日税連のAI・クラウド活用ガイドラインとは。税理士事務所が対応することと事務所版ルールのサンプル

日税連のAI・クラウド活用ガイドラインとは、日本税理士会連合会のデジタル・システム委員会が2026年9月に策定した「税理士事務所のためのAI・クラウド活用ガイドライン」(Ver1.0)のことです。本文は会員向けで、読んだ税理士の解説によると、要点は「入れる前に情報の区分を決める」「区分Aは3つの要件を満たすサービスだけで扱う」「AIの答えは税理士が確認してから使う」の3つになります。事務所でまず手を付けるのは、いま使っているAI・クラウドの洗い出しと、所内ルールの制定となるでしょう。

日税連のAI・クラウド活用ガイドラインとは|いつ、誰に向けて出たか

このガイドラインは、税理士が業務でAIやクラウドを使うときの守り方をまとめた、日税連の会員向けの文書になります。日税連の会員専用ページのお知らせ一覧には、2026年9月30日付で「税理士事務所のためのAI・クラウド活用ガイドラインの策定について」という見出しのお知らせがあります。冒頭の公開部分では、デジタル・システム委員会が2026年9月にVer1.0を策定したこと、目的は税理士が業務で法令を守りながら安全にAI・クラウド等のデジタル技術を使うことだと説明されています。

事務所のAIルールそのものを一から考える場合は、業種を問わない全体像を生成AIガイドラインの作り方にまとめました。こちらの記事では、税理士事務所が日税連のガイドラインを受けて何をすればよいかに絞ってお伝えします。

※日税連のお知らせの公開部分は、2026年10月15日時点で日税連のサイトを開いて確認した内容です。

本文を読めるのは税理士だけ|この記事の書き方

お知らせの本文とガイドラインの掲載ページは会員専用で、ログインできる税理士しか読むことが出来ません。そのため、この記事で紹介する中身は、ガイドライン本文を読んだ税理士が公開している解説動画にもとづいています。

主に参照したのは、荒井悠輔税理士の解説動画(YouTube・2026年10月2日公開)と、税理士法人レガシィ会長の天野隆税理士がYouTube「プラス発想応援チャンネル」で2026年10月3日に配信した解説の2本です。天野税理士は動画の中で、個人の意見であると断っています。以下で「〜と解説されています」と書いている部分は第三者の解説であり、ガイドラインの原文そのものではない点にご注意ください。税理士の方は、会員専用ページで原文を併せて確かめるのがおすすめです。

資料は概要版と文書A・B・Cの4つ

荒井税理士の解説では、資料は概要版と文書A・文書B・文書Cの4つに分かれていると紹介されています。このうち文書Cが、規程と様式のひな形にあたるとのことです。ひな形も会員向けのため、職員の方や事務所の外部の方が直接入手することは出来ません。

対象はAIだけでなくクラウドも

名前のとおり、対象が生成AIに限られていない点も特徴になります。同じ解説では、情報を事務所の外に送る仕組みとして、生成AI・AIエージェント・単独のAIサービス・クラウドストレージ・ブラウザの拡張機能の5つのカテゴリーが挙げられていると説明されています。顧問先とファイルを共有しているクラウドストレージや、ブラウザに入れた翻訳・要約の拡張機能も、点検の対象に入ることになります。AIを使っていないつもりの事務所でも、見直す範囲は意外と広くなってしまいます。

禁止ではなく「安全に使う」ための指針

公開部分の目的から読むと、ガイドラインの立ち位置は、AIやクラウドを禁止することではなく、条件を整えて安全に使うことにあると言えます。公開部分の目的の書き方も、使わない方向ではなく、法令を守りながら使う方向です。天野税理士の解説でも、顧問先の財務データや個人情報を含む区分Aの情報は、3つの要件を満たす環境であれば利用できると整理されています。

実際に、事務所が何も用意しないまま禁止だけを伝えると、職員が自分のスマホや個人アカウントで使い始める心配が出てきます。荒井税理士の解説でも、事務所が承認したものだけを使う承認制にして、シャドーITを防ぐ考え方が紹介されています。事務所が把握していないAIの利用をどう見つけて減らすかは、シャドーAI(野良AI)とはが参考になるでしょう。

総務省・経済産業省のAI事業者ガイドラインとの関係

AIのガイドラインというと、総務省と経済産業省が出しているAI事業者ガイドラインを思い浮かべる方もいらっしゃるかもしれません。こちらは2026年3月31日に第1.2版が公表された、業種を問わない文書になります。法的な拘束力のないソフトローで、AIに関わる事業者を「AI開発者」「AI提供者」「AI利用者」の3つに分けて整理しています。

税理士事務所は、AIを業務で使う側の「AI利用者」として読むのが自然な位置づけとなります。これに対して日税連のガイドラインは、税理士業務と守秘義務に絞って、何をどの環境に入れてよいかを決める実務の手引きです。両者がどう関係づけられているかは本文を読まないと分からないため、ここでは別々の文書として扱いました。

税理士法第38条・第54条の守秘義務との関係

税理士法第38条は「税理士は、正当な理由がなくて、税理士業務に関して知り得た秘密を他に洩らし、又は窃用してはならない」と定めています。第54条は職員など使用人その他の従業者にも同じ趣旨の義務を課し、第41条の2は税理士に使用人等を監督する義務を負わせる条文となります。

条文の中にAIやクラウドという言葉は出てこないため、個人版のAIに顧問先の情報を入れたことが直ちに違反になるのか、ならないのかは条文だけでは決まりません。だからこそ、どの情報をどの環境に入れてよいかを事務所で先に決めておく意味があります。職員の使い方まで含めて、監督するのは税理士の側だということは押さえておきましょう。守秘義務とAIの関係は、税理士の守秘義務と生成AIで条文と懲戒の考え方まで整理しています。

入れる前に区分を決める|判定の順と3つの区分

解説で最初に強調されているのは、AIやクラウドに入れる前に、その情報がどの区分に当たるかを決めることです。荒井税理士の解説では、判定は次の順で進めると紹介されています。

  1. マイナンバーを含む情報か。含むなら入力しない
  2. 顧問先や事務所の機密情報・個人情報を含むか。含むなら区分Aとして、3つの要件を満たすサービスだけで扱う
  3. 公開情報・一般的な情報・匿名化済みの情報か。そうなら区分Bとして、事務所が承認したサービスで扱う
  4. どれにも当てはまらないなら、上司や管理責任者に相談して区分を決める

上から順に当てはめていき、最初に当てはまったところで止めるのがこの判定の特徴になります。たとえば顧問先の個人情報とマイナンバーが両方入った書類なら、1番目で止まり、入力しない扱いです。

マイナンバーは入力しない

マイナンバーを含む情報は、区分Aの要件を満たすサービスであっても入力しない扱いと解説されています。天野税理士の解説でも、マイナンバー等は入力禁止と整理されていました。荒井税理士の解説では、最初の一歩の中に、マイナンバーを隠す手順を所内で共有することが挙がっています。

年末調整や法定調書の資料には、マイナンバーが書かれた書類が混ざりがちです。紙の段階で番号を隠してから読み取るのか、取り込んだ後に消すのか、事務所としての手順を1つに決めて共有しましょう。PDFの上に黒い四角を重ねただけでは、下の文字データが残ることがある点にも気をつけたいところです。

区分A:顧問先・事務所の機密情報と個人情報

顧問先の財務データ、氏名や住所などの個人情報、事務所の機密情報が入るものは区分Aに当たります。解説では、区分Aは禁止ではなく、後で説明する3つの要件を満たしたサービスに限って扱えると説明されています。税理士事務所の実務では、扱う情報の多くがここに入ってくるはずです。

区分B:公開情報・一般情報・匿名化済みの情報

法令や通達の条文、公表されている統計、顧問先が特定できないように加工した情報は区分Bになります。荒井税理士の解説では、区分Bは事務所が承認したサービスであれば、無料版や個人版でも使えると紹介されています。ただし、社名を消しても業種・地域・金額の組み合わせで顧問先が分かってしまう場合は、匿名化が足りていないと考えたほうが安全です。

どれに当たるか迷ったら相談

判定に迷う情報は、職員が自分で決めずに上司や管理責任者に相談する流れと解説されています。事務所のルールには、相談先の名前と、相談の結果を残す場所まで書いておくと、同じ迷いが繰り返されにくくなります。

事務所の場面に当てはめた判断表

判定の順を、税理士事務所でよくある場面に当てはめると、次の表のような整理が出来ます。区分の考え方は上の解説に沿ったもので、扱い方の欄は事務所でルールを作るときのたたき台です。

事務所の場面AIやクラウドに渡る情報判定扱い方のたたき台
年末調整で集めた扶養控除等申告書を読み取らせる氏名・住所・マイナンバー入力しない番号を隠す手順を通してから、区分Aとして扱うか判断する
顧問先の決算書を読み込ませて、分析コメントの下書きを作る社名・売上・利益・借入区分A3つの要件を満たすサービスだけ。下書きは税理士が確認してから渡す
顧問先との面談の録音から議事録を要約する発言内容・社名・個人名区分A録音することを先方に伝えたうえで、区分Aのサービスで要約する
顧問先へのメール文面を、社名入りで下書きする社名・担当者名・相談の中身区分A区分Aのサービスで作る。社名を入れないなら区分Bで足りる場合もある
ブラウザの拡張機能で、会計ソフトの画面を要約する画面に出ている仕訳・取引先名区分A拡張機能も対象。承認されていない拡張機能は外す
改正された条文や通達の下調べをする公開されている法令・通達区分B事務所が承認したサービスなら、無料版・個人版も可
過去の相談事例を、顧問先名を伏せて研修資料にまとめる加工した事例区分Bか区分A業種・地域・金額で特定できるなら区分Aとして扱う
事務所の採用ページやお知らせの文案を作る事務所の公開予定の情報区分B公開前の未発表情報が入るなら区分Aに上げる
顧問先から預かった第三者との契約書の要点をまとめる相手方の社名・条件相談職員が決めず、管理責任者に相談して区分を決める

表の判定は一般的な当てはめで、実際の線引きは事務所のルールで決まります。迷いやすい場面は、事務所のルールの別表として残しておくと職員が判断しやすくなります。AIに入れてはいけない情報を業種を問わず整理したAIに入力してはいけない情報も、線引きの参考になるでしょう。

区分Aで使えるのは3つの要件を満たすサービスだけ

区分Aの情報を扱えるのは、3つの要件をすべて満たしたサービスに限られると解説されています。解説では「3つの鉄則」とも呼ばれており、1つでも欠けたサービスに顧問先の情報を入れない、という考え方です。

要件1:ビジネス向けの有料プラン

1つ目は、個人向けや無料版ではなく、ビジネス向けの有料プランを選ぶことになります。荒井税理士の解説では、個人向けや無料版を業務で使うことは禁止と紹介されています。天野税理士の解説でも、企業向けの有料プランが条件として挙げられていました。

個人向け・無料版を業務で使わない理由

個人向けのプランは、入力した内容がAIの学習に使われるかどうかを、使う本人の設定に任せている場合があります。たとえばOpenAIの日本語ヘルプでは、ChatGPTの個人向けのFree・Plus・Proでは学習へのデータ共有が既定で有効になっており、本人がオフにすることが出来ると案内されています。一方で、ChatGPT BusinessやEnterpriseなどの法人向け製品は、既定で入力や出力を学習に使わない扱いと説明されているのが特徴です。

個人の設定は職員一人ひとりの画面の中にあるため、事務所からは全員分を確かめにくくなってしまいます。ChatGPTでは、学習をオフにしていても、評価ボタンを押すとその会話が学習に使われることがあります。OpenAIのヘルプには、トレーニングをオプトアウトしていても「良い回答」「良くない回答」などのフィードバックを送ると、その会話全体が学習に使われることがあると書かれています。

※OpenAIの日本語ヘルプの記載は、2026年9月17日に公式ヘルプを開いて確認した内容です。ClaudeやGeminiの個人向けプランの既定値はサービスごとに異なるため、各社の公式ページでご確認ください。

要件2:DPAを結べる企業版で、学習利用をオフにして記録する

2つ目は、組織で管理できる機能があり、DPA(データ処理契約)を結べる企業版を選んで、学習利用をオフにすることです。DPAは、事務所とAI事業者のあいだで、預けたデータをどう扱うかを決める契約を指します。荒井税理士の解説では、顧問先から預かったデータを委託として整理し、事業者を監督する根拠になるものと説明されています。

学習利用をオフにしたかどうかは設定画面で確かめ、確かめた日を記録するのが解説での手順です。評価ボタン(いいね・よくない)は会話の内容が事業者に送られることがあるため、押さない運用も紹介されていました。規約を読んでもDPAの有無が分からない場合は、提供事業者に直接問い合わせるのがよい、と同税理士は話しています。

要件3:ルールを作り、教育で管理する

3つ目は、事務所としてルールを作り、研修で職員に浸透させることです。天野税理士の解説では、承認制と研修による所内ルールの徹底と整理されています。どれだけ条件の良いサービスを契約しても、職員が個人のアカウントで同じ作業をしていては意味がなくなってしまいます。

職員が5人、10人と増えるほど、全員が同じ条件の環境で作業しているかを確かめる手間は大きくなります。事務所で契約した1つの環境にまとめておけば、誰がどのAIを使っているかを所長が把握しやすくなるでしょう。

職員ごとの個人版を、事務所の1つの環境にまとめる

区分Aの要件に合うかは事務所で確かめたうえで、職員ごとの個人版を事務所の契約に寄せる方法もあります。UPGEAR AI(アップギアAI)は、ChatGPT・Claude・Gemini・Perplexityを1つの契約で使える法人向けサービスです(人数無制限)。

ツール選びの7項目の確認表

荒井税理士の解説では、ツールを選ぶときの7項目のチェックリストが紹介されています。後の3つは推奨レベルとされ、前の4つ(特に最初の3つは3つの鉄則に対応)を先に確かめる整理になります。下の表は、その7項目に、確認する場所と台帳に記録する欄を足して、事務所でそのまま使える形に整えました。

確認項目扱い確認する場所の例台帳に記録する欄
ビジネス向けの有料プランか優先契約しているプラン名の表示、請求書、料金ページサービス名・プラン名・契約者・契約日
DPA(データ処理契約)があるか優先利用規約・データ処理補遺、提供事業者への問い合わせの回答DPAの有無・文書名・確認日・確認者
学習利用をオフにできるか優先管理画面のデータの設定、公式ヘルプ設定の状態・確認日・画面の控え
保存場所と削除の方法は明確か優先利用規約・プライバシーポリシー、管理画面の保持期間の設定保存場所・保持期間・削除の手順
認証を取っているか推奨提供事業者のセキュリティのページ認証の名前・確認日
運営元の本拠地はどこか推奨会社概要、利用規約に書かれた運営会社の所在地運営会社名・所在国
著作物の権利関係は明確か推奨利用規約の権利の条項出力の権利の扱い・確認日

表のうち、DPAの有無と学習利用の設定は、サービス側の規約変更で変わることがあります。一度確かめて終わりにせず、後の節で紹介する頻度で見直す前提で台帳を作っておきましょう。

AIの答えは税理士が確認してから使う

3つ目の柱は、AIが出した答えを、税理士が確認してから顧問先に渡すことです。荒井税理士の解説では、確認するのは税理士であり、Human in the loopを税理士に置き換えた(税理士が必ず確認に入る)考え方が紹介されています。天野税理士の解説でも、最終的な判断は税理士が行うと整理されていました。

生成AIは、もっともらしい文章で誤った条文番号や古い税率を答えることがあります。申告書の数字や税務の判断に関わる部分は、AIの答えをそのまま使わず、元の資料や条文に当たり直す手順を入れておきたいところです。職員がAIの回答を確認せずに顧問先へ返す流れは、事務所のルールで止めておきましょう。税理士法第41条の2の監督義務を考えても、誰が確認したかを残す仕組みがあると安心です。

確認の記録は、難しく考える必要はありません。顧問先に出す資料の控えに、AIを使った箇所と確認した税理士の名前、確認した日を書き添えるだけでも、後から振り返ることが出来ます。

AIエージェントは最小限の権限から

会計ソフトやメールを自分で操作するAIエージェントについては、最小限の権限から始めて、安定したら広げる進め方が解説されています。最初は読み取りだけ、次に下書きまで、登録や送信は税理士の承認後だけ、という順に段階を踏むと、誤った登録の影響を小さく抑えることが出来ます。税理士業務でのAIエージェントの使いどころと注意点は、税理士業務のAIエージェントで詳しく紹介しています。

顧問先への説明と同意|ご案内文のひな形

顧問先の情報をAIやクラウドで扱う場合、顧問先への説明と同意は「強く推奨」という書き方になっていると解説されています。義務とまでは書かれていなくても、顧問先から後で尋ねられたときに説明できる形にしておくことが、事務所の信用を守ることにつながります。

荒井税理士の解説では、方法として、顧問契約書に同意の条項を足すか、様式を使って同意をもらうかの2つが挙げられています。新しい顧問先は契約書の条項で、既存の顧問先はご案内文と同意書で、と分けると進めやすいでしょう。

既存の顧問先に送るご案内文は、次のような短い文面から始められます。下の文例は、事務所で手直しして使う前提のたたき台です。

件名:業務でのAI・クラウドサービスの利用について(ご案内)

〇〇株式会社
〇〇様

いつもお世話になっております。〇〇税理士事務所の〇〇です。

当事務所では、業務の正確さと速さを高めるため、AI・クラウドサービスを業務の一部に利用しております。利用にあたっては、次の点を所内規程で定めております。

1. マイナンバーは、生成AIサービスには入力いたしません。
2. 貴社の財務情報や個人情報は、ビジネス向けの有料プランで、入力内容がAIの学習に使われない設定を確認したサービスに限って扱います。
3. AIの出力は、必ず税理士が内容を確認したうえで使用いたします。
4. 利用するサービスと設定は、定期的に確認し記録しております。

つきましては、同封の同意書にご署名のうえ、ご返送いただけますと幸いです。ご不明な点や、AIでの取り扱いを望まれない情報がございましたら、お気軽にお申し付けください。

〇〇税理士事務所 税理士 〇〇〇〇

文例の2番に書く条件は、実際に事務所で確かめた内容に合わせて書き換えてください。確認できていないことをご案内文に書くと、かえって説明できない約束を増やしてしまいます。AIで扱ってほしくない情報があるかを尋ねる一文は、顧問先の安心につながりやすいので残しておくのがおすすめです。

プライバシーポリシーの見直し

事務所のホームページに個人情報の取扱い方針(プライバシーポリシー)を載せている場合は、外部のAI・クラウドサービスを使うことが読み取れる書き方になっているかも見ておきましょう。海外の事業者のサービスを使う場合は、書き足す内容が変わることもあります。どこまで書くかは事務所ごとに事情が違うため、文言は顧問弁護士など専門家に確かめてから直すのが安心です。

事務所版ルールの作り方と規程のサンプル

所内ルールは、役割を決める、規程を作る、様式と台帳をそろえる、研修で伝える、の順で進めると形になりやすくなります。荒井税理士の解説では、3つの役割を決めて4段階で導入する進め方が紹介されています。3つの役割は、管理の責任者(所長クラス)、運用の担当、品質の責任者という分け方です。

職員が数名の事務所なら、所長が管理の責任者と品質の責任者を兼ね、ベテラン職員が運用の担当を受け持つ形が現実的でしょう。職員が数十名になると、品質の責任者を別の税理士に置き、運用の担当は台帳と設定の確認を受け持つ、と分けたほうが回りやすくなります。誰が台帳を更新し、誰が最終確認をするのかを名前で決めておくことが、ルールを形だけで終わらせない近道です。

規程のサンプル(無料・登録不要)

日税連のひな形は会員向けのため、事務所の外からは見ることが出来ません。そこで、解説で示された判定の順と3つの要件に沿って作った、税理士事務所用の規程の見本を税理士業務のAIエージェントのページで配布しています。全19条と様式4つの構成で、日税連の公式のひな形ではありません。税理士の方は、会員専用ページのひな形と併せて確認してみてください。

サンプルの主な中身は次の表のとおりです。事務所名を入れて、自分の事務所の運用に合わない条は書き換えてお使いください。

サンプルで決めていること中身
対象の範囲事務所の情報を外部に送る仕組み全体。AIエージェント・AI-OCR・録音・議事録・クラウドストレージ・拡張機能・スマホアプリを含む
情報の区分マイナンバーは入力しない、顧問先・事務所の機密や個人情報は区分A、公開・一般・匿名化済みは区分B
区分Aのサービスビジネス向け有料プラン・DPAと学習オフ・ルールと教育の3つを満たすものに限る
設定の確認区分Aの設定とDPAの有無は、情報管理責任者が設定画面と契約書・規約で確認し、確認日を別紙1に記録
個人契約・無料サービス区分Bに限り、別紙1で承認した場合だけ使える
守秘義務と確認税理士法第38条・第54条の守秘義務、申告書等は税理士が確認すること、評価ボタンを押さないこと
AIエージェント最小限の権限から始める
誤入力の報告当日中に様式2で報告
研修施行時と年2回以上。新任者は様式3の確認書
顧問先への説明顧問先へのご案内と同意書(様式4)

規程を作ったら、施行日を決めて職員全員に説明する場を一度設けましょう。施行日を決めないまま回覧だけで済ませると、いつから守ればよいのかが曖昧になり、結局は個人の判断に戻ってしまいます。

他の事務所が公開しているルールを参考にするとき

ホームページで自分たちのAIの利用方針を公開している税理士法人や事務所の例を参考にする場合は、そのまま写すのではなく、日税連の解説で示された判定の順と3つの要件に照らして足りない項目がないかを見てみてください。規模の大きな法人のルールは、専任の担当者がいることを前提に書かれていることがあり、職員数名の事務所では回らない手順が混ざることもあります。

インシデントが起きたときの5つの手順

顧問先の情報を個人版のAIに入れてしまった、共有リンクを誤って外部に送った、といった事故が起きたときの流れも決めておきましょう。荒井税理士の解説では、止める・記録する・報告する・対応する・再発防止の5つの手順が紹介されています。サンプルの規程では、誤入力は当日中に様式2で報告する定めです。起きた直後の動き方は、AIのインシデント対応でも順を追って紹介しています。

研修・確認・見直しの頻度の早見表

ルールは作った後の点検で中身が保たれるため、頻度を先に決めておくと運用が続きやすくなります。荒井税理士の解説で紹介されている頻度と、サンプルの規程で決めている頻度を並べると次のとおりです。

何をするか解説で紹介されている頻度サンプルの規程での決め方担当の例
職員の研修年2回以上施行時と年2回以上。新任者は様式3の確認書管理の責任者
全体の確認(ルールの見直し・利用状況の確認)少なくとも年1回利用状況の確認は半年に1回以上管理の責任者・品質の責任者
区分Aなど重点対象の定期確認四半期に1度区分Aのサービスは四半期に1回以上運用の担当

四半期ごとの確認では、区分Aのサービスの契約プラン、学習利用の設定、DPAの有無、利用している職員の顔ぶれを台帳と見比べるとよいでしょう。年に一度の見直しでは、新しく入れたサービスや使わなくなったサービスを台帳に反映させ、規程の文言も古くなっていないかを確かめていきます。研修の中身と進め方は、会計事務所のAI研修で詳しく扱っています。

決算期や確定申告の時期は点検が後回しになりがちです。四半期の確認日は、繁忙期を外した月にあらかじめカレンダーへ入れておくのがおすすめになります。

明日からの最初の一歩チェックリスト

荒井税理士の解説で最初の一歩として挙げられている項目を、明日から順に手を付けられる形に並べ直しました。事務所の規模によって、かかる期間は変わってきます。

  • 使っているAI・クラウドを洗い出す生成AIだけでなく、クラウドストレージ・AI-OCR・録音や議事録のアプリ・ブラウザの拡張機能・スマホアプリまで、職員に聞き取って台帳に書き出します。
  • 個人版・無料版で顧問先の情報を扱っていないか確かめる見つかっても責めずに、まずは区分Bの用途に限るか、事務所の環境へ移すかを決めます。
  • 区分Aで使うサービスを企業版にそろえる顧問先の財務情報や個人情報を扱う作業は、ビジネス向けの有料プランに寄せます。
  • DPAと学習利用オフを確認して記録する設定画面と規約で確かめ、確認した日と確認した人を台帳に残します。評価ボタンを押さないことも併せて伝えます。
  • 規程に事務所名を入れて制定するサンプルや会員向けのひな形をもとに、施行日を決めて職員全員に説明します。
  • 3つの役割を決める管理の責任者・運用の担当・品質の責任者を名前で決めます。小さな事務所では兼務でかまいません。
  • 顧問先から同意をもらう顧問契約書に同意の条項を足すか、ご案内文と同意書を送ります。
  • マイナンバーを隠す手順を所内で共有する紙で隠すのか、取り込んだ後に消すのかを1つに決め、手順書にして配ります。

全部を一度に終わらせようとすると、日々の業務に押されて途中で止まりやすくなってしまいます。まずは洗い出しと個人版の確認の2つだけを今週中に終わらせ、残りは担当を決めて期日を入れていくやり方がおすすめです。

職員全員のAIを、事務所が契約した1つの環境に

UPGEAR AI(アップギアAI)は、ChatGPT・Claude・Gemini・Perplexityを1つの契約で使える法人向けサービスです。管理者ダッシュボードで利用ログ・権限・モデルのON/OFFを管理でき、よく使う指示と手順を事務所内だけで共有するBOTも作れます。基盤はAWSの日本リージョンで稼働しています。料金は月額30,000円(税抜)から。どのプランも利用人数は無制限で、料金は利用量に応じたプラン設計です(人数の目安はライト1〜5名、スタンダード6〜20名、プレミアム21〜50名)。初期費用100,000円(税抜)が別途かかります。

UPGEAR AIの詳細を見る

よくある質問

日税連のAI・クラウド活用ガイドラインはどこで読めますか?
日税連の会員専用ページに掲載されており、読めるのはログインできる税理士(会員)だけです。2026年9月30日付で会員向けのお知らせが出ています。職員の方は、所属する事務所の税理士に原文の確認を依頼してください。
ガイドラインはいつ公表されましたか?
日税連の会員専用ページのお知らせによると、デジタル・システム委員会が2026年9月にVer1.0を策定し、2026年9月30日付で会員向けにお知らせが出ています。
区分Aと区分Bの違いは何ですか?
本文を読んだ税理士の解説では、顧問先や事務所の機密情報・個人情報を含むものが区分Aで、3つの要件を満たすサービスだけで扱うと説明されています。公開情報・一般的な情報・匿名化済みの情報は区分Bで、事務所が承認したサービスであれば無料版や個人版でも使えると紹介されています。マイナンバーを含む情報は、どちらにも入れず入力しない扱いです。
無料版のChatGPTを業務で使ってもよいですか?
解説では、個人向けや無料版の業務利用は区分Aの情報では認められず、区分Bの情報に限り、事務所が承認した場合に使えると整理されています。顧問先の名前や数字が入る作業には使わず、条文の下調べなど公開情報の範囲にとどめるのが安全です。
顧問先の同意は必ず必要ですか?
解説によると、ガイドラインでは顧問先への説明と同意は「強く推奨」という書き方になっています。方法としては、顧問契約書に同意の条項を足すか、様式を使って同意をもらうかの2つが挙げられています。
規程のひな形は会員以外でも使えますか?
日税連のひな形は会員向けのため、会員以外は入手できません。解説で示された判定の順と3つの要件に沿って作った規程の見本(全19条・様式4つ)を、税理士業務のAIエージェントのページで無料配布しています。日税連の公式のひな形ではないため、税理士の方は会員向けのひな形と併せて確認してください。

まとめ

日税連の「税理士事務所のためのAI・クラウド活用ガイドライン」は、2026年9月にVer1.0が策定され、9月30日に会員向けにお知らせが出た文書です。本文は税理士しか読めませんが、読んだ税理士の解説によると、要点は「入れる前に区分を決める」「区分Aは3つの要件を満たすサービスだけ」「AIの答えは税理士が確認する」の3つになります。

事務所で取り組むことは、使っているAI・クラウドの洗い出し、区分Aで使うサービスの企業版へのそろえ直し、DPAと学習利用オフの確認と記録、規程の制定、顧問先からの同意、そして研修と定期確認です。規程は、配布しているサンプルを土台に、会員向けのひな形と見比べながら事務所の形に合わせてみてください。

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