
AI導入のメリットとは、AIに業務の一部を任せることで、会社が時間・品質・人手の面で得られる効果のことです。社員10〜200名の会社でまず効くのは、議事録やメールといった文章の仕事の時短で、公的な調査でもこの領域の効果が高く出ています。一方で、情報漏洩や入力データの学習利用といった怖さは、社員の注意に頼るより、会社の環境を整えることで大きく減らすことが出来ます。メリットとデメリットを2026年の数字で並べ、自社がやるべきかを判断するための材料をまとめました。
AIとは何か|会社に入れるAIの種類とできること
AIとは、人が考えて判断していた作業の一部を、コンピューターが学習したデータをもとにこなす技術の総称です。会社で導入の話が出るとき、中身は大きく2種類に分かれます。
AIとは|定義と会社でできること
決まった答えのある作業を覚えさせて、自動で判定させるものが、以前からある特化型のAIになります。画像から不良品を見分ける、商品の需要を予測する、といった使い方がこちらに当たります。もう1つが、文章や画像をその場で作り出す生成AIで、ChatGPT・Claude・Gemini・Perplexityなどがよく知られています。
生成AIに出来ることは、文章の下書き、要約、翻訳、校正、調べもの、表のデータの読み解きなど、事務の仕事の多くに及びます。質問を文章で入力するだけで使えるため、専門の知識がない社員でも扱いやすい点が特徴です。
特化型AIと生成AIで、導入の重さが違う
特化型AIは、自社のデータを集めて学習させる工程が必要になり、開発会社に依頼する形が一般的となります。生成AIは、契約すればその日から文章の下書きや要約に使えます。そのため、社員10〜200名の会社でも始めやすくなっています。製造や物流の現場でなければ、まず検討するのは生成AIのほうでしょう。以下では生成AIを中心に、特化型AIにも当てはまる話を合わせて取り上げます。
最新の公的調査で見るAI導入の現状
2026年に公表された公的な調査では、生成AIを活用する方針を持つ日本企業が1年で大きく増えています。総務省「令和8年版 情報通信白書」によると、生成AIを積極的に活用する、または領域を限定して利用する方針の企業は68.9%で、前年の調査の49.7%から19.2ポイント伸びました。
企業規模別では、大企業が74.0%、中小企業が58.1%となっています。前年の調査で中小企業は34.3%だったため、大企業との差は縮まりつつあります。一方で、中小企業の31.5%は方針を明確に定めていないと答えました。
何らかの業務で生成AIを使っている日本企業は、86.4%にのぼります。ただしこの数字は、活用方針の設問でわからないと答えた企業を除いた割合で、除外した後の件数は白書の本文と図表データには記載がありません。
※総務省の調査は、2026年1〜2月に行われたインターネットアンケートです。日本の有効回答は515件(大企業353・中小企業162)で、回答者は従業員10名以上かつ2025年までにデジタル化に着手した企業の管理職以上に限られます。中小企業の区分は、製造業等で300人未満、卸売・小売・サービス業等で100人未満です。数値は2026年9月27日に各調査の公表資料で確認しました。
別の調査でも、傾向は同じ方向を向いています。帝国データバンク「生成AIに関する企業の動向調査」(2026年3月17日〜31日実施、有効回答10,312社)では、生成AIを業務で活用している企業は34.5%でした。活用している企業に限ると、86.7%が効果が出ていると答えています。
情報処理推進機構(IPA)の「DX動向2026」調査のポイント(2026年7月16日公表。調査期間は2026年4月17日〜6月12日、回収1,799社)では、AIを導入している企業は従業員1,001人以上で8割近くにのぼる一方、101人以下では16.6%にとどまりました。大きな会社ほど先に進み、小さな会社はこれからという段階にあると読み取れます。調査ごとに対象や設問が違うため、3つの数字を横に並べて比べることは出来ません。それでも、使う方針を持つ会社が増え、使った会社の多くが効果を感じているという向きは共通しています。
AI導入で得られる9つのメリット
AI導入のメリットは、業務の効率化を入り口に、人手・品質・働き方まで広がります。総務省の同じ調査で、生成AIの活用により生じうる影響として最も多く挙がったのは、作業時間の短縮などによる業務の効率化の61.6%でした。製品・サービスの質の向上が32.2%、人員不足の解消が26.8%と続きます。
業務効率化・生産性の向上
議事録の要約、メールの下書き、長い資料の読み込みといった作業は、生成AIが最初の形を短い時間で作ってくれます。人は直す作業に回れるため、1件あたりにかかる時間が短くなります。IPAの調査でも、AI導入の具体的な効果として、業務が効率化・迅速化したという回答が91.6%を占めました。
人件費などコストの削減
同じ仕事にかかる時間が減れば、残業代や外注費を抑えられます。IPAの調査では、残業時間の削減を効果に挙げた企業が29.2%ありました。ただし、売上や利益が向上したという回答は3.9%にとどまっており、効果は売上より先に、時間の短縮として表れると考えるのが現実的です。
人手不足・労働力不足の解消
採用が難しい職種ほど、今いる人数で仕事を回す工夫が欠かせません。文章づくりや調べものをAIに任せれば、1人あたりの受け持ちが少し増えても回る体制を作れます。白書でも、人員不足の解消を影響に挙げた企業が26.8%ありました。
人的ミス(ヒューマンエラー)の削減
転記の漏れ、誤字、数字の読み違いといったミスは、疲れや慣れから起きやすいものです。AIに文章の校正や表の突き合わせを手伝わせると、人が見落とした箇所を指摘してもらえることがあります。IPAの調査でも、利用用途として文書・音声の要約・翻訳・校正が82.5%と高くなっています。ただし、AIの出力にも誤りは含まれるため、最後は人が確かめる前提で使いましょう。
顧客満足度・品質の向上
問い合わせへの返信の下書きをAIに作らせると、返事が早くなり、言い回しのばらつきも減らせます。白書で製品・サービスの質の向上を影響に挙げた企業は32.2%でした。担当者によって説明の丁寧さが違うといった悩みも、社内で決めた文面の型をAIに渡して書かせることで和らげることが出来ます。
高精度なデータ分析・予測(ビッグデータの活用)
売上や在庫の数字から傾向を読み取る作業も、AIが得意とする分野になります。特化型AIは、大量のデータから需要を予測する用途で使われてきました。生成AIでも、表計算のデータを渡して集計の方針や気づいた点を挙げさせる使い方が広がっています。社員10〜200名の会社では、大がかりな予測より、毎月の数字の読み解きを速くする使い方から入るのが無理のない形でしょう。
人間にしかできない業務へ人を回す
下書きや整理をAIに任せて空いた時間は、顧客との打ち合わせや、判断が要る仕事に回せます。人を減らすためではなく、人にしか出来ない仕事の割合を増やすために使うという考え方のほうが、社内の理解も得やすくなります。導入の目的を社員に伝えるときも、この順番で話すと受け止め方が変わってきます。
多言語対応とテレワークなど遠隔のやり取りを支える
海外の取引先とのメールや、外国籍の社員への案内文も、AIに翻訳の下書きを任せられます。オンライン会議の録音から議事録を作れば、参加できなかった社員にも内容を早く共有することが出来ます。在宅勤務の社員が多い会社ほど、文字で残して共有する場面が多いため、効果を感じやすいでしょう。
安全性の向上(危険な作業・見落としを減らす)
工場や建設の現場では、カメラの映像から危険な動きを見つける特化型AIが使われています。事務の会社でも、契約書や申請書の抜け漏れをAIに点検させれば、後から大きなトラブルになる見落としを減らせます。人の代わりに危ない作業を担う面と、人の目を補って事故を防ぐ面の2つがあると考えると整理しやすくなります。
導入・活用の事例|社員10〜200名の会社で効く4つの場面
事務の多い会社で最初に効果が出やすいのは、毎日くり返す文章の仕事です。白書でも、議事録・メール作成補助で生成AIを活用している日本企業は約7割とされ、効果を実感する割合も議事録・メール作成補助が約7割で最も高いと書かれています。以下の4つは、特別な開発をしなくても試せる場面になります。
場面1:会議の議事録と社内外のメール
会議の録音やメモを渡して、決まったこと・宿題・期限の3点に整理させます。取引先への返信も、伝えたい要点を箇条書きで渡せば、丁寧な文面に整えてくれます。1回あたりの短縮は数分でも、全社員が毎日くり返す作業のため、合計すると大きな時間になるでしょう。
場面2:顧客や取引先への説明文
料金改定のお知らせや、制度の変更を顧客へ伝える文章は、専門用語をかみ砕く手間がかかります。AIに原文を渡し、読み手に合わせて書き直させると、下書きまでの時間を大きく縮めることが出来ます。事実や数字の確認は、必ず担当者が行ってください。
場面3:社内規程やマニュアルの検索
就業規則や経費精算のルールを聞かれるたびに、総務の担当者が答えている会社は多いのではないでしょうか。規程の文書をAIに読み込ませておけば、社員が自分で質問して答えを探せるようになります。答えの根拠になった条文を一緒に示させれば、確認の手間も減らせます。業務別の時短の考え方はAIによる業務効率化でも紹介しています。
場面4:見積書や提案書の下書き
過去の見積書や提案書のひな形を渡して、今回の条件に合わせた下書きを作らせる使い方です。金額の計算そのものは表計算で行い、AIには説明文や前提条件の書き出しを任せると、誤りが入りにくくなります。ほかの業種の事例は生成AIの活用事例にまとめています。
メリットを金額に直す計算式
AI導入のメリットを社内で説明するときは、減る時間を金額に置き換えると伝わりやすくなります。式は次のとおりで、どの業種でも同じ形で使うことが出来ます。
年間の効果額 = 1人あたり月に減る時間 × 時間単価 × 使う人数 × 12か月
たとえば、1人あたり月4時間の短縮、時間単価2,500円、使う人数30人で計算してみましょう。4時間×2,500円×30人×12か月で、年間の効果額は360万円になります。時間単価は、給与と社会保険料などを合計した人件費を、月の労働時間で割って出します。この例の2,500円は計算の仕方を示すための仮の数字なので、自社の数字に置き換えてください。
効果の見込みは控えめに置く
計画の段階では、見込んだ効果がすべて出る前提にしないほうが安全になります。IPAの調査では、AI導入の効果について期待以上・期待どおりと答えた企業が合わせて31.8%、一定の効果はあったと答えた企業が50.6%でした。帝国データバンクの調査でも、生成AIを活用している企業の86.7%が効果が出ていると答えています。効果そのものは多くの会社で出ている一方、期待どおりの大きさになった会社は3割ほどと読むのが自然でしょう。先ほどの例なら、見込みを半分の180万円として費用と比べる方法をおすすめします。
費用の側の相場や見積もりの見方は、AI導入の費用の相場で費目ごとに整理しています。効果額と費用を同じ1年の単位にそろえてから比べると、社長への説明が通りやすくなります。
社員の個人利用を減らす近道は、会社の管理の下で安全に使える環境を先に整えることです。UPGEAR AI(アップギアAI)は、ChatGPT・Claude・Gemini・Perplexityを1つの契約で使える法人向けサービスです(人数無制限)。
AI導入のデメリットは3つに分けて考える
AI導入のデメリットは、会社の環境で防げるもの、運用で抑えるもの、どうやっても残るものの3つに分けると、対策の順番が見えてきます。白書で日本企業が懸念するリスクの1位は、社内情報の漏洩などのセキュリティリスクの46.4%でした。出力結果の精度が35.3%、著作権等の侵害が31.3%で続いています。
デメリット:情報漏洩のリスク
社員がAIに入力した顧客名や数字が、意図しない形で外部に残るおそれがあります。個人向けのアカウントで使われると、どのサービスに何が入力されたかを会社は把握できません。環境を会社で用意し、入力してよい情報を決めることで、大きく減らせるデメリットです。
入力した社内情報が外に出るおそれと学習利用
情報漏洩の中でも見落とされやすいのが、入力した内容がAIの学習に使われる経路になります。ChatGPTの個人向けプランは既定でデータ共有が有効で、Claudeの個人向けプランも料金ページの比較表で学習は「オプトアウト」と表示されています。一方、法人向けのプランは、既定で学習に使わないと公式に説明されている点が異なります。この差は契約の種類で決まるため、会社の環境でほぼ防げるデメリットに入ります。
デメリット:誤った情報の出力(ハルシネーション)
生成AIは、事実と違う内容をもっともらしく書くことがあり、これをハルシネーションと呼びます。どのサービスを選んでも完全には無くならないため、運用で抑えるデメリットに分けました。数字・固有名詞・法令は必ず原典で確かめる、と社内で決めておきましょう。
デメリット:責任の所在が不明確になる
AIが作った文章で顧客に損害が出たとき、誰が責任を負うのかが曖昧になりがちです。考え方は単純で、AIの出力を使うと決めた会社と担当者が責任を持つことになります。社外に出す文書は、確認した人の名前が残る流れにすると、責任の線がはっきりします。
デメリット:思考過程のブラックボックス化
AIがなぜその答えを出したのかは、人から見えにくい仕組みになっています。採用や評価のように説明が求められる判断を、AIの答えだけで決めるのは避けたほうがよいでしょう。根拠や参照元を一緒に出させる、判断は人が下す、という使い方で抑えることが出来ます。
デメリット:導入・運用コストの増大
1人ずつ契約する形のサービスは、使う人が増えるほど毎月の費用も増えていきます。使われないまま残るアカウントや、部署ごとにばらばらに契約したサービスも、気づきにくい出費になるでしょう。契約の窓口を1つにまとめ、使っている人数を定期的に数えることで抑えられるデメリットです。
デメリット:障害時に業務が止まるリスク(リスクマネジメント)
AIのサービスが止まったり、利用の上限に達したりすると、AIに頼っていた作業が一時的に進まなくなります。1つのサービスだけに頼らず、別のAIに切り替えられる環境や、手作業に戻す手順を決めておくと安心です。これも、運用と環境の組み合わせで抑えるデメリットに入ります。
デメリット:雇用の減少・AI失業への不安
AIが仕事を奪うのではないかという不安は、社員の側に根強くあります。事務の仕事の一部がAIに置き換わっていく流れは、どの会社でも避けにくいでしょう。会社として出来るのは、減らす仕事と増やす仕事を社員に先に示し、AIを使いこなす側に回ってもらうことです。この不安は環境でも運用でも消し切れない、残るデメリットとして向き合う必要があります。
デメリットを「環境で防げる・運用で抑える・残る」に分ける
ここまでのデメリットを3つに分けると、次のようになります。
| 分類 | 当てはまるデメリット | 主な対策 |
|---|---|---|
| 会社の環境で防げる | 入力データの学習利用、誰がどのAIに何を入れたか分からない状態、退職者のアカウントが残ること | 法人向けの契約、学習に使わない設定の一律適用、利用ログの取得、会社によるアカウントの発行と停止 |
| 運用で抑える | 誤った情報の出力、責任の所在、ブラックボックス化、費用の増大、障害時の停止 | 人による確認の工程、社内ルール、利用人数の棚卸し、代わりの手段の用意 |
| どうやっても残る | 雇用への不安、AIに頼りすぎて考える力が落ちる心配、うっかりした入力ミス | 導入の目的の説明、社員への教育、入力してよい情報の線引き |
※評価ボタンでフィードバックを送った会話の扱いは、各社の説明を確認してください。法人向けのプランでも、フィードバックとして送った会話は扱いが異なる場合があります。
ChatGPTに固有の欠点と対策の詳細はChatGPTのデメリット、AI全般の問題点はAIの問題点で掘り下げています。導入するかどうかを判断する段階では、1つ目の環境で防げるものを先に片付けられるかを見るのが近道でしょう。
導入しないことで起きるデメリット
AIを会社として導入しない場合にも、見えにくいデメリットがあります。会社が使える環境を用意しないと、社員が個人のアカウントで業務にAIを使い始めることがあり、これをシャドーAI(野良AI)と呼びます。
白書のリスク対策の設問では、特に実施している施策はない・把握していないと答えた企業が16.3%あり、中小企業に限ると24.1%でした。対策をしていない会社でも、社員が使っていないとは限りません。使わせないつもりの会社でも、実際には誰が何に使っているかを把握できていないことがあります。
白書では、活用しないと競争力が失われるという影響を挙げた企業も15.9%ありました。導入するかどうかの判断は、会社の管理の中で使うか、管理の外で使われるかの選択に近いと考えてみてください。実態の見つけ方と対策はシャドーAI(野良AI)対策で詳しく解説しています。
会社で安全に使うための4つの土台(学習設定・ログ・配布・使い分け)
会社で安全にAIを使う土台は、学習に使わせない設定、利用ログ、会社が配るアカウント、用途に応じた使い分けの4つです。白書では、全社的な指針・ガイドラインを整えた日本企業が41.1%だったのに対し、生成AIへの入力データを学習データとして利用できない仕組みを導入している企業は19.9%にとどまりました。全体ではルールづくりの半分ほどの水準で、中小企業に限っても指針の整備29.1%に対して20.3%にとどまります。
学習に使わせない設定を会社側で決める
個人向けのAIでは、学習に使うかどうかの設定が、社員一人ひとりの画面にあります。主なサービスの設定の場所と既定の扱いは次のとおりです。
- ChatGPT(Free・Plus・Pro)は、既定でデータ共有が有効です。設定の「データコントロール」にある「すべての人のためにモデルを改善する」をオフにすると、新しい会話が学習に使われなくなると説明されています
- ChatGPT Business・Enterpriseは、既定で入力と出力をモデルの学習に使わないと公式に説明されています
- Claude(Free・Pro・Max)は、料金ページの比較表でモデルのトレーニングが「オプトアウト」と表示されており、Team・Enterpriseは「デフォルトではなし」です
- Gemini(個人のGoogleアカウント)は、「アクティビティの保存」(18歳以上は既定でオン)をオフにすると、以降のチャットはレビューやサービスの改良に使われないと公式ヘルプで説明されています。仕事用のアカウントでは、Google Workspaceの管理者が管理すると書かれています
※各社の公式ヘルプ・料金ページを2026年9月に確認した内容です。画面の名前や既定の扱いは変わることがあります。
悩ましいのは、社員が20人いれば20回、この設定を各自が正しく行ったかを会社が確かめなければならない点にあります。法人向けの契約で会社全体に一律で学習に使わない状態を作るほうが、確認の手間も漏れも少なくなります。個人のアカウントの設定手順は、ChatGPTに学習させない方法で画面ごとに説明しています。
誰がいつ使ったかのログを会社で持つ
ログとは、誰が・いつ・どのAIを使ったかの記録のことです。記録があれば、社外秘の情報が入力されていないかを後から確かめられ、取引先に使い方を聞かれたときにも説明が出来ます。個人のアカウントでは会社から利用の記録が見えにくいため、会社で契約する環境でログを取れるかを確かめておきましょう。
アカウントは会社が配り、退職時に止める
アカウントを社員個人ではなく会社が発行すると、入社時に配り、退職や異動のときに止めることが出来ます。個人のアカウントで業務を続けていると、退職した後も会話の履歴が本人の手元に残ってしまいます。配る範囲は、全員に一度に配るより、最初の業務を決めた部署から広げると定着しやすいでしょう。
複数のAIを用途で使い分ける
ChatGPT・Claude・Gemini・Perplexityは、それぞれ得意な使い方が少しずつ違います。調べものは出典を示すのが得意なもの、長い文書の読み込みは長文に強いもの、というように用途で分けると、外れの答えを引く回数が減ります。同じ質問を2つのAIに投げて、答えが食い違う箇所を確かめる使い方も、誤った情報への対策になります。使い分けの具体例は主要4AIの違いと使い分け、複数のAIを1つの環境で使う方法はマルチAIとはで紹介しています。
社員数別の導入パターン
導入の進め方は、社員数によって、決める人・最初の業務・アカウントの配り方が変わります。次の3つの形は、自社に近いものを出発点にするための目安です。
社員〜30名:社長が決めて、全員で1つの業務から
30名までの会社では、社長か役員が導入を決め、全員で同じ1つの業務から試す形が進めやすくなります。最初の業務は、全員が毎日書いているメールの下書きや議事録が向いています。アカウントは最初から全員に配り、使い方の相談役を1人決めると、質問が1か所に集まります。
社員30〜100名:総務が窓口になり、部署ごとに広げる
30〜100名になると、総務や管理部門が窓口になって進める形が現実的でしょう。最初は1〜2部署で1か月ほど試し、減った時間を記録してから、ほかの部署へ広げます。社内ルールはこの段階で文書にし、入力してよい情報と禁止する情報を決めておきましょう。
社員100〜200名:情シスが環境を整え、全社で管理する
100名を超えると、部署ごとに別のAIを勝手に契約する動きが出やすくなります。情報システムの担当者が契約と設定を1つにまとめ、ログを見られる状態を先に作ることが大切です。配る順番は部署単位で進めつつ、利用状況を月に一度は数字で確認していきましょう。規模に応じた進め方の全体像は中小企業の生成AI導入ステップで解説しています。
AI導入の手順と成功のポイント
AI導入は、目的を決め、小さく試し、数字で確かめてから広げる順に進めると失敗が少なくなります。
導入の手順・ステップ
- 目的と最初の1業務を決める(例:議事録づくりの時間を半分にする)
- 入力してよい情報と、入力を禁止する情報を決める
- 学習に使わない設定と、利用ログを取れる環境を用意する
- 1〜2部署で1か月ほど試し、減った時間を記録する
- 計算式で効果額を出し、全社に広げるかを判断する
手順の3番目を後回しにして試すと、試している間に個人のアカウントで社外秘が入力されるおそれがあります。補助金を使う場合の要件は、デジタル化・AI導入補助金の記事で確かめてみてください。
成功のポイント:目的を決めて小さく試す(PoC)
何となくAIを入れると、誰も使わないまま契約だけが残る結果になりがちです。試す業務を1つに絞り、何分減ったかを記録すれば、効果があったかどうかを数字で判断できます。このような小さな試験導入を、PoC(概念実証)と呼ぶこともあります。
成功のポイント:データの質と量をそろえる
AIの答えの質は、渡すデータの質に左右されます。古い規程や重複したマニュアルを読み込ませると、古い内容をもとにした答えが返ってきてしまいます。社内文書を使わせる前に、最新版だけを1か所にそろえる作業から始めてみてください。特化型AIで予測をする場合も、判断に足る量のデータがたまっているかを先に確かめる必要があります。
社内ルール・体制の整備
ルールは、長い規程より、使ってよい業務・入力してはいけない情報・困ったときの相談先の3点を1枚にまとめたもののほうが守られやすいでしょう。入力してはいけない情報の例はAIに入力してはいけない情報、ルール文書の作り方は生成AIの社内ガイドラインの作り方で紹介しています。点検する項目を洗い出すときは、生成AIのセキュリティ対策チェックリストも使えます。
失敗例:デメリットが表に出る3つの形
よくある失敗の1つ目は、禁止だけを決めて環境を用意しなかった結果、社員が個人のアカウントで使い続ける形です。2つ目は、1人ずつ契約するサービスを一部の社員にだけ配り、配られなかった社員が自分で使い始める形になります。3つ目は、AIの答えを確かめずに社外へ出し、誤った数字や存在しない情報が取引先に届いてしまう形でしょう。どれも、環境・ルール・確認の工程のどれかが欠けたときに起きています。
導入前に確かめたいチェックリスト10項目
導入を決める前に、次の10項目を社内で確かめてみてください。答えられない項目があれば、そこが導入の前に決めるべき点になります。
- 任せる業務を1つに決めたか最初は、全員が毎日くり返す文章の仕事が向いています。
- 入力してよい情報と禁止する情報を決めたか顧客の個人情報や未公表の数字をどう扱うかを文書にします。
- アカウントの持ち主は会社になっているか社員個人の契約のままでは、会社の判断で止められません。
- 入力データを学習に使わない設定になっているか各自の設定任せにせず、会社全体で一律に担保できるかを見ます。
- 誰がいつ使ったかのログを取れるか記録を書き出して、後から確かめられるかも確認します。
- 退職・異動のときにアカウントを止める手順があるか誰が、いつまでに止めるかを決めておきます。
- 出力を確かめる人を決めたか社外に出す文書は、確認した人の名前を残します。
- 費用の上限を決めたか人数や利用量が増えたとき、月額がどこまで増えうるかを把握します。
- 効果の測り方を決めたか減った時間を記録し、計算式で金額に直します。
- サービスが止まったときの代わりの手段があるか別のAIに切り替えるか、手作業に戻す手順を決めます。
10項目のうち、2番目・4番目・5番目は、後から整えるほど手間が増える項目です。利用が広がってから環境を移すと、会話の履歴やルールの移し替えが重い作業になってしまいます。
社員へ伝える導入のお知らせ文ひな形
導入を決めたら、社長の名前で目的を伝える文章を出すと、社員が前向きに受け止めやすくなります。中身は、目的・使ってよい範囲・相談先の3段落で足ります。
件名:AIの業務利用を始めます
このたび、会社として生成AIを業務に導入することにしました。目的は、議事録やメールの下書きといった時間のかかる作業を減らし、お客様と向き合う時間を増やすことです。人を減らすための導入ではありません。
使ってよいのは、会社が配るアカウントだけです。顧客の個人情報や未公表の数字は入力せず、社外に出す文書は必ず自分の目で確かめてから使ってください。個人で契約したAIサービスを業務に使うことは控えましょう。
使い方で迷ったときや、入力してよいか判断に困ったときは、総務の◯◯までご相談ください。使ってみて便利だった使い方も、ぜひ共有をお願いします。
禁止事項を細かく伝える通知文は、ChatGPTのデメリットの記事にひな形があるため、目的を伝えるこの文と組み合わせて使えます。
学習させない設定とログを、会社で一括して管理する
UPGEAR AIは、ChatGPT・Claude・Gemini・Perplexityを1画面で切り替えて使える法人向けAI基盤です。全モデルで学習非利用を標準適用し、社員ごとの設定操作は不要です。管理画面では、UPGEAR AI上の利用状況を利用者・日時・利用モデル単位まで把握でき、使わせるAIも会社が選べます。会話履歴・利用ログ・アカウントは国内サーバー(AWSの日本リージョン)で管理します。料金は月額30,000円(税抜)から。どのプランも利用人数は無制限で、料金は利用量に応じたプラン設計です(人数の目安はライト1〜5名・スタンダード6〜20名・プレミアム21〜50名)。初期費用100,000円(税抜)が別途かかります。
UPGEAR AIの詳細を見るよくある質問
AIを導入するとどんなメリットがありますか?
AI導入のデメリットは何ですか?
中小企業でもAI導入の効果は出ますか?
AIに社内の情報を入力しても大丈夫ですか?
AI導入の効果はどうやって測ればよいですか?
まとめ
AI導入のメリットは、業務の効率化を中心に、コストの削減、人手不足の解消、ミスの削減、品質の向上まで広がります。令和8年版情報通信白書では、生成AIの活用方針を持つ日本企業が68.9%に増え、中小企業でも58.1%に達しました。社員10〜200名の会社がまず効果を出しやすいのは、議事録やメールといった毎日の文章の仕事でしょう。
デメリットは、会社の環境で防げるもの、運用で抑えるもの、残るものに分けて考えると判断がしやすくなります。入力データの学習利用は、学習に使わせない仕組みを入れた企業がまだ19.9%にとどまるものの、法人向けの環境を整えれば、契約と設定で大きく減らすことが出来ます。導入しないまま放置すると、社員が個人のアカウントで使う見えないリスクが残ってしまいます。
まずは1つの業務と入力してよい情報を決め、学習の設定とログを会社で管理できる環境で試してみてください。ほかのテーマの記事はAI活用コラム一覧にまとめています。
