規模は近いか数百店舗を持つ会社は、専任のシステム部門と大きな投資で仕組みを作っていることがあります。数店舗〜数十店舗の会社が、同じ効果をそのまま得られるとは限りません。
  • 何と比べた改善か導入前のいつと比べた数字か、同じ時期にメニュー改定や値上げなど別の施策を行っていないかを確かめます。
  • 現場の手順がどう変わったか数字よりも、誰の仕事がどう変わり、どの順番で店舗に広げたかが書かれている事例のほうが、自社で使える情報を多く含みます。

社員10〜200名の飲食企業が事例から学べるのは、効果の数字より、どの業務から始めてどう現場に広げたかの順番のほうでしょう。自社で試すときは、機器の入れ替えがいらない文面づくりから効果を測るのが現実的な入り口になります。

発表元の資料で確かめられる導入事例

発表元の資料や官公庁の白書で中身を確かめられる事例を、4つ紹介します。

  • 丸亀製麺:店舗ごとの客数と販売数の予測(2023年2月発表)トリドールホールディングスと富士通は2023年2月2日、富士通のAI需要予測サービスを「丸亀製麺」の国内全823店舗(2023年1月31日時点)で採用すると発表しました。気象データやPOSデータなどから店舗ごとの日別・時間帯別の客数や販売数を予測し、スタッフの配置、発注、うどんの仕込み量、空調の稼働に生かすとしています。2021年6月から段階的に実証を重ねたうえでの全店採用で、発表資料に効果の数値は載っていません。
    発表元:トリドールホールディングス・富士通の共同リリース(PDF)
  • 鳥貴族:電話予約へのAIの一次対応(2023年5月発表)予約管理システム「ebica」を提供するエビソルは2023年5月16日、鳥貴族の直営60店舗でAI電話予約応対サービス「AIレセプション」が2023年4月から稼働したと発表しました。AIスタッフが24時間365日、電話に一次対応する仕組みです。先行導入した都内21店舗では、当日のネット予約数が導入前の約4.5倍、電話予約数が約1.5倍に増えたとしています。21店舗の1か月の受電は約1万件で、60店舗では月3万件以上と推定されています。いずれも提供元の発表による数字です。
    発表元:エビソルのプレスリリース
  • 物語コーポレーション:配膳ロボットの段階的な導入(2024年3月発表)物語コーポレーションとソフトバンクロボティクスは2024年3月18日、「焼肉きんぐ」などに2021年1月から配膳・運搬ロボット「Servi」を計410台(2024年2月29日時点)導入してきたことと、新たに配膳ロボット「Keenbot T8」を計522台導入する予定であることを発表しました。削減した費用の金額は発表に載っていません。
    発表元:物語コーポレーションのお知らせ
  • 中部フーズ:AI需要予測による自動発注(農林水産省の白書に掲載)農林水産省の「令和7年度 食料・農業・農村白書」(令和8年5月29日公表)は、弁当・総菜を製造・販売する中部フーズの取組を事例として載せています。日本気象協会の気象データとソフトバンクの人流データ等を使ったAI需要予測の自動発注を2024年1月に試験導入し、同年11月に全店舗で導入を始めました。導入後3か月で廃棄が34%、欠品が9%減り、売上げが26%、利益が31%増えたと紹介されています。
    発表元:農林水産省 令和7年度 食料・農業・農村白書

※各事例の内容は、2026年10月16日に各社と農林水産省の公式ページ・発表資料で確認したものです。効果の数値は提供元の発表、または白書に掲載された内容で、第三者による検証の有無は資料からは分かりません。

効果の数字が出ているのは提供元の発表と白書の事例で、大手チェーン自身の発表は導入の範囲と使い道が中心です。自社に当てはめるときは、効果の数字より、どの業務からどれだけの期間をかけて広げたかを見ましょう。

飲食店がAIを使うメリット・デメリット

メリットは限られた人数で回せる仕事が増えること、デメリットは誤りと情報の扱いに人の確認が要ることです。どちらも、設備型と生成AIで中身が少しずつ違ってきます。

メリット

  • 文面の下書きにかかる時間が短くなり、店長が接客や育成に使える時間が増える
  • 本部が作ったひな形を全店で使えば、店舗ごとの文章の質のばらつきを抑えられる
  • 多言語のメニューや案内を、翻訳会社に頼む前の下書きまで自分たちで作れる
  • 需要予測や自動発注を使えば、仕込みや発注の勘に頼る部分を減らせる
  • 配膳やセルフオーダーで、ピーク時の移動や注文の聞き取りの負担を減らせる

デメリット

  • AIはもっともらしい誤りを書くことがあり、メニューの産地やアレルゲンで誤ると事故につながる
  • 店長が個人のアカウントで使うと、入力した情報や作った文面が会社から見えなくなる
  • 設備型のAIは導入費と月額費用がかかり、店の広さや既存のシステムとの相性で効果が変わる
  • 慣れるまでの教育に時間がかかり、使う人と使わない人の差が店舗ごとに出やすい

デメリットのうち、誤りと情報の扱いは、ツールを変えても消えない課題となります。AIの文面は必ず人が確認してから出す、という線だけは最初に決めておきましょう。そのうえで、誰が何を確認するかを文面の種類ごとに割り振っていくと、現場の負担も偏りにくくなります。

接客の質を落とさないために、AIに任せる範囲を決める

AIを入れる目的を人を減らすことだけに置くと、お客様が受ける印象まで機械的になってしまいます。

文面づくりで任せてよいのは下書きまでで、お客様に届く言葉は店長やスタッフが自分の言葉に直してから出すのが基本となります。浮いた時間を常連のお客様との会話や、おすすめの一品を伝える接客に回せるかどうかで、AIを入れた価値が変わってくるでしょう。

  • AIに任せる仕事:メニュー説明や口コミ返信の下書き、マニュアルの言い換え、売上データの集計
  • 人が担う仕事:お客様への最終的な返信、おすすめの提案、アレルギーの相談、苦情への最初の対応

任せる範囲を書き出したら店長会議などで共有し、店ごとに線引きがずれないようにしてみてください。

生成AIで作れる飲食店の文面|そのまま使えるプロンプトのひな形

文面づくりは、生成AIの得意分野と飲食店の手間がよく重なる仕事です。以下のひな形は、【】の部分を自店の情報に置き換えて使うことが出来ます。どのひな形にも、分からないことは書かずに【要確認】と残すよう指示を入れているのは、AIに事実を作らせないためです。

メニュー説明・SNS投稿文・広告文をつくる

メニュー説明は、食材と調理法を箇条書きで渡し、書き方の条件だけをAIに任せると失敗が減ります。料理名だけを渡して魅力的に書いてと頼むと、AIは頼まれていない産地や「手作り」のような言葉を足してしまうことがあります。

  • ひな形1:メニュー説明(メニュー表・店内POP用)あなたは飲食店のメニュー表の文章を書く担当です。次の料理の説明文を、80字以内で3案つくってください。
    ・料理名:【料理名】
    ・使っている食材:【食材を箇条書き】
    ・調理法:【焼く・煮る・揚げるなど】
    ・味の特徴:【店長の言葉で一言】
    ・想定するお客様:【ランチの会社員、家族連れなど】
    条件:ここに書いた食材と調理法以外の情報(産地、手作り、自家製、無添加、朝獲れ、限定など)は書かないでください。アレルゲンについては触れないでください。分からないことは推測せず【要確認】と書いてください。
  • ひな形2:SNS投稿文(新メニューの告知)次の新メニューを告知するInstagramの投稿文を、150字以内で2案つくってください。
    ・料理名と価格:【料理名/税込価格】
    ・提供期間と店舗:【開始日〜終了日/対象店舗】
    ・特徴:【ひな形1で確定した説明文を貼る】
    条件:価格と提供期間は【】の値をそのまま使い、変えないでください。「最安」「No.1」「日本一」など他と比べる言葉は使わないでください。ハッシュタグは5個までにしてください。
  • ひな形3:チラシ・店頭看板の見出し次の情報から、店頭看板の見出しを15字以内で5案、補足の一文を30字以内で5案つくってください。
    ・訴えたいこと:【平日ランチの再開、宴会コースの予約開始など】
    ・事実として言えること:【価格、時間、人数など確定した情報だけ】
    条件:ここにない数字や実績(行列、人気No.1、〇〇万食突破など)は書かないでください。

未発表の新メニューや季節の企画は、公開日より前にAIへ入れない決まりにしておくと安心でしょう。確定した説明文は本部で保管し、SNSや看板の文面はそこから作るようにすると、店舗ごとに言い回しがずれにくくなります。

求人票をつくる

求人票は、2024年4月から募集時に明示する事項が増えたため、プロンプトの必須欄にその項目を入れておくのが安全です。ここでは2024年4月に加わった3項目を中心に載せていますので、賃金や労働時間など以前からの明示事項も漏れなく書いてください。AIは求人の決まり文句として、性別や年齢を限るような言い回しを書いてしまうこともあります。

  • ひな形4:求人票(ホール・キッチンのアルバイト)あなたは飲食企業の採用担当です。次の条件で、求人サイトに載せる求人票の本文をつくってください。
    ・職種名:【ホールスタッフ/キッチンスタッフ】
    ・仕事の内容:【案内、配膳、仕込み、洗い場など】
    ・従事すべき業務の変更の範囲:【例:会社の定める飲食店舗の業務全般】
    ・就業の場所:【店舗名と住所】
    ・就業の場所の変更の範囲:【例:会社の定める店舗】
    ・契約期間と更新の基準:【期間、更新の有無と判断の基準、更新回数や通算期間の上限があればその内容】
    ・勤務時間と休日:【】
    ・賃金と手当:【】
    ・加入保険:【】
    条件:性別を表す職種名や、男女のどちらかを優遇する表現は使わないでください。年齢の上限や「若い方」など、年齢を限る表現も使わないでください。書いていない待遇・手当・研修制度は足さず【要確認】と残してください。店の雰囲気の紹介は3行までにしてください。
  • ひな形5:求人票の点検(書き上げた後に使う)次の求人票を読み、①性別を表す職種名や一方を優遇する表現、②年齢を限る表現、③従事すべき業務の変更の範囲・就業の場所の変更の範囲・契約更新の基準の書き漏れ、の3点を指摘してください。直した文は提案だけにとどめ、事実を足さないでください。
    【求人票を貼る】

法令の中身は、後の節の「求人票の明示事項と性別・年齢の表現」で確認してください。AIの点検は漏れを見つける手がかりにとどめ、最後は人事の担当者が読む流れにしておきます。労働条件の明示事項は本部の定型文をそのまま貼り、AIに書かせるのは仕事内容と店の雰囲気の部分だけにすると、書き漏れや書き換えが起きにくくなります。

口コミの分析・返信をつくる

口コミは、返信の下書きと、たまった口コミの傾向を読む分析の両方に使えます。返信は店の名義で書くものなので、店として言ってよいことの範囲を本部で決めておきましょう。

  • ひな形6:口コミ返信次の口コミに、店長として返信する文を2案つくってください。200字以内にしてください。
    口コミ本文:【投稿者名・来店日時・同席者が分かる情報を消して貼る】
    条件:お礼とおわびは具体的に1回ずつにしてください。事実として確認できていないこと(原因、今後の対応の約束、返金や割引の申し出など)は書かず【要確認】と残してください。投稿者を特定できる内容や、来店日時・同席者には触れないでください。ほかのお客様や他店を悪く言わないでください。
  • ひな形7:口コミの傾向分析(本部向け)次の口コミ【件数】件を、料理・接客・待ち時間・清潔さ・価格の5つに分け、良い点と改善点を店舗別に3行ずつまとめてください。項目ごとに当てはまる口コミの件数も書いてください。口コミにない推測は書かないでください。
    【店舗名と、投稿者名を消した口コミ本文を貼る】

低評価への返信は、感情的な言い回しを避けるためにもAIの下書きが役立ちますが、最後の一文まで店長が読んでから投稿してください。複数の店舗の口コミを同じ観点で比べられるのは、本部で分析するからこそ出来る使い方です。

多言語対応・インバウンドの文面をつくる

多言語のメニューや案内は、日本語の元の文を確定させてから訳させると、内容のずれを確かめやすくなります。訳した文を別の生成AIで日本語に訳し戻すと、意味が変わった箇所を見つける手がかりになるでしょう。複数のAIを1つの環境で使い分ける考え方はマルチAIの解説にまとめています。

  • ひな形8:多言語メニュー次の日本語のメニュー説明を、英語・簡体字中国語・繁体字中国語・韓国語に訳してください。料理名は日本語の読みをローマ字で残し、その後に短い説明を付けてください。原文にない食材や味の説明は足さないでください。アレルゲンや宗教上の理由で避ける食材についての案内は、「スタッフにお尋ねください」という意味の文だけを各言語で添えてください。
    【確定した日本語のメニュー説明を貼る】
  • ひな形9:店頭の案内・よくある質問次の日本語の案内文を、英語・簡体字中国語・韓国語に訳し、店頭に貼る短い案内にしてください。1項目1行、各言語とも同じ順番にしてください。
    【現金・キャッシュレスの可否、席の利用時間、お通しの有無と料金、ラストオーダーの時刻など、確定した情報だけを貼る】

訳した文は、その言語が分かるスタッフや取引先に一度読んでもらうと安心です。特に料金やお通しの説明は、誤解がそのまま店頭でのトラブルにつながるため、日本語の元の文から丁寧に確かめていきましょう。

新人研修・マニュアル・接客教育の資料をつくる

新人研修の資料は、既にある手順書を元に、店舗のスタッフが読みやすい言葉や、外国人スタッフの母語に書き直す使い方に向いた仕事です。衛生管理については、令和3年6月1日から、原則としてすべての食品等事業者がHACCPに沿った衛生管理に取り組むことになっています。小規模な一般飲食店向けには、公益社団法人日本食品衛生協会が作成し、厚生労働省が公開している手引書があり、最新は2024年1月15日の改訂第3版となります。AIに任せるのは言葉の言い換えと翻訳だけで、温度や時間などの基準は手引書のまま変えないでください。

  • ひな形10:衛生管理の手順を店舗向けの言葉に言い換える次の文章は、衛生管理の手引書から写した手順です。新人アルバイトが読んで分かる言葉に書き直し、1行1動作の箇条書きにしてください。数字(温度・時間・回数)と、確認・記録の項目は1つも変えず、削らないでください。元の文にない手順は足さないでください。
    【手引書の該当箇所を貼る】
  • ひな形11:同じ手順を外国人スタッフ向けに訳すひな形10で確定した日本語の手順を、【ベトナム語・ネパール語など】に訳してください。日本語の原文を左、訳文を右に並べる形にし、数字と記録表の項目名は日本語も残してください。
  • ひな形12:接客トークの練習台本新人向けに、入店時の案内から会計までの接客トークを、ていねいな言葉で10場面つくってください。各場面にお客様の質問の例を1つ入れてください。アレルギーや原材料について聞かれた場面では、自分で答えずに必ず責任者に確認してから答える流れにしてください。

訳した手順は、その言語を話せるスタッフに一度読んでもらい、実際の動きと合っているかを確かめてもらいましょう。記録表の項目名を日本語でも残しておくのは、店長が点検するときに読めるようにするためです。

本部がひな形を用意しても、店長がそれぞれ個人のスマホと個人のアカウントで使っていると、良いプロンプトは店の中にとどまり、入力した情報も会社から見えなくなってしまいます。文面づくりを全店に広げるなら、使う環境を会社で1つに決めることが先になります。

メニューも求人も口コミ返信も、会社で管理する環境で下書きする

店長ごとの個人アカウントをやめ、本部のひな形を全店で使える環境を会社で1つに。UPGEAR AI(アップギアAI)は、ChatGPT・Claude・Gemini・Perplexityを1つの契約で使える法人向けサービスです(人数無制限)。

AIの出力を人が確認する|メニュー表示・アレルゲン・求人・口コミの注意点

AIで作った文面でも、店が出せば店の表示になるため、公開前に誰が何と照らし合わせるかを決めておく必要があります。特に注意が要るのは、メニューの表示、アレルゲン、求人票、口コミの4つです。

メニュー説明と景品表示法

消費者庁の「メニュー・料理等の食品表示に係る景品表示法上の考え方について」(平成26年3月28日公表、平成26年12月1日と平成28年4月1日に一部改定)は、レストラン等が提供するメニュー・料理等の表示は全て景品表示法の対象だと示しています。判断は特定の言葉だけでなく、表示全体から一般消費者が受ける印象と実際との差で個別に検討するとされます。同じ資料のQ&Aで「問題となります」と答えている例には、次のようなものがあります。

  • 牛の成形肉を焼いた料理を「ビーフステーキ」「ステーキ」と表示する(成形肉であることを料理名の近くに明瞭に書く場合の扱いもあわせて説明されている)
  • 牛脂注入加工肉を「霜降りビーフステーキ」「さし入りビーフステーキ」と表示する
  • バナメイエビを使っているのに「シバエビ」と表示する
  • 市販品のパンを出しているのに「自家製パン」と表示する

このほか、「鮮魚」「手打ち麺」といった表示についても問答が載っています。資料にAIについての記述はありませんが、AIが書いた説明でも、実際の料理と違えば同じ枠組みで考えるべきでしょう。AIが足した言葉は、仕入伝票や規格書と照らして確かめられるものだけを残しましょう。

原料原産地をAIに推測で書かせない

外食や中食の原料原産地は、食品表示基準の対象ではなく、義務表示にもなっていません。外食・中食の事業者団体が策定し、農林水産省が掲載している原料原産地の情報提供に関するガイドライン(平成31年3月)は、業種・業態に応じた自主的な取組による情報提供を促すものとされています。策定したのは、日本フードサービス協会・日本惣菜協会・食の安全・安心財団で構成する協議会の検討会で、消費者庁と農林水産省の担当課は行政オブザーバーという位置づけです。

同じガイドラインは、原料原産地を問われたときに挙証できる証拠書類を保管する仕組みを作ることも重要な課題としています。事実と違う表示で実際よりも著しく優良だと誤認させる場合は、景品表示法の措置の対象になるという注意も添えられました。産地をメニューに書くなら、AIの下書きではなく仕入伝票や規格書から書き写すようにしてください。

アレルゲン情報をAIに断定させない確認の流れ

外食・中食には、容器包装された加工食品のようなアレルギー表示の義務はありません。消費者庁の消費者向けパンフレット「外食・中食を利用するときに気をつけること」(令和8年7月)も、外食・中食では食物アレルギーに関する情報提供が義務づけられていないと説明しています。同じパンフレットでは、お店の情報が常に正しく常に最新であるとは限らない理由として、盛りつけなどによる原材料のばらつき、原材料の頻繁な変更、調理中の混入の3つが挙げられました。

事業者向けには、消費者庁が令和8年7月版のパンフレット「食物アレルギーのお客様との会話で困った経験ありませんか」を公開し、情報提供の取組を呼びかけています。このパンフレットでは、食物アレルギー患者団体を対象とした消費者庁の実態調査(令和4年3月)で、情報が十分に得られていないと感じている割合が外食で67%、中食で77%だったことも紹介されました。掲載されている中食事業者の取組例には、店頭スタッフに「間違った情報を答えると命に関わること」を徹底して教えているという声もあります。アレルゲンの有無はAIに断定させず、厨房の責任者が原材料の記録で確かめてから答えましょう。

  • 1. AIの下書きからアレルゲンの記述を外すメニュー説明や多言語訳には「含む」「不使用」「対応可」を書かせず、案内は「スタッフにお尋ねください」にとどめます。
  • 2. 原材料の記録を正本にする規格書・仕入伝票・レシピの記録を1か所にまとめ、仕入先や配合が変わった日に更新します。
  • 3. 問い合わせはその日の責任者に回すホールのスタッフが即答せず、厨房の責任者が原材料の記録を見て答えます。責任者が不在の時間帯の扱いも決めておきます。
  • 4. 調理中の混入の可能性を伝える同じ調理器具や揚げ油を使う場合があることなど、店として分かる範囲の情報を添えます。
  • 5. 外国語の問い合わせも同じ流れにする翻訳した言葉で断定せず、原材料の一覧を一緒に見ながら確認できる形にします。

加工食品では、えび・かに・くるみ・小麦・そば・卵・乳・落花生(ピーナッツ)・カシューナッツの9品目を微量でも含むときに表示が必要で、その他20品目は表示が勧められています。外食で答える品目の範囲を決めるときも、この区分が目安になるでしょう。

求人票の明示事項と性別・年齢の表現

職業安定法施行規則の改正で、令和6年4月1日から、労働者を募集するときに明示する事項として次の3つが加わりました。

  • 従事すべき業務の変更の範囲
  • 就業の場所の変更の範囲
  • 有期労働契約を更新する場合の基準に関する事項(通算契約期間又は更新回数の上限を含む)

多店舗の飲食企業では、別の店舗への異動や、ホールからキッチンへの配置換えがありうるかを、求人の段階から書く必要が出てきます。年齢については、労働施策総合推進法が募集・採用で年齢を理由とした制限を設けることを禁止しており、厚生労働省の事業主向け資料は、形式的に求人票を「年齢不問」とすれば良いということではないとも注意しています。例外として認められる場合もあるため、年齢を書く必要があるときは例外事由に当てはまるかを先に確かめましょう。

性別については、厚生労働省のパンフレット「男女均等な採用選考ルール」(令和8年6月作成)が、男女雇用機会均等法第5条にもとづき、男女のいずれかを表す名称での職種表示や、一方を優遇する表現に注意を促しています。違法事例として挙がっているのは、「ウエイター」「○○レディ」のような職種名や、「男性歓迎」「女性向きの職種」といった表現です。AIが似た言い回しを書いた場合は、「ホールスタッフ」「キッチンスタッフ」のように性別を含まない職種名に直してください。同じパンフレットは、令和8年10月1日施行で、就職活動中の学生などの求職者に対するセクシュアルハラスメントを防ぐ措置が事業主の義務とされていることにも触れています。面接を担当する店長にも、あわせて伝えておきたいところです。

口コミ依頼・口コミ返信とステルスマーケティング規制

2023年10月1日から、広告であることを隠す、いわゆるステルスマーケティングは景品表示法の不当表示として規制されています。消費者庁の「ステルスマーケティングに関するQ&A」のQ6は、利用後に予約サイトへ口コミを投稿することを条件に割引する例を取り上げました。回答は、投稿内容の指示がなく割引程度の対価であれば、通常は事業者の表示に当たらず告示に違反しないと考えられるとしたうえで、「星5」を付けることを条件にした場合は事業者の表示に当たり、そのことを明瞭にしなければ告示に違反するとしています。推奨するコメントを条件にした場合も同様だと書かれているので、口コミを頼むときの言い方には気をつけたいところでしょう。

Q9では、ECサイトのレビューについて、客観的な事実に反する内容の修正を頼むことは事業者の表示に当たらない一方、感想を自社に都合の良い内容に改めるよう頼めば、修正されたレビューは事業者の表示に当たると説明されます。Q&AにAIについての記述はありませんが、AIで作った口コミ風の文をお客様に渡して投稿してもらうことは、表示内容の決定に関与する形になりうると考えておくのが無難です。飲食企業として避けたいのは、次のような使い方になります。

  • AIで口コミ風の文章を作り、お客様や知人に投稿してもらう
  • 割引や一品サービスと引き換えに、「星5」や褒めるコメントを条件にする
  • お客様の感想を、店に都合の良い内容へ書き直すよう頼む
  • 従業員が、お客様を装って口コミサイトやSNSに投稿する

運用基準では、事業者が第三者の表示に支払う対価は金銭や物品に限らず、経済上の利益など対価性を持つ一切のものが含まれるとされています。口コミへの返信は店の名義で書くことで、誰の発言かがはっきりした形になります。返信にAIを使う場合も、店長が内容を確かめて店の言葉として出す運用にしておきましょう。

※消費者庁・厚生労働省・農林水産省の資料の内容は、2026年9月27日に各機関の公式ページと掲載資料で確認したものです。景品表示法やステルスマーケティング告示の資料に生成AIについての記述はなく、AIで書いた文面への当てはめは筆者の整理です。個別の判断は専門家にご相談ください。

AIに入れてはいけない情報の判断表|情報管理・個人情報の扱い

AIに入れる情報は、入れない、伏せれば使える、そのまま使える、の3段階に分けて全店で同じ基準にすると迷いが減ります。個人情報保護委員会の「生成AIサービスの利用に関する注意喚起等」(令和5年6月2日)は、個人情報取扱事業者が個人情報を含むプロンプトを入力する場合、利用目的の達成に必要な範囲内かを十分に確認するよう求めています。さらに、本人の同意を得ずに個人データを含むプロンプトを入力し、その個人データが応答結果の出力以外の目的で取り扱われる場合は、個人情報保護法の規定に違反することとなる可能性があると注意を促しました。予約台帳や顧客リストを、学習利用の条件が分からない個人のAIに貼るのは避けましょう。同じ注意喚起は、提供事業者が個人データを機械学習に利用しないこと等を十分に確認するよう求めています。

入れない情報

  • 予約客・会員の氏名、電話番号、メールアドレス、来店履歴予約台帳や顧客リストはそのまま貼りません。予約メモの整理をAIに頼むときも、名前と連絡先を消してからにします。
  • お客様のアレルギー申告や体調の情報予約時に聞いたアレルギーや持病の情報は、店内の記録だけで管理します。
  • 従業員の氏名・住所・連絡先、健康情報、評価、シフト希望の理由面談記録や評価コメントの清書も、個人が分かる形では入れません。
  • レシピの配合、原価、仕入先との取引条件店の競争力そのものです。原価計算の相談は、数字を丸めた架空の例で行います。
  • 未発表の新メニュー、出店・閉店の計画、公表していない売上公開日が来るまでは入れません。告知文の下書きは公開日が決まってから作ります。

伏せれば使える情報

  • 口コミ本文投稿者名、来店日時、同席者の情報を消してから使います。
  • お客様からの問い合わせ文・苦情の記録氏名・連絡先・予約番号を消し、登場する人を「お客様A」「スタッフB」に置き換えます。
  • 店舗別の売上集計会員番号やレシート番号など、個人につながる列を消した集計表なら分析に使えます。公表していない売上は、店名を伏せ、実額を前年比や構成比などの比率に直してから使います。

そのまま使える情報

  • 公開済みのメニュー名・価格・営業時間・アクセスWebサイトやグルメサイトに既に載せている情報です。
  • 公開済みの求人情報、チラシやSNSに載せた文章言い換えや多言語化の元の文として使えます。
  • 公開されている資料の文章衛生管理の手引書や、行政のパンフレットの文章です。

迷ったときは、その文章が店の外に出たら困るかどうかで判断するよう伝えると分かりやすいでしょう。社内ルールの全体の作り方は生成AIの社内ガイドラインの作り方で解説しています。

会社で認めた環境であっても、レシピの原価や店舗の売上をどこまで入れてよいかは、社内ルールで決めておきましょう。個人のアカウントと違い、会社が契約の条件を確かめた環境であれば、扱える範囲を広げるかどうかを会社として判断することが出来ます。

店長個人のアカウントから会社管理の環境へ移す本部の手順

店長が個人のアカウントで生成AIを使っている状態は、禁止するより、同じことが出来る会社の環境を用意して移ってもらうほうが進めやすくなります。会社が把握していないAIの利用は野良AI(シャドーAI)と呼ばれ、入力した情報や作った文面が会社から見えなくなる点が問題とされています。店長の入れ替わりが多い業態ほど、個人のアカウントに残った会話履歴を会社が消せないことも重い問題です。

  • 手順1:使っている人と用途を棚卸しする責めない前提で、どの店舗の誰が、どのAIを何に使っているかを聞き取ります。「使っていない」と答えやすい聞き方ではなく、「どんな文面に使うと便利だったか」を聞くと実態が集まります。
  • 手順2:会社で使う環境を1つ決めて告知する公認の環境と、入れてはいけない情報の判断表を同時に配ります。個人のアカウントに残っている業務の会話は、各自で削除してもらうよう依頼します。
  • 手順3:良いプロンプトを集めて全店で共有する店長が工夫したひな形を本部で集め、事実の確認と表現の点検をした版を全店に配ります。移ったほうが便利だと感じてもらえるかどうかが、定着の分かれ目です。
  • 手順4:公開前の確認者を決めるメニュー説明・アレルゲン・産地は厨房の責任者、求人票は人事、口コミ返信は店長、SNSと広告は本部の販促担当、というように文面の種類ごとに割り振ります。
  • 手順5:入社・退職・異動のたびにアカウントを発行・停止する人事の手続きと同じ日にAIのアカウントも処理する決まりにします。個人のアカウントでは、会社が止めることが出来ません。
  • 手順6:3か月ごとに見直す使われているひな形、使われていないひな形、確認で直した箇所の多い文面を振り返り、ひな形と判断表を改訂します。

移行を急がせすぎると、使い慣れた個人の環境に戻る人も出てきます。個人の環境で作った良いひな形を会社の環境へ持ち込んでもらい、使いやすさを落とさないように気を配りましょう。点検の項目は生成AIのセキュリティ対策チェックリストも参考にしてください。

最初に使う人は、社員・店長・時間帯責任者に絞っておくと管理が楽になります。アルバイトへ広げるのは、入社・退職のたびにアカウントを発行・停止する流れが回るようになってからでも遅くはありません。店の共用タブレットや私物のスマホから使う場合は、誰のIDで入るのか、私物の端末からのログインを認めるのかも先に決めておきましょう。

飲食企業向けの社内AI利用ルールのひな形

ルールは長い規程より、店長がスマホで読める1枚にまとめるほうが現場に届きます。次のひな形は、【】を自社の名前や部署に置き換えて使うことが出来ます。

  • 第1条 対象【会社名】の役員・社員・パート・アルバイトが、業務で生成AIを使うすべての場面に適用します。
  • 第2条 使ってよい環境業務で使うのは、会社が指定した【環境名】だけとします。個人のアカウントや、会社が認めていないアプリで業務の情報を扱いません。
  • 第3条 入力してはいけない情報お客様と従業員の個人情報、アレルギーや体調の申告、レシピの配合と原価、仕入先との取引条件、未発表のメニューと出店計画は入力しません。
  • 第4条 伏せてから使う情報口コミ・問い合わせ・苦情の記録は、氏名・連絡先・来店日時・予約番号を消してから使います。
  • 第5条 公開前の確認者メニュー説明・アレルゲン・産地は【厨房責任者】、求人票は【人事担当】、口コミ返信は【店長】、SNS・広告・チラシは【本部の販促担当】が確認してから公開します。
  • 第6条 AIに書かせない内容アレルゲンの有無の断定、確認していない産地・製法・実績、口コミ風の文章、他店と比べて優れているとする表現は書かせません。
  • 第7条 ひな形の管理全店で使うプロンプトは【本部】が確認して配布し、改訂したときは日付を付けて古い版と差し替えます。
  • 第8条 アカウントの管理アカウントは入社時に【本部】が発行し、退職・異動の日に停止します。
  • 第9条 困ったとき・誤って入力したとき入れてはいけない情報を入力してしまったときや、公開後に誤りに気づいたときは、すぐに【連絡先】へ報告します。報告した人を責めることはしません。

最初から完璧な規程を目指さず、まずこの9項目で運用を始め、困った場面が出るたびに書き足していきましょう。アルバイトにも使わせる場合は、入社時の説明資料にこの1枚を加えておくと伝え漏れが減ります。

導入の進め方|課題を絞る・小さく試す・効果を測る

導入は、困っている仕事を1つに絞り、1店舗か本部の1部署で試し、かかった時間で効果を測る順番が進めやすい形です。

手順1 課題を1つに絞る

「AIで何かしたい」から始めると、試す範囲が広がって効果が見えにくくなります。求人票の作成に毎回半日かかっている、口コミ返信がたまっている、というように、時間のかかっている文面を1つ選んでください。

手順2 汎用の生成AIから小さく始める

文面づくりなら、ChatGPT・Gemini・Claudeのような汎用の生成AIで試すことが出来ます。設備型のAIのように店内の工事や機器の入れ替えがいらないため、合わなければやめるのも簡単でしょう。ただし、試す段階から会社の環境で行い、入れてはいけない情報の判断表を先に配っておくことが条件になります。

手順3 効果を測って広げる

効果は、1本あたりの作成時間と、公開前の確認で直した箇所の数で測るのが分かりやすい方法です。導入前に同じ種類の文面を3本作るときの時間を測っておき、AIを使った後と比べてみましょう。効果が出た文面から、ひな形を本部で整えて他の店舗に広げていくのが無理のない順番になります。

需要予測や配膳ロボットのような設備型のAIは、文面づくりで社内にAIの使い方が定着してから、費用と効果を比べて検討しても遅くはありません。店舗の運営データが揃っていくほど、設備型のAIを選ぶときの判断材料も増えていきます。

費用の目安と補助金・助成金の考え方

費用は、製品の価格を並べる前に、何に対してお金がかかる仕組みかを分けて考えると比べやすくなります。

費用の目安は、かかり方の違いで見積もる

  • 設備型のAI(配膳ロボット・セルフオーダー・需要予測など)は、機器やシステムの導入費、月額の利用料、保守費が店舗ごとにかかることが多い
  • 生成AIの個人向け有料プランは1人あたりの月額で、使う人が増えるほど費用も増え、契約者は個人になる
  • 生成AIの法人向けサービスには、1人あたりの月額のものと会社単位で契約するものがあり、管理画面や利用ログの有無もサービスやプランで違う

飲食企業の場合、社員だけでなく各店の店長や時間帯責任者にも使わせるかどうかで、必要な人数が大きく変わります。見積もりは、店舗数と1店舗あたりで使う人数を先に数え、その人数で月額がどう変わるかを各社の公式の料金ページで確かめてください。1人あたりの月額が安く見えても、全店の店長に配ると会社の出費は店舗の数だけ積み上がります。設備型のAIは製品や台数、保守の範囲で金額が大きく違うため、自店の条件で複数社から見積もりを取るほうが確実でしょう。

金額の目安として、公式の料金ページに価格を載せている製品を2つ挙げておきます。

  • ソフトバンクのAI需要予測サービス「サキミル」は、来店・売上予測のWebダッシュボード版が月額7,900円/店舗、API連携版が月額4,900円/店舗で、初期費用(契約事務手数料)は3,000円/店舗とされています。AI自動発注は月額100,000円/企業+25,000円/店舗、初期費用は1,000,000円/企業+3,000円/店舗です(いずれも税抜・同社発表)
  • 電話応対AIの「IVRy」は、スターターが月払いで3,980円〜/月、スタンダードが6,480円〜/月で、電話番号維持費と従量利用料金が別途かかるとされています。料金ページでは、レストランボードなどの予約システム連携はスタンダード以上の欄に載っています(いずれも税抜・同社発表)

サキミルのWebダッシュボード版を10店舗で使うと、月額は79,000円(税抜)、1年で948,000円(税抜)となり、初期費用30,000円(税抜)も必要です。同じ10店舗でAI自動発注を入れると、その料金だけで月額100,000円+25,000円×10店舗の350,000円(税抜)で、初期費用1,030,000円(税抜)が別にかかります。電話応対AIのIVRyは、スタンダードを年払いにすると年額64,800円〜(税抜)で、電話番号維持費と従量利用料金が別にかかるため、複数店舗で使う場合の総額は見積もりで確かめてください。配膳ロボット「Servi」の公式ページは、打ち合わせ・ヒアリングの後に正式な見積もりを出すとしていて、価格は載っていません。

※料金は2026年10月16日時点で、サキミル・IVRy・Serviの各公式ページに表示されている内容です。提供元が示す価格で、契約条件や台数によって変わることがあります。

生成AIの費用も同じ考え方で、1人あたりの月額のサービスなら、使う人数を掛けた金額が会社の出費になります。法人向けプランの料金はChatGPTの法人プランの料金や法人向け生成AIの料金比較で確かめてみてください。

補助金・助成金は最新の公募要領で確かめる

国や自治体の補助金・助成金の中には、ITツールや省力化の設備を対象にするものがあります。対象になる経費や補助率、公募の期間は回ごとに変わるため、申請を考えるときは必ず最新の公募要領を確認しましょう。地域の商工会議所や商工会、取引のある金融機関に、使える制度がないか相談してみるのも一つの方法です。

店舗の文面づくりを、会社で管理する1つの環境へ

UPGEAR AI(アップギアAI)は、ChatGPT・Claude・Gemini・Perplexityを1画面で使える法人向けサービスです。管理者ダッシュボードで利用ログ・権限・モデルのON/OFFを管理でき、よく使う指示と手順をBOTにして社内限定で共有するカスタムプラスで、本部で整えたメニュー説明や求人票のひな形を全店に配ることが出来ます。基盤はAWSの日本リージョンで稼働しています。料金は月額30,000円(税抜)から。どのプランも利用人数は無制限で、料金は利用量に応じたプラン設計です(人数の目安はライト1〜5名・スタンダード6〜20名・プレミアム21〜50名)。初期費用100,000円(税抜)が別途かかります。

UPGEAR AIの詳細を見る

よくある質問

数店舗の飲食企業でもAIは使えますか?
使えます。メニュー説明や求人票、口コミ返信などの文面づくりなら、汎用の生成AIで始められ、機器の入れ替えもいりません。数店舗以上の会社では、店長ごとに別々の個人アカウントで使うと入力した情報や作った文面が会社から見えなくなるため、使う環境を会社で1つに決めてから始めることをおすすめします。
メニューのアレルゲン表示をAIに作らせてもよいですか?
おすすめしません。外食・中食には容器包装された加工食品のようなアレルギー表示の義務はありませんが、消費者庁は令和8年7月版の事業者向けパンフレットで情報提供の取組を呼びかけています。原材料は仕入れや調理で変わることがあるため、アレルゲンの有無はAIに断定させず、厨房の責任者が原材料の記録で確かめてから答える流れにしてください。
口コミ返信をAIで作ると、ステルスマーケティング規制に触れますか?
消費者庁のQ&Aに口コミへの返信そのものについての記述はありませんが、返信は店の名義で書くため、誰の発言かが分かる形になります。注意が要るのは、AIで口コミ風の文を作ってお客様に投稿してもらうことや、割引と引き換えに「星5」や褒めるコメントを条件にすることです。消費者庁のQ&Aでは、「星5」を付けることを条件にした口コミ投稿は事業者の表示に当たり、そのことを明瞭にしなければ告示に違反すると説明されています。
求人票をAIで作るときに気をつけることは何ですか?
2024年4月1日から、募集時に従事すべき業務の変更の範囲、就業の場所の変更の範囲、有期労働契約を更新する場合の基準の明示が必要になりました。プロンプトの必須欄にこの3つを入れてください。また、性別を表す職種名や一方を優遇する表現、年齢を限る表現は使わないよう指示し、書き上がった求人票は人事の担当者が確認してから公開してください。
店長が個人のChatGPTで作った文面を使ってもよいですか?
問題になりやすいのは文面そのものより、作る過程で何を入力したかです。予約客の情報や原価を入れていないかを会社から確かめられないため、会社で管理する環境へ移すことをおすすめします。移すときは、店長が工夫したプロンプトを本部で集めて全店に共有すると、使いやすさを落とさずに移行できます。
HACCPの衛生管理計画をAIに作らせてもよいですか?
基準そのものをAIに作らせるのではなく、日本食品衛生協会が作成し厚生労働省が公開している小規模な一般飲食店事業者向けの手引書(2024年1月15日の改訂第3版)を元に、言葉の言い換えや外国人スタッフ向けの翻訳に使うのが向いています。温度や時間などの数字、確認と記録の項目は手引書のまま変えないでください。
飲食店のAI導入にはどのくらいの費用がかかりますか?
設備型のAIか生成AIかで大きく変わります。公式の料金ページに価格を載せている例では、ソフトバンクのAI需要予測サービス「サキミル」の来店・売上予測(Webダッシュボード版)が月額7,900円/店舗(税抜・同社発表)で、10店舗なら月額79,000円(税抜)になります。配膳ロボットのように見積もりで金額が決まる製品もあるため、店舗数と使う人数を先に数え、複数社から見積もりを取って比べてください。
AIを入れると接客の質が下がりませんか?
人を減らすことだけを目的にすると、お客様への対応が機械的に感じられるおそれがあります。AIに任せるのは文面の下書きや集計までにし、お客様に届く言葉やおすすめの提案、アレルギーの相談は人が担う、と範囲を決めておくと質を保ちやすくなります。浮いた時間を常連のお客様との会話に回すことも考えてみてください。
AI予約と通常のネット予約はどう違いますか?
通常のネット予約は、お客様が予約サイトの画面で空席を選んで申し込む仕組みです。電話のAI予約は、AIが電話で予約日時や人数を聞き取り、予約台帳の空席を確かめて受け付けます。まずネット予約と台帳の連携で電話がどこまで減るかを確かめ、営業時間外の電話の取りこぼしが残るなら電話AIを検討する順番がおすすめです。

まとめ

飲食店のAIには、需要予測や配膳ロボットのような設備型と、文面をつくる生成AIの2種類があります。社員10〜200名の飲食企業が始めやすいのは、メニュー説明・求人票・口コミ返信・多言語の案内といった文面を生成AIで下書きする使い方です。

AIの文面でも、店が出せば店の表示になります。メニューの表示は景品表示法、産地は事業者団体のガイドライン、アレルゲンは消費者庁のパンフレット、求人票は職業安定法施行規則と男女雇用機会均等法・労働施策総合推進法、口コミはステルスマーケティング告示と、それぞれ照らす先が違ってきます。公開前に誰が何と照らし合わせるかを、文面の種類ごとに決めておいてください。

もう一つ本部が決めておきたいのは、使う環境と入れてはいけない情報でしょう。店長が個人のアカウントで使っている状態から、会社で管理する環境へ移し、良いひな形を全店で共有できる形にしていきましょう。法人のAI活用についての他の記事はAI活用コラム一覧にまとめています。