
NotebookLM Enterprise(現 Gemini Notebook Enterprise)とは、資料を読み込ませて答えさせるGoogleのAI「NotebookLM」を、会社のGoogle Cloudプロジェクトの中で管理しながら使うための企業向け版です。会社で使うための買い方は、Google Workspaceに付いてくる版を使う、NotebookLM Enterpriseを単体で1ライセンス月9ドル・最低15ライセンスから買う、Gemini Enterpriseに含まれる形で買う、の3経路があり、社員15〜50名の会社では「すでにWorkspaceを使っているか」と「15ライセンス分を払ってまでEnterpriseの管理機能が要るか」で答えが決まります。この記事では、稟議に載せる金額を人数別に円で計算し、購入の画面操作、Enterpriseにすると使えなくなること、稟議書のひな形までを順に示します。
※NotebookLMは2026年7月から「Gemini Notebook」に名称が変わりました(公式サイトのよくある質問)。企業向け版は、公式ドキュメントでは Gemini Notebook Enterprise、製品ページでは Gemini Notebook for enterprise と表記されています。検索で使われることの多い旧名称に合わせ、この記事ではNotebookLM Enterpriseと書きます。料金・条件・仕様は、2026年9月18日時点でGoogle Cloudの製品ページと公式ドキュメントを確認した内容で、変更される場合があります。
ノートブックの作り方、追加できるソースの種類、Studioの生成機能、入れてよい資料の判断表、社内ルールの条文例といった全体像は、親記事のNotebookLMの使い方|手順・料金と会社での注意点で解説しています。この記事は、その中から「会社として、どの契約をいくらで買うか」という1つの問いだけを掘り下げます。
結論|月9ドル×最低15ライセンス、買い方は3経路
NotebookLM Enterpriseを単体で買う場合の料金は、1ライセンスあたり月9ドルで、最低15ライセンスからです。ただし会社でNotebookLMを使う方法はこれだけではなく、次の3つの経路があります。
- Workspace付属の版を使う:Google WorkspaceのBusiness Starter以上などのエディションでは、NotebookLM(Gemini Notebook)をGmailやGoogleドキュメントと同じコアサービスとして使えます。Workspaceの料金ページでは、Business Starterが「基本的なアクセス」、Business Standard以上が「より広いアクセス」と表示されています。すでにWorkspaceを契約していれば、新たな契約は要りません。
- NotebookLM Enterpriseを単体で買う:Google Cloudで契約します。製品ページの表記は、30日間の試用のあと1ライセンス月9ドル(最低15ライセンス)です。
- Gemini Enterpriseに含まれる形で買う:Gemini EnterpriseはNotebookLM Enterpriseを含む親の製品で、公式の製品ページの目安はBusinessが1ライセンス月21ドルから、Standard・Plusの欄は月30ドルから(Plus単独の金額は公開ページになく見積もり)です。社内データの検索やAIエージェントも使いたい会社向けの経路です。
判断の近道:Workspaceをすでに使っていて、Googleドキュメント・スライド・PDFが資料の中心なら、まず経路1で試すのが順当です。Microsoft 365が中心でExcelをそのまま読ませたい、データの保存先の地域を自社で選びたい、情報システム部門がGoogle Cloudの権限管理で統制したい、といった要件があれば経路2を検討します。ノートブック以外の社内検索やエージェントまで一度に入れるなら経路3です。
料金|1ライセンス月9ドルと最低15ライセンスの計算
稟議に載せる金額は、1ライセンス月9ドル×人数(15未満なら15)×12か月で計算できます。Google Cloudの製品ページは日本語表示でも料金が英語のままで、原文は「30-day trial」「then $9 USD per license per month (minimum 15 licenses)」です。
人数別の月額・年額(1ドル=150円・税抜で計算した場合)
社員15〜50名の会社で使う人数ごとに、単体で買う場合、Gemini Enterprise Businessで買う場合、参考としてWorkspace Business Standardの料金を並べました。ドルの金額は1ドル=150円で計算した税抜の円額です。
| 使う人数 | NotebookLM Enterprise単体 (月9ドル・最低15) | Gemini Enterprise Business (月21ドルから) | 参考:Workspace Business Standard (年間プラン月1,600円・税別) |
|---|---|---|---|
| 10人 | 月135ドル(20,250円) 年1,620ドル(243,000円) ※15ライセンス分 | 月210ドル〜(31,500円〜) 年2,520ドル〜(378,000円〜) | 月16,000円 年192,000円 |
| 15人 | 月135ドル(20,250円) 年1,620ドル(243,000円) | 月315ドル〜(47,250円〜) 年3,780ドル〜(567,000円〜) | 月24,000円 年288,000円 |
| 20人 | 月180ドル(27,000円) 年2,160ドル(324,000円) | 月420ドル〜(63,000円〜) 年5,040ドル〜(756,000円〜) | 月32,000円 年384,000円 |
| 30人 | 月270ドル(40,500円) 年3,240ドル(486,000円) | 月630ドル〜(94,500円〜) 年7,560ドル〜(1,134,000円〜) ※26席以上は請求書発行(オフライン)での契約 | 月48,000円 年576,000円 |
| 50人 | 月450ドル(67,500円) 年5,400ドル(810,000円) | 月1,050ドル〜(157,500円〜) 年12,600ドル〜(1,890,000円〜) ※26席以上は請求書発行(オフライン)での契約 | 月80,000円 年960,000円 |
※2026年9月18日時点の表示です。NotebookLM Enterpriseは製品ページ(cloud.google.com/gemini-enterprise/gemini-notebook)、Gemini Enterprise Businessは製品ページ(cloud.google.com/gemini-enterprise)の「ライセンスあたり月額(米ドル)より」の金額で、実際の契約額は見積もりによります。円額は1ドル=150円で計算した税抜の金額で、日本での利用には別に10%の消費税がかかります(Google Cloudの請求ドキュメント)。Google Cloudの円建て価格表(SKU一覧)では、Gemini Enterprise Businessは1か月払いで月3,700円、1年払いで年37,200円と表示されています(2026年9月15日時点)。Workspaceは日本語の料金ページの年間プランの税別価格で、GmailやGoogleドライブなどWorkspace全体の料金です(フレキシブルプランは月1,900円)。
表から読み取れるのは、NotebookLMの機能だけが目的なら、単体のほうがGemini Enterprise Businessより安く収まるということです。一方、すでにWorkspace Business Standardを契約している会社にとっては、表の右端の金額はすでに払っている費用で、NotebookLMのために増える支出はありません。この差が、経路を選ぶときの出発点になります。
最低15ライセンス:15人未満でも15人分かかる
公式のライセンス文書には、サブスクリプションには少なくとも15個のライセンスが含まれ、最大5,000個まで含められると書かれています。5,000個を超える場合は営業担当への問い合わせです。つまり10人で使う会社も15ライセンス分の月135ドルを払うことになり、1ドル=150円・税抜で計算すると、実際に使う10人で割った負担は月2,025円相当になります。人数が少ないほど、単価9ドルという表示と実際の負担の差が開きます。
年単位の契約と月単位の契約・自動更新
ライセンス文書では、有料プランは月単位または年単位のサブスクリプションを購入でき、どちらも自動更新を設定できると説明されています。年間契約が前提と書かれた解説も見かけますが、公式の文書上は月単位でも買えます。年単位にした場合の割引の記載は、確認した公式ページにはありません。まず月単位で始め、定着を確かめてから期間を見直す進め方も取れます。
試用期間は公式ページで30日と14日の2通り
試用の期間は、公式同士で記載が一致していません。製品ページは「30-day trial」、ライセンス文書は「5,000 ライセンスの 14 日間のトライアル サブスクリプション」をフル機能で使える無料トライアル ティアと説明しています(いずれも2026年9月18日時点)。社内で評価の日程を組む前に、申し込み画面で実際の期間を確かめてください。14日だと、資料を集めてノートブックを作り、現場に使ってもらって感想を集めるまでの時間が足りない可能性があります。
通貨と税の扱い
製品ページの料金は米ドル表示で、税の記載はありません。Google Cloudの請求ドキュメントには「日本のお客様によるGoogle Cloud の利用には 10% の JCT が適用されます」とあり、日本での利用には10%の消費税がかかります。支払い通貨の一覧では、日本のセルフサービス(自動支払い)の請求先アカウントは日本円で支払えます。米ドルの価格は、大手金融機関が公開している換算レートで円に換算され、そのレートは毎月の初めに設定されます(Google Cloudの請求ドキュメント)。稟議には為替の前提(この記事では1ドル=150円)と税抜・税込の別を書き、実際の換算レートは経理担当がGoogle Cloudの請求窓口か販売代理店に確認する、という一行を添えておくと後で揉めません。
3つの購入経路の違い|Workspace付属・単体・Gemini Enterprise同梱
3つの経路の違いは、料金よりも「どの管理画面で、どの規約のもとで、データをどこに置くか」にあります。
Workspace版との違いと、どちらを選ぶか
Workspace版は、Workspaceの管理者が有効にすれば社員の仕事用アカウントで使える形です。公式ヘルプでは、アップロードしたファイル、チャット、モデルの出力は人間のレビュアーが確認することも生成AIモデルの改善に使われることもないとされ、Google Cloud 利用規約が適用されます。Enterpriseは、Google Cloudのプロジェクトの中に専用の環境を作り、Google Cloud Platform/SecOps 利用規約のもとで使います。
どちらを選ぶかは、次の条件で分けられます。
- Workspace版で足りる会社:Workspaceを使っている。資料はGoogleドキュメント・スライド・PDFが中心。社内のアカウントで使えることと、学習に使われないことが確認できれば十分。
- Enterpriseを検討する会社:ID管理がMicrosoft Entra IDなどGoogle以外にある。Excelファイルをそのままソースにしたい。Google Cloudの権限管理(IAM)で利用者を統制したい。データの保存先の地域を指定したい。ノートブックの作成や共有をAPIで自動化したい。
注意したいのは、あとから乗り換えるときです。公式FAQは「既存の Gemini Notebook Plus ノートブックは、Gemini Notebook Enterprise または Gemini Enterprise で使用することも、直接アクセスすることもできません」と明記しています。FAQはGemini Notebook Plusを「Google Workspace 向けに設計」された製品と説明しており、Workspace版(Gemini Notebook Plus)で作ったノートブックはEnterpriseに持ち込めない前提で計画を立てます。個人向けの版からの移行については、確認した公式ページに記載がありません。
Gemini Enterprise同梱で買う場合とエディション別にできること
Gemini Enterpriseのどのエディションを買うかで、ノートブックについてできることが変わります。公式のエディション比較ドキュメント(最終更新2026年9月17日)の表では、次のとおりです。
- Business・Standard・Plus:ノートブックの作成と公開、公開されたノートブックとのチャットができる
- Frontline:公開されたノートブックとのチャットだけができる(作成はできない)。Standard・Plusのユーザーが150人以上いることが条件
- 従量課金制(Pay-as-you-go):どちらもできない。製品ページにも「Gemini Notebook は現在含まれていませんが、近日中に提供予定です」とある
ここにも公式同士の食い違いがあります。Businessの人数は、製品ページが「ユーザー数: 最大 300 人」、エディション比較ドキュメントが「1 ~ 500 人のユーザー」です。また、製品ページのBusiness欄(Gemini Notebook for enterprise などの事前構築済みエージェント)とエディション比較ではBusinessでも使える扱いですが、NotebookLMの公式ヘルプ「Gemini Notebook をアップグレードする」でGoogle Cloud経由の対象として挙がっているのはGemini Notebook for Enterprise、Gemini Enterprise Standard・Plus・Frontlineで、Businessは載っていません。Businessでノートブックを使う前提で稟議を組むなら、見積もりの段階で営業担当に書面で確認しておくのが安全です。Gemini Enterprise全体の料金の読み方はGemini Enterpriseの料金で解説しています。
Gemini Enterpriseの検索との連携
公式の概要ページによると、NotebookLM EnterpriseはGemini Enterpriseのデータソースとして有効にでき、Gemini Enterpriseからノートブックをタイトルで検索できます(パブリック プレビューの機能)。また、同じプロジェクトとロケーションを使っていれば、ノートブックはNotebookLM EnterpriseとGemini Enterpriseアプリの両方から開けます。後からGemini Enterpriseを足す可能性があるなら、プロジェクトとロケーションを最初から決めておき、移行時の扱いは営業担当に確認します。
無料版・Google AI Proとの違い|料金・上限・データの扱い
無料版とGoogle AI Proは個人向けで、会社の契約には使えません。Google AIのプランのよくある質問には「Google AI のプランにお申し込みいただけるのは、個人の Google アカウントのみです」とあり、Workspaceの利用者には既存のサブスクリプションへのアドオンを案内しています。Google AI Proの料金は、2026年9月16日時点のGoogle Oneの料金ページで月額2,900円、無料版は0円です。個人向けプランの詳細はGoogle AI Proの料金と会社での注意点をご覧ください。
データの置き場所・認証・共有範囲の違い
公式の概要ページには、個人向けとEnterpriseの違いを並べた表があります。要点は次のとおりです。
- データの置き場所:個人向けはユーザーが指定できない。Enterpriseは会社のGoogle Cloudプロジェクト内に保持される
- 認証:個人向けは個人のGoogleアカウント。EnterpriseはCloud Identityか、Microsoft Entra ID・Okta・Pingなどの外部のIDプロバイダ(IdP)
- 画面のURL:個人向けは notebook.google.com。Enterpriseは notebook.cloud.google.com に地域とプロジェクト番号が入った専用のURL
- 共有:個人向けは一般公開やメールでの共有ができる。Enterpriseは同じGoogle Cloudプロジェクト内のユーザーだけ
- コンプライアンス機能:EnterpriseにはVPC Service Controls、CMEK、データ所在地などの機能がある
利用上限の比較(ノートブック500・ソース300・クエリ500・音声概要20)
公式の概要ページに示されたEnterpriseの上限は、ノートブックがユーザーあたり500個、ソースがノートブックあたり300個、ソースの大きさが1つあたり500MBまたは50万語、クエリがユーザーあたり1日500件、音声概要がユーザーあたり1日20件、スライドデッキとインフォグラフィックが1日15件です。個人向けは、公式ヘルプの表でノートブック数が無料100件・Google AI Pro 500件、1ノートブックのソース数が無料50件・Google AI Pro 300件で、アップロードできるファイルは200MBまでです。
件数だけで見ると、EnterpriseとGoogle AI Proはノートブック500・ソース300で並びます。違いは、1ソースあたりの大きさ(500MBと200MB)と、会社の管理下に置けるかどうかです。なお個人向けは2026年9月2日からコンピューティング量に基づく上限に変わっており、1日あたりの回数をそのまま比べることはできません。
入力データが学習に使われないか
公式ヘルプは、Google Cloud経由の企業向け版について、アップロードしたファイルはGCPプロジェクト内に残り、データのリージョン指定が尊重されるとし、「すべてのファイル、チャット、モデル出力は、人間のレビュアーが確認することも、生成 AI モデルの改善に使用されることもありません」と記載しています。個人向けも、フィードバックを送らない限り学習には使われないとされていますが、高評価・低評価を送ると関連する会話と資料がレビューの対象になり得ます。この点の詳しい扱いは親記事で整理しています。
Enterpriseで増える管理機能|ファイル形式・セキュリティ・認証
Enterpriseに払う差額で得られるのは、主に情報システム部門が使う統制の機能です。現場の使い勝手は、個人向けとよく似た画面のままです。
DOCX・PPTX・XLSXの扱いとExcelの上限
概要ページの比較表で、Enterprise側にだけ書かれているソース形式はDOCX(Word)、PPTX(PowerPoint)、XLSX(Excel)です。ただし個人向けの公式ヘルプも、現在はWord(docx)とPowerPoint(pptx)を対応形式に挙げています。確認したページの範囲で差として残るのは、Excelのファイルをそのままソースにできる点です。
Excelには固有の制限があります。1つのシートで処理できるアクティブなセルは約15万個で、複数のシートは別々に処理されます。表の構造を保つために変換する際に罫線などを表す文字が足されるため、画面上の語数が50万語未満でも上限を超えることがあると説明されています。会計データや台帳のような大きな表を読ませる予定があるなら、試用期間に実物のファイルで確かめてください。
VPC Service Controls・IAM・CMEK
いずれもGoogle Cloudの統制の仕組みです。VPC Service Controls(VPC-SC)は、Google Cloud上のデータを決めた境界の外に出さないための仕組みです。IAMは、誰にどの操作を許すかを役割(ロール)で管理する仕組みで、NotebookLM Enterpriseでは「Cloud NotebookLM 管理者」と「Cloud NotebookLM ユーザー」の2つのロールで利用者を管理し、ノートブックごとのオーナー・編集者・閲覧者のロールは共有の操作に応じて自動で付きます。CMEK(顧客管理の暗号鍵)は、暗号化の鍵を自社で管理する仕組みで、設定手順のページでは省略可とされ、厳格な規制要件や社内方針がある場合だけ使えばよく、ほとんどの場合はGoogleの既定の暗号化で十分と説明されています。
外部IdP(Microsoft Entra ID・Okta等)で認証でき、Workspaceがなくても導入できる
設定手順のページでは、認証の方式としてCloud Identity(Workspaceを使っている場合を含む)と、Workforce Identity 連携による外部IdP(Microsoft Entra ID、Okta、Ping、PingFederate、そのほかOIDCやSAML 2.0に対応したIdP)が挙がっています。Microsoft 365を中心に使っていてWorkspaceを契約していない会社でも、社員が普段のIDでログインする形で導入できるということです。ただし、IdPはGoogle Cloudプロジェクトごとに1つしか選べず、Microsoft Entra IDでグループが150を超える場合は別の設定手順が必要です。ここは情報システム部門か導入を支援する事業者の作業になります。
共有は同じGoogle Cloudプロジェクト内だけ・一般公開はできない
Enterpriseのノートブックは作った本人以外には非公開で、共有できる相手は同じGoogle Cloudプロジェクト内のユーザーだけです。概要ページには「ノートブックを一般公開することはできません」と書かれています。取引先や顧問先とノートブックを一緒に使う運用は、この仕様では組めません。社内の資料を外に出さないという点では安心材料になり、社外と共有したい場面では制約になります。
管理者画面とユーザー画面が別・プロジェクト専用のアクセスURL
Enterpriseには2つの画面があります。管理者はGoogle Cloudコンソールで機能を有効にし、認証と権限を設定します。社員が使うのは個人向けとよく似たノートブックの画面で、そのURLはプロジェクトごとに異なり、管理者が社員に配る必要があります。社員が検索でたどり着いた個人向けの画面で業務資料を扱ってしまわないよう、社内ポータルにブックマークを置くなど、正しい入口を案内する作業も導入計画に入れておきます。
ソースに基づいて答える仕組みとハルシネーション
NotebookLMは、追加した資料の静的なコピーを作り、その内容に基づいて質問に答えます。元のファイルが書き換えられることはありません。答えの根拠が追加した資料に限られるため、もっともらしい作り話(ハルシネーション)を確かめやすいのが特長ですが、誤りがなくなるわけではありません。Enterpriseでも同じで、数字や期限は引用元を人が読んで確かめる手順が必要です。
管理機能を使うにはEnterpriseの契約が別に要り、最低ライセンス数も決まっています。UPGEAR AI(アップギアAI)は、ChatGPT・Claude・Gemini・Perplexityを1つの契約で使える法人向けサービスです(人数無制限)。
Enterpriseにすると使えなくなること・移せないもの
Enterpriseは上位版ですが、個人向けの機能がすべて入っているわけではありません。公式のFAQとドキュメントに書かれている制約を1か所にまとめます。
- Nano Bananaは使えない:FAQに「Gemini Notebook Enterprise では Nano Banana はサポートされていません」とあります。
- VPC-SCで保護するとウェブのURLをソースにできない:公開ウェブを読みに行く通信が境界の外に出るためです。GoogleドライブのドキュメントやYouTube動画のリンクは引き続き追加できます。
- 機密情報は伏せ字にされず止められる:Model Armorで機密データの検出を設定し、適用タイプを「検査してブロック」にしている場合、該当するプロンプトや回答はマスキングされず、リクエストごとブロックされます。
- Gemini Notebook Plusのノートブックは持ち込めない:Enterpriseでは使うことも直接開くこともできません。
- 組織をまたいだ移動はできない:ノートブックとソースを手動でエクスポートし、移動先でインポートする必要があります。
- ライセンスは地域(マルチリージョン)ごと:ライセンスはマルチリージョンに固有で、2つの地域のノートブックを使う人にはそれぞれにライセンスが要ります。
- データの保存先はグローバル・米国・EUから選ぶ:概要ページは、ソースデータが米国またはEUのマルチリージョンにあるプロジェクトに保存されると説明し、ライセンス文書はサブスクリプションの地域をグローバル・米国・EUから選ぶ形で、規制上の理由がなければグローバルを勧めています。確認したページには、日本国内を保存先に指定できるという記載はありません。
- 契約が切れるとログインできない:サブスクリプションの有効期限が切れると、ユーザーはログインできなくなります。更新の担当者と期日を決めておきます。
乗り換え計画の落とし穴:「まずWorkspace版(Gemini Notebook Plus)で使い込み、定着したらEnterpriseへ移す」という計画は、そのノートブックをEnterpriseに持ち込めないため、作り直しの工数が発生します。Enterpriseが最終形になりそうなら、試用の段階からEnterpriseで作るほうが手戻りがありません。
購入の手順と席数の上限
単体の購入は、Google Cloudコンソールで準備をしてから、サブスクリプションを追加してライセンスを割り当てる流れです。公式の設定手順とライセンス文書に沿って、画面の操作を並べます。
準備(設定手順のページより)
- 組織のIdPをGoogle Cloudで構成する(Cloud Identityか、Workforce Identity 連携による外部IdP)
- Google Cloudプロジェクトを作成し、請求先アカウントを有効にして、必要なAPIを有効にする
- 設定を担当する人に「Cloud NotebookLM 管理者」ロールを付ける
- コンソールでIdPを設定し、社員向けの画面のURLをコピーして配る
- 必要な場合だけ、顧客管理の暗号鍵(CMEK)を登録する
- 使う社員に「Cloud NotebookLM ユーザー」ロールを付ける(ロールに加えてライセンスが必要)
サブスクリプションの追加(ライセンス文書より)
操作する人には「Cloud NotebookLM 管理者」と「Gemini Enterprise 管理者」のロールが必要です。
- Google Cloudコンソールで[Gemini Enterprise]のページを開く
- [ユーザーの管理]をクリックし、サブスクリプションのマルチリージョンを選ぶ
- [サブスクリプションを追加]をクリックし、ライセンス数と期間を入力して、ティア(無料トライアルか有料)を選ぶ
- [ユーザーを追加]でメールアドレスを入れて手動で割り当てるか、[ライセンスを自動的に割り当てる]を選ぶ
自動で割り当てる設定では、手動のライセンスを持っていない人が初めてログインするたびにライセンスが使われ、残りがなくなると、それ以降の人にはアクセスできないというメッセージが表示されます。先に使い始めた人から埋まるので、15ライセンスを誰に渡すかを決めているなら、手動で割り当てるほうが確実です。
席数の上限と請求書払い
NotebookLM Enterprise単体のライセンス文書では、1つのサブスクリプションのライセンス数は15〜5,000です。Gemini Enterpriseのサブスクリプション文書には別の上限があり、セルフサービス(オンライン)と再販の請求先アカウントでコンソールから管理する場合はアカウントあたり最大25席、請求書発行(オフライン)の請求先アカウントは最大1,000シートと書かれています。それを超える場合は、営業担当に連絡してオフラインで注文するか、上限の除外を申請します。Gemini Enterprise同梱の経路で26人以上に配るなら、最初から請求書発行の形で相談するほうが手戻りがありません。なお、単体のライセンス文書には25席の記載はありません。
15人未満の会社はどう選ぶか
使う人が15人に満たない会社では、単体のEnterpriseは15ライセンス分を払う前提になります。選択肢は次の4つです。
- Workspaceを使っているなら付属版から始める:Business Standard以上なら、追加の支出なしでノートブックを作れます。Excelをそのまま読ませたい、データの地域を指定したいといった不足が具体的に出てから、Enterpriseを検討します。
- 15ライセンス分を払ってEnterpriseを買う:10人で使う場合、1ドル=150円・税抜で計算すると月20,250円、年243,000円です。空いている5ライセンスは、試しに使いたい他部署の人に回せます。
- Gemini Enterprise Businessで買う:エディション比較では1人から契約でき、社内検索やエージェントも含みます。ただし月21ドルからで、10人なら月210ドル(31,500円)からと、単体の15ライセンス分を上回ります。ノートブックの利用可否は前述のとおり公式同士で記載が分かれているため、事前確認が必要です。
- ほかの法人向けAI環境で資料を読み込ませる:NotebookLMにこだわらず、社内資料を読ませて答えさせる機能を持つ法人向けサービスを、全社員に配った場合の総額で比べる方法です。NotebookLMは資料の読み込みには強い一方、文章作成やWeb調査は別のAIを使う場面が多く、両方の費用を足して比べると判断を誤りにくくなります。国内の法人向けサービスの料金は法人向け生成AIサービスの比較にまとめています。
稟議書に書く項目とひな形
稟議書には、金額だけでなく、データの置き場所と代替案を必ず書きます。決裁者が気にするのは、費用の妥当性と、社内資料を外部サービスに入れてよいかの2点だからです。次のひな形は、20人で単体を月単位で契約する場合の記入例です。
- 件名:資料検索AI(NotebookLM Enterprise)の試験導入について
- 目的:社内規程・マニュアル・過去の提案書を読み込ませ、問い合わせ対応と資料探しの時間を減らす
- 対象:総務部・営業部の20名(利用者は名簿で管理し、ライセンスは手動で割り当てる)
- 契約形態:Google CloudでNotebookLM Enterprise単体を月単位で契約(自動更新は試用評価のあとに判断)
- 金額:1ライセンス月9ドル×20=月180ドル、年2,160ドル。1ドル=150円で計算した場合は月27,000円、年324,000円。いずれも税抜で、別に10%の消費税がかかる。為替により変動し、実際の換算レートは請求窓口に確認中
- データの扱い:資料は自社のGoogle Cloudプロジェクト内に保存(地域はグローバル・米国・EUから選択。規制上の理由がなければグローバルが公式の推奨)。生成AIモデルの改善に使われない旨が公式ヘルプに記載。共有は社内のプロジェクト内に限られ、一般公開は不可
- 管理者:情報システム担当(Cloud NotebookLM 管理者)。退職・異動時はライセンスとロールを外す
- 入れてよい資料:社内の情報区分に従う。個人情報・顧客データは当面入れない
- 代替案と不採用の理由:Workspace付属版(自社はWorkspace未契約のため不可)、Gemini Enterprise Business(月21ドルからで、ノートブック以外の機能は現時点で不要)、ほかの法人向けAI環境(総額と用途を比較した結果を添付)
- 評価の方法:試用期間中に、質問への回答の正確さ、1件あたりの調べ時間、使った人数を記録し、継続するか判断する
※上の金額は2026年9月18日時点の製品ページの表示にもとづく記入例です。実際の稟議では、提出時点の公式ページと見積もりで金額を差し替えてください。
導入前チェックリスト
契約の前に、次の項目を社内で確認しておくと、導入後の手戻りを防げます。
- どの経路で買うかを決めたかWorkspaceを使っているか、Gemini Enterpriseのほかの機能が要るかで、付属版・単体・同梱のどれにするかを決めます。
- 使う人数と、15ライセンスとの差を確かめたか15人未満なら、空くライセンスを誰に回すかも決めておきます。
- 試用の期間を申し込み画面で確かめたか製品ページは30日、ライセンス文書は14日です。評価の日程はこれに合わせます。
- データの保存先を取引先に説明できるか米国・EU・グローバルのどれにするかを決め、顧問先や取引先との契約に反しないかを確認します。
- 社員のIDをどこで管理しているかMicrosoft Entra IDなどの外部IdPを使うなら、Workforce Identity 連携の設定を誰が行うかを決めます。
- 社外との共有が必要ないかEnterpriseのノートブックは同じプロジェクト内でしか共有できず、一般公開もできません。
- 使えなくなる機能が業務に影響しないかNano Bananaの非対応、VPC-SC下でのURLソースの不可を、使い方と照らし合わせます。
- 請求の通貨と税、更新の担当を決めたか米ドル表示・税抜の料金を円でどう処理するか(換算レートと10%の消費税)を経理と決め、期限切れでログインできなくなる事態を防ぎます。
会社で安全に使うには|ノートブックの外まで含めて考える
NotebookLM Enterpriseを入れても、会社の生成AI利用が安全になるのは、ノートブックの中だけです。社員が日々使うAIは資料の読み込みだけではないため、次の4点をノートブックの外まで含めて整えます。
- 学習させない設定を個人任せにしない:個人アカウントでは、設定やフィードバックの扱いが本人の操作に左右されます。会社として契約した環境に業務を寄せ、設定を一律にします。
- 利用の記録を会社側で持つ:製品ページは、組織向けの共有ノートブックの作成と利用状況の分析(usage analytics)を主な機能に挙げています。誰がどのAIをどう使っているかを、会社が把握できる状態にします。
- 配る人と配らない人を作らない:15ライセンスを一部の人に配ると、配られなかった人が個人のアカウントで同じことを始めることがあります。会社から見えない利用、いわゆる野良AI(シャドーAI)の典型的な入口です。
- 複数のAIを用途で使い分ける:NotebookLMは決まった資料を読むのに向き、文章の下書きやWebでの調べものは別のAIが向く場面が多くあります。主要なAIの得意分野は主要4AIの違いと使い分け、複数のAIを1つの環境で使う方法はマルチAIとはで解説しています。
点検項目の全体は生成AIのセキュリティ対策チェックリスト、社内ルールの作り方は生成AIの社内ガイドラインの作り方にまとめています。NotebookLMのためだけに席を買う前に、会社で使うAI全体の費用と管理の手間を、全社員に配った場合の総額で比べておくと、後から契約が増えて管理が分散する事態を避けられます。
NotebookLMだけのために席を買う前に、4つのAIを1契約で配る選択肢と総額で比べる
UPGEAR AIは、ChatGPT・Claude・Gemini・Perplexityの4つのAIを1つの契約・1つの画面で使える法人向けプラットフォームです。自社資料を読み込ませて回答させる社内文書RAGも備え、全モデルで学習非利用を標準適用し、会話履歴・利用ログ・アカウントは国内サーバー(AWSの日本リージョン)で管理します。UPGEAR AIの料金は月額30,000円(税抜)からで、ユーザーごとの課金はありません(人数の目安はライト1〜5名、スタンダード6〜20名、プレミアム21〜50名)。人数の目安で計算すると10人は月5万円、30人・50人は月10万円(いずれも税抜)で、初期費用10万円(税抜)が別途かかります。
UPGEAR AIの詳細を見るよくある質問
NotebookLM EnterpriseとGoogle AI Pro(Pro版)は何が違いますか?
NotebookLM Enterpriseの料金はいくらですか?
NotebookLM EnterpriseにAPIはありますか?
無料版とNotebookLM Enterpriseは何が違いますか?
まとめ
NotebookLM Enterprise(現 Gemini Notebook Enterprise)は、1ライセンス月9ドル・最低15ライセンスから買える企業向け版で、1ドル=150円・税抜で計算すると15人で月20,250円、50人で月67,500円です。会社でNotebookLMを使う経路は、Workspace付属・単体・Gemini Enterprise同梱の3つで、Workspaceを使っている会社はまず付属版で足りるかを確かめ、Microsoft 365中心の会社やExcel・データ所在地・権限管理の要件がある会社は単体を検討する、という順で考えると迷いません。
稟議の前には、試用期間とGemini Enterprise Businessの扱いで公式同士の記載が分かれていること、料金は米ドル・税抜で日本での利用には10%の消費税がかかること、Workspace版(Gemini Notebook Plus)のノートブックはEnterpriseに持ち込めないことを押さえておいてください。
NotebookLMの使い方や入れてよい資料の線引きは、冒頭で案内した親記事で扱っています。法人のAI活用に関するほかの記事はAI活用コラム一覧をご覧ください。
