
サムスンのChatGPT情報漏洩とは、2023年3月にサムスン電子の半導体部門で、社員が社内のソースコードや会議の内容をChatGPTに入力し、情報を社外に出してしまったと報じられた事案です。日本の会社が学ぶべきことは、禁止で終わらせず、会社が管理できる環境を配ったうえで入れてよい情報の線を引く運用に落とすことになります。実際にサムスン自身も、一時的な利用制限を経て、2026年には法人向けの管理された環境を条件つきで社員に配る形に移ったと報じられています。一次報道の日付をたどりながら、何が起きたのか、社員10〜200名の会社は何をすればよいのかを順に見ていきましょう。
サムスンのChatGPT情報漏洩とは|2023年3月に半導体部門で起きた3件
この事案を最初に伝えたのは、韓国の経済誌Economist Korea(이코노미스트)の2023年3月30日の記事になります。同誌によると、サムスン電子のDS部門(デバイスソリューション=半導体の事業部門)で、ChatGPTへの情報入力の事故が3件起きたとされています。日本語では、PC Watchが2023年4月4日に、Economist Koreaを引用元と明記して同じ内容を伝えました。
生成AIをめぐる国内の事案を含めた全体像は、生成AI・シャドーAIの情報漏洩事例(国内20件)にまとめてあります。ここから先はサムスンの1件に絞り、報道の中身と、日本の会社の業務への置き換えを見ていきます。
半導体部門(DS部門)の社員が社内のソースコードを入力した
報道によると、3件のうち2件は設備の情報、1件は会議の内容の流出とされています。社員Aは半導体設備の計測データベースのダウンロード用プログラムのソースコード全体を、社員Bは歩留まりや不良設備の把握に使うプログラムのコードを、それぞれChatGPTに入力したと報じられました。社員Cは、会議をNaver Clovaというアプリで文字起こしした文書をChatGPTに入れたという内容でした。
漏洩は1件ではなく3件と報じられた
DS部門がChatGPTの利用を許可したのは2023年3月11日で、そこから約20日のうちに3件が起きたと報じられています。許可から3週間足らずで、別々の社員が別々の業務で同じ行動を取っていたことになります。1人の不注意というより、便利な道具を配った時点で線引きが追いついていなかった状態と見るほうが実態に近いでしょう。会社は必要に応じて該当する社員の懲戒を検討する方針と報じられましたが、実際に懲戒が行われたという報道は確認できていません。
一次報道でたどる時系列|2023年の利用許可から2026年の解禁報道まで
報道の日付で並べると、2023年3月の事故と5月の利用制限は、別々の段階だったことが分かります。両者は1つの出来事のように語られがちですが、日付ごとに分けると次のとおりとなります。
| 時期 | 出来事(報道・発表の内容) | 出典 |
|---|---|---|
| 2023年3月11日 | DS部門がChatGPTの利用を許可 | Economist Korea(2023年3月30日) |
| 3月11日から約20日 | ソースコード2件と会議の文字起こし1件の入力が起きる | Economist Korea(2023年3月30日) |
| 2023年3月30日 | 3件を報道。緊急措置として1回の質問でアップロードできる容量を1,024バイトに制限したと伝える | Economist Korea |
| 2023年4月4日 | 日本語で報道。3件・DS部門・3月11日の許可・1,024バイトの制限・懲戒の検討を伝える | PC Watch |
| 2023年4月 | 社内調査で、回答者の約65%が生成AIツールの利用をセキュリティ上のリスクと回答 | TechCrunch(2023年5月2日) |
| 2023年4月25日 | (OpenAI側)ChatGPTでチャット履歴をオフにできる機能を発表 | CNBC(2023年4月25日)ほか |
| 2023年5月2日 | 会社支給の端末と社内ネットワークでの生成AIツールの利用を禁じる社内メモが報じられる。広報は安全に使える環境が整うまでの一時的な制限と説明 | TechCrunch・Bloomberg・CNBC(いずれも同日) |
| 2023年11月8日 | Samsung AI Forum 2023で、自社開発の生成AI「Samsung Gauss」を発表 | TechCrunch(2023年11月8日) |
| 2026年5月26日 | DX部門の社員を対象に、ChatGPT・Gemini・Claudeで実証した外部の生成AIを6月中に正式導入すると報道。利用はセキュリティ研修を修了した社員に限ると伝える | 韓国経済新聞 |
| 2026年6月22日 | 韓国の全従業員とDX部門の世界の従業員に、ChatGPT EnterpriseとCodexを展開したと報道(OpenAIの発表が出典) | ghacks.net |
※日付は各報道・発表の公開日です。1,024バイトの制限、懲戒の検討、2026年の対象範囲は報道に基づくもので、サムスン電子の公式発表では確認できていません(2026年9月29日に各URLを確認)。
表から読み取れるのは、サムスンが「使わせない」で止まらず、道具を置く場所を会社の管理の内側へ移していった流れです。3月の事故から5月の制限までは1か月あまりあり、その間に社内調査で社員の受け止めを確かめていたことも報じられています。自社で同じ判断をするときにも、事故の直後に全部を止めるのか、段階を踏むのかを考える材料になるでしょう。
3件は何を、なぜ入れたのか|日本の会社の業務に置き換える
3件はどれも、仕事を早く片付けたいというごく普通の動機から起きたと読むことが出来ます。報道では、それぞれ不具合の修正、コードの効率化、議事録の作成が目的だったとされています。日本の会社で同じ場面を探すと、次のように置き換えられます。
| 件 | 入れたもの(報道) | 目的(報道) | 日本の会社で近い場面 | 代わりにどうするか |
|---|---|---|---|---|
| 1 | 半導体設備の計測データベースのダウンロード用プログラムのソースコード全体 | 不具合の修正 | 社内システムやExcelのマクロのエラーを直したくて、コードを丸ごと貼る | 会社が管理する環境で使い、エラーの出ている箇所だけに絞る。接続先や顧客名は伏せる |
| 2 | 歩留まりや不良設備の把握に使うプログラムのコード | コードの効率化 | 見積もりの計算シートや検査の手順を、もっと速く正確にしたくて中身ごと貼る | 原価や不良率などの実数は入れず、仕組みの説明に置き換えて相談する |
| 3 | 会議をNaver Clovaで文字起こしした文書 | 議事録の作成 | 役員会・商談・人事面談の録音を文字にして、要約と議事録を作らせる | 会議の種類で線を引く。役員会・人事・取引条件の会議は、会社が認めた環境で担当者だけが扱う |
1件目と2件目は、コードを書く部署がない会社には関係のない話に見えるかもしれません。実際には、Excelのマクロや見積もりの計算式にも、取引先の名前や原価の考え方が入り込んでいることがよくあります。貼る側は道具を直したいだけでも、道具の中には会社の売り方や作り方が詰まっています。
3件目の会議の文字起こしは、10〜200名の会社で起きやすい場面の一つでしょう。報道の例では、会議の中身が文字起こしのアプリとChatGPTという2つのサービスを通ったことになります。録音の要約は便利なぶん、役員会や人事の話がそのまま社外に出る入り口となってしまいます。
3件の入力が、なぜ情報漏洩になるのか
入力した時点で、情報は社外の事業者のサーバーに渡り、会社が削除や回収を管理できない状態になります。ここで押さえておきたいのは、流出した情報が他の人の回答に出たという話ではないという点です。報道では、入力された情報がその後どう扱われたか、第三者の目に触れたかまでは確認されていません。それでも会社から見れば、社外秘として管理していた情報を、自分たちの管理の外に置いてしまったことに変わりはないでしょう。
入力データが学習に使われる可能性と、当時のChatGPTの設定
当時とくに心配されたのは、個人向けのChatGPTに入れた内容が、AIの学習に使われる可能性でした。TechCrunchが2023年3月1日に伝えたOpenAIの発表では、API(ほかのシステムからAIを呼び出す窓口)で送られたデータは、顧客が選ばない限り学習を含むサービス改善に使わない方針とされています。一方で、ChatGPTの画面でチャット履歴をオフにし、その会話を学習に使わせない機能が発表されたのは2023年4月25日となります。3件が起きた3月は、この機能が発表される前の時期にあたります。
今の個人向けChatGPTでは、設定のデータコントロールにある「すべての人のためにモデルを改善する」をオフにすると、会話を学習に使わない形に出来ます。一時チャットは30日後に削除され、学習には使われず、不正利用の監視のためにだけ確認される場合があるとされています。法人向けのBusinessやEnterpriseなどは、既定で入力を学習に使わない扱いです。
ただし、学習に使わない設定にしても、社外のサーバーに情報が渡ること自体は変わりません。学習の設定は対策の一部で、入れてよい情報の線引きの代わりにはならないと考えておきましょう。ChatGPTで情報漏洩が起きる経路の全体は、ChatGPTの情報漏洩リスクと対策で扱っています。
社員が個人のアカウントで設定を切り替えているかどうかは、会社の側からはほとんど見えないでしょう。会社が契約し、全員に同じ設定をかけられる環境を用意して、ようやく線引きを守ってもらう土台が出来ることになります。
入力のほかに、情報が漏れうる2つの経路
サムスンの3件は、社員が自分で情報を入れた例です。同じ2023年には、入れ方に気をつけていても情報が他人に見えてしまうおそれを示した報告が、ほかに2つ出ています。
1つ目は、サービスの側の不具合です。OpenAIは2023年3月24日の発表で、3月20日にオープンソースのライブラリ(redis-py)の不具合が起き、一部の利用者が他の利用者のチャット履歴のタイトルを見られる状態になったため、ChatGPTを一時止めたと説明しています。同じ不具合で、特定の9時間に使っていたChatGPT Plus加入者の1.2%について、氏名やメールアドレス、請求先の住所、カードの種類と下4桁、有効期限が他の利用者に見えた可能性もあったそうです。カード番号の全桁は見えていないと、同社は書いています。サムスンの3件とは別の出来事ですが、ちょうど同じ月に起きていました。
2つ目は、ログイン情報が盗まれる経路です。シンガポールのセキュリティ企業Group-IBは2023年6月20日の発表で、ChatGPTのログイン情報が保存されたまま、情報を盗むマルウェアに感染していた端末を1年で101,134台見つけたとしています(同社の調査)。ログの件数は2023年5月の26,802件が月別で最多、地域別ではアジア太平洋が40.5%でした。OpenAIのサーバーから盗まれたのではなく、使う人のパソコンが感染して保存済みのパスワードを抜かれた、という話になります。ChatGPTは既定で会話の履歴を残すので、アカウントに入られると、過去に入れた社内の情報まで読まれるおそれがあると同社は指摘しています。
この2つは、入れる情報の線引きや学習の設定だけでは防ぎきれません。会社で備えるなら、ログインに2段階認証をかけること、社員が個人のパスワードを使い回さずに会社のアカウントで入ること、使っている事業者から障害のお知らせが届いたときに確かめる担当を決めておくこと、の3つを足しておきたいところです。個人のアカウントでは、会社がログインの方法も会話の履歴の置き場所も把握できません。
個人のアカウントへの入力をなくす近道は、会社で契約した使い先を先に配ることです。UPGEAR AI(アップギアAI)は、ChatGPT・Claude・Gemini・Perplexityを1つの契約で使える法人向けサービスです(人数無制限)。
サムスンは生成AIの社内利用を全面禁止したのか|2023年5月の措置とその後
2023年5月の措置は、あらゆる場面で生成AIを禁じたというより、会社支給の端末と社内ネットワークでの利用を止めた内容と報じられています。TechCrunchが2023年5月2日に伝えた社内メモでは、ChatGPT・Bing・Bardなどの生成AIツールが対象とされました。同じ記事には、社員の生産性と効率のために生成AIを安全に使える環境をつくる措置を検討しており、それが整うまで会社の端末からの利用を一時的に制限する、という趣旨の広報コメントも載っています。
日本語の報道では禁止という見出しで伝えられましたが、広報の説明を読むと、あくまで環境が整うまでの一時的な措置という位置づけでした。Bloombergも同じ日に、従業員の生成AI利用を禁止したと報じています。
禁止の後にサムスンがたどった3段階
報道をつなぐと、サムスンの対応は3つの段階に分けて見ることが出来ます。最初は2023年3月、1回の質問でアップロードできる容量を1,024バイトに絞った緊急措置でした。英数字1文字を1バイトとすると、約1,000文字分にあたる量となります。次が2023年5月の、会社の端末と社内ネットワークでの一時的な利用制限です。その間の2023年11月には、自社開発の生成AI「Samsung Gauss」も発表しています。
そして2026年には、会社が管理する法人向けの環境を、研修などの条件つきで社員に配る形に移ったと報じられました。報道から見えるのは、禁止を続けるより、管理できる環境を条件つきで配る方向へ移った流れです。量を絞る、場所を止める、管理された場所を配る、という順番は、規模の小さな会社でもそのまま参考にすることが出来ます。
2026年の解禁報道は、対象範囲の書き方が食い違う
韓国経済新聞は2026年5月26日、DX部門(デバイスエクスペリエンス部門)の社員を対象に、ChatGPT・Gemini・Claudeで実証した外部の生成AIを6月中に正式導入すると報じました。利用はセキュリティ研修を修了した社員に限るとしており、記事はDS部門の扱いには触れていません。一方でghacks.netは2026年6月22日、OpenAIの発表を出典として、韓国の全従業員とDX部門の世界の従業員にChatGPT EnterpriseとCodexを展開したと報じました。
2本の報道は対象範囲の書き方が異なるため、半導体部門が今どう扱われているかを断定することは出来ません。ghacks.netの記事では、ChatGPT Enterpriseがデータ保護、ユーザーとアクセスの管理、セキュリティの制御を備え、既存のセキュリティ方針とガバナンスの枠内で使えると説明されています。OpenAIがこの導入を最大級の法人導入の一つと位置づけている点は、同社自身の発表による評価となります。
報道で分かっていること・分かっていないこと
この事案は韓国の報道が起点で、サムスン電子の公式発表で確かめられる事実は多くありません。社内で説明に使うときは、分かっていることと分かっていないことを分けて伝えましょう。
報道で分かっていること
- DS部門が2023年3月11日にChatGPTの利用を許可し、約20日のうちに3件の入力が起きたと報じられたこと(Economist Korea)
- 3件の中身が、設備に関するソースコード2件と、会議の文字起こし1件と報じられたこと
- 緊急措置として、1回の質問あたりのアップロード容量を1,024バイトに制限したと報じられたこと
- 2023年4月の社内調査で、回答者の約65%が生成AIツールの利用をセキュリティ上のリスクと答えたと報じられたこと(TechCrunch)
- 2023年5月に会社の端末での生成AI利用を一時的に制限し、広報が安全な環境が整うまでの措置と説明したこと(TechCrunch)
- 2026年に、法人向けの管理された環境を条件つきで社員に配る形に移ったと報じられたこと(韓国経済新聞・ghacks.net)
報道では確認できていないこと
- 該当する社員が実際に懲戒されたかどうか(報道は、必要に応じて懲戒を検討する方針まで)
- 入力された情報が、他の利用者への回答に表れたかどうか
- 損害の額や、取引への影響
- 3件が社内でどのように見つかったのかという、発覚の経緯
- 2026年の展開で、半導体部門が対象に入ったかどうか
分かっていないことを想像で埋めて話を大きくすると、社員は自分の業務とは縁のない特別な事件として受け取りがちです。社内の研修で役に立つのは、入れた情報の種類と入れた理由という、報道で確かな部分になります。
同時期に利用を制限したJPMorgan・Appleとの違い
2023年前半には、サムスン以外にも生成AIの業務利用を制限したと報じられた大企業がありました。Fox Businessは2023年2月22日、JPMorgan Chaseが従業員のChatGPT利用を制限したと報じています。同記事では特定の事件を受けたものではなく予防的な措置とされ、会社の公式コメントは出ていません。Appleについては、9to5macが2023年5月18日、WSJが確認した社内メモとして、ChatGPTとGitHub Copilotの業務利用を制限したと伝えました。
並べてみると、JPMorganは事故の報道を伴わない予防の制限で、サムスンは3件の事故が報じられた後の制限という違いがあります。事故の前に止めるか後に止めるかより、止めた後にどこで使わせるかのほうが会社の差になります。サムスンは制限を出した時点で、安全に使える環境をつくる措置を検討していると説明していました。日本の会社が見習いたいのは、制限そのものより、この戻り道を最初から示していた点でしょう。
日本の法令と行政の注意喚起から見る、この事案の重さ
日本の会社で同じことが起きた場合、入れた情報の種類によっては法律の問題にもつながります。個人情報保護委員会は2023年6月2日、「生成AIサービスの利用に関する注意喚起等について」を公表しました。事業者に向けては、個人情報を含むプロンプト(AIへの指示文)を入力する場合、利用目的を達成するために必要な範囲内かを十分に確認するよう求めています。本人の同意なく個人データを入力し、応答の出力以外の目的で扱われる場合には法の規定に違反する可能性があるとして、提供事業者が機械学習に使わないことなどの確認を促す内容です。これは命令ではなく、注意喚起という位置づけになります。
入力が漏えい等にあたるかは事案ごとの判断になりますが、個人データの漏えいでは、要配慮個人情報を含む場合や、本人の数が1,000人を超える場合など4つの類型で、おそれの段階も含めて委員会への報告が義務とされています。入れた情報が従業員の健康診断の結果のような個人データなら、報告義務の話にまで広がるおそれがあります。速報は発覚した日から3〜5日以内とされていますので、報告の流れは先に確認しておきましょう。
サムスンの3件のようなソースコードや製造の数値は、不正競争防止法の営業秘密にあたりうる情報です。同法第2条第6項は営業秘密を、秘密として管理されていること、事業に有用であること、公然と知られていないことの3つで定めています。社外のAIに気軽に入れる状態が続くと、秘密として管理していたと主張しにくくなるおそれが出てきてしまいます。
総務省と経済産業省のAI事業者ガイドライン(第1.1版・令和7年3月28日。最新は2026年3月31日の第1.2版)も、AIの利用者に対して、機密情報等を不適切に入力しないよう注意を払うことを挙げています。IPAが2026年4月2日に公開した「AI利用者のためのセキュリティ豆知識」にも、クラウドのAIに営業秘密を教えないという趣旨の項目が入りました。どの資料も、入れる前の判断を利用者と会社に求めている点で共通しています。
社員10〜200名の会社でサムスンの3段階を小さく再現する手順
サムスンがたどった流れは、規模の小さな会社でも順番を変えずに使うことが出来ます。大きな違いは、専任の部署がなくても、総務や情シスの担当者が1人で回せる大きさに縮められる点でしょう。
手順1:入れてはいけない情報を、量ではなく種類で決める
サムスンの1,024バイトの制限は、量で入力を絞る応急の手当てでした。小さな会社では、量より情報の種類で線を引くほうが社員に伝わりやすくなります。3件に合わせるなら、社内のプログラムのコード、原価や製造の数値、役員会や人事の会議の中身の3つが最初の候補です。個人情報も同じ扱いにし、マイナンバーを含む情報は番号法第19条で提供できる場面が限られているため、最初から対象外にしておくほうが無難でしょう。種類ごとの考え方はAIに入れてはいけない情報で詳しく扱っています。
手順2:個人のアカウントでの業務利用を、期限を決めて止める
次に、個人のアカウントでの業務利用を、期限を決めていったん止めます。サムスンも会社の端末での利用を、安全な環境が整うまでの一時的な措置と説明していました。期限のない禁止は、社員が見えないところで使い続ける野良AI(シャドーAI)を生みやすくなってしまいます。止める期間は、会社で契約する環境を用意できるまでの数週間程度を目安に決めてみてください。
手順3:会社が管理する環境を、条件つきで配る
最後に、会社が契約した環境を、短い研修の受講などの条件をつけて配ります。サムスンについて韓国経済新聞が報じた条件も、セキュリティ研修の修了でした。どの法人プランを選ぶかはChatGPTの法人プランと料金、社内ルールの書き方は生成AIの社内ガイドラインの作り方が参考になります。配る前には、次の6つを確かめておきましょう。
- 入れてはいけない情報を、3〜5種類に絞って文書にした長い規程より、社員が迷ったときにすぐ見られる短い一覧のほうが守られます。
- 会社で契約した環境で、入力が学習に使われない設定になっている社員ごとの操作に任せず、会社の側でまとめて確かめられるかを見ます。
- 誰がいつ使ったかを、会社の側で確かめられる事故が起きたときに、どの情報がいつ入ったかを追えるかどうかが分かれ目です。
- 退職や異動のときに、アカウントを止める担当者が決まっている契約が1つにまとまっていれば、止め忘れも起きにくくなります。
- 短い研修の受講を、配る条件にしたサムスンの3件のような具体例を使うと、自分の業務に引きつけて考えてもらえます。
- 個人のアカウントでの業務利用を、いつまで止めるか期限を決めた期限を示すことで、隠れて使い続ける理由を減らせます。
点検の項目をもっと細かく確かめたい場合は、生成AIのセキュリティ対策チェックリストも使えます。
社内に流す通知文のひな形
社内への案内は、長い規程より短い通知から始めるほうが伝わりやすくなります。下のひな形の[ ]の部分を、自社の事情に合わせて書き換えてみてください。
件名:生成AIの使い方についてのお知らせ
サムスン電子で、社員がChatGPTに社内のコードや会議の内容を入力したと報じられた件を受けて、[会社名]の生成AIの使い方を次のとおりにします。
- [日付]以降、業務の情報を個人のアカウントの生成AIに入力しないでください。
- 業務では、会社が契約した[サービス名]を使ってください。
- 社内のプログラムのコード、原価や製造の数値、役員会や人事の会議の内容、個人情報は、[担当部署]の許可がない限り会社の環境でも入力しないでください。
- 入力してよいか迷ったときは、入力する前に[担当部署]へ相談してください。
- [サービス名]を使うには、[研修名]の受講が必要です。
分からない点があれば、[担当者名]までお問い合わせください。
通知を出して1か月ほどたったら、個人のアカウントでの利用が残っていないかを、部署ごとに聞いてみるとよいでしょう。
禁止で終わらせず、会社が管理する環境を配る
UPGEAR AI(アップギアAI)は、ChatGPT・Claude・Gemini・Perplexityを1画面で使える法人向けサービスです。基盤は国内サーバー(AWSの日本リージョン)で稼働し、管理者ダッシュボードで利用ログ・権限・モデルのON/OFFを管理出来ます。料金は月額30,000円(税抜)から。どのプランも利用人数は無制限で、料金は利用量に応じたプラン設計です(人数の目安はライト1〜5名、スタンダード6〜20名、プレミアム21〜50名)。初期費用100,000円(税抜)が別途かかります。
UPGEAR AIの詳細を見るよくある質問
サムスンのChatGPTで漏洩したデータは?
サムスンのChatGPT情報漏洩は、なぜばれたのですか?
サムスンは今もChatGPTを禁止しているのですか?
今ChatGPTに社内の情報を入れると、サムスンと同じことが起きますか?
入力に気をつけていれば、ChatGPTから情報が漏れることはありませんか?
まとめ
サムスンのChatGPT情報漏洩は、2023年3月に半導体部門で利用を許可してから約20日のうちに、ソースコード2件と会議の文字起こし1件がChatGPTに入力されたと報じられた事案です。その後サムスンは、容量の制限、会社の端末での一時的な制限を経て、2026年には法人向けの管理された環境を条件つきで配る形に移ったと報じられています。
情報漏洩を防ぐために会社が確かめる条件は、AI・生成AIの情報漏洩対策にまとめました。
日本の会社が学べるのは、禁止を出口にしないことになります。入れてはいけない情報を種類で決め、個人のアカウントでの利用を期限つきで止め、会社が管理する環境を条件つきで配るという3つを、順番に進めてみてください。法人のAI活用についてのほかの記事は、AI活用コラム一覧から探すことが出来ます。
