
コンサル会社の生成AI活用とは、デスクリサーチや提案書の骨子づくり、インタビューの議事録、報告書のレビューといった日々の業務に、ChatGPT・Claude・Geminiなどを下書き役として組み込むことです。結論から言うと、効果が出やすいのは材料を読ませて形を整える作業で、守りの要はクライアントから預かった情報をどこまでAIに入れるかを先に決めておくことになります。10〜200名規模のコンサル会社が、提案書・インタビュー・報告書で今日から使える指示文と、クライアント資料をどこまで入れてよいかの線引きを、そのまま社内ルールにできる形でまとめました。
コンサル業務で生成AIが変えるところと、活用の3段階
生成AIで短くなるのは、考える仕事そのものより、その前後にある読む・まとめる・整える作業の時間です。業界レポートを読み込んで論点を拾う、インタビューの記録を論点ごとに並べ直す、報告書の言い回しと数字の食い違いを探す、といった作業はAIに下書きを任せると早く片付きます。一方で、仮説を立てる、クライアントの事情を汲んで結論を選ぶ、経営者に伝えて動いてもらうなどの部分は、これからも人の仕事として残るでしょう。
AI導入の進め方の全体像や使える補助金は、中小企業のAI導入の進め方にまとめてあります。外部のAIコンサルに導入支援を頼みたい方は、AIコンサルの選び方のほうが役に立つはずです。ここから先は、コンサル会社が自分たちの業務でAIを使う側の話になります。
活用の深さは、次の3つの段階に分けて考えると、社内で話の前提をそろえることが出来ます。段階が上がるほど効果の幅は広がりますが、AIに渡す情報も増えていくため、守りの設計も合わせて厚くしていく必要があります。
段階1 単独利用:一人ひとりが調査や下書きに使う
コンサルタントが自分の作業の中で、公開情報の下調べや文章の下書き、誤字の確認にAIを使う段階です。始めるのに準備はほとんど要らず、効果も本人の手元ですぐに分かります。ただ、使い方が人によってばらばらになりやすく、誰がどの資料をどのAIに入れたのかを会社が把握できないまま広がってしまいやすい段階でもあるでしょう。
段階2 自社データ連携:過去の提案書や社内ナレッジを読ませる
過去の提案書、調査メモ、研修資料のひな形など、社内の蓄積をAIに読ませ、そこから答えさせる段階になります。野村総合研究所は2025年10月29日のニュースリリースで、社内でGemini、NotebookLM、Gemini Enterpriseなどの生成AIの利用を拡大していく方針を発表しました。自社の資料を読ませると、提案の型や言い回しが社内でそろってきます。過去の提案書にはクライアント名や数字が残っているため、読ませる前に伏せる作業が要ります。
段階3 新しいサービス:AIを組み込んだ支援メニューをつくる
AIを使った分析や、クライアント企業へのAI活用支援を、自社の支援メニューに加えていく段階です。ここまで来ると、AIは社内の道具から、クライアントに提供する価値の一部へと役割が変わってきます。
中小企業診断士の事務所であれば、補助金の事業計画書や経営改善計画の作成支援にAIを使う場面が出てくるでしょう。その場合も、計画の数値と事業の実態は必ず事業者本人と確かめ、AIの下書きをそのまま申請に使わないことが前提になります。計画書は事業者が自分の言葉で説明できる中身でなければ、採択の後や金融機関との面談で困るのは事業者自身となってしまいます。
AI導入支援を自社のメニューにするときは、まず自社で使って記録した実績を元に話すほうが、クライアントの信頼を得やすくなります。どの業務で何分短くなったか、どんな誤りが出てどう防いだか、情報の線引きをどう決めたかという自社の記録は、そのまま支援の中身として使うことが出来ます。自社で試していないAIの効果を、一般論だけで語らないようにしておきましょう。10〜200名規模の会社であれば、まず段階1を会社の管理下で整え、段階2を一部の案件で試すところから始めるのが、無理のない順番です。
調査・提案書・議事録での使い方(そのまま貼れる指示文つき)
指示文は、入れる材料と、AIにしてほしいこと、守ってほしい条件の3つを分けて書くと、出てくる文が安定してきます。以下の例は、クライアント名・個人名・未公表の数字を入れずに使える形にしてあり、そのまま貼って試すことが出来ます。業種や規模の書き方だけ、自社の案件に合わせて差し替えてみてください。
提案前のデスクリサーチ・業界調査
入れる材料は、業界名と規模の帯、知りたい論点だけです。クライアントの社名は入れず、Web検索を使えるAIに出典つきで集めさせます。
あなたは中小企業向けの経営コンサルタントの調査補助です。 次の業界について、提案前のデスクリサーチを手伝ってください。 対象:国内の食品製造業(従業員100〜300名規模の企業が中心) 知りたいこと: 1. 直近3年で業界に起きている変化(原材料、人手、取引慣行、規制) 2. この規模の会社が抱えやすい経営課題を5つ 3. 各課題について、公的機関・業界団体・大手報道のうち確認できる出典 条件: ・出典ごとに、発行元・資料名・公表年月・URLを書く ・出典が見つからない内容は「出典未確認」と書き、推測で埋めない ・数字は出典に書かれている値だけを使い、自分で計算や推計をしない ・報道と一次資料(官公庁・団体の発表)を分けて書く ・最後に、提案前にクライアントへ確かめたい質問を5つ挙げる
1. 業界の変化 ・原材料:輸入原料の価格の変動が続いていると報じられています(報道/発行元・記事名・公表年月・URL) ・人手:製造現場の採用が難しくなっていると、業界団体の調査で挙げられています(一次資料/資料名・公表年月・URL) ・取引慣行:価格転嫁の状況について、出典を確認できませんでした(出典未確認) 5. クライアントに確かめたい質問 ・主要な原材料のうち、販売価格に転嫁できていない品目はどれか ・人手不足の影響が大きいのは、製造・物流・営業のどこか
人が必ず確かめるのは、出典のURLを開いて、その内容が本文に本当に書かれているかどうかです。公表年月が古い資料が混ざっていないか、報道を一次資料のように扱っていないかも見ておきましょう。「出典未確認」と返ってきた項目は、提案書には載せずにクライアントへの質問に回すと、ヒアリングの材料として生かすことが出来ます。
提案書の骨子とストーリーライン
入れる材料は、初回の打ち合わせメモから社名と個人名を外したものと、自社の提案書のひな形の2つです。クライアントは業種と規模に置き換え、数字は入れずに骨子だけを作らせる使い方になります。
あなたは経営コンサルティング会社の提案書づくりを手伝う編集者です。 以下の打ち合わせメモをもとに、提案書の骨子とストーリーラインを作ってください。 クライアント:A社(製造業・従業員約300名・工場2か所) 相談内容:受注は増えているが利益が残らない。製品ごとの原価を見えるようにしたい 期間と体制の希望:6か月程度。先方の窓口は経理の責任者と工場の責任者 こちらの強み:原価計算の仕組みづくりと、現場への定着支援 作ってほしいもの: ・表紙から最終ページまでのページ構成(各ページの見出しは、言いたいことが分かる1文で) ・各ページに載せる根拠の種類(ヒアリング、財務資料、現場観察など) ・A社の経営者が反論しそうな点と、その答え方を3組 条件: ・数字は書かない(後で人が入れる) ・業界の一般論のページは2枚まで ・メモにない事実を足さない。仮説は「仮説」と書く
1. 表紙:利益が残る受注の仕組みづくりのご提案 2. 現状:受注は伸びている一方で、製品ごとの利益が見えていない 3. 課題の構造(仮説):見積もりの基準になる原価が、工場ごとに違う前提で作られている 4. 進め方:最初の2か月で主力製品の原価を工場別に洗い出す 5. 体制:経理と工場の責任者に、月2回の定例へ参加していただく 反論されそうな点:現場の記録の負担が増えるのではないか 答え方:初月は既存の伝票と生産記録から試算し、現場への記録の依頼は2か月目から品目を絞って始める
確かめるのは、見出しの1文がクライアントの言葉で書かれているか、根拠の種類が空欄のページが残っていないかという点です。AIはもっともらしい課題の構造を作るのが得意なぶん、仮説を事実のように書いてしまうことがあります。自社が本当に支援できる範囲を超えた進め方になっていないかも、担当者の目で見直してください。
経営者・現場インタビューの議事録と論点整理
入れる材料は文字起こしで、話者は「社長」「工場長」「営業担当B」のように役職へ置き換え、社名・個人名・取引先名は伏せておきます。録音の生データは、後で述べる線引きのとおり、クライアントの書面の了承と会社が契約した環境がそろわない限りAIに渡しません。
TeamsやZoomなどの自動文字起こしを使う場合は、その文字起こしも外部のサービスに渡った情報として扱い、案件の許可台帳でクライアントの了承を確かめてから使うようにしてください。伏せる作業は、社名・人名・取引先名と置き換え後の記号を並べた置き換え表を案件ごとに作り、Wordの一括置換で行うと漏れを減らせます。置き換え表には、呼び方の違い(さん付け・役職付き・下の名前)や文字起こしの誤変換も並べておき、置換の後に「さん」「様」で検索して残りを拾うと安心です。置き換え表そのものはAIに渡さず、案件のフォルダで管理しておきましょう。
以下は、経営者と現場へのインタビューの文字起こしです。 社名と個人名は伏せてあり、話者は役職で書いています。 やってほしいこと: 1. 発言を論点ごとに分ける(論点名は10字前後) 2. 論点ごとに、誰が何と言ったかを要約し、元の発言の時刻を添える 3. 経営者と現場で認識がずれている論点を抜き出す 4. 次回のインタビューで確かめたい質問を、論点ごとに2つ 条件: ・発言にないことを補わない。推測を書くときは「推測」と明記する ・数字は発言どおりに書き、丸めない ・発言の強さ(不満・懸念・諦め)が分かる言い回しは、元の言葉のまま「」で引用する 【文字起こし】 (ここに貼り付け)
論点1:受注の判断基準 ・社長(12:04):利益率より、取引を切らさないことを優先してきた ・営業担当B(31:40):見積もりの値引き幅は、担当者ごとの判断になっている。「言っても変わらないので、もう諦めています」(諦め) 認識のずれ:社長は値引きを例外と見ているが、現場では日常になっている 次回の質問:値引きを決めた直近の案件の記録は残っているか/値引きの上限を決めた文書はあるか 論点2:原価の把握 ・工場長(18:22):材料費は把握しているが、段取り替えの時間は記録していない 次回の質問:段取り替えの回数を、日報から拾うことは出来るか
確かめるのは、時刻をたどって元の発言と照らし合わせ、話者の取り違えや言い過ぎがないかという点になります。現場の方の遠慮がちな言い方が、AIの要約で強い主張に変わってしまうことは珍しくありません。議事録をクライアントと共有する前に、個人を特定できる記述が残っていないかも見ておくと安心でしょう。
レビュー・集計・研修資料での使い方(そのまま貼れる指示文つき)
納品の直前に効くのが、報告書のレビューと集計結果の読み解きです。人の目では見落としやすい表記ゆれや論理の飛びを、AIに先に拾わせておく使い方になります。研修資料や説明文の下書きも、構成づくりの手間を大きく減らせる作業でしょう。
報告書・納品物のレビュー(てにをは・論理の飛び・数字の整合)
入れる材料は、クライアント名と固有名詞(社名・人名・取引先名・拠点名)を置き換え表で記号に直した報告書の草稿です。AIに見てもらうのは、てにをはと論理の流れ、本文の言葉と増減の向きが合っているかまでにとどめます。金額の合計や本文と表の数字の一致は、AIに頼らず、元の表計算のファイルで別に確かめる切り分けにしておきましょう。草稿にクライアントの決算の実額が載っている場合は、案件の許可台帳で了承を確かめ、会社が契約した環境でだけ使うようにします。
あなたは経営コンサルティング会社の品質管理の担当者です。 以下はクライアント向け報告書の草稿です。社名・人名・取引先名・拠点名は記号に置き換えてあります。 次の3点を確認し、問題のある箇所を表で返してください。 1. てにをは・表記ゆれ(例:「お客様」と「顧客」の混在、数字の全角と半角の混在) 2. 論理の飛び(前の段落から結論が導けない箇所、根拠が書かれていない主張) 3. 言葉と数字の向き(「増えた」「伸び悩んだ」などの言葉が、本文や表の増減と合っていない箇所) ※金額の合計や本文と表の数字の一致は、こちらで別に確認するので見なくてよい 表の列:該当箇所の引用/問題の種類/理由/直し方の案 条件: ・文章を書き直さず、指摘だけを返す ・判断がつかない箇所は「要確認」とする ・指摘が多い場合は、結論に影響する順に並べる 【草稿】 (ここに貼り付け)
該当箇所:「売上は前年度から伸び悩んだ」 問題の種類:言葉と数字の向き 理由:表2では売上が前年度より12%増えており、伸び悩みという言葉と向きが合わない 直し方の案:「売上は伸びたが、利益の伸びが追いついていない」など、表に合わせた言い方を検討する 該当箇所:「したがって、営業体制の見直しが急務である」 問題の種類:論理の飛び 理由:直前の段落は原価の話で、営業体制を見直す根拠が書かれていない 直し方の案:営業体制に関するヒアリング結果を、この結論の前に置く
AIの指摘はあくまで候補で、すべてが正しいわけではありません。指摘のなかった箇所に誤りがないとも言い切れないので、数字の最終確認は元データとExcelで人が行うことを前提にしておきましょう。レビューの責任者を案件ごとに1人決め、AIの指摘をどう扱ったかをその人が判断する形にすると、品質の責任があいまいになりません。
Excel・CSVの集計結果の読み解き
入れる材料は、集計済みの表から社名・個人名・取引先名を外し、金額を構成比(全社合計を100とした割合)に置き換えたものを使います。明細の生データではなく、ピボットテーブルなどで集計した後の表を渡すのが基本となります。
以下は、A社の製品群別の集計表(CSV)です。 売上・粗利の金額は、今年度の全社合計を100とした構成比に置き換えています。 列:製品群,売上構成比,粗利構成比 やってほしいこと: 1. 表から読み取れることを5つ。それぞれ根拠にした列名と値を添える 2. この表だけでは言えないこと(追加で必要なデータ)を3つ 3. 経営者への説明で使える一文を2案 条件: ・表にない数字を作らない ・計算した値には、計算式を併記する ・相関と因果を区別して書く 【CSV】 (ここに貼り付け)
読み取れること 1. 製品群Aは売上構成比40に対し粗利構成比24で、売上の割に粗利への貢献が小さい(根拠:売上構成比・粗利構成比の列) 2. 製品群Cは売上構成比18に対し粗利構成比31で、売上の割に粗利への貢献が大きい(根拠:売上構成比・粗利構成比の列) この表だけでは言えないこと ・製品群Cの粗利が高い理由(価格・原価・販売数量のどれによるか) 経営者向けの一文 ・売上の4割を占めるAより、2割に満たないCのほうが、粗利全体に占める割合は大きくなっています
確かめるのは、AIが示した計算式を自分で計算し直して、同じ値になるかどうかです。集計の前提(期間、対象の拠点、返品の扱い)がAIに伝わっていないと、読み取りの筋がずれてしまいます。相関を因果のように言い切った一文が混ざっていないかも、説明資料に載せる前に見直しておきたいところです。
クライアント向け説明文や研修資料の下書き
入れる材料は、研修のテーマと受講者の層、時間配分だけで足ります。クライアントの社内事情は入れず、架空の数字で演習を作らせる形にすると、情報の扱いに迷う場面がほとんどありません。
あなたは中小企業向けの社内研修の講師を補助します。 以下の条件で、製造業の現場リーダー向け研修資料の下書きを作ってください。 テーマ:原価の考え方と、日々の記録が利益にどうつながるか 受講者:工場の班長クラス10名前後。会計の知識はほとんどない 時間:60分(講義40分、演習20分) 作ってほしいもの: ・スライド10枚分の見出しと、各スライドで話す内容の要点(3行以内) ・演習問題1問と、その解答と解説 条件: ・専門用語には、その場で一言の説明を添える ・演習の数字は架空とし、架空であることを資料に明記する ・現場を責める言い方を避け、記録が役に立つ場面から話す
スライド1:今日のゴール 日報の1行が、会社の値決めにつながる理由を知る スライド2:原価とは 製品1個をつくるのにかかったお金の合計(材料・人の時間・機械の時間) スライド3:段取り替えも原価 製品を切り替える時間にも、人と機械の時間がかかっている … 演習(数字は架空です):同じ製品を1日に2回切り替えた場合と、まとめて1回にした場合で、原価はどう変わるか
研修資料で確かめるのは、専門用語の説明が正確かどうかと、受講者の現場に合った例になっているかの2点です。AIの例は一般的な工場を前提にしているため、クライアントの業態に合わせた言い換えは人の手で入れていきましょう。
ここまでの6つは、どれも材料さえ伏せておけば、コンサルタント一人ひとりがすぐに試せる使い方です。ただ、同じ指示文を誰がどのAIで回しているのかが見えないままだと、伏せ方の甘い資料が個人のアカウントに入ってしまっても、会社は気づけません。
調査や議事録の作業を個人のアカウントに任せず、会社が管理する1つの環境で回すと、どこに何を入れたかを後から確かめられます。UPGEAR AI(アップギアAI)は、ChatGPT・Claude・Gemini・Perplexityを1つの契約で使える法人向けサービスです(人数無制限)。
AIの出力を納品物に含めるときの確認と記録
AIの出力を報告書や提案書に含めるときは、誰が何を確かめたのかを残しておくことが、クライアントへの説明の土台になります。下書きをAIに任せても、納品物の責任はコンサル会社と担当者に残るためです。確認の項目は、案件の大小にかかわらず次の5つにそろえておくと、担当者ごとのばらつきを抑えられます。
- 引用元を開いて、本文に書いてあるかを確かめたAIが示した出典のURLが存在しない、または書かれていない内容を要約していることがあります。資料名と公表年月も控えておきます。
- 数字をすべて元データで計算し直したAIが出した比率・増減・合計は、元のExcelで再計算して一致を確かめます。構成比や記号に置き換えた資料は、元の実額や名前に戻したときの整合も見ます。
- 固有名詞と日付を一つずつ照合した社名・制度名・法令名・日付は、AIが似た別のものと取り違えやすい箇所です。
- 他人の文章や図をそのまま写していないかを見た出典の文章が長くそのまま入っていないか、図表の転載に許可が要らないかを確かめます。判断に迷うものは引用の形に直すか、使わない判断をします。
- 確認した人と日付を記録した案件のフォルダに、確認者・確認日・AIを使った工程を一行で残します。後でクライアントから問われたときの答えになります。
記録は細かく作り込まなくても足ります。案件名、AIを使った工程、使ったサービス、確認者、確認日の5列程度の表で十分に役目を果たしてくれます。AIの出力を確認せずに納品物へ入れることだけは、社内ルールで明確に禁じておきましょう。
クライアント情報の守秘の根拠|診断士の規則・不正競争防止法・個人情報保護委員会
コンサル会社の守秘は、一つの法律にまとまっているわけではなく、資格の規則、契約、営業秘密と個人情報の法令が重なって成り立っています。経営コンサルタントという仕事そのものには、弁護士法や税理士法のような業法上の守秘義務の条文は、確認した範囲では見当たりません。そのため一般に、クライアントと結ぶ秘密保持契約(NDA)と、業務委託契約の秘密保持条項が守秘の中心になってきます。AIに何を入れてよいかも、まずは自社が結んでいる契約の文面から決まると考えておきましょう。
中小企業診断士:登録の拒否・取消の事由として定められている
「中小企業診断士の登録等及び試験に関する規則」(平成12年通商産業省令第192号)の第5条は、登録を拒否する事由として、第7号で正当な理由がなく業務上取り扱ったことに関して知り得た秘密を漏らし、または盗用した者で、その行為をしたと認められる日から3年を経過しないものを、第8号で中小企業診断士の信用を傷つけるような行為をした者で3年を経過しないものを挙げています。第6条第1項は、登録を受けた診断士が第5条の各号(第9号を除く)に当たるようになったときは登録を取り消すものとしており、独立した秘密保持義務の条文ではなく、登録の拒否・取消の事由として定められている形です。診断士の資格を持つコンサルタントにとって、クライアントの秘密を漏らすことは登録の取消につながりうる行為になります。
不正競争防止法 第2条第6項:クライアントの営業秘密
不正競争防止法 第2条第6項は、営業秘密を「秘密として管理されている生産方法、販売方法その他の事業活動に有用な技術上又は営業上の情報であって、公然と知られていないものをいう」と定めています。この3つの要件は、一般に秘密管理性・有用性・非公知性と整理されてきました。クライアントから預かった未公表の数字や事業計画は、クライアント側で営業秘密として管理されている可能性があります。必ず営業秘密に当たるとまでは言えないものの、預かった側が扱いを誤れば、クライアントとの信頼関係そのものが揺らいでしまいます。経済産業省は「秘密情報の保護ハンドブック」(2024年2月改訂版)を公開しているので、社内ルールを作る際の参考にしてみてください。
個人情報保護委員会の注意喚起(令和5年6月2日)
個人情報保護委員会は、令和5年6月2日に「生成AIサービスの利用に関する注意喚起等について」を公表しました。そこでは個人情報取扱事業者に向けて、「生成AIサービスに個人情報を含むプロンプトを入力する場合には、特定された当該個人情報の利用目的を達成するために必要な範囲内であることを十分に確認すること」と求めています。本人の同意なく個人データを含むプロンプトを入力し、その個人データが応答の出力以外の目的で扱われる場合は、個人情報保護法の規定に違反することとなる可能性がある、という整理です。
そのうえで同委員会は、入力する側に対して、提供事業者がその個人データを機械学習に利用しないこと等を十分に確認するよう求めています。コンサルの仕事では、インタビューの記録、従業員アンケートの自由記述、クライアントの顧客名簿などに個人情報が入ってきます。個人名を役職や記号に置き換える作業は、この注意喚起に照らして、自社でできる手当てのひとつです。
AI事業者ガイドライン第1.2版と、業界団体の指針
総務省と経済産業省の「AI事業者ガイドライン」は、2026年3月31日(令和8年3月31日)に第1.2版が公表されています。AIを開発する事業者だけでなく、AIを業務で使う事業者(AI利用者)も対象に含む指針で、コンサル会社も利用者の立場で関わることになります。
一方で、2026年10月16日時点で、コンサル業界団体が会員向けに出した生成AI利用の指針は確認できませんでした。中小企業診断士の団体は、2024年10月1日に一般社団法人日本中小企業診断士協会連合会へ改称しています。
※個人情報保護委員会「生成AIサービスの利用に関する注意喚起等について」(令和5年6月2日) https://www.ppc.go.jp/news/press/2023/230602kouhou/
※総務省「AI事業者ガイドライン」掲載ページ https://www.soumu.go.jp/main_sosiki/kenkyu/ai_network/02ryutsu20_04000019.html
※経済産業省「秘密情報の保護ハンドブック」 https://www.meti.go.jp/policy/economy/chizai/chiteki/pdf/handbook/full.pdf
※協会の改称は中小企業庁のパンフレット https://www.chusho.meti.go.jp/shindanshi/pamphlet/jf-cmca.pdf によります。個別の契約や事案の判断は、弁護士にご相談ください。
AIに入れてよい情報・伏せて入れる情報・了承があれば入れる情報・入れない情報
AIに渡す情報は、入れてよい・伏せて入れる・了承があれば入れる・入れないの4つに分けて、社内で同じ物差しを持つのが近道です。迷ったときに個人の感覚で決めると、同じ資料でも担当者によって扱いが変わってしまいます。了承があれば使える情報を一律に禁じないことで、現場の判断も速くなります。下の表を叩き台に、自社の契約の内容に合わせて行を足していってください。
| 区分 | 主な情報 | 扱い方 |
|---|---|---|
| 入れてよい | 公開情報(官公庁の統計・白書、業界団体の公表資料、上場企業の開示資料、無料で公開されている報道。有料記事・有料データベースは各社の利用規約を確認)、自社の提案書や報告書のひな形、自社の研修資料、架空の数字で作った例 | 会社が認めたAIで、そのまま使ってよい。出典は人が確かめる |
| 伏せて入れる | 業種・規模・地域に置き換えたクライアント情報(例:製造業・従業員約300名)、役職に置き換えたインタビューの文字起こし、構成比に直した集計表、社名と個人名を外した打ち合わせメモ | 置き換え表を使って伏せた版を作ってから入れる。置き換え前の資料と置き換え表は手元に残し、AIには渡さない |
| 了承があれば入れる(クライアントの書面の了承と会社契約の環境がそろった場合) | 決算書・試算表の実額、未公表の事業計画、インタビュー録音の生データ、人事評価・処遇の情報、個人名の入った従業員アンケートや名簿 | 案件の許可台帳に了承の範囲を記録してから、会社が契約した環境でだけ入れる。個人のアカウントには入れない。個人データが含まれる場合は、個人情報保護委員会の注意喚起に沿って、利用目的の範囲内か、提供事業者が機械学習に利用しないかもあわせて確かめる |
| 入れない | M&A・資本政策・事業の売却や撤退の検討、人員削減の検討、NDAなどでAIへの入力を禁じられた資料、利用規約でAIへの入力を禁じている有料データベースや有料記事の本文 | 了承の有無にかかわらず、AIを使う作業から外す |
伏せ方で気をつけたいのは、社名を消しても、地域・業種・規模・出来事の組み合わせで会社が分かってしまう場合です。たとえば「県内で◯◯の工場を持つ数少ない会社」のような書き方は、名前を外しても特定できてしまいます。地域を広げる、規模を幅で書く、固有の出来事を一般的な言い方に直すなどの手を重ねて、第三者が読んでも当てられない形にしておきましょう。
入れない情報の行に当てはまるものは、AIを使う作業そのものから外すほうが安全です。M&Aや人員削減の検討のように、漏れたときの影響が大きい情報は、伏せたつもりでも周辺の情報から推測されるおそれが残ります。
自社のNDA・業務委託契約を読む手順
線引きの最後のよりどころは、クライアントと結んでいる契約です。条文の書き方は契約ごとに違うので、次の順で自社の契約を読み、AIへの入力が第三者への開示や目的外の利用に当たりうるかを確かめてみてください。
- 秘密情報の定義を読む口頭で伝えた情報や、打ち合わせで見せた資料まで含むのか。範囲が広いほど、AIに入れられる情報は狭くなります。
- 第三者への開示の定めを読むAIサービスの提供事業者に情報を送ることが、契約上の第三者への開示に当たると読めるかどうかを確かめます。
- 目的外の利用の定めを読む本件の業務のための利用に限る、といった定めがある場合、AIに入れる作業がその目的の範囲に収まるかを見ます。
- 再委託や外部サービスの利用の定めを読む再委託先や外部のクラウドサービスの利用に、事前の承諾や通知を求める条項がないかを確かめます。
- 返還・廃棄の定めを読む契約終了時に資料の返還や廃棄を求める条項があると、AIの会話履歴に残った情報の扱いも問われることがあります。
- 公的機関からの委託業務は、委託契約の再委託・外部クラウド利用の条項を読む官公庁や自治体、公的な支援機関から受けた業務は、委託契約の側に再委託や外部のクラウドサービスの利用についての定めがないかを確かめます。
- 成果物の著作権を譲渡する条項を読む成果物の著作権をクライアントに譲渡する条項がある場合は、AIで作った部分をどう扱うかを契約時に伝えておきます。
- 読み切れない箇所は弁護士に確かめる文面だけで判断がつかない場合は、AIの利用を始める前に、契約を確認した弁護士に相談します。
個人アカウントでクライアント資料を扱うリスクと、法人プランでの学習の扱い
守りの穴になりやすいのは、コンサルタントが自分の判断で、個人のアカウントにクライアント資料を入れてしまう使い方です。会社が認めていないAIを業務に使うことは、シャドーAI(野良AI)と呼ばれています。移動中に私物のスマートフォンで議事録を整えたり、自宅で個人のChatGPTに提案書の草稿を貼ったりする場面は、締め切りに追われるコンサルの仕事では起きやすいものです。
ChatGPTの個人向けプラン(Free・Plus・Pro・Go)では、設定をオフにしない限り、会話がモデルの学習に使われることがあります。オフにする場所は「設定」→「データコントロール」→「すべての人のためにモデルを改善する」です。個人のアカウントでは、何を入れたかも、退職後に履歴が残るかも、会社からは確かめられません。プロジェクトの終了やコンサルタントの退職のときに、クライアントの資料が個人の会話履歴に残り続けてしまうおそれも出てきてしまいます。
法人向けのプランでは、各社とも入力したデータを学習に使わない扱いを、それぞれ公式に説明しているところです。ChatGPT Businessについて、OpenAIは日本語のヘルプで、OpenAIがワークスペースのデータをトレーニングに使用することはないと説明しています。AnthropicはClaudeの商用製品(Claude for Work など)の入力と出力を既定で学習に使わないとしており、例外は評価ボタンを押した会話や、利用者が学習への利用を許可した場合です。GoogleはGemini for Google Workspaceについて、顧客の事前の許可や指示なく顧客データをモデルの学習に使わないと案内しています。
個人アカウントを禁じるだけでは、便利さに慣れたコンサルタントの使い方は止まりにくいでしょう。会社が法人プランを用意し、使ってよいAIを決めて渡すほうが、見えない利用を減らす近道です。調査はWeb検索に強いAI、長い議事録は長文に強いAIというように使い分けたい場合は、4つのAIの違いと使い分けや、複数のAIを1つの環境で使うマルチAIの考え方が参考になります。シャドーAIの見つけ方と対策はシャドーAI(野良AI)とは、ChatGPTの法人プランの料金はChatGPTの法人プランの料金にまとめてあります。
クライアントへの説明文のひな形
生成AIを使うことは、クライアントに隠すより、提案や契約の段階で先に伝えておくほうが信頼につながります。後からAIの利用を知ったクライアントは、内容よりも、知らされていなかったことに不安を感じてしまうからです。提案書に添える文と、契約時に添える文の2つを、ひな形として載せておきます。
【生成AIの利用について】 〔自社名〕は、本件の業務のうち、公開情報の下調べ、打ち合わせ記録の整理、資料の表記の確認に、生成AIを利用することがあります。 利用するのは、会社として契約し、入力した内容がAIの学習に使われない扱いを確認したサービスに限ります。 貴社の社名・個人名・未公表の数値は、AIに入力しないか、特定できない形に置き換えてから入力します。決算書の実額などを扱う必要がある場合は、事前に書面でご了承をいただきます。 AIの出力は下書きとして扱い、内容の確認と最終的な判断は担当コンサルタントが行います。 生成AIの利用を控えてほしい資料や業務がございましたら、お申し付けください。
【本件での生成AIの取り扱い】 1. 利用する工程:公開情報の調査、議事録の整理、報告書の表記・論理の確認 2. 利用するサービス:〔会社が契約しているサービス名〕(会社のアカウントでのみ利用し、個人のアカウントは使いません) 3. 入力しない情報:M&Aや人員削減の検討、貴社から秘密と指定された資料。決算書の実額やインタビューの録音は、貴社の書面のご了承をいただいた場合に限り、会社が契約した環境で扱います 4. 確認の体制:AIの出力は担当者が確認し、確認者と確認日を記録します 5. 変更の申し出:上記の扱いを変えたい場合は、いつでもご連絡ください。貴社のご要望を優先します
ひな形はそのまま使うより、自社の社内ルールと、実際に契約しているサービスに合わせて言葉を直してください。書いた内容と実際の運用が食い違うと、説明文がかえって信頼を損ねる材料になってしまいます。秘密保持契約の条文そのものの書き方は、契約を扱う弁護士と相談して決めるのが確実でしょう。
コンサル会社の社内導入事例と、導入効果の示し方
大手のコンサル会社やシンクタンクでは、社内での生成AIの利用を広げている例が出てきています。ここで挙げる数字はいずれも各社の発表や事例記事によるもので、第三者が検証した値ではない点に気をつけて読んでください。
デロイト トーマツ グループ
デロイト トーマツ グループは、2025年9月3日の公式ブログで、2023年にCxO直下の特任チームを設けたと紹介しています。チャットボット型のツールや提案資料の自動作成ツールなど4種類を自社で開発し、AIエージェントを2025年3月に全社へ展開したとのことです。経営の直下に推進の役を置き、提案資料のように自社の業務に合わせた道具を作っている点は、規模の違う会社でも参考に出来るでしょう。同社は2025年7月時点でグループの約12,000人が利用し、稼働時間の削減は月に約10万時間と発表していますが、算定方法の記載はありません。
野村総合研究所(NRI)
野村総合研究所は、2025年10月29日のニュースリリースで、社内でGemini、NotebookLM、Gemini Enterpriseなどの生成AIの利用を拡大していく方針を発表しました。NotebookLMは資料を読み込ませて答えさせる道具で、先に述べた段階2の使い方に近いものです。
船井総合研究所(Google Workspaceの導入事例ページ)
船井総合研究所の事例は、船井総研自身の発表ではなく、Googleが作成した導入事例ページ(2025年8月制作)に載っているものになります。同ページによると、船井総研はGoogle Workspace with Geminiを導入し、積極的に使いたい50名で先行のトライアルを行い、1か月後に150名へ広げました。検討の開始から導入の完了までは、約4か月だったとのことです。社員の発言として、スクリプトの作成が「1日がかり」から「5〜10分」に短くなった例も載っています。
導入効果を工数削減で示すときの数え方
10〜200名規模の会社で効果を示すなら、全社の削減時間を一度に出そうとするより、成果物の単位で前後を比べるほうが確かです。たとえば、議事録1本、業界調査のメモ1本、報告書のレビュー1回について、AIを使う前と後でかかった時間を担当者に記録してもらいます。同じ種類の成果物を5件ほど集めて平均を比べるだけでも、社内で説明できる材料になるでしょう。
成果物:議事録1本|AIを使う前:__分→使った後:__分|レビューで見つかった誤り:__件|差し戻し:__回|確認者:__|記録日:__
時間と合わせて、レビューで見つかった誤りの件数や、クライアントからの差し戻しの回数も記録しておくと、速くなっただけでなく品質が落ちていないことを示せます。削減した時間を月の合計に直すときは、1件あたりの削減時間×月の件数で計算し、計算の前提も一緒に残しておきましょう。前提の書かれていない削減時間は、社内でも信じてもらいにくい数字になってしまいます。
10〜200名のコンサル会社が小さく始めて広げる手順
社内での展開は、対象の業務を絞った小さな検証から始め、結果を見てから人数と業務を広げる順番が無理のない形です。船井総研の事例でも、50名の先行トライアルから150名へ広げる段取りが取られていました。
業務の棚卸しで、AIに任せる作業を決める
最初に、案件の流れを提案前の調査、提案書、インタビュー、分析、報告書、研修といった工程に分け、それぞれにかかっている時間を大まかに書き出してみてください。時間がかかっていて、かつ材料を伏せても作業が成り立つ工程が、最初の対象に向いています。反対に、クライアントの未公表の数字がなければ進まない工程は、後回しにするのが安全でしょう。
PoC(小さな検証)で効果を確かめてから広げる
PoCは、本格的に導入する前に、小さな範囲で効果と問題点を確かめる検証のことです。たとえば2〜3名のコンサルタントが1か月、議事録と報告書のレビューだけにAIを使い、前の節の数え方で時間と誤りの件数を記録します。検証の終わりには、効果だけでなく、伏せ方に迷った資料や、AIが誤った箇所も書き出してもらいましょう。うまくいかなかった点の記録こそが、社内ルールと指示文を直す材料になります。
社内勉強会と指示文の共有でAI人材を育てる
AIを使いこなす人を社内で育てるには、外部の講座より、自社の案件に近い題材での勉強会のほうが早道になることがあります。PoCに参加したコンサルタントが講師になり、この記事に載せたような指示文を自社用に直したものを共有すると、使い方が人によってばらつきにくくなります。よく効いた指示文は社内の共有フォルダやひな形集にまとめ、誰でも同じ形で使えるようにしておくとよいでしょう。指示文の改善を続ける担当者を1人置くと、内製で回していく体制が出来てきます。
業界・業務を知る人と現場を巻き込む体制
推進の役は、AIに詳しい人だけでなく、案件の進め方を知っているベテランのコンサルタントと組んで担うのが向いています。業務を知る人がいないと、AIで速くなっても品質の基準が守られているかを判断できません。総務や情シスの担当者には、アカウントの発行と停止、使ってよいサービスの管理を受け持ってもらい、現場の声を月に1回集める場を設けておくと、ルールが現場から浮いてしまうのを防げます。
社内ルールに書く項目と、案件ごとの許可台帳
社内ルールは長い規程にするより、1〜2枚に収まる短い文書にして、案件ごとの台帳と組み合わせるほうが守られやすくなります。10〜200名規模であれば、次の5項目を書いておけば最初の版として足りるでしょう。
- 使ってよい業務公開情報の調査、議事録の整理、報告書の表記と論理の確認、研修資料の下書きなど、AIを使ってよい工程を挙げます。
- 入れない情報前の節の線引き表の「入れない」の行と、「了承があれば入れる」の行の条件をそのまま載せます。迷ったときは入れない、と書き添えます。
- 案件ごとの許可クライアントがAIの利用を了承しているか、制限を求めているかを、案件の開始時に台帳へ記録します。
- 確認者AIの出力を納品物に入れる前に確かめる人を、案件ごとに1人決めます。
- 使ってよいサービスとアカウント会社が契約したサービスと会社のアカウントに限り、個人のアカウントは業務に使わないと定めます。
案件ごとの許可台帳は、表計算ソフトで作る簡単な一覧で十分です。列は、案件名(社名は記号でもよい)、AI利用の了承の有無、了承の範囲、制限のある資料、確認者、記録日の6つ程度にしておくと、案件を担当する全員が同じ情報を見られます。了承を得ていない案件では、線引き表の「入れてよい」「伏せて入れる」の範囲に限ってAIを使う、という扱いにしておけば、迷う場面をかなり減らすことが出来ます。ルール全体の作り方は生成AIの社内ガイドラインの作り方、点検の項目は生成AIのセキュリティ対策チェックリストでも詳しく扱っています。
自社でAIを使う場合の費用感
自社でAIを使う費用は、AIサービスの利用料と、ルールづくりや勉強会にかかる社内の時間の2つに分けて見積もると、全体がつかみやすくなります。外部のAIコンサルに導入支援を頼む費用とは別のもので、こちらは毎月かかり続ける費用が中心です。
利用料は、サービスによって料金の形が違います。利用者ごとの月額で数えるサービスなら、月額×利用人数×12か月が1年分の目安になり、使うサービスを2つにすればその分だけ掛け算が増えていきます。たとえばChatGPT BusinessのStandardシートは、OpenAIの公式説明で月払いが1人月額25ドル、年払いが1人月額20ドル(最低2席)とされています。30名全員にStandardシートを渡すと、月払いで毎月750ドル(年9,000ドル)、年払いなら年7,200ドルになる計算です。会社単位で契約し、利用量でプランが決まるサービスもあります。コンサル会社の場合、調査はWeb検索に強いAI、議事録は長文に強いAIと使い分けたくなる場面が多いため、何人に何種類のAIを渡すかで費用が大きく変わってしまいます。
※ChatGPT Businessの料金は、2026年10月15日時点のOpenAI公式ヘルプの表示です。米ドル建てで、国や通貨によって異なる場合があるとされています。日本では消費税10%が別途かかります。
社内の時間としては、線引き表と社内ルールの作成、NDAの読み直し、勉強会の準備、PoCの記録と振り返りがかかります。導入事例でも、検討から導入の完了までには数か月かかっています。月々の利用料だけで判断せず、最初の数か月に社内でかかる時間も、費用の一部として見込んでおきましょう。各社の法人プランの料金は法人向け生成AIサービスの料金比較、費用の抑え方は生成AIのコスト管理で確かめることが出来ます。
クライアント情報を扱うAIを、会社の管理下で使い分ける
UPGEAR AIは、ChatGPT・Claude・Gemini・Perplexityを1つの契約・1つの画面で切り替えて使える法人向けサービスです。管理者ダッシュボードで利用ログ・権限・使うモデルのON/OFFを会社側で管理でき、自社資料を読み込ませて回答させる社内文書RAGや、よく使う指示を社内限定のBOTとして共有するカスタムプラスも備えています。基盤はAWSの日本リージョンで稼働しています。
料金は月額30,000円(税抜)から。どのプランも利用人数は無制限で、料金は利用量に応じたプラン設計です(人数の目安はライト1〜5名、スタンダード6〜20名、プレミアム21〜50名)。人数の目安が21〜50名のプレミアムは月額100,000円(税抜)です。初期費用100,000円(税抜)が別途かかります。
UPGEAR AIの詳細を見るよくある質問
コンサル会社がクライアントの資料を生成AIに入れてもよいですか?
中小企業診断士が生成AIを使うと、規則に触れますか?
無料版のChatGPTで、社名を伏せれば使ってもよいですか?
インタビューの録音をそのままAIで文字起こししてもよいですか?
AIで作った報告書をクライアントに納品してもよいですか?
コンサル業界団体の生成AIガイドラインはありますか?
まとめ
コンサル会社の生成AI活用で効果が出やすいのは、デスクリサーチ、提案書の骨子、インタビューの論点整理、報告書のレビュー、集計結果の読み解き、研修資料の下書きといった、材料を読ませて形を整える作業です。どの業務でも、入れる材料を伏せた形にそろえ、出てきた文を人が確かめる手順を組んでおけば、指示文はそのまま現場で使えます。
守りの土台は、中小企業診断士の登録規則、不正競争防止法の営業秘密、個人情報保護委員会の注意喚起、そして何よりクライアントと結んだNDAと業務委託契約になります。入れてよい・伏せて入れる・了承があれば入れる・入れないの線引きを社内で共有し、個人のアカウントではなく会社が契約した環境で使うことが、クライアントに説明できる使い方への近道です。まずは2〜3名、1か月の小さな検証から始めて、記録を見ながら広げていきましょう。
法人のAI活用に関するほかの記事は、AI活用コラム一覧からご覧いただけます。
