情報漏洩しない生成AIの条件。契約・設定・管理で確かめる5点

情報漏洩しない生成AIとは、入力した業務情報が提供元の学習に使われず、保存・共有・利用の範囲を会社が決めて後から確かめられる状態で使える生成AIのことです。漏れにくい状態で使えているかどうかは、AIの賢さやサービスの知名度ではなく、契約・設定・管理の5点がそろっているかで決まります。同じChatGPTやClaudeでも、個人向けのアカウントと法人向けの契約とでは、入力の扱いの既定値そのものが違ってしまいます。社員10〜200名の会社の総務・情シスの方が自社の契約書と管理画面を見ながら判定できるよう、各社の公式ヘルプにある設定名と画面の場所を添えて順に確かめていきましょう。

生成AIの情報漏洩はどこで起きるか|事例と3つの経路

生成AIから情報が漏れる経路は、学習に使われる経路、共有や連携で外に出る経路、提供元の不具合という3つに分けて見ることが出来ます。実際に報じられた事例は生成AI・シャドーAIの情報漏洩事例19件の一覧にまとめてありますので、個々の経緯はそちらをご覧ください。

1つ目は、入力した文章がAIの提供元でモデルの改善に使われる経路になります。個人向けのサービスでは、この扱いが既定で有効になっていることがあり、社員が自分で設定を変えない限りそのまま続いてしまいます。個人情報保護委員会も2023年6月2日の注意喚起で、個人データを入力する場合には「当該生成AI サービスを提供する事業者が、当該個人データを機械学習に利用しないこと等を十分に確認すること」としています。

2つ目は、共有リンクや公開の設定、外部アプリとの連携を通って、入力や回答が想定より広い範囲に見えてしまう経路です。学習に使われない契約であっても、この経路は別に閉じておく必要があります。

3つ目は、提供元のシステムで起きる不具合になります。OpenAIの発表によると、2023年3月20日にオープンソースのライブラリ(redis-py)の不具合で、他のユーザーのチャット履歴のタイトルが見える状態になりました。同社は、特定の9時間に利用していたPlus会員の1.2%について、氏名・メールアドレス・請求先住所・カードの種類・カード番号の下4桁・有効期限が表示された可能性があると説明しています。カード番号の全体は表示されなかった、というのが同社の発表です。

※障害の内容と数値は、OpenAIが自社の公式ブログで発表したものです。第三者による検証の結果ではありません。

この3つ目は利用者の側だけでは防ぎきれないため、備えとしては、何が残り、どこまで追えるかを契約と設定で確かめておくことになります。3つの経路を塞ぐ手立てを並べ直すと、次の5点に整理することが出来ます。

  • 条件1 入力が学習に使われない契約になっているか
  • 条件2 保存期間と削除のルールを説明できるか
  • 条件3 共有リンクと外部連携の範囲が閉じているか
  • 条件4 会社がアカウントを配り、止められるか
  • 条件5 誰が何を使ったかを後から追えるか(ログと保存場所)

サービスの名前だけで判断せず、自社の契約と設定に1つずつ当てはめてみてください。

5点のどれか1つでも欠けていれば、その生成AIを情報漏洩しないと言い切ることは難しいでしょう。各条件で何を確かめればよいかを、各社の公式ヘルプの記載に沿って順に見ていきます。

条件1:入力が学習に使われない契約になっているか

最初に確かめるのは、入力が学習に使われないことが、社員の設定ではなく契約の既定値として約束されているかどうかです。主要な4社はいずれも、法人向けの契約では既定で学習に使わないと公式に説明しています。一方、ChatGPTやClaudeの個人向けでは、学習に使うかどうかが本人の設定に委ねられる部分が残ってしまいます。もう1つ見落としやすいのが、法人向けでも例外として学習に回りうる操作がある点でしょう。

ChatGPT:個人向けは既定で有効、法人向けは既定で使わない

ChatGPTの個人向けプラン(Free・Plus・Pro)を個人用ワークスペースで使っている場合、データ共有は既定で有効になっていると公式ヘルプに書かれています。オフにする場所は、ウェブ版ならアカウントメニューから開く設定の中にあります。

  • アカウントメニューを開き、「設定」を選ぶ
  • 「データコントロール」を選ぶ
  • 「すべての人のためにモデルを改善する」を選んでオフにし、「完了」を選ぶ
  • iOS・Androidでは、サイドバーを開き、プロフィールアイコンから設定に入り、「データコントロール」の同じ項目をオフにする

サインインしていれば、この設定はデバイスに関係なくアカウント全体に適用されると説明されています。対象になるのはオフにした後の新しい会話からで、過去の会話がどう扱われるかまではヘルプに書かれていません。ヘルプの一部では同じ項目が「すべてのユーザー向けにモデルを改善する」とも表記されており、プライバシーポータルで「Do not train on my content」を選ぶ方法も案内されています。画面ごとの手順はChatGPTに学習させない設定の手順でも紹介していますので、あわせてご覧ください。

学習をオフにしていても、回答に「いいね」または「よくないね」を付けるなどのフィードバックを送ると、その会話全体が学習に使われることがある、とデータ管理のヘルプのよくある質問に記載があります。

法人向けについては、ChatGPT Business・Enterprise・Edu・ヘルスケア向けChatGPTのワークスペースのコンテンツを既定で学習に使わないと、OpenAIは公式ヘルプとエンタープライズ向けのプライバシーのページで説明しています。ただし、データ共有に明示的に同意した場合は共有されたデータを学習に使うことがある、とも書かれているため、管理者が同意の操作をしていないかは一度確かめておきたいところです。APIについては、明示的にオプトインしない限り組織は既定でデータ共有からオプトアウトされている、というのが公式の説明となります。

Claude:法人向けは既定で使わない、ただしフィードバックは例外

Claudeの料金ページの比較表では、モデルのトレーニングの行が、Free・Pro・Maxといった個人向けのプランでは「オプトアウト」、TeamとEnterpriseでは「デフォルトではなし」と表示されています。Claude for Work(TeamやEnterprise)やAPIといった商用製品の入力と出力は既定で学習に使わない、というのが商用向けプライバシーページの説明です。

例外として明記されているのが、親指の上下ボタンによるフィードバックやバグの報告で、この場合は関連する会話全体が最長5年保存され、学習に使われることがあります。このうち親指の上下ボタンによるフィードバックは、TeamとEnterpriseのOwnerまたはPrimary Ownerが、組織の設定で止めることが出来ます。

  • Organization settings > Data and Privacy を開く
  • 「Rate chats」のトグルで、メンバーが親指の上下ボタンでフィードバックを送れるかどうかを切り替える

法人向けの契約でも、フィードバックのボタンは学習への入口として残っています。導入した日に、このトグルをどうするかを決めておきましょう。

個人向けについては、2025年8月28日の規約改定でFree・Pro・Maxの利用者にデータを改善に使うかどうかの選択が求められ、既存の利用者の期限は2025年10月8日とされました。許可すると保存期間は5年、許可しなければ従来どおりの30日と発表されています。Incognitoチャットは、改善への利用を許可していても改善には使われない、とプライバシーセンターに記載があります。

Gemini:同じ仕事用アカウントでも、エディションで扱いが分かれる

Geminiは、同じ仕事用アカウントでも、Workspaceの契約の中でGeminiアプリがどう位置づけられているかによって扱いが分かれます。Geminiアプリをコアサービスとして含むエディションでは、チャットの内容やアップロードしたファイルが人間のレビュアーに確認されることも、許可なく生成AIモデルのトレーニングに使われることもないとGoogleは説明しています。ユーザーのプロンプトはCloudのデータ処理に関する追加条項に基づいて顧客データとみなされ、事前の許可や指示がない限りトレーニングに使わない、というのが生成AIプライバシーハブの説明です。

一方、Geminiアプリを追加サービスとして使う場合はGoogle利用規約とGeminiアプリのプライバシーに関するお知らせが適用され、チャットの内容が人間のレビュアーに確認され、改良に使われる場合がある、という扱いになります。追加サービスとして使うには、Workspaceの管理者がアクセスを有効にしている必要があります。Geminiの中でサードパーティ製のアプリを使う場合も別の利用規約が適用され、この説明の対象外になる点に気をつけましょう。

思考モードなどモデルの選び方によって扱いが変わるという記載は公式のページになく、扱いを決めるのはアカウントとエディションになります。個人のGoogleアカウントでは、Geminiアプリのアクティビティの保存をオフにしても、72時間は保持されるとの案内です。

Microsoft Copilot(旧Microsoft 365 Copilot):職場用のアカウントで使っているかを先に見る

Microsoft 365 Copilot(現在の名称はMicrosoft Copilot)は、職場で使う場合に基盤となる大規模言語モデル(LLM)の学習には使わない、とMicrosoftが公式に説明しています。判定の前に、社員が会社のアカウントでサインインしたCopilotを使っているかを確かめてみてください。

4社を並べると、法人向けの契約では既定で学習に使わないという点はそろっており、差が出るのはフィードバックの扱いや、社員が個人向けを使っていないかのほうになります。

※ChatGPTは2026年9月17日・29日、Claudeは2026年9月20日・29日、Geminiは2026年9月29日、Microsoft 365 Copilotは2026年9月29日に、各社の公式ヘルプ・公式ページに記載されている内容を確認したものです。各社の説明は同社の自己申告で、第三者による検証の結果ではありません。画面の表記や既定値は変わることがあるため、設定の前に最新の公式ヘルプもご確認ください。

条件2:保存期間と削除のルールを説明できるか

2つ目の条件は、入力した内容がどこに何日残り、削除するとどうなるのかを、取引先に聞かれたときに説明できるかどうかです。学習に使われないことと、データが残らないことは別の話になります。ChatGPTのヘルプにも、モデル学習をオフにしてもチャットは削除されないと明記されており、アーカイブしても学習に使えるかどうかは変わらないとされています。

一時チャットとIncognitoチャットの落とし穴

履歴に残さない使い方として、ChatGPTには一時チャットがあります。新しいチャットを開き、画面右上のピル型の「一時」ボタンを押すと始まり、履歴に表示されず、メモリも作られず、モデルの改善にも使われないと案内されています。それでも、安全上の理由から最大30日間は保持される場合があるため、その場ですぐに消えるわけではありません。

一時チャットを保存すると通常のチャットに戻り、アカウントの学習設定に従います。GPTのアクション経由で第三者のサービスに送られたデータは、受け取った側のプライバシーポリシーが適用され、30日を超えて保管されることもあると書かれています。

ClaudeのIncognitoチャットも、利用ポリシー違反と判定されない限り、30日以内に自動で削除される扱いとなります。違反と判定された場合は、入力と出力が最長2年、分類のスコアが最長7年保持される、との説明です。

法人向けの削除と保持期間

ChatGPT Enterpriseなどでは、削除された会話は法的な保持義務がない限り、30日以内にシステムから消去されると公式に説明されています。何も設定しなければ、チャットはユーザーが削除するまで保存される扱いです。Businessではワークスペースの管理者がデータの保持期間を設定でき、Enterpriseのオーナーは最短90日のカスタム保持ポリシーを設定することが出来ます。

APIは、サービスの提供と不正利用の検知のために入力と出力を最大30日間保持する場合があり、要件を満たすユースケースでは対象のエンドポイントについてゼロデータ保持(ZDR)をリクエストできると案内されています。

Claude for Work(TeamやEnterprise)では、会話を削除するとチャット履歴からすぐに消え、バックエンドの保存領域からも30日以内に削除される仕組みになります。Geminiアプリの会話は、Google Vaultで保持やホールドの対象にでき、保持ルールは組織部門ごとに1日から36,500日まで、または無期限で決められます。

社内の規程に残す期間を書くときは、提供元が持つ保持期間と、自社で設定した保持期間を分けて書いてみてください。取引先への説明でも、この2つを混ぜないほうが誤解を生みにくいでしょう。

※ChatGPTは2026年9月17日・19日・28日・29日、Claudeは2026年9月20日、Geminiは2026年9月28日に、各社の公式ヘルプに記載されている内容を確認したものです。

条件3:共有リンクと外部連携の範囲が閉じているか

3つ目の条件は、学習とは別の経路である共有と連携が、会社の決めた範囲の外に広がらない設定になっているかです。ここは法人向けでも既定でオンになっている項目がいくつかあり、契約しただけでは閉じていない場合があります。

ChatGPT:共有リンク・GPT・アプリの既定値

ChatGPTの法人向けワークスペースでは、共有リンクは同じワークスペースのメンバーだけが見られる仕組みと案内されています。ワークスペース全体で共有リンクを無効にする機能はEnterpriseだけにあり、Businessでは使えない点に注意が必要となります。

カスタムGPTの共有範囲は、招待した人のみ、リンクを知っているワークスペース内の全員、ワークスペース内の全員、公開リンク、GPT Storeの中から選ぶ形です。ワークスペース管理者は一部の共有オプションを制限または無効にでき、サードパーティ製のGPTへのアクセスも、すべて許可・承認済みのみ・許可しないの中から選べます。

ChatGPT Businessでは、アプリは既定で有効になっています。アプリや外部APIを使うGPTでは、入力の関連する部分が第三者のサービスに送られることがあるため、どのGPTやアプリを使ってよいかも決めておきたいところです。新しいEnterpriseとEduのワークスペースでは作成時に選ばれた一連のアプリが有効になっており、ロールごとにアプリの利用範囲を決める機能もEnterpriseとEduのものとなります。

データレジデンシー(保存地域の指定)のヘルプには、Web検索や外部アプリ・MCPとの連携を有効にした場合、その部分は地域指定の範囲外で保存・処理されうると記載があります。

Claude:公開プロジェクトとブラウザ拡張は既定でオン

Claudeでは、TeamとEnterpriseのどちらでも、公開プロジェクトが既定で有効になっています。止める場所は組織の設定の中にあり、Primary OwnerかOwnerが操作できます。

  • Organization settings > Data and privacy を開く
  • Public projects を探してオフにする
  • オフにすると、既存の公開プロジェクトはすべて非公開に切り替わる(個別の共有や組織内での共有は残る)

ブラウザを操作する拡張機能のClaude in Chromeは、Teamでは既定で有効と案内されています。拡張はユーザーに代わってウェブサイトを読み、クリックし、移動するもので、Organization settings > Claude in Chrome にある「Enable for your team」のトグルで、組織全体で使えるかどうかを切り替えることが出来ます。Enterpriseでは既定で無効でしたが、2026年9月10日からは、すでに無効にしていない限り既定でオンになるとされました。オーナーは、拡張がアクセスできるサイトも管理できる仕組みです。

ウェブ検索は、OwnerかPrimary OwnerがOrganization settings > Capabilities で組織全体に有効にしてから、各メンバーがチャットごとに切り替える順番となります。Google Driveなどのコネクターから取り込んだ元のデータはフィードバックによる学習の対象に含まれない一方、会話に貼り付けた分は含まれうる、という説明です。

Gemini:既存の共有権限がそのままAIの見える範囲になる

Geminiは既存のGoogle Workspaceの権限に従い、表示する権限がないファイルはAIも表示したり使ったりできない、とGoogleは説明しています。見方を変えると、共有の範囲が広すぎるファイルはAIからも参照されうるため、ドライブの共有設定の棚卸しも条件3の一部になります。

この条件は、法人向けを契約した後の最初の設定で差がつくところですので、導入した日に管理画面を一度開いてみてください。

※ChatGPTは2026年9月19日・28日、Claudeは2026年9月20日、Geminiは2026年9月29日に、各社の公式ヘルプに記載されている内容を確認したものです。

条件4:会社がアカウントを配り、止められるか

4つ目の条件は、業務で使うアカウントを会社が発行し、学習の設定や退職時の停止を社員任せにしない状態になっているかです。個人向けのアカウントでは、学習の設定は本人の画面で行うものであり、会社からは状態が見えにくくなってしまいます。法人向けを契約しても、社員が以前から使っている個人のアカウントが自動で会社の管理下に入るとは限りません。

社員の個人アカウントには、会社の設定が届きにくいものです

個人のアカウントが残ったままだと、会社の設定が届かない場所が残ってしまいます。UPGEAR AI(アップギアAI)は、ChatGPT・Claude・Gemini・Perplexityを1つの契約で使える法人向けサービスです(人数無制限)。

ChatGPT:個人用ワークスペースとの分け方

ChatGPT Enterpriseでは、組織によって、招待の承諾時に個人用のワークスペースをEnterpriseへ統合するよう求める場合があり、この統合は元に戻せないと案内されています。統合を求めない組織では、個人用のワークスペースとEnterpriseは完全に分かれたままになります。Businessでは、ワークスペース管理者がメンバーの会話履歴を閲覧・エクスポート・削除できると公式に説明されています。一方で、BusinessやEnterpriseのワークスペースではメンバー自身によるデータのエクスポートは使えず、ワークスペースの所有者に問い合わせる形となります。

Claude:招待・エクスポート・ドメインキャプチャ

ClaudeのTeamとEnterpriseでは、メンバーの管理はOrganization settings > Members で行い、Adminも操作できますが、請求(Billing)を開けるのはOwnerとPrimary Ownerだけです。招待は許可したメールドメインの相手にしか送れず、有効期限は21日で、承諾されていない招待もシートを占める点に気をつけましょう。

Primary Ownerは仕事用アカウントとそのデータを管理し、データのエクスポートを通じて会話やアップロードされたファイル、利用のパターンを取得しうる、とメンバー向けのヘルプに書かれています。組織データのエクスポートはPrimary Ownerだけが使え、Organization settings > Data and privacy の「Export Data」から依頼するとメールでリンクが届き、そのリンクは24時間で失効します。削除済みの会話はエクスポートに含まれません。

社員の個人アカウントを会社の組織へ移すドメインキャプチャは、Enterpriseだけの機能です。公式ヘルプでは、この操作は一方通行(one-way door)と表現されています。Teamを契約しても、社員が個人で作ったClaudeのアカウントを会社の組織へ強制的に移すことはできない、という整理になるでしょう。

Gemini:追加サービスは管理者が有効にしてから

Geminiアプリを追加サービスとして使う場合は、Workspaceの管理者がアクセスを有効にしている必要があり、有効にするかどうかは管理者が決めることになります。対象のエディションを持たないユーザーが個人のGoogleアカウントでGeminiアプリを使うと、Google利用規約とGeminiアプリのプライバシーに関するお知らせが適用されます。

社員が業務で個人のアカウントを使っている間は、ここまでの設定をいくら整えても、その分だけ会社の目が届かない場所が残ってしまいます。

条件5:誰が何を使ったかを後から追えるか

5つ目の条件は、利用のログとデータの保存場所を、問題が起きた後でも会社が確かめられるかどうかです。漏洩の疑いが出たとき、誰がいつどのAIに何を入力したかを追えなければ、影響の範囲を説明することが難しくなってしまいます。ここではプランごとの機能の比べ合いには踏み込まず、各社でどこを開けば利用の記録が見られるかに絞って並べます。

ChatGPT:Compliance APIと分析画面

ChatGPT Enterprise・Edu・ChatGPT for Teachers向けにはCompliance APIがあり、会話のメッセージやカスタムGPTの活動を含む記録を、eDiscovery・DLP・SIEMといったツールとの連携で取得できます。Admin APIキーはオーナーや管理者が発行し、会話メッセージを読む権限は原則としてオーナーだけが付与できる仕組みです。Compliance Logs Platformはデータを30日間保持し、それより長く残したい場合は、利用者の側でログを継続的にダウンロードして保管する仕組みを用意する必要があると案内されています。

Enterpriseには、総メッセージ数やアクティブユーザー数などワークスペース全体の利用状況を見る分析画面もあります。Businessの管理者向けの機能はEnterpriseより限られる、と公式の管理者向け資料に書かれています。

Microsoft 365 Copilot:Purviewの監査と使用状況レポート

Microsoft 365 Copilotとのやり取りは、組織で監査が有効になっていれば、Microsoft Purviewの監査(Standard)に追加の設定なしで記録されます。記録には、操作の種類、Copilotがアクセスしたファイルやサイトの情報、秘密度ラベル、プロンプトと応答のメッセージID、使われたモデルの情報などが含まれます。監査(Standard)の既定の保持期間は180日となります。

Microsoft 365 管理センターにあるCopilot Chatの使用状況レポートでは、アクティブユーザー数や送信されたプロンプト数を7日・28日・90日・180日の期間で見ることができ、ユーザー名は既定で匿名化されて表示されます。反映は48時間以内とされているため、昨日の利用がまだ出ていなくても慌てなくて大丈夫です。

Gemini:ログイベントとGeminiレポート

Google Workspaceでは、管理コンソールの「レポート>監査と調査>Gemini for Workspace のログイベント」で、機能の利用の種類などのイベントを確認できます。閲覧には監査と調査の管理者権限が必要で、「生成AI>Gemini レポート」では組織全体とユーザーごとの利用の度合いを、組織部門やグループで絞り込んで見ることが出来ます。反映には最大72時間かかる点も覚えておきましょう。

保存場所:保存の地域と処理の地域は別に見る

ログと並んで取引先に聞かれやすいのが、データがどの国に保存されるかという点です。ChatGPTでは、APIの対象顧客と新規のChatGPT Enterprise・Eduで、会話やファイルなどを保存時に日本に置くデータレジデンシーを選べ、Enterprise・Eduでは追加料金なしとされています。ただし、推論(GPUでの処理)を地域内に限るインファレンスレジデンシーの対応地域は欧州・米国・アラブ首長国連邦の3つで、2026年9月28日時点で日本は含まれていません。

設定済みの地域は、確かめたいワークスペースに切り替えてプロフィールメニューから「Workspace settings」を開き、「General」の中にある「Data Residency Region」の欄で確かめられます。ログイン情報や請求情報、ワークスペース名、内容を含まないログなどは対象外とされている点も、説明のときに添えたいところです。

Google Workspaceのデータリージョンの選択肢は米国・EU・指定なしの3つで、日本は選べません。Microsoft 365 Copilotは、日本でサインアップしたテナントであれば、Copilotとのやり取りの内容と関連するセマンティックインデックスを保存時に日本の地域に置くと説明されています。Claudeは製品紹介ページで日本を含むアジア太平洋での地域データ保存に触れていますが(同社の記載で、Claude.aiのTeam・Enterpriseが対象かは明記されていません)、API(直接契約)の技術文書で指定できる推論の地域は us と global の2つだけです。

日本に保存できることと、日本で処理されることは別の話になります。保存場所の考え方は生成AIの国内リージョンの見分け方、ログの取り方は生成AIの利用ログの管理で詳しく紹介しています。

ログを見る前に社内で決めておくこと

利用ログは社員の行動を記録するものですから、見る側のルールも先に決めておく必要があります。個人情報保護委員会の通則編ガイドライン(3-4-3「従業者の監督」)は、個人データを取り扱わせる従業者に必要かつ適切な監督を行う義務を定めています。同委員会のQ&A(Q5-7)が示すモニタリングの留意点は、次の4つとなります。

  • モニタリングの目的をあらかじめ特定し、社内規程などに定めて従業者に明示する
  • 実施の責任者と、その権限を定める
  • 実施のルールを作り、運用する担当者に徹底する
  • ルールどおりに正しく行われているかを確認する

労働組合などへの事前の通知や協議、従業者への周知も望ましいとされています。ログを取れる環境を選ぶのと同じ時期に、この4点を社内規程へ書き加えてみてください。

※データの保存場所・利用ログ・監査・個人情報保護委員会の資料は、2026年9月28日に各社・同委員会の公式ページに記載されている内容を確認したものです。

社内で確かめる5点のチェックリスト

ここまでの5つの条件を、契約書と管理画面を見ながら埋められる形にまとめました。「はい」と答えられない項目があれば、それがその生成AIを情報漏洩しないと言い切れない理由になります。

  • 条件1 法人向けの契約で、入力と出力を既定で学習に使わないと公式に明記されているかChatGPTはBusiness・Enterprise、ClaudeはTeam・Enterprise、GeminiはGeminiアプリをコアサービスとして含むエディション、Copilotは職場用のアカウントが目安です。契約中のプラン名と、該当する公式ページのURLを控えておきます。
  • 条件1 フィードバック(いいね・よくないね)の扱いを決めたかClaudeは法人向けでも、フィードバックを送った会話は学習に使われうると説明しています。Organization settings > Data and Privacy の「Rate chats」で止められます。
  • 条件1 業務に個人向けのアカウントが使われていないか個人向けのChatGPTはデータ共有が既定で有効です。個人アカウントの設定は本人の画面で行うもので、会社からは見えにくくなります。
  • 条件2 削除した会話が何日で消え、保持期間を誰が設定するかを書き出したかChatGPT Enterpriseなどは30日以内、Claude for Workは30日以内にバックエンドから削除と説明されています。自社で設定した保持期間とは分けて書きます。
  • 条件2 一時チャットやIncognitoチャットの扱いを社員に伝えたかChatGPTの一時チャットは最大30日間保持される場合があり、保存すると通常のチャットに戻ります。
  • 条件3 共有リンク・公開プロジェクト・GPTの公開範囲を確かめたかClaudeの公開プロジェクトはTeam・Enterpriseとも既定で有効です。ChatGPTの共有リンクをワークスペース全体で無効にできるのはEnterpriseです。
  • 条件3 アプリ・外部連携・ブラウザ拡張の既定値を確かめたかChatGPT Businessのアプリは既定で有効、Claude in ChromeはTeamで既定で有効と案内されています。
  • 条件4 アカウントの発行と停止を会社が行える状態か退職や異動のときに、誰が何日以内に止めるかまで決めます。Claudeの承諾されていない招待は21日で期限が切れ、それまでシートを占めます。
  • 条件5 利用の記録をどこで見られ、何日残るかを把握しているかChatGPTのCompliance Logs Platformは30日間、Microsoft Purviewの監査(Standard)は既定で180日です。GeminiはWorkspaceの管理コンソールのログイベントで確認します。
  • 条件5 データの保存場所と処理の場所を分けて説明できるかChatGPTは日本での保存に対応する一方、推論の地域指定に日本は含まれていません(2026年9月28日時点)。Google Workspaceのデータリージョンに日本はありません。
  • 条件5 ログを見る目的・責任者・ルールを社内規程に書いたか個人情報保護委員会のQ&A(Q5-7)が示す4つの留意点に沿って書くと、社員への説明もしやすくなります。

チェックの結果は、契約の見直しの材料として、情シスだけでなく経営者とも共有してみてください。セキュリティ対策の全体の点検項目は生成AIのセキュリティ対策チェックリストにまとめています。

技術的対策(DLP・CASB・オプトアウト)は5点のどこを補うか

DLPやCASBといった技術的な対策は、5点を置き換えるものではなく、5点の外側で漏れを見張る補助として位置づけると整理しやすくなります。DLP(データ損失防止)は送信される内容を検査して機密情報の持ち出しを止める仕組みで、CASBは社員が使うクラウドサービスを見える化して制御する仕組みを指します。

5点に当てはめると、DLPは条件3の共有・連携と条件5の追跡を、CASBは条件4の個人アカウントの利用を、外から補う役割に近いでしょう。ChatGPT EnterpriseのCompliance APIがDLPやSIEMとの連携を想定しているように、法人向けのログを外部の仕組みにつなぐ形も公式に用意されています。

オプトアウトの設定は条件1の一部にあたります。オプトアウトを社員一人ひとりの操作に頼る運用は、1人の設定漏れで崩れてしまいます。学習に使わないことを契約の既定値として持つ法人向けの環境を先に用意し、技術的な対策はその上に重ねる順番が無理のない形です。

プロンプトインジェクションなど攻撃面のリスク

プロンプトインジェクションは、ウェブページやファイルに紛れ込ませた指示でAIに想定外の動きをさせる攻撃を指す言葉になります。ブラウザを操作する拡張やアプリ連携のように、AIが社員に代わってサイトを読み、操作する機能ほど影響が大きくなるため、条件3で既定値を確かめる意味はここにもあります。攻撃への対策そのものは5点とは別の軸になるため、ここでは深入りしないことにします。

SSO・多要素認証・ISMS等の認証をどう見るか

SSOやIP制限、多要素認証、ISMSなどの認証も検討の場で話題になりますが、この記事の5点は入力の扱いと既定値を確かめるためのものです。5点を先に済ませてから、必要に応じて別に確かめるとよいでしょう。

5点を満たす環境がないとシャドーAIが生まれる

5点を満たす公認の環境を会社が用意していないと、社員は自分のアカウントで生成AIを使い始め、会社から見えない利用、いわゆるシャドーAIが生まれやすくなります。シャドーAIは禁止の通達だけでは減りにくく、同じ使い方ができる環境を会社の管理下で先に用意するほうが近道になるでしょう。

個人向けのChatGPTでは学習の設定が既定で有効になっているため、社員が善意で業務に使っていても、条件1から外れた状態が続いてしまいます。個人向けのClaudeも、料金ページの比較表ではトレーニングの行が「オプトアウト」と表示される側に入ります。

社内で使われているツールの見つけ方は野良AI(シャドーAI)の見つけ方、全体像はシャドーAI(野良AI)とはで詳しく紹介しています。公認の環境を選ぶときは、5点のうち条件1・条件4・条件5が最初から会社の側で管理できるかを基準にしてみてください。

組織的対策:ガイドラインと社員への周知文のひな形

5点を契約と設定で満たしたら、最後に社員へ、何を使ってよく何を入れてはいけないかを短い文で伝えることが、組織的な対策の中心になります。ガイドラインを長く作り込むより、公認の環境の名前、入力してはいけない情報、困ったときの連絡先の3つを先に伝えるほうが守られやすいでしょう。次のひな形は、社内のチャットやメールでそのまま流せる長さにしてあります。【】の部分を自社に合わせて書き換えてみてください。

件名:業務で使う生成AIについて(【日付】から)

・業務で生成AIを使うときは、会社が契約した【サービス名】を使ってください。個人のアカウント(無料版を含む)には、業務の情報を入力しないでください。

・【サービス名】は、入力した内容を提供元の学習に使わない契約になっています。回答への評価ボタン(いいね・よくないね)は押さないでください。

・次の情報は入力しないでください。【顧客の個人情報(氏名・住所・マイナンバーなど)/取引先から預かった資料のうち持ち出しが禁じられているもの/公表前の決算・人事の情報】

・共有リンクや公開の設定は使わないでください。社内で共有したいときは【社内の共有手段】を使ってください。

・利用の記録は、【情報漏洩の確認】のために【責任者の役職】が確認することがあります。

・判断に迷ったら、【連絡先】にご相談ください。

文面を作ったら、入社時の案内と年に1度の見直しの時期にも同じものを配ると定着しやすくなります。社員への教育も、この周知文の各行について理由を短く説明する程度から始めて充分です。入力してよい情報の線引きやルール文書の組み立て方は生成AIの社内ガイドラインの作り方で詳しく紹介しています。

学習の設定・ログ・アカウントを、会社で1つに管理する

UPGEAR AIは、ChatGPT・Claude・Gemini・Perplexityを1画面で使える法人向けAI基盤です。入力データを学習に使わない設定を全モデルに一律で適用し、UPGEAR AI上の会話履歴・利用ログ・アカウントは国内サーバー(AWSの日本リージョン)で管理します。管理者ダッシュボードで、利用ログ・権限・モデルのON/OFFを会社として管理できます。料金は月額30,000円(税抜)から。どのプランも利用人数は無制限で、料金は利用量に応じたプラン設計です(人数の目安はライト1〜5名、スタンダード6〜20名、プレミアム21〜50名)。初期費用として100,000円(税抜)が別途かかります。

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よくある質問

生成AIは個人情報を流出させますか?
入力した内容がどう扱われるかは契約と設定によって変わり、学習に使われる設定のまま使ったり、共有リンクや外部連携で見える範囲が広がったりすると、流出につながるおそれがあります。提供元の不具合で他の利用者の情報が表示されうる状態になった例も、OpenAIが2023年3月の障害として発表しています。個人データを入力する場合は、提供元が機械学習に利用しないこと等を十分に確認するよう、個人情報保護委員会も2023年6月2日の注意喚起で求めています。
生成AIに入れてはいけない情報は?
契約と設定によって変わります。学習に使われる設定のままの個人向けアカウントには、顧客の個人情報、取引先から預かった資料、公表前の社内情報を入れないのが基本です。法人向けの契約で学習に使われず、保存期間・共有範囲・ログを会社が管理できる環境であっても、取引先との契約で持ち出しが禁じられている情報は入れないよう、社内のルールで線を引いておくことをおすすめします。
外部に漏れないAIとは?
どの環境でも漏れる可能性をゼロにすることは出来ませんが、漏れにくい状態は5つの条件で確かめることが出来ます。入力が学習に使われない契約、保存期間と削除のルール、共有リンクと外部連携の範囲、会社によるアカウントの発行と停止、後から追えるログと保存場所の5点です。この5点を自社の契約書と管理画面で確かめられるAIが、外部に漏れにくいAIになります。
ChatGPTの学習をオフにすれば、過去の会話も学習から外れますか?
OpenAIの公式ヘルプでは、オフにした後の新しい会話が学習に使われなくなると説明されています。過去の会話の扱いは明記されていないため、過去の分まで外れるとは考えないほうが無難です。また、学習をオフにしてもチャットは削除されず、いいね・よくないねなどのフィードバックを送った会話は学習に使われることがあります。
法人向けプランを契約すれば、社員の個人アカウントも会社の管理下に入りますか?
自動では入りません。ChatGPT Enterpriseでは、組織によって招待の承諾時に個人用ワークスペースの統合を求める場合があり、統合を求めない組織では個人用とEnterpriseは分かれたままです。Claudeでは個人アカウントを組織へ移すドメインキャプチャがEnterpriseだけの機能で、Teamでは使えません。個人アカウントでの業務利用をやめてもらうには、公認の環境を案内する周知が必要になります。
一時チャットやIncognitoチャットなら、何も残りませんか?
残ることがあります。ChatGPTの一時チャットは履歴に表示されず学習にも使われませんが、安全上の理由から最大30日間保持される場合があり、保存すると通常のチャットに戻ります。ClaudeのIncognitoチャットも30日以内の自動削除で、利用ポリシー違反と判定されると入力と出力が最長2年保持されます。すぐに消えるものではない前提で扱いましょう。
データが日本に保存されれば、処理も日本で行われますか?
同じとは限りません。ChatGPTは新規のEnterprise・Eduで保存時のデータを日本に置けますが、推論を地域内に限る仕組みの対応地域は欧州・米国・アラブ首長国連邦で、2026年9月28日時点で日本は含まれていません。保存の場所と処理の場所は、分けて確かめる必要があります。

まとめ

情報漏洩しない生成AIかどうかは、サービスの名前ではなく、学習に使われない契約、保存と削除のルール、共有と連携の範囲、会社によるアカウント管理、後から追えるログと保存場所の5点で判定することになります。各社とも法人向けの契約では既定で学習に使わないと公式に説明していますが、フィードバックの扱いや共有・連携の既定値、個人アカウントとの分け方には差が残ります。

まずはチェックリストの11項目を自社の契約書と管理画面で埋め、「いいえ」になった項目から順に手を打ってみてください。法人向けの生成AIサービスの料金や条件の横並びは法人向け生成AI 38社の料金比較、ほかの記事はAI活用コラム一覧でご覧いただけます。