市場調査のAI活用。調べる・確かめる・まとめるの3段で進める手順

市場調査のAI活用とは、市場規模の当たりづけや競合の把握、顧客の声の整理といった調べものを、生成AIに手伝ってもらう進め方のことです。AIに向くのは下調べと整理で、数字の真偽の確認と最後の判断は人が受け持つ形になります。調べる・確かめる・まとめるの3段に分けると、段ごとに向くAIも変わってきます。調査会社に頼むほどではない調べものを社内で回したい方は、依頼文の例とひな形をそのまま使ってみてください。

市場調査のAI活用とは|従来の調査との違い

AIを使った市場調査とは、Web上の公開情報を探して読み、要点を表や文章に整える作業の多くを、生成AIに任せる調べ方になります。従来のやり方では、検索語を考えて何十ものページを開き、必要な箇所を書き写して表にするまでを、担当者が手作業で進めてきました。各社の調査機能は、この検索と読み込みと下書きをまとめて引き受けてくれます。公式の案内では、ChatGPTのdeep researchは5分から30分ほど、GeminiのDeep Researchは通常5〜10分ほどでレポートを作るとされています。一方で、AIが読めるのは主にWeb上で公開されている情報と、利用者が渡したファイルに限られます。

※所要時間は、OpenAIの発表ページ「deep research のご紹介」(2025年2月の公開時の記載)と、GeminiのDeep Researchのヘルプの記載です。2026年9月27日時点で確認しています。

AIを使うメリット|調査の時間と費用を減らせる範囲

いちばん大きなメリットは、調べものの前半にあたる検索と読み込みの時間を短く出来ることです。調査会社に頼むほどではない下調べであれば、すでに契約している生成AIの月額の範囲で進められる場合が多くなります。実際には、競合の一覧づくりや業界用語の整理、公表資料の要約といった、手間はかかるが判断は要らない作業から時間が浮いてきます。浮いた時間を、数字の確認や顧客への聞き取りに回せる点も見逃せません。

一方で、AIに任せても減らない作業もあります。数字の出どころを一次資料で確かめる作業と、調査結果から何を決めるかという判断は、これまでどおり人の仕事となります。調査の時間は短くなっても、確認の時間まで削ると、誤った数字が社内資料に残ったままとなってしまいます。減らすのは探す時間と書き写す時間で、確かめる時間は残しておきましょう。

AIに向く調べもの・向かない調べもの

AIが得意なのは、Web上に材料が散らばっている調べものを集めて並べる作業です。業界の主な企業の洗い出し、各社の公式サイトに載っている料金や特徴の比較、公的統計がどこにあるかの見当づけなどは、短時間で形になります。反対に、公開されていない数字、有料のデータベースや業界紙にしか載らない情報、顧客が口にしていない本音は、AIに聞いても出てきません。向き不向きの詳しい線引きは、後半の人の役割分担の節で整理しています。

AIを使った市場調査の進め方|調べる・確かめる・まとめる

AIを使った市場調査は、調べる・確かめる・まとめるの3段に分けて進めると、失敗が減ります。3段の前に、何のために何を調べるかを人が決める準備が入ります。一般的な解説では、目的の設定、情報収集、分析、レポート、検証の5段で紹介されることもありますが、中身はほぼ同じです。段ごとに向いているAIが違うことが、3段に分けた理由でもあります。

  1. 準備(人) 目的・対象・期間・欲しい数字を決める
  2. 調べる(AI) 出典つきで検索するAIに下調べを任せる
  3. 確かめる(人が主役) AIが示した出典を開き、数字と日付を1件ずつ照合する
  4. まとめる(AI) 確かめた材料だけを、表や報告1枚に整えてもらう

調査の目的と範囲は人が決める

AIは頼まれた観点しか調べないため、目的と範囲は最初に人が決めておくことが欠かせません。たとえば介護用品の市場とだけ頼むと、全国の市場規模の話が中心となり、自社が知りたかった首都圏の法人向けの話は出てこないこともあるでしょう。決めておきたいのは、何を決めるための調査か、対象の地域と顧客、見たい期間、欲しい数字と単位、除外したい情報の5つになります。この5つは、後で紹介する調査メモのひな形にそのまま書き込めるようにしてあります。書き始める前に、上長と5つの項目だけすり合わせておくと、やり直しが少なくなります。

調べる段|出典つきで集める

調べる段では、回答に出典のリンクが付くAIを使うのが基本です。Perplexityは公式ヘルプで、回答ごとに引用と元の情報源へのリンクが付くと説明しています。ChatGPTのdeep researchやGeminiのDeep Research、Claudeのリサーチも、Web検索をもとに出典つきのレポートを作ります。この段の成果物は、結論ではなく、出典つきの材料の一覧と考えてください。

確かめる段|出典を開いて照合する

確かめる段は、AIではなく人が主役となる段です。AIが示したリンクを1件ずつ開き、その数字や記述が本当にリンク先にあるか、いつの情報かを確かめます。Perplexity自身も、正確さを目指しつつ出典を確かめるよう利用者に勧めています。手順は、後半の出典を確かめる手順でチェックリストにまとめました。

まとめる段|確かめた材料だけで表と報告を作る

まとめる段では、確かめた材料だけをAIに渡して、比較表や報告1枚に整えてもらいます。この段はWeb検索よりも文章の組み立てが中心になるため、ChatGPTやClaudeのような会話型のAIが扱いやすくなります。確かめていない材料を混ぜると、きれいな表の中に誤りが紛れ込み、後から見つけにくくなってしまいます。まとめる段に渡すのは、確かめる段を通った材料だけにしましょう。

市場調査に使える生成AIの比較|調査機能の提供条件

市場調査に使われる生成AIの主な候補は、Perplexity、ChatGPT、Gemini、Claudeの4つです。どれもWebを検索して出典つきで答える機能を持っていますが、使えるプランと回数の示し方がそれぞれ違います。ほかにもGensparkやFeloなど、調べものをうたうサービスがあります。以下の4つは、いずれも公式ヘルプで提供条件を確認できたものになります。

Perplexity|回答ごとに出典リンクが付く

Perplexityは、質問のたびにWebを検索し、出典を付けて答える作りを基本にしたAI検索サービスです。公式ヘルプでは、各回答に引用と元の情報源へのリンクが含まれるとの案内があります。深く調べるResearchというモードもあり、数十回の検索と数百の情報源の読み込みを自動で行ってレポートにまとめる、と同社は説明しています。出典が最初から並ぶため、確かめる段への受け渡しがしやすいのが強みとなります。

ChatGPTのdeep research

ChatGPTのdeep researchは、複雑な質問について多くの情報源を読み、引用や情報源へのリンク付きのレポートを作る機能です。公式ヘルプでは、利用量はプランによって異なり、残りのタスク数は製品内の利用量カウンターで表示されると案内されています。具体的な回数はヘルプに数字の記載がないため、使う前に製品内の表示で確かめてください。利用するにはWeb検索を有効にしておく必要があり、利用できるかどうかはプランと国・地域によっても変わります。実行前に調査計画の案が示され、内容を確認・修正してから始められる点は、目的のずれを防ぐうえで役に立ちます。

GeminiのDeep Research

GeminiのDeep Researchは、既定でGoogle検索をリサーチの情報源に使い、複数ページのレポートを作る機能です。Googleのヘルプでは、高速モードでのレポート生成は誰でも使え、Google AI ProとGoogle AI Ultraでは思考モードでより質の高いレポートを作れると説明されています。1日に実行できる数と同時に実行できる数には上限があり、ヘルプに具体的な数字の記載はありません。上限が近づくとアプリに通知が届き、その日の残りの回数が分かる仕組みとなります。

Claudeのリサーチ

Claudeのリサーチ(Research)は、有料プランのPro・Max・Team・Enterpriseで使える調査機能です。使うにはWeb検索をオンにしておく必要があり、複数の検索を重ねて、確かめやすい引用付きで答えを返します。回数は通常の会話と同じ制限の中で数えられ、1回の調査で制限を早めに使う場合があると案内されています。無料プランでは使えないため、試すなら有料プランの契約が前提となります。

※各社の提供条件は、PerplexityのヘルプとResearchモードのヘルプ、ChatGPTのdeep researchのヘルプ、GeminiのDeep Researchのヘルプ、Claudeのリサーチのヘルプの記載で、2026年9月27日時点で確認しています。

Deep Researchの使い方|依頼から計画の確認、レポートまで

Deep Research系の機能は、どれも依頼、計画の確認、調査の実行、レポートという流れで動きます。流れを知っておくと、計画の段階で目的のずれに気づけるようになります。ChatGPTとGeminiの場合の手順は、次のとおりです。

  1. ChatGPTでは、チャット欄に@Deepresearchと入力するか、ツールメニュー(+)からdeep researchを選びます。Geminiでは、入力欄のメニューから[Deep Research]を選びます。
  2. 質問に加えて、対象読者、制約、欲しい出力の形を書きます。ChatGPTから確認の質問が返ってきたら答えます。
  3. 示された調査計画を読み、対象の地域や期間がずれていれば直します。Geminiでは[プランを編集]から修正できます。
  4. ChatGPTでは、調べるサイトを指定したサイトやドメインだけに絞ることも、優先させることも出来ます。
  5. 実行中は画面を開いたままにする必要はなく、完了すると通知が届きます。
  6. 出来上がったレポートの出典を開き、次の確かめる段に回します。

計画の確認は飛ばさずに読んでみてください。計画の時点で対象がずれていると、数十分待った後に使えないレポートが届く結果となってしまいます。より詳しい機能の違いはDeep Researchとはで紹介しています。

Web検索を使っていない回答を見分ける

通常のチャットでは、AIがWebを検索せず、学習済みの知識だけで答える場合があります。ChatGPTのヘルプでも、最新の情報が役立つときに自動で検索することがあるとされており、毎回検索するとは限りません。回答に出典のリンクが1つも付いていないときは、検索を使っていない回答と見て、数字をそのまま使わないようにしましょう。検索を確実に使わせたい場合は、ChatGPTならすべてのツールを表示から検索を選び、依頼文にもWebを検索して数字ごとに出典のURLを付けるよう書き添えるのが近道になります。

専用ツールとの違い|ソーシャルリスニング・スクレイピング・テキストマイニング・予測

市場調査のツールには、生成AIのほかに、特定の作業に絞った専用ツールもあります。SNS上の言及を継続的に集めるソーシャルリスニング、Webページから決まった項目を自動で抜き出すスクレイピング、大量の文章から頻出語や評判を数えるテキストマイニング、過去のデータから需要を見込む予測の仕組みなどが代表例となります。専用ツールは、同じ作業を大量に繰り返すことや、毎週同じ形で数えることに向いています。生成AIの調査機能は、毎回違う問いに対して、探して読んでまとめる作業に向いているのが違いです。社員10〜200名の会社が最初に試すなら、まず生成AIで調べものの型を作り、同じ集計を繰り返すようになった段階で専用ツールを検討する順番が無理のない進め方でしょう。

合成ユーザー・AIシミュレーションによるアンケート代替

最近は、AIで消費者の反応を擬似的に再現し、アンケートの代わりにする合成ユーザー(シミュレーション調査)というサービスも出てきました。国内でもLaboro.AIが、ローソンやサッポロホールディングスとの共同検証を自社サイトで紹介しています。ただ、合成ユーザーの答えは実在の顧客の声ではなく、AIが作った推定である点は押さえておく必要があります。新商品の方向性をふるいにかける下書きとしては使えても、発売の判断の根拠を合成ユーザーだけに頼ると、実際の顧客とのずれに気づけないままとなってしまいます。

料金と無料で使える範囲

市場調査にAIを使う費用は、ChatGPT PlusやGoogle AI Proのような個人向けの有料プランなら1人あたり月額3,000円前後、会社向けのプランは1人あたりの月額に人数を掛けた額となります。無料プランでも調査機能を試すことは出来ますが、回数や使える場面が限られています。会社で配るなら、人数分の月額がそのまま毎月の費用になる点を先に押さえておきましょう。

プラン別の月額と10人に配った場合

主なプランの月額を、公式の料金ページの表示どおりに並べると次のとおりです。

  • ChatGPT 個人向けは無料版0円、Go 月1,400円、Plus 月3,000円、Pro 月16,800円から。会社向けのBusinessは標準シートが1人あたり月3,050円(年額課金)・月3,850円(月額課金)で、従業員数2〜200名のチーム向けとされています。
  • Gemini 個人向けのGoogle AI Proが月2,900円で、申し込めるのは個人のGoogleアカウントのみです。会社で使うGoogle Workspaceは、年間プランで1人あたり月800円・1,600円・2,500円(税別)の各プランにGeminiのアシスタント機能が含まれ、Deep ResearchもWorkspaceのユーザーが使えると製品ページで案内されています。
  • Claude 個人向けのProは年払いで月18ドル相当・月払いで月22ドルです。会社向けのTeamは標準シートが年払いで1人あたり月22ドル・月払いで27.50ドルで、いずれも日本から表示したときの消費税込みの金額です。
  • Perplexity 会社向けのEnterprise Proが1人あたり月40ドル(年払いは400ドル)、Enterprise Maxが1人あたり月325ドル(年払いは3,250ドル)です。

会社の出費に直すと、10人に配った場合の月額は、ChatGPT Businessの標準シート(年額課金)で30,500円、Claude Teamの標準シート(年払い・税込表示)で220ドル、Perplexity Enterprise Pro(月払い)で400ドルとなります。調べる段はPerplexity、まとめる段はChatGPTというように2つを会社で契約すると、10人分で30,500円と400ドル(Perplexityを月払いにした場合)を合わせた額が毎月かかる計算です。人数課金のサービスを2つ重ねると、費用は人数とサービス数の掛け算で増えてしまいます。ドル建ての料金は為替と税の扱いで円の請求額が変わるため、実際の金額は契約画面で確かめてください。

※料金は2026年9月15日〜16日に各社の公式料金ページ・ヘルプで確認した表示です(ChatGPTとGoogle AI Proは日本から表示した円の金額で税の記載なし、Google Workspaceは税別、ClaudeのProとTeamは日本から表示した消費税込みの米ドル、Perplexityは公式ヘルプの米ドル表記で税の記載なし)。ChatGPTの料金、Google AIのプラン、Google Workspaceの料金、Claudeの料金、Perplexityの法人向け料金。プランと価格は変わるため、検討時は各社の公式ページをご確認ください。

無料で使える範囲と回数

無料のまま試せる範囲は、サービスごとにかなり違います。GeminiのDeep Researchは、有料プランのない方も高速モードで使えますが、需要が高い期間には使えないことがあるとヘルプに書かれています。PerplexityのResearchは、無料プランで月1回まで、会社向けのEnterprise Proで月50回、Enterprise Maxで月500回と公式ヘルプのプラン比較表に記載があります。個人向けのPerplexity ProとMaxは、平均的な利用・高度な利用に応じた月ごとの上限とだけ書かれ、回数の数字はありません。ChatGPTのdeep researchは、プランごとの回数がヘルプに数字で載っておらず、残りの回数は製品内の利用量カウンターで確かめる形となります。Claudeのリサーチは無料プランでは使えません。

無料で試すなら、まず機密に当たらない公開情報のテーマで1本動かしてみてください。出典の付き方と計画の確認画面を一度見ておくと、有料プランに進むかどうかを判断しやすくなります。

※回数は、Perplexityのプラン比較(2026年9月5日更新)と、Geminiアプリのプラン別の違いの記載です。2026年9月27日時点で確認しています。

依頼文に入れてはいけない情報と、入力が学習に使われる条件

市場調査の依頼文には、社外に出ても困らない情報だけを書くのが原則となります。調べものの依頼では、社名や新商品の名前が、そのままWeb検索の検索語として外部に送られる可能性もあります。加えて、個人向けのプランには、入力した内容が既定でAIの学習に使われる設定のサービスもあり、注意が必要です。線引きの目安を、次の表にまとめました。

入れてよい情報・入れない情報の線引き

情報の種類依頼文に理由と扱い方
業界名・地域・一般的な商品カテゴリ入れてよい公開情報の範囲。調査の範囲を絞るために具体的に書く
競合他社の社名・公開済みの商品名入れてよい公式サイトや報道で公開されている情報。調べる対象として書いてよい
自社の社名場面による公開情報の確認なら可。未公開の計画と一緒に書くと、何を検討しているかが伝わってしまう
未発表の新商品・新規事業の名前や中身入れない「〜向けの新しいサービス」のように一般化して書く
顧客名・取引先名・担当者の氏名や連絡先入れない個人情報や取引上の秘密に当たる。業種と規模に置き換える
自社の売上・原価・取引条件・見積金額入れない数字は「年商◯億円規模」のような幅にするか、使わない
アンケートやインタビューの生データ加工してから氏名・会社名・連絡先を消し、個人が分からない形にしてから、会社が契約した環境で扱う
社内会議の議事録・稟議書入れない検討中の方針や人事が含まれやすい。必要な論点だけを一般化して書く

表の中で迷いやすいのは、自社の社名を入れるかどうかでしょう。公開済みの自社の商品を競合と並べて調べる程度なら問題になりにくい一方、未公開の計画と社名が同じ依頼文に並ぶと、何を検討しているかが丸ごと伝わってしまいます。

一般化した書き換え例

入れない情報は、消すのではなく一般化して書き換えると、調査の精度をあまり落とさずに進められます。次の例のように、固有名詞と数字を種類と幅に置き換えるのが基本の形となります。

書き換え前:〇〇食品(取引先)向けに、来春発売予定の低糖質パン「△△」の販路を広げたい。〇〇食品の年間仕入額は(社外秘の金額)。
書き換え後:首都圏の中堅スーパー向けに、低糖質パンの新商品を提案したい。低糖質パンの国内の市場動向と、主な競合商品の価格帯を、出典つきで調べてください。

書き換え前:顧客の担当者(A社の総務部長・氏名)から、他社の勤怠システムより高いと言われた。
書き換え後:従業員50〜100名の製造業の総務担当者が、勤怠管理システムを選ぶときに比べる項目を、公開されている比較記事と各社の公式サイトから整理してください。

書き換え後の依頼文でも、調べたい市場と比べたい観点は十分に伝わります。固有名詞を外した分は、業種・地域・規模の3つを具体的に書くと、答えの的が絞れるようになります。

個人プランと法人プランで違う学習の既定値

入力した内容がAIの学習に使われるかどうかは、同じサービスでも個人向けと会社向けで既定値が違います。OpenAIのヘルプは、PlusとProではデータコントロールで学習をオフにしない限り会話がモデルの改善に使われる場合があり、Business・Enterprise・Eduのコンテンツは既定では学習に使われないと説明しています。Perplexityは、Free・Pro・Maxの利用者はAIの学習用のデータ保持が既定でオンになっているとし、Enterpriseのデータは学習に使わないとの案内です。Geminiの個人向けも、18歳以上では[アクティビティの保存]が既定でオンとなっており、オフにしない限り会話がAIモデルの改良に使われます。Claudeの個人向けは、学習への利用を利用者が設定で選ぶ形になります。Claudeの会社向け(Claude for Workなど)は、既定では入力と出力を学習に使わないと案内されています。

  • ChatGPT(個人向け) 設定、データコントロールの順に開き、すべての人のためにモデルを改善するをオフにします。オフにしても、良い回答・良くない回答のフィードバックを送ると、その会話全体が学習に使われることがあります。
  • Perplexity(個人向け) Account settings、Preferences、AI data retentionの順に開いてオフにします。オフにした日より前に集められたデータには適用されず、設定は利用者1人ずつにかかります。
  • Gemini(個人のGoogleアカウント) [アクティビティの保存]をオフにすると、以降のチャットはAIモデルの改良に使われません(フィードバックを送った場合を除く)。オフでもチャットは72時間アカウントに保持されます。
  • Claude(個人向け) 学習への利用を許可するかどうかを設定で選べます。高評価・低評価のボタンでフィードバックを送った会話は、会社向けのプランでも学習に使われることがあります。

個人向けの設定は1人ずつの操作に頼るため、社員が10人いれば10人分の設定を会社が確かめる必要が出てきます。ChatGPT・Perplexity・Geminiの個人向けは、既定のままだと入力が学習に使われる場合があります。設定の漏れがあっても会社からは見えないため、気づいたときには調べものの中身が学習の対象になっていた可能性がある、という状態となってしまいます。

※学習の扱いは、OpenAIのdeep researchのヘルプ、Perplexityのデータ収集のヘルプ、Anthropicのプライバシーセンター、Geminiアプリのプライバシーハブの記載で、2026年9月27日時点で確認しています。

個人情報保護委員会の注意喚起(2023年6月2日)

個人情報保護委員会は2023年6月2日に生成AIサービスの利用に関する注意喚起等を公表しています。事業者向けの要点は2つあり、個人情報を含む依頼文を入れるときは、その個人情報の利用目的の達成に必要な範囲かを十分に確かめることが1つ目です。2つ目は、本人の同意なく個人データを入れ、それが応答以外の目的で扱われると法律に反するおそれがあるため、提供事業者が個人データを機械学習に使わないことなどを十分に確かめるという点になります。市場調査の依頼文で顧客の氏名や連絡先が要る場面はほとんどないため、最初から入れない運用にしておくのが簡単でしょう。アンケートの自由記述を扱うときも、氏名や会社名を消してから渡すようにしてみてください。

ここまでの線引きを社員一人ひとりの判断に任せると、守られているかどうかを会社が確かめる手段がなくなります。入れてよい情報のルールと、学習に使われない設定の環境を、会社としてセットで用意しておくことが、現実的な対策になるでしょう。ルールの文書の作り方は生成AIの社内ガイドラインの作り方で紹介しています。

調べものに使うAIを、会社の管理下で1つにまとめる

学習の設定や入力のルールを全員にそろえるには、調べものに使う環境を会社で用意するのが近道です。UPGEAR AI(アップギアAI)は、ChatGPT・Claude・Gemini・Perplexityを1つの契約で使える法人向けサービスです(人数無制限)。

市場調査の依頼文(プロンプト)の例

市場調査の依頼文は、目的・対象・期間・欲しい数字・出典の条件・出力の形の6つを書くと、答えのぶれが小さくなります。OpenAIのヘルプでも、効果的なdeep researchの依頼文には、質問と希望する成果、関連する制約を明確に書くよう勧めています。Perplexityのヘルプが、意図をはっきり述べて詳しく書くことを基本のルールとして挙げている点も同じです。以下の例は、3段ごとにそのまま貼って、角かっこの中だけを書き換えて使えるようにしてあります。

調べる段の依頼文

あなたは市場調査の担当者です。次の条件で、Webを検索して調べてください。

目的:[新規事業として〇〇を始めるか判断するための下調べ]
対象:[日本国内・首都圏・法人向け]の[〇〇サービス]市場
期間:[〇年以降]に公表された情報
知りたいこと:
1. 市場規模や出荷額を示す数字(数字ごとに単位・対象年・調査主体を書く)
2. 主な事業者5〜10社と、それぞれの公式サイトに載っている特徴・価格帯
3. この市場で最近報じられている動き(法改正・新規参入・撤退など)
出典の条件:
・数字には必ず出典のURLと公表日を付ける
・官公庁、業界団体、上場企業の開示資料を優先する
・出典が見つからない数字は書かず、見つからなかったと書く
出力:表と箇条書き。推測で補った箇所には[推測]と書く

この依頼文で大事なのは、出典が見つからない数字は書かないよう最初に頼んでおく部分になります。出典のない数字がそれらしく混ざるのを防ぐ効果があります。調べる段の答えは、この後の確かめる段にそのまま渡すため、表の列に出典のURLを必ず入れてもらいましょう。

確かめる段の依頼文

次の回答に出てくる数字と記述について、1件ずつ確認したいです。
[AIの回答を貼り付け]

各項目について、次の形で一覧にしてください。
・記述の内容
・根拠として示されたURL
・そのURLのページに、同じ数字や記述が実際に載っているか(載っている/載っていない/確認できない)
・ページの公表日または更新日
・数字の定義と単位(売上高か出荷額か、税込か税抜かなど)
裏付けとなるページが見つからない項目は、その旨を書いてください。

確かめる段の依頼文は、AIに照合を手伝わせるためのもので、照合の最終確認は人が行います。AIの答えに載っているとあっても、リンク先を自分で開いて同じ数字を目で見るまでは確認済みにしないでください。日本能率協会総合研究所のコラムでも、リサーチャーがAIの回答に対して裏付けとなるページを追加で尋ねる使い方が紹介されています。

まとめる段の依頼文

次の材料は、出典を確認済みの調査メモです。この材料だけを使って、上長向けの報告1枚にまとめてください。材料にない情報は足さないでください。

[確認済みの調査メモを貼り付け]

構成:
1. 結論(3行以内)
2. 市場の大きさと動き(数字には出典名と公表年を添える)
3. 主な競合と自社との違い(表)
4. 分かっていないこと・追加で調べること
5. 次に決めること
文体:です・ます調。専門用語には短い説明を付ける

まとめる段で材料にない情報は足さないと書くのは、AIが気を利かせて検索や記憶から情報を補うのを防ぐためです。足された情報は出典の確認を通っていないため、報告書の中に確かめていない数字が混ざってしまいます。出来上がった報告1枚は、最後に材料のメモと並べて読み比べてみてください。

AIの回答と出典を確かめる手順|ハルシネーション対策

AIの回答を確かめる基本は、示された出典を1件ずつ開き、同じ記述がそこにあるかを自分の目で見ることになります。ハルシネーションとは、AIが事実と違う内容をもっともらしく答えてしまう現象を指す言葉です。OpenAIも、deep researchの発表の中で、事実を誤認したり誤った推論をしたりする可能性があると認めています。ChatGPTの検索のヘルプには、検索結果や引用が不完全だったり古かったり誤っていたりする場合があるとして、引用元を開いて公開日や更新日も確かめるよう求める記載があります。

出典を1件ずつ照合するチェックリスト

  • リンク先を開き、同じ数字・記述が本当に載っているかリンクが切れている、別の話題のページだった、数字が違う、の3つはよくある外れ方です。載っていなければ、その記述は使いません。
  • ページの公表日・更新日と、数字の対象年記事が新しくても、中の数字は数年前の調査ということがあります。公表日と対象年を別々に控えます。
  • 数字の定義と単位市場規模なのか出荷額なのか、税込か税抜か、国内か世界かで、同じ市場でも数字は大きく変わります。
  • 誰が調べた数字か(調査主体・母数)官公庁の統計、業界団体、調査会社、企業の自社発表のどれかを控えます。企業の自社発表は、同社発表として扱います。
  • 一次情報に置き換えられるかニュース記事やまとめ記事が出典なら、元の統計や発表資料までたどり、そちらを出典にします。
  • 同名の別会社・別商品が混ざっていないか社名が似た会社や、同じ名前の別地域の商品の情報が混ざっていないかを、所在地や公式サイトのURLで確かめます。
  • 照合した日と照合した人の記録調査メモに照合日と担当者を書きます。後から数字を聞かれたときに、いつ誰が確かめたかをすぐ答えられます。

記入例は、〇〇市場の規模(出荷額ベース・〇年度・〇〇協会調べ、〇年〇月公表、URL、照合日・担当者)のような1行になります。1行に収めておくと、報告書に転記するときもそのまま出典表記に使えます。

情報の古さ・同名企業の混在・数字の出どころ

AIの調査で特に外れやすいのは、情報の古さ、同名企業の混在、数字の出どころの3点です。情報の古さでは、何年も前の市場予測が、最新の数字のように並んで出てくることがあります。同名企業の混在は、社名の似た別会社の売上や拠点の情報が、1社の情報としてまとめられてしまう外れ方となります。数字の出どころで気をつけたいのは、有料の調査レポートを販売するための告知文に載った数字です。告知文の数字は、レポート本体の定義や前提が省かれていることが多く、見出しの数字だけが一人歩きしやすくなります。告知文の数字を使うなら、同社発表として扱い、定義と対象年を必ず添えましょう。

無料の一次統計に当てて確かめる

AIが示した数字の当たりをつけるには、国の無料の統計に当ててみるのが手堅い方法になります。市場調査でよく使われる公的統計の置き場は、次の5つです。

  • e-Stat 日本の政府統計をまとめて閲覧できる政府統計ポータルサイトです。どの統計に何が載っているかを探す入口として使えます。
  • RESAS(地域経済分析システム) 2015年4月21日に提供が始まった、地域の経済データを見るための仕組みです。出店や営業地域の検討で、地域ごとの様子をつかむときの入口になります。
  • 経済センサス 全産業の事業所と企業を対象にした基幹統計で、基礎調査と活動調査があります。業種ごとの事業所の規模感をつかむときに当たります。
  • 家計調査 世帯の収入と支出を毎月調べている統計です。個人向けの商品で、世帯の支出の動きを確かめるときに使えます。
  • 商業動態統計 経済産業省が小売業と卸売業の販売額を毎月まとめている統計です。小売・卸の売れ行きの動きを確かめる材料になります。

使い方は、AIが示した市場の数字と同じ業種や品目の統計を探し、桁と増減の向きが合っているかを見る程度で十分でしょう。統計とAIの数字が桁から違っていれば、定義の違いか、AIの誤りのどちらかを疑うきっかけになります。探し方が分からないときは、AIにこの数字を確かめられる政府統計はどれか、e-Statで探す手順と一緒に教えてほしいと頼んでみてください。

※各統計の名称・URL・概要は、各サイトの記載で2026年9月27日時点で確認しています。RESASの提供開始日は、地方創生の案内ページの記載です。

同じ依頼を複数のAIで比べる

同じ依頼文を2つのAIに投げて答えを比べると、確かめるべき箇所が見つけやすくなります。2つの答えで数字や社名が食い違った箇所は、どちらかが誤っているか、定義が違っている可能性が高い箇所です。比べる相手は、出典つきの検索を基本にしたPerplexityと、会話全般のAIであるChatGPTやClaudeのように、作りの違うものを選ぶと差が出やすくなります。食い違いがないからといって正しいとは限らない点も、覚えておきましょう。各AIの特徴の違いは主要4AIの違いと使い分けで、複数のAIを1つの環境で使う形はマルチAIの解説で紹介しています。

調査メモと1枚報告のひな形|レポートの出力と資料化

AIを使った調査を社内で生かすには、調べる前の依頼メモと、確かめた後の報告1枚を、決まった形で残しておくことが大切になります。形が決まっていれば、担当が変わっても同じ粒度で調べられ、前回の調査との比較もしやすくなるでしょう。次のひな形は、コピーして社内の共有フォルダに置き、調査のたびに複製して使ってみてください。

調査依頼メモのひな形

【調査依頼メモ】
作成日:    作成者:    依頼者:
1. 何を決めるための調査か:
2. 対象の市場(地域・顧客・商品の範囲):
3. 見たい期間(公表年・対象年):
4. 欲しい数字と単位(例:国内の出荷額、円、年度):
5. 除外する情報(例:海外市場、個人向け):
6. 出典の条件(官公庁・業界団体を優先、自社発表は同社発表と明記):
7. 使うAIと機能(調べる段/まとめる段):
8. 依頼文に入れない情報の確認(社名・顧客名・未発表情報):済・未
9. 提出の形と期限:

9つの欄のうち、特に8番の確認欄は省かないようにしましょう。依頼文を書く前に、入れない情報を見直す手順を形として残しておく役目があります。

上長への報告1枚のひな形

【市場調査の報告】  調査日:   照合日:   担当:
■ 結論(3行以内)

■ 市場の大きさと動き
・数字(定義・単位・対象年)/出典名・公表年・URL

■ 主な競合(社名/特徴/価格帯/出典)

■ 分かっていないこと・確かめられなかった数字

■ 次に決めること・追加で調べること

■ 使ったAIと機能、照合した出典の件数

報告1枚の中に分かっていないことの欄を設けているのは、AIの調査では確かめられなかった数字が出てくることが多いためです。分からないことを分からないと書いておけば、上長は追加調査に予算をかけるかどうかを判断しやすくなります。

レポートの書き出しと資料化

各社の調査機能は、出来上がったレポートを文書として書き出せます。ChatGPTのdeep researchはMarkdown・Word・PDFなど複数の形式でのダウンロード、GeminiのDeep ResearchはGoogleドキュメントへのエクスポート、PerplexityのResearchはPDFや文書への書き出しとPerplexity Pageへの変換に対応しています。ChatGPTのヘルプでは、編集できるレポートやプレゼンテーション、スプレッドシートが欲しい場合は、形式と保存先を依頼時に指定するよう案内があります。書き出したレポートをそのまま社内資料にせず、報告1枚のひな形に写し替えるのがおすすめです。レポートには確かめていない記述も残っているため、写し替えの工程が確認の関所として働きます。

社外資料に載せるときの引用表記

調査結果を提案書や社外向けの資料に載せるときは、AIの名前ではなく、確かめた一次情報を出典として書きます。出典名、公表年、URL、閲覧日の4つがそろっていれば、読み手が自分で確かめられる形となります。書き方の例は次のとおりです。

出典:総務省統計局「〇〇調査」(〇年公表)https://www.stat.go.jp/…(〇年〇月〇日閲覧)
出典:〇〇協会「〇〇市場の動向」(〇年〇月公表・同協会発表)https://…(〇年〇月〇日閲覧)

有料の調査レポートの数値は、販売元の利用条件で転載が制限されている場合があるため、社外資料にそのまま載せるのは避けましょう。文化庁のAIと著作権に関する考え方について(2024年3月15日取りまとめ)の概要でも、AIで生成したものを公表する場合は通常の著作権侵害と同じ基準で判断されると整理されています。AIが書いた文章をそのまま載せず、確かめた一次情報を出典に立てることが基本になります。Perplexityの個人向け利用規約には、本サービスを明記せずに出力を公開してはならない旨の定めもあり、出力の文章を社外資料に流用するときは規約の確認も欠かせません。

市場調査のAI活用場面|競合分析・口コミ分析・展示会前の下調べ

社員10〜200名の会社でAIが役に立ちやすい調べものは、競合の把握、顧客の声の整理、新規事業の市場の当たりづけ、展示会や商談前の下調べの4つです。どれも調査会社に頼むほどではないものの、担当者が一から調べると時間のかかりがちな作業となります。場面ごとに、依頼文で押さえたい点が少しずつ違ってきます。

競合分析への活用

競合分析では、各社の公式サイトに載っている情報を同じ項目でそろえて並べる作業がAIに向いています。項目は、対象顧客、提供している商品やサービス、価格の表示、導入事例の業種、最近の発表などが基本になります。Geminiの製品ページでも、Deep Researchの活用例として競合分析や製品の比較が挙げられています。

次の[3〜5社]について、各社の公式サイトと公表資料だけを出典にして、比較表を作ってください。
対象:[A社、B社、C社]
項目:対象顧客/主な商品・サービス/公式サイトに載っている価格/導入事例の業種/直近1年の発表
条件:公式サイトに載っていない項目は空欄にし、推測で埋めない。各セルに出典URLを付ける

価格は、公式サイトに載っていない会社も多いため、空欄のまま残るのが普通です。空欄を推測で埋めた表は、見た目は整っていても営業の現場では使えない表となってしまいます。

SNS・口コミ・アンケート自由記述の分析

顧客の声の整理では、アンケートの自由記述や問い合わせの内容を、AIに分類してもらう使い方が便利です。数百件の自由記述を、不満・要望・評価の軸で分け、よく出てくる話題を件数つきで並べるところまでは、会話型のAIで形になります。渡す前に、氏名・会社名・連絡先・注文番号などの個人が分かる情報は消しておきましょう。SNSや口コミサイトの投稿を集める作業は、サイトごとの利用規約の制限があるため、専用ツールを使うか、公開されているレビューの要約にとどめるのが無難でしょう。分類の結果は、元の記述を何件か抜き出して、分け方が合っているかを人が確かめる工程を必ず入れてください。

次のアンケート自由記述(個人が分かる情報は削除済み)を分類してください。
1. 不満・要望・評価・その他の4つに分け、それぞれ件数を数える
2. 各分類の中で、よく出てくる話題を上位5つまで挙げ、代表的な記述を2件ずつ原文のまま引用する
3. どの分類にも当てはまりにくい記述は、無理に分けず「その他」に入れる
[自由記述を貼り付け]

新規事業の市場の当たりづけ

新規事業の検討では、市場の大きさをざっくりつかむ当たりづけにAIを使うと進めやすくなります。大事なのは、AIが示した市場規模の数字をそのまま事業計画に書かず、e-Statなどの統計や業界団体の公表値に当てて桁を確かめることです。市場規模の数字は、調べた主体によって定義も対象範囲も違うため、複数の数字が出てきたら、どれを採るかを定義から選ぶ必要があります。当たりづけの段階では、正確な1つの数字より、数字の幅と、その幅が生まれる理由を押さえておくほうが役に立つでしょう。

展示会・商談前の下調べ

展示会の出展企業や商談相手の下調べも、AIに任せやすい調べものの1つです。出展者一覧に載っている会社のうち、自社の顧客になりそうな業種の会社を選び、各社の公式サイトから事業内容と最近の発表を1行ずつまとめてもらうと、当日の回る順番が決めやすくなります。商談相手の下調べでは、同名の別会社の情報が混ざりやすいため、所在地と公式サイトのURLを依頼文に書いておくと安心です。下調べの結果は商談の話題選びに使うまでにとどめ、相手の会社について断定的な話をするのは、公式の情報で確かめてからにしましょう。

活用事例|調査会社のリサーチャーの使い方

調査の専門家がAIをどう使っているかは、自社の使い方を決めるうえで参考になります。日本能率協会総合研究所のコラム市場調査にAIをどう活用する?リサーチ現場での使い方と注意点(2026年8月7日公開)では、同社のリサーチャーが主に使うAIとしてChatGPTとClaudeを挙げ、出典や裏付けを示すかどうかで使い分けていると紹介されています。同じコラムには、検索キーワードの洗い出しにAIを使う例や、回答に対して裏付けとなるページを追加で尋ねる例も載っており、出典、数字の時期、AIの答えを最終結論にしないことの3点が注意点として挙げられている点も見逃せません。調査を本業とする会社でも、AIの答えを結論にせず、裏付けを取る工程を残している点は、社内で調べものを回す会社にもそのまま当てはまります。

AIが苦手な領域と人の役割分担

AIが苦手なのは、Webに載っていない情報を取ってくることと、調べた結果から何を決めるかを判断することの2つです。新聞や雑誌、有料のデータベース、業界の専門資料、海外市場の細かな数字は、AIの検索では拾いきれないことがあると、同じ研究所の続編のコラムでも指摘されています。顧客や取引先の担当者が口にする本音も、Webを探して見つかる情報ではありません。役割分担の目安は、次のとおりです。

  • AIに任せる 検索語の洗い出し、公開情報の収集と要約、比較表や報告の下書き、自由記述の分類
  • 人が受け持つ 調査の目的と範囲の設定、出典の照合、数字を採るかどうかの判断、顧客への聞き取り、結論と次の打ち手の決定
  • 一緒に進める 聞き取りの質問づくり(AIが案を出し、人が現場に合わせて直す)、報告の読み比べ

特に顧客への聞き取りは、AIの調査で置き換えにくい部分となります。数社でも実際の顧客に話を聞くと、Web上の情報からは見えなかった選ばれる理由や、使われていない機能が分かってきます。AIで下調べを済ませた分の時間は、顧客の生の声を聞く時間に回しましょう。

AIが見つけにくい情報を補う先

AIで見つからない情報は、社外の窓口を頼ると、調査会社に頼まずに補える場合があります。地域の商工会議所や商工会、よろず支援拠点、公立図書館のビジネス支援の窓口などでは、業界の統計や専門誌の探し方の相談に乗ってもらえることもあるでしょう。業界団体が会員向けに公表している統計も、公式サイトで概要だけ公開されていることがあるため、一度確かめてみてください。窓口ごとに受けられる支援は違うため、事前に問い合わせてから訪ねるのが確実です。

会社で市場調査にAIを安全に使うには

会社で市場調査にAIを使うなら、学習させない設定、利用ログの管理、社員への配布、複数AIの使い分けの4つを、会社側で決めておく必要があります。調べもののたびに社員が自分の判断でAIを選ぶ状態では、どの情報がどこに入力されたかを会社が把握できなくなってしまいます。4つのうち、後から整えにくいのは学習の設定とログの2つです。利用が広がってから整えようとすると、過去の入力を確かめる手段が残っていない状態となります。

個人アカウントでの調べものが抱える問題

社員が個人のアカウントで調べものをしている状態は、会社が把握していない野良AI(シャドーAI)の典型的な形です。個人向けプランでは、学習の設定が本人任せになり、会社はどの依頼文に何が書かれたかを後から確かめられません。調査結果も個人のアカウントに残るため、担当者が退職すると、調べた経緯ごと会社から見えなくなってしまいます。個人で有料プランを払ってまで使っている社員がいるなら、会社の環境が足りていないサインと受け止めましょう。

会社で調べもの環境を用意するときの確認点

  • 入力が学習に使われない設定が、全員に一律でかかるか個人向けの設定のように1人ずつの操作に任せる形では、漏れが出ても気づけません。会社向けプランの既定値と、管理者が一括で決められるかを確かめます。
  • 誰がいつどのAIを使ったかの記録を、会社が見られるか調べものの依頼文に社外秘が入っていないかを後から確かめるには、利用の記録が要ります。
  • 調べものをする社員全員に配れる費用か1人あたりの月額課金だと、全員に配るほど費用が増え、一部の社員にだけ配る判断になりがちです。配られなかった社員は、個人のアカウントに流れやすくなります。
  • 調べる段とまとめる段で、AIを使い分けられるか出典つきの検索が基本のPerplexityと、文章の整理に使うChatGPTやClaudeを別々に契約すると、管理画面と請求がサービスの数だけ分かれます。
  • 調査結果と依頼文を、会社の管理下に残せるか退職や異動のときに、調べた経緯ごと引き継げるかを確かめます。
  • 入力してよい情報のルールが、文書になっているか線引きの表を社内ルールに落とし込み、新しく使う社員にも同じ説明が届くようにします。

点検の項目をさらに広げたい場合は生成AIのセキュリティ対策チェックリストを、社内ルールの文書化は生成AIの社内ガイドラインの作り方を参考にしてみてください。調べものに使う環境を1つに決めてしまえば、依頼文のひな形も照合の手順も、全員が同じ画面の前で共有できるようになります。

出典つきの調べものと整理を、1つの画面で

UPGEAR AI(アップギアAI)は、ChatGPT・Claude・Gemini・Perplexityを1画面で使える法人向けサービスです。出典つきの調べものはPerplexity、表や報告1枚への整理はChatGPTやClaude、というように会話の途中でもモデルを切り替えられます。管理者ダッシュボードで利用ログ・権限・使えるモデルのON/OFFを管理でき、基盤はAWSの日本リージョンで稼働しています。料金は月額30,000円(税抜)から。どのプランも利用人数は無制限で、料金は利用量に応じたプラン設計です(人数の目安はライト1〜5名、スタンダード6〜20名、プレミアム21〜50名)。初期費用100,000円(税抜)が別途かかります。

UPGEAR AI(アップギアAI)の詳細を見る

よくある質問

AIに入力してはいけない情報は何ですか?
顧客名や担当者の氏名・連絡先などの個人情報、未発表の新商品や新規事業の中身、自社の売上や原価、取引条件、社内会議の議事録は入力しないのが基本です。どうしても必要な場合は、業種や規模、数字の幅に置き換えて一般化してから書きます。個人向けのプランには入力が学習に使われる設定が既定になっているサービスもあるため、会社で使う場合は学習に使われない設定の環境を用意したうえで、入力してよい情報のルールを文書にしておくと安心です。
市場調査が得意なAIはどれですか?
下調べには、回答ごとに出典のリンクが付くPerplexityや、ChatGPTのdeep research、GeminiのDeep Research、Claudeのリサーチのように、Webを検索してレポートを作る機能が向いています。集めた材料を表や報告にまとめる段では、ChatGPTやClaudeのような会話型のAIが扱いやすくなります。どれが最も正確かを比べた第三者の検証は見当たらないため、1つに決めるより、調べる段とまとめる段で使い分け、同じ依頼を2つのAIで比べる使い方が現実的です。
AI市場調査のプロンプトとは何ですか?
AIに市場調査を頼むときの依頼文のことです。目的、対象の市場、期間、欲しい数字と単位、出典の条件、出力の形の6つを書くと、答えのぶれが小さくなります。あわせて、出典が見つからない数字は書かないこと、推測で補った箇所は推測と明記することを頼んでおくと、確かめる段の手間が減ります。
調べものにはどのAIを使えばいいですか?
出典を確かめながら調べたいならPerplexity、時間をかけて多くの情報源を読ませたいなら各社のDeep Research系の機能、集めた材料を整理したいならChatGPTやClaudeが目安になります。社内ですでにGoogle Workspaceを使っているならGemini、という選び方もあります。会社で使う場合は、性能より先に、入力が学習に使われない設定になっているかと、社員全員に配れる費用かを確かめてください。
市場調査のAI活用は無料でできますか?
試すだけなら無料でも可能です。GeminiのDeep Researchは有料プランのない方も高速モードで使え、PerplexityのResearchは無料プランで月1回まで使えると公式に案内されています。ただし無料版は回数や使える期間が限られ、個人向けのプランには入力が学習に使われる設定が既定のサービスもあります。業務で続けて使うなら、会社向けのプランで学習に使われない設定を確かめたうえで使うことをおすすめします。
AIの調査結果はどこまで信用できますか?
下調べの材料としては使えますが、そのまま結論や社外資料に使える精度とは言えません。OpenAIもdeep researchについて、事実の誤認や誤った推論が起こりうると説明しています。示された出典を1件ずつ開いて同じ記述があるかを確かめ、数字は公表日・定義・調査主体まで控えたうえで使ってください。

まとめ

市場調査のAI活用は、調べる・確かめる・まとめるの3段に分けて考えると進めやすくなります。調べる段は出典つきで答えるPerplexityや各社のDeep Research系の機能、まとめる段はChatGPTやClaudeが扱いやすく、その間の確かめる段は人が出典を1件ずつ開いて照合する工程です。目的と範囲を最初に人が決め、依頼文には社外に出ても困らない情報だけを書き、確かめた材料だけを報告1枚にまとめる流れを守ってみてください。会社で使うなら、学習に使われない設定、利用の記録、全員に配れる費用、段ごとのAIの使い分けを、会社の環境としてそろえておくことが大切になります。Deep Research系の機能の詳しい使い方はDeep Researchとは、Perplexityの仕組みはPerplexityとはで紹介しています。業務別のAI活用の記事はAI活用コラム一覧にまとめました。