生成AIで業務効率化した事例と効果の計算方法。全員に配る手順

生成AIによる業務効率化とは、文章の下書きや要約、議事録づくりなどの作業を生成AIに任せ、社員の作業時間を減らす取り組みのことです。効果の大きさは、1回あたりに減る時間と使う回数、そして実際に使う社員の数の掛け算で決まります。ここで取り上げる公式発表の事例は、いずれも一部の社員ではなく対象の社員全員に同じ環境を配っています。事例の数字と効果の計算方法、試行から全員へ配るまでの手順を、社員10〜200名の会社の総務・情シスの方向けにまとめました。

生成AIで業務効率化するとは|得意な仕事と苦手な仕事

生成AIで業務効率化するとは、人が一から書いたり調べたりしていた作業の最初の下書きをAIに作らせ、人は確認と仕上げに回る働き方を指します。生成AIは、指示の文章(プロンプト)に応じて文章・要約・表・画像などを新しく作り出すAIで、ChatGPTやGemini、Claudeが代表例となります。

生成AIの得意・不得意

得意なのは、文章を書く・縮める・言い換える・整えるといった言葉の作業です。メールの返信案、会議メモからの議事録、長い規程の要約、表現の統一などは、数十秒で形になることが多いでしょう。一方で、最新の出来事や社内だけの事情は、情報を渡さない限りAIは知りません。もっともらしい誤りを混ぜることもあり、計算や固有名詞、日付は人が元の資料で確かめる必要があります。

RPA・従来型AIとの違い

RPAは、決められた手順どおりに画面を操作して転記や集計を繰り返すツールで、手順が変わらない定型作業に向いています。従来型のAIは、過去のデータから需要を予測したり画像を分類したりする用途が中心になります。生成AIは、手順が毎回少しずつ違う文章の仕事を肩代わり出来る点が大きな違いです。実際には、生成AIで下書きを作り、決まった転記はRPAに任せるといった組み合わせも考えられます。工程ごとにRPA・生成AI・人のどれへ任せるかの決め方は、AI業務自動化の進め方で詳しく紹介しています。

なお、需要予測による発注の自動化のように、従来型AIの成果が生成AIの事例として紹介されることもあります。自社の参考にする事例は、発表元の説明で生成AIを使ったものかどうかを確かめてみてください。

背景にある人手不足と働き方改革

生成AIへの関心が高まっている背景には、採用で人を増やしにくい状況と、残業を減らす働き方改革の流れがあります。人を増やさずに同じ量の仕事をこなすには、1人ひとりの作業時間を減らす工夫が欠かせません。総務や経理のように少人数で全社の事務を回している部署ほど、文章づくりの時間が減る効果を実感しやすいでしょう。

企業の利用も広がっています。総務省の令和8年版情報通信白書(概要)によると、従業員10名以上でデジタル化に取り組む企業の管理職以上を対象にした2026年1〜2月の調査で、自社の何らかの業務で生成AIを利用していると答えた日本企業は86.4%(回答477件)でした。ただし同じ調査で、組織的な取組はないと答えた割合も27.0%(回答497件)あり、使ってはいても会社として進めていない企業が少なくないことが分かります。

生成AIで効率化できる業務の一覧

生成AIで効率化しやすいのは、毎週のように発生し、1回に数十分かかり、文章が中心になる業務です。次に挙げる業務は、業種を問わずどの会社にも見つかる代表的なものになります。

文書・メール作成

社外へのお詫びや日程調整のメール、社内通知、報告書の下書きは、箇条書きの要点を渡すだけで文章の形に整えてくれます。相手や目的、文字数を指定すると、直す手間も少なくなるでしょう。ゼロから書く時間が確認の時間に置き換わるため、1通ごとの負担が軽くなりやすい業務となります。

議事録・会議要約の効率化

議事録は、効果を実感しやすい業務の代表といえます。総務省の令和8年版情報通信白書(概要)の図から読み取ると、議事録・メール作成補助で活用効果を感じている日本企業の割合は72.3%で、図に並ぶ業務類型の中で最も高い値でした。この割合は、その業務で生成AIを使っていると答えた企業に限った値となります。

やり方は、録音から文字起こしした原稿や手書きのメモをAIに渡し、決定事項・担当者・期限の3つを抜き出させる形が扱いやすいでしょう。発言者の取り違えや数字の聞き違いは起こり得るため、出席者が1人は目を通してから配るようにしましょう。社外の方が参加する会議を録音する場合は、事前にひと言伝えておく配慮も必要になります。

要約・翻訳・校正

長い規程や契約書、業界ニュースの要約、英文メールの翻訳、社外文書の誤字や表記ゆれの確認も任せやすい業務です。要約は元の文書を貼り付けて、読む人と目的を伝えると精度が上がります。翻訳や校正は、最後に人が原文と見比べる前提で使うと安心でしょう。

データ分析と表の整理

売上や問い合わせの一覧を渡して傾向をまとめさせたり、関数やグラフの作り方を聞いたりする使い方も広がっています。数値の集計そのものは、AIの答えをうのみにせず、表計算ソフトで検算するのが基本となります。アンケートの自由記述を分類させる作業は、人が読むと半日かかる量でも短時間で形になることが多く、手応えを得やすい使い方です。

問い合わせ対応・チャットボット

社内規程やよくある質問をAIに読み込ませ、社員からの問い合わせに一次回答させる使い方も考えられます。総務や情シスに届く同じ質問が減れば、担当者は判断が必要な相談に時間を回せるでしょう。顧客向けに公開するチャットボットは、誤回答の影響が大きいため、まず社内向けで試してから検討するのが順番です。

アイデア出しと企画

企画のたたき台、キャッチコピーの候補、研修の構成案、想定問答づくりなど、案を数多く出す場面でもAIは役立ちます。1つの正解を求めるより、20案を出させて人が3つに絞るような使い方が向いています。

コード生成と手順書づくり

表計算ソフトのマクロや関数、簡単なスクリプトの作成、システムの操作手順書づくりにも使えます。パナソニック コネクトも、主な活用としてプログラミングや作業手順書の作成を挙げています。専門の開発者がいない会社でも、定型作業を自動化する小さな道具を作れるようになるのは大きな変化です。

部署別に最初に試す3業務の選び方

最初に試す業務は、発生する頻度と1回にかかる時間が大きく、入力する情報の機密度が低いものから選びます。頻度×1回の時間が大きいほど削減の総量が増え、機密度が低いほどルールづくりが軽く済むためです。部署ごとの例を挙げますので、自社の業務に置き換えて考えてみてください。

部署別・最初に試す3業務の例(頻度が高く、1回の時間が長く、機密度が低いもの)

  • 総務|社内規程の要約、社内通知文の下書き、よくある質問への回答案
  • 経理|仕訳の摘要や取引先名の表記の整形、社員からの経費の問い合わせへの返信案、月次報告に添えるコメントの下書き
  • 営業|商談メモからの議事録、提案書の骨子、商談後のお礼メールの下書き
  • 情シス|システムの操作手順書、社内FAQの整備、パスワード再設定などの定型回答

どの部署でも、顧客の個人情報や決算前の数字を入れずに済む業務から始めると、試行の段階でつまずきにくくなります。

生成AIによる業務効率化の導入事例|公式発表の数字

紹介する4社は、いずれも対象の社員全員に同じ環境を配っています。発表主体・発表日・対象人数・数字がそろっている事例として選びました。数字はいずれも各社の発表によるもので、第三者が検証した値ではありません。

パナソニック コネクト|2024年の削減44.8万時間

パナソニック コネクトは2025年7月7日のニュースリリースで、2024年のAI活用による業務時間削減効果が44.8万時間に達したと発表しています。同社は主要3社の大規模言語モデルで開発した自社向けAIアシスタントを国内全社員約11,600人に向けて推進しており、2024年の利用回数は240万回、1回あたりの削減時間は28分でした。

注目したいのは、月間ユニークユーザー率の49.1%という数字でしょう。前年より14.3ポイント増えたものの、全社員に配った会社でも、ある月に使った社員は半数ほどにとどまっていることになります。同社が導入の目標の3つ目にシャドーAI利用リスクの軽減を掲げていることも、会社として環境を配る意味を示しています。なお、削減時間の算出方法はリリースに書かれていません。

MIXI|全社導入3か月時点で月約17,600時間の削減見込み

MIXIは2025年3月にChatGPT Enterpriseを導入し、正社員からアルバイト・派遣社員・業務委託社員まで、自社ドメインのメールアドレスを持つ全従業員(2025年4月時点で約2,000人)を対象にしました。同時に、それまでのChatGPT Plusの利用料補助制度を2025年3月で終えています。個人の契約を補助する形から、会社の契約を全員に配る形へ切り替えた例といえます。

同社は2025年8月21日、社内アンケートをもとに、全社で月間約17,600時間の業務時間削減が見込まれると発表しました。全社導入から3か月未満で週に1回以上使う人の割合(WAU)が80%に達し、社員が自発的に作ったカスタムGPT(よく使う指示を登録した専用のChatGPT)は1,800個を超えたと発表しています。17,600時間は、社内アンケートで回答した329名の週あたりの節約時間を選択肢の下限値で集計した月3,620時間を、アクティブユーザー率80%(1,600名)に換算して出した値となります。

三井不動産|約2,000人の全社員に展開

三井不動産は2025年12月23日の発表で、2025年10月1日からChatGPT Enterpriseを約2,000人の全社員に展開したと公表しました。全社85部門の約150名がAI推進リーダーとなり、現場の業務に合わせたカスタムGPTを作る体制を整えています。利用開始から約3か月で500件のカスタムGPTが運用中で、削減時間は実績ではなく、今後全社で業務削減時間10%以上を目指すという目標として示されました。

ライフネット生命|社員200名規模で利用率87%

ライフネット生命保険は2025年4月11日の発表で、2024年7月1日から自社開発の社内用LLM(大規模言語モデルを使った社内向けAI)を導入したと公表しています。2025年1月時点の利用率は総合職正社員203名の87%で、導入から2か月で利用者の業務時間を計約152時間減らしたと発表しました。約152時間は回答した56名へのアンケートにもとづく数字で、社員200名規模でも利用者を増やせば効果が積み上がることを示す例になります。

4社の事例から分かること

4社に共通するのは、対象の社員全員に同じ環境を配っている点です。パナソニック コネクト・MIXI・ライフネット生命は、使った人の割合まで公表しています。MIXIと三井不動産は、カスタムGPTを社員が作る仕組みも持っているのが特徴となります。事例を自社に当てはめるときは、削減時間の大きさより、配った人数と使った人数の比率に目を向けてみましょう。

効果は使う人数の掛け算|会社の時間とお金に直す計算

生成AIの効果は、1回あたりに減る時間×1人が使う回数×使う人数で決まり、時給を掛けると会社のお金に直せます。大幅に削減という言葉だけでは社内の説得材料になりにくいため、自社の数字で見積もってみましょう。

月の削減時間=1回あたりの削減分×1人の月の利用回数×使う人数

月の金額換算=月の削減時間×時給(人件費の目安)

ここでは、1回あたりの削減を15分、1人が月に20回使う、時給を2,500円とする仮定で試算しています。15分はパナソニック コネクトが発表した1回28分の半分ほどで、控えめに置いた値になります。時給は給与だけでなく社会保険料なども含めた人件費の目安として置いたもので、自社の実額に置き換えてください。

社員数全員が使った場合の月の削減時間金額換算(月)半数だけが使った場合(月)
10名50時間125,000円25時間・62,500円
30名150時間375,000円75時間・187,500円
50名250時間625,000円125時間・312,500円
100名500時間1,250,000円250時間・625,000円
200名1,000時間2,500,000円500時間・1,250,000円

※1回あたり15分の削減、1人あたり月20回の利用、時給2,500円を置いた仮定の試算です(1人あたり月5時間・12,500円)。確認にかかる時間は差し引いていません。

30名の会社で全員が使えば、月150時間、金額にして月375,000円分の時間が生まれ、1年では4,500,000円分となります。一方で、配っても半数しか使わなければ、効果もそのまま半分に減ってしまいます。全社員に配ったパナソニック コネクトでも月間ユニークユーザー率が49.1%だったことを踏まえると、利用率を上げる工夫は効果の大きさに直結するでしょう。

配る人数を絞ると、効果も同じ割合で減る

1人ごとに料金がかかる契約では、費用を抑えるために希望者や管理職だけに配る判断になりがちです。ところが効果は使う人数の掛け算なので、配る人数を半分にすると、減らせる時間も半分になってしまいます。事務作業が多い一般社員ほど効果の出やすい業務を抱えていることも多く、配る範囲は費用だけでなく効果の側からも考えてみてください。

また、この試算は確認にかかる時間を引いていない点に注意が必要です。AIの下書きを人が直す時間は業務によって差があるため、試行の段階で実際の数字を測り、見積もりを置き換えていきましょう。

情報漏えいと入力データの学習利用|法人プランの選択

業務で生成AIを使うときの最初の関門は、入力した情報がどこに残り、AIの学習に使われるかどうかです。個人向けのプランと法人向けのプランでは、この扱いが既定の設定から異なります。

個人アカウントと会社支給の違い

OpenAIの公式ヘルプでは、個人向けのPlusとProについて、データコントロールで学習をオフにしない限り会話がモデルの改善に使われる場合があると説明しています。これに対してBusinessやEnterpriseのデータは、既定では学習に使われない扱いです。個人のアカウントでは、学習の設定が社員1人ひとりの操作に任されてしまう点が大きな違いとなります。

設定のほかにも、個人のアカウントには会社から見えない問題が残ります。誰がどの業務で使っているかを管理者が確かめられず、退職した社員のアカウントに会話の履歴が残り続けることもあるでしょう。会社が把握していないところで業務にAIが使われる状態はシャドーAI(野良AI)と呼ばれ、情報漏えいの入口になりかねません。

企業の側も、個人任せから会社が用意する環境へと移り始めています。JUAS(日本情報システム・ユーザー協会)の企業IT動向調査報告書2025(2024年度調査・回答961社)では、言語系生成AIのツールを各人に任せていると答えた企業が2023年度の40.5%から16.3%に減り、既存のSaaSを利用する企業が47.9%で最も多くなりました。利用を禁止している企業も12.3%から3.9%に下がり、禁止か放任かではなく、会社として環境を選ぶ流れがうかがえます。

中小企業に絞った調査でも、会社として環境を用意する意味が見えてきます。商工中金が取引先の中小企業に行った2026年1月の調査(有効回答3,892社)では、会社で生成AIを導入している企業が16.3%だったのに対し、使用は個人の判断に任せている企業が64.9%を占めました。同社の分析では、会社で導入した592社は、個人での登録利用を推奨する534社よりも、経営へのプラス効果を感じる割合が10ポイント以上高かったとされています。

入力してよい情報/いけない情報の線引き

法人向けの環境を用意しても、入力してよい情報の線引きは会社で決める必要があります。個人情報保護委員会は2023年6月2日の注意喚起で、個人情報を含む指示を入力する場合は利用目的の範囲内かを十分に確認するよう求めています。線引きは、社員が迷わず判断出来る具体的な言葉で書くのがコツです。

入力してよい情報の例

  • 公開済みの自社サイトやパンフレットの文章
  • 社外秘ではない社内通知や規程の下書き
  • 個人名や社名を伏せた会議メモ
  • 一般的な業務知識の質問(関数の使い方、敬語の直し方など)

入力してはいけない情報の例

  • 顧客や取引先の担当者の氏名・住所・電話番号・メールアドレス
  • マイナンバー、口座番号、健康診断の結果など、特に慎重に扱う情報
  • 決算発表前の売上・利益の数字や、未公表の人事
  • 見積の単価や取引条件、契約書の原本
  • パスワードや社内システムのアカウント情報

判断に迷う情報は入力しないことを原則にし、迷った例を集めて線引きを少しずつ足していきましょう。確認の項目をまとめて見直したい場合は、生成AIのセキュリティチェックリストも参考になります。

学習の設定とログを、社員任せにしない環境へ

個人任せの利用をやめ、会社で使う環境を1つにそろえると、全員に安心して配れるようになります。UPGEAR AI(アップギアAI)は、ChatGPT・Claude・Gemini・Perplexityを1つの契約で使える法人向けサービスです(人数無制限)。

ハルシネーションと人による確認|出力は下書きとして扱う

生成AIの出力は、どれほど自然な文章でも下書きとして扱い、人が確認してから使うのが原則です。事実と違う内容をもっともらしく作ってしまう現象はハルシネーションと呼ばれ、どのAIでも起こり得ます。帝国データバンクの2026年3月の調査(有効回答10,312社)でも、生成AIの懸念として挙がった項目(3つまでの複数回答)では情報の正確性が50.4%と高く、情報漏洩のリスクの33.5%を上回りました。

確認の手間を減らす決めごと

確認を形だけにしないためには、何を誰が確かめるかを業務ごとに決めておくのが近道です。数字・固有名詞・日付・法令や制度の名前は、必ず元の資料と照らし合わせるようにしましょう。社外に出す文書は、作った本人とは別の人が目を通す流れにすると安心でしょう。

AIに答えの根拠を示させる指示も役に立ちます。出典のURLや元の文書の該当箇所を一緒に出させれば、確認する側はそこだけを見ればよくなります。Web検索と組み合わせて出典を示すAIを調べものに使い、文章づくりには別のAIを使うといった使い分けも考えられます。

導入ステップ|試行から全員配布までの週ごとの手順

導入は、目的を決めて一部の部署で小さく試し、効果を測ってから全員に配る順で進めると失敗が少なくなります。社員10〜200名の会社なら、試行から全員への配布まで1か月ほどを目安に組むことが出来ます。

第1週|目的の明確化と対象業務の選定

最初の週は、何のために使うかを1文で決め、試す業務を3つほどに絞ります。目的は、議事録と社内通知の作成時間を減らして残業を月に何時間減らす、のように測れる形で書くのがおすすめです。あわせて試行するメンバーを3〜5名選び、使う環境と入力してはいけない情報の暫定ルールを用意しておきましょう。

第2週|スモールスタートで試行する

2週目は、選んだメンバーが実際の業務でAIを使い、1回ごとにかかった時間を記録します。一部署・一業務から始めるスモールスタートなら、うまくいかない使い方が見つかっても影響を小さく抑えられるでしょう。記録は完璧を目指さず、導入前と導入後の所要時間を分単位で残すだけで十分です。

第3週|効果測定と数値の集計

3週目は、記録した時間を集計して、1回あたりの削減分と月の回数を出します。JUASの同じ報告書では、生成AIを導入済みまたは試験導入中・導入準備中の企業のうち、効果測定は行っていないと答えた割合が59.8%で最も多く、削減できた労働時間を測っている企業は32.8%でした。測らないまま全社に広げると、続けるかどうかを判断する材料がなくなってしまいます。次のひな形を表計算ソフトに写して使ってみてください。

効果測定シートのひな形(1行=1業務)

  • 業務名(例:週次の営業会議の議事録)
  • 担当部署と使った人数
  • 1回の所要時間(導入前・分)
  • 1回の所要時間(導入後・確認と手直しを含む・分)
  • 1人あたりの月の回数
  • 月の削減時間=(導入前−導入後)×月の回数×使った人数
  • 金額換算=月の削減時間×時給(人件費の目安)
  • 手直しが必要だった回数と、気づいたこと

導入後の時間には、AIの出力を確認して直した時間も必ず含めましょう。確認の時間を除いてしまうと、効果を大きく見積もりすぎる結果になります。

数値目標(KPI)の例

全員に配るかどうかを判断するため、試行の前に数値目標(KPI)を置いておくことが大切です。時間の目標なら、議事録の作成時間を50%短縮する、月次報告の資料作成時間を30%短縮する、といった業務単位の置き方がわかりやすいでしょう。利用の目標としては、配った人のうち月に1回以上使った人の割合(月間利用率)や、1人あたりの月の利用回数が使えます。品質の目標として、出力の手直しで差し戻しになった回数を数えるのも有効です。

第4週|全社展開と説明会

4週目は、試行の結果と社内ルールをまとめ、全員にアカウントを配って説明会を開きます。説明会では、試行メンバーが実際に時間が減った使い方を画面で見せると、ほかの社員も自分の業務に置き換えやすくなります。配布の案内文は、次の節のひな形を使ってみてください。

2か月目以降|利用率を見て使い方を足す

配った後は、月に1回は利用状況を確かめ、使っていない部署に声をかけていきます。効果の計算は3か月ほどで一度やり直し、対象の業務を足すか、ルールを直すかを決めるとよいでしょう。

社内ガイドライン・利用ルールの整備|配布文のひな形つき

全員に配る前に、使ってよいツール、入力してはいけない情報、出力の確認方法の3点だけでも社内ルールとして文書にしておくことが大切です。JUASの同じ報告書では、ガイドラインなど利用ルールを定めている企業は2024年度に39.2%で、2023年度の26.8%から増えています。最初から完璧な規程を作る必要はなく、1枚のルールを配って運用しながら直す進め方で十分でしょう。詳しい作り方は生成AIの社内ガイドラインの作り方にまとめています。

社内への配布文(全社アナウンス)のひな形

配布文は、長い規程を読ませるより、1画面で読み切れる分量にするほうが伝わります。次のひな形の括弧内を自社の内容に置き換えて使ってください。

件名:生成AIの利用開始と使い方のルールについて

  • 対象|全社員(役員・パート・派遣の方を含みます)
  • 使ってよいツール|会社が用意した(ツール名)だけを使ってください。個人のアカウントでの業務利用はご遠慮ください。
  • 入力してはいけない情報|顧客の個人情報、マイナンバー、決算前の数字、見積の単価、パスワード
  • 出力の扱い|AIの回答は下書きです。数字・固有名詞・日付は元の資料で確かめ、社外に出す文書は上長か担当者の確認を経てから送ってください。
  • 最初に試す3つの使い方|会議メモから議事録を作る、メールの返信案を作る、長い資料を3行に要約する
  • 困ったときの問い合わせ先|(部署名・担当者名・内線番号)
  • 利用状況の確認|利用状況は管理者が確認します。業務以外の目的では使わないでください。

問い合わせ先を明記すると、判断に迷った社員が個人の判断で入力してしまう事態を減らせます。

ルールに入れておきたい運用の決めごと

ルールには、入力の線引きのほかに、退職や異動のときのアカウントの止め方、利用ログを誰がどのくらいの頻度で確認するか、ルール違反に気づいたときの連絡先も書いておきましょう。こうした運用の決めごとは、個人のアカウントでは会社が手を出せない部分でもあります。

社内教育・研修と定着|成功例を社内で共有する

配っただけでは使われないため、最初の2〜3か月は研修と成功例の共有に手間をかけるのが定着の近道です。全社員へ配ったパナソニック コネクトでも、ある月に使った社員は約半数だったことを思い出してみてください。

研修は短く、実際の業務で

研修は、AIの仕組みの説明より、自分の業務で1回使ってみる時間を長く取るほうが定着につながります。30分ほどの説明会で、議事録・メール・要約の3つを参加者全員がその場で試すだけでも、翌週からの利用は変わってくるでしょう。指示の書き方に慣れていない方には、下のプロンプト例を配ると助けになります。

業務別のプロンプト例

そのまま写して使える指示の例を業務別に挙げます。括弧内を実際の内容に置き換えてください。

  • 議事録|次の会議メモから、決定事項・担当者・期限を箇条書きで抜き出し、最後に未決事項をまとめてください。(会議メモを貼り付け)
  • メールの返信|次のメールに、(承諾する/日程を再調整したい)という趣旨で、取引先向けの丁寧な返信文を200字程度で作ってください。
  • 規程の要約|次の社内規程を、新入社員が読む前提で、守るべき点を5つに要約してください。
  • 経費の問い合わせ|経費精算の締め日を尋ねる社員への返信案を、貼り付けた社内規程の該当部分だけをもとに作ってください。
  • 提案書の骨子|(業種)で(課題)を抱える顧客向けに、提案書の目次案を5〜7項目で出してください。
  • 手順書|次の操作メモを、初めて使う人向けの番号付き手順書に整えてください。

社内の実例に合わせて言い回しを直したものを共有フォルダに置いておけば、誰でも同じ品質の指示を出せるようになります。

成功例を集めて社内で共有する

利用が広がった会社は、社員が使い方を作る仕組みを持っています。MIXIでは全社導入から3か月未満で1,800個以上のカスタムGPTが作られ、三井不動産は85部門の約150名のAI推進リーダーを中心にカスタムGPTを作る体制を取りました。10〜200名の会社なら、部署ごとに推進役を1人決め、月1回使い方を共有する場を設けてみましょう。共有する際は、どの業務で何分が何分になったかを添えると、ほかの部署も試す気になりやすくなります。

代表的なツールと選定の観点

業務効率化に使われる生成AIとしてよく名前が挙がるのは、ChatGPT・Gemini・Claude・Microsoft Copilot・Perplexityです。どれか1つが全ての業務で優れているわけではなく、得意な作業や連携しやすいソフトが少しずつ違います。

代表的なツール紹介

ChatGPTはOpenAIが提供する生成AIで、文章づくりから表の整理、画像の生成まで幅広く使われています。GeminiはGoogleの生成AIで、GmailやGoogleドキュメントを使っている会社では連携しやすいでしょう。ClaudeはAnthropicの生成AIで、長い文書の読み込みや丁寧な文章づくりで使われることもあるサービスです。Microsoft CopilotはWordやExcel、TeamsといったMicrosoft 365のアプリと組み合わせて使える点が特徴となります。PerplexityはWeb検索と組み合わせて回答し、出典を示すため、調べものに向いています。ChatGPTに絞って、プロジェクトやタスクなど機能ごとの使い方を知りたい方はChatGPTで業務効率化する機能別の使い方をご覧ください。

それぞれの料金は、個人向けと法人向けでプランが分かれ、改定も頻繁にあります。法人向けの主なサービスの料金は法人向け生成AIの料金比較で一覧にしています。

ツール選定の観点

選ぶときは、機能・料金・操作性・セキュリティ・連携の5つの観点で比べるのが基本です。機能は、試行で選んだ業務に必要なもの(長文の読み込み、ファイルの添付、音声の文字起こしなど)がそろっているかで判断します。料金は、1人あたりの単価だけでなく、全員に配った場合の月額と年額に直して比べてみてください。

操作性は、試行メンバーの中でITに詳しくない方が迷わず使えるかどうかで見るのがおすすめです。セキュリティは、入力データが学習に使われない設定を会社として一律にかけられるか、利用ログを管理者が確認出来るかを確かめましょう。連携は、ふだん使っているメールや文書作成ソフト、チャットツールとつながるかどうかがポイントになります。

SaaS型から始めるか独自開発か

社員10〜200名の会社であれば、まずはすでに提供されているサービス(SaaS型)から始めるのが現実的でしょう。パナソニック コネクトやライフネット生命のように自社向けのAIを開発する例もありますが、開発と保守を担う人員が必要になります。JUASの調査でも、既存のSaaSを利用する企業が47.9%で最も多い形でした。社内データとの連携を深めたくなった段階で、独自開発や社内文書を読み込ませる仕組みを検討する順番で問題ありません。

複数のAIを使い分ける

得意分野が違う以上、1つのAIに決め切らず、業務ごとに使い分ける考え方もあります。調べものは出典を示すAI、長い資料の読み込みは長文に強いAI、ふだんの文章づくりは既定の1つ、といった粗い割り当てで十分です。使い分けの目安は生成AIの使い分け、複数のAIをまとめて使う形はマルチAIとはで紹介しています。

会社で安全に全員へ配るには

効率化の効果を会社全体で出すには、全員が同じ安全な環境を使える状態をつくることが出発点になります。個人のアカウントを黙認したままでは、学習の設定もログも社員ごとにばらばらで、効果を測ることも出来ません。全員へ配るときに確かめたい条件を、4つに分けて見ていきます。

学習させない設定を会社で一律にかける

入力データを学習に使わない設定が、社員ごとの操作ではなく会社の契約として一律にかかる環境を選びましょう。設定を社員に任せると、オフにし忘れた1人の入力が学習に使われるおそれが残ってしまいます。

ログ管理で使われ方を把握する

誰が・いつ・どのAIを使ったかを管理者が確認出来れば、利用率の把握とルール違反の早期発見を同じ仕組みで行うことが出来ます。利用が少ない部署が分かれば研修を足せるので、ログは見張るためだけでなく、効果を上げるための材料にもなるでしょう。

社員への配布と退職時の停止

アカウントの発行と停止を管理者がまとめて行えることも欠かせません。入社した日から使え、退職した日に止められる状態なら、会話の履歴が個人の手元に残る心配も減らせます。パートや派遣の方まで含めて配れるかどうかは、料金の仕組みに左右される部分でもあります。

1人ごとに料金がかかる契約では、人数が増えるほど月額も増えるため、配る範囲を絞る判断に傾きやすくなります。効果が使う人数の掛け算で決まる以上、人数を気にせず配れる料金の形かどうかも大事な観点です。

複数のAIを1つの環境で使い分ける

ChatGPT・Claude・Gemini・Perplexityを別々に契約すると、契約・請求・管理画面がサービスの数だけ増えてしまいます。1つの環境で複数のAIを切り替えて使えれば、使い分けの自由と管理の手間の少なさを両立出来るでしょう。中小企業の生成AI導入の進め方もあわせて参考にしてみてください。

効率化は、全員が使えて初めて出る

UPGEAR AI(アップギアAI)は、ChatGPT・Claude・Gemini・Perplexityを1画面で切り替えて使える法人向けAI基盤です。入力データの学習非利用を全モデルに標準で適用するため、社員1人ひとりが設定を操作する必要はありません。管理画面ではUPGEAR AI上の利用状況を利用者・日時・利用モデル単位まで把握でき、使わせるAIも会社で選べます。会話履歴・利用ログ・アカウントは国内サーバー(AWSの日本リージョン)で管理します。月額30,000円(税抜)から。どのプランも利用人数は無制限で、料金は利用量に応じたプラン設計です(人数の目安はライト1〜5名・スタンダード6〜20名・プレミアム21〜50名)。初期費用100,000円(税抜)が別途かかります。

UPGEAR AIの詳細を見る

よくある質問

AIによる業務効率化の事例はありますか?
パナソニック コネクトは、国内全社員約11,600人に自社向けAIの活用を推進し、2024年のAI活用による業務時間削減効果が44.8万時間に達したと2025年7月7日に発表しています。MIXIは全従業員約2,000人にChatGPT Enterpriseを導入し、2025年8月21日、アンケートをもとに、全社で月間約17,600時間の業務時間削減が見込まれると発表しました。いずれも各社の発表による数字で、第三者が検証した値ではありません。
AIで効率化できる仕事は何ですか?
メールや社内通知などの文書作成、議事録と会議の要約、規程や資料の要約・翻訳・校正、アンケートの分類などのデータ整理、社内の問い合わせ対応、企画のアイデア出し、関数や手順書づくりが代表的です。頻度が高く、1回に数十分かかり、文章が中心になる仕事ほど効果が出やすくなります。
AIで事務の業務を効率化するにはどうすればよいですか?
議事録・メール・規程の要約のように毎週発生する事務作業を3つほど選び、数名で2週間ほど試して、1回あたりの時間を導入前と導入後で記録するところから始めます。効果が確かめられたら、入力してはいけない情報を決めたうえで、会社が用意した環境を事務担当の全員に配ります。
業務効率化のアイデアにはどんなものがありますか?
生成AIを使うなら、会議メモから議事録を作る、よく来る問い合わせの回答案を用意しておく、長い資料を3行に要約する、社内規程をAIに読み込ませて社員の質問に答えさせる、といった使い方から始めやすいでしょう。部署ごとに、頻度×1回の時間が大きく機密度の低い業務を選ぶと、効果が出やすくなります。

まとめ

生成AIによる業務効率化は、1回あたりの削減分×回数×使う人数の掛け算で効果が決まります。公式に発表された事例でも、全社員に同じ環境を配り、利用率まで公表している会社が見られました。

進め方は、目的を決めて3つほどの業務で小さく試し、効果測定シートで時間を測ってから全員に配る順番が進めやすいでしょう。配る前には、入力してはいけない情報の線引きと出力の確認方法をルールにし、学習させない設定とログの管理を会社として一律にかけられる環境を選んでみてください。業務別のAI活用についてはAI活用コラム一覧でも紹介しています。

※数値は2026年9月26日時点で各社の公式発表・調査報告書で確認した内容です。事例の数字はいずれも各社の発表(自己申告)で、第三者による検証を経たものではありません。出典:パナソニック コネクト ニュースリリース(2025年7月7日)、MIXI ニュース(2025年4月15日・2025年8月21日)、三井不動産 ニュースリリース(2025年12月23日)、ライフネット生命保険 プレスリリース(2025年4月11日・PR TIMES)、一般社団法人日本情報システム・ユーザー協会「企業IT動向調査報告書2025」(2024年度調査)、総務省「令和8年版情報通信白書(概要)」(2026年7月)、商工中金「中小企業の生成AIの利用にかかる調査(2026年1月調査)」、帝国データバンク「生成AIに関する企業の動向調査(2026年3月)」、個人情報保護委員会「生成AIサービスの利用に関する注意喚起等について」(2023年6月2日)、OpenAI ヘルプセンター。試算の時給・回数・削減時間は説明のための仮定です。