Copilot Coworkとは。料金の仕組みと、社内に出す前に管理者が決める設定

Copilot Coworkとは、Microsoft 365 Copilotの中で、メールの送信や会議の設定、Word・Excel・PowerPointの作成といった複数ステップの仕事を、社員の承認を受けながら代わりに実行するAIの機能です。会社で社員に使わせる前に管理者が決めるべきことは3つで、誰が使えるかは支出ポリシーの対象範囲で決まり、費用はMicrosoft 365 Copilotライセンスとは別に1クレジット0.01米ドルの従量課金で発生し、止めたい社員は上限を下げるのではなく支出ポリシーの対象から外します。この記事では、公式ドキュメントに書かれている仕様だけを使って、Coworkの中身、料金の計算の仕方、管理センターでの設定手順、表示されない時の確認点、社内通知文のひな形までを順に解説します。

Microsoft 365 Copilotそのもののライセンス3段階や、Word・Excel・Teamsなどアプリごとの機能の全体像は、親記事のMicrosoft 365 Copilotでできること|ライセンス3段階と前提条件を公式ドキュメントで整理にまとめています。この記事はその中のCoworkだけに絞り、管理者が社内に出す前に決めることを掘り下げます。

※Copilot Coworkの仕様・料金・管理画面の名称は、2026年9月18日時点でMicrosoftの公式ドキュメント(Microsoft Learn、製品ページ、Copilot Credits Guide(2026年9月版)、公式ブログ)に記載されている内容です。主な出典は、Microsoft LearnのCopilot Cowork の概要、使用量ベースの請求によって有効化された AI エクスペリエンスの管理、Copilot Credits Guide(2026年9月版)です。機能や画面名は更新が続いているため、設定の前に最新の公式ドキュメントもあわせてご確認ください。記事中の機能説明はすべてMicrosoftの発表・公式ドキュメントの記載にもとづくもので、第三者が検証した性能ではありません。

Copilot Coworkとは|答えるAIではなく、代わりに実行するAI

Copilot Coworkは、質問に答えるだけのチャットではなく、頼んだ仕事を複数の手順に分けて実際に進めるAIです。Microsoft Learnの概要ページでは、必要な内容を説明するとCoworkがメールの送信、会議のスケジュール設定、ドキュメントの作成、Teamsへの投稿、カレンダーの管理を行い、各アクションは実行前に承認する、と説明されています。つまり、仕事の段取りを考えて手を動かす部分までをAIが担い、人は要所で内容を確かめて許可を出す役に回る、という使い方を前提にした機能です。

名前の似た機能が多いので、先に位置づけを整理しておきます。Microsoft 365 Copilotは、2026年9月時点の公式ドキュメントでMicrosoft Copilotへの名称変更が案内されており、移行期間中は旧名も残っています。Coworkはその中の1つの機能で、管理センターでは「エージェント」ではなく「エージェント システム」と位置づけられています。Copilot Studioで自社向けに作るエージェントとも別物です。自社でエージェントを作る話はCopilot Studioの解説で扱っています。

Copilot Chatとの違いは、答えるか、代わりに実行するか

Microsoft LearnのCowork FAQには、Copilot ChatとCoworkの違いを並べた表があります。要点を言い換えると次のとおりです。

Copilot Chat:下書き・要約・質問への回答のための常時稼働のAI。向いているのは、速く済ませたい1回きりの作業です。所要時間の目安は秒から分、1つのセッションの中で完結するシングルステップの作業が中心です。

Copilot Cowork:Microsoft 365全体で複数ステップの作業を完了させるエージェント型のAI。向いているのは、複数のアプリにまたがる仕事を最初から最後まで進めることです。所要時間の目安は分から数時間(自律実行)で、タスクや情報源をまたいだ複数ステップのワークフローを扱います。

公式FAQが挙げる代表的な使い分けは、Chatが毎日の簡単なキャッチアップやプロジェクト状況の確認、質疑応答、コンテンツの下書きで、Coworkが受信トレイや予定表の整理、プロジェクトの立ち上げ、会議の準備などです。

管理者の目線で大事なのは、Chatは文章や分析を返すだけで、それを使って何をするかは社員が決めるのに対し、Coworkは社員に代わってメールを送り、Teamsに投稿し、予定を作るという点です。社外に届く行動や、他の社員の予定表に影響する行動をAIが実行するので、誰に使わせるか、どこまで確認を省いてよいかを先に決めておく必要が出てきます。この記事の後半で扱う支出ポリシーと承認のルールは、この違いから生まれる論点です。

もう1つの違いは費用です。Copilot Chatは対象となるMicrosoft 365のサブスクリプションに含まれ、Microsoft 365 Copilotのライセンスがあればアプリの中のCopilotも使えます。これに対してCoworkは、Microsoft 365 Copilotのライセンスを持っていても、使った分が使用量ベースで別に課金されます。Microsoft Learnのライセンス解説にも、上位のライセンスであってもCoworkは使用量ベースの課金である旨が書かれています。

提供時期:2026年3月のFrontierから、2026年6月の一般提供へ

Coworkは、まず先行プログラムのFrontierで提供され、その後に一般提供へ移りました。Microsoftの公式ブログ(2026年6月16日付)は、Frontierプログラムの期間を3月30日から6月16日と記し、同日にCopilot Coworkの課金が始まったと発表しています。Frontier期間中にCoworkを使ったユーザーが1人以上いたテナントには移行のための猶予があり、2026年7月1日まではCoworkの利用分が請求されないとされていました。

Microsoft Learnの新機能ページでは、Coworkがすべての Microsoft 365 Copilot テナントで一般提供されたこと、そのリリースで新しいモデル、画像生成、ブラウザーの使用、カスタマイズ ページ、従量課金が導入されたことが案内されています(対象言語は公式に「階層1言語」とされています)。現在の提供状況は、職場または学校アカウントのCoworkが一般提供、個人用アカウントのCoworkがプレビューです。

この経緯は管理者にとって意味があります。Frontierの頃に設定した許可の方法が、一般提供後は効かなくなっているからです。詳しくは後の支出ポリシーの節で説明しますが、当時の設定のまま「うちは一部の社員だけに許可している」と考えていると、実際には支出ポリシーの範囲にいる全員が使える状態になっていることがあります。

Anthropic(Claude)モデルと画像生成モデルを使う

Coworkの中で動くAIモデルは1つではありません。Microsoft LearnのCowork FAQには、Coworkはほとんどの推論、製図、ツール使用の作業のサブプロセッサとしてAnthropic Claudeモデルを使用でき、画像生成にはChatGPT Images 2.0を使うと書かれています。サブプロセッサとは、Microsoftがサービスを提供するために処理の一部を委託する事業者のことです。

社員が使う画面では、モデル ピッカーを通常は「自動」のままにしておくと、Coworkがタスクに合ったモデルを選びます。公式FAQには、選べるモデルとしてGPT系とClaude系の複数のモデルが挙げられ、一部のプレビューのモデルは既定でオフになっていて、管理者が管理センターのCopilot設定でオンにしたときだけ表示される、と説明されています。データ保持が必要になるモデルがあり、その場合は選ぶ時に画面に注意書きが出るとも書かれています。モデルの品質・速度・コストのバランスは、モデル ピッカーの横で選ぶ推論の労力レベルで調整でき、既定は中です。

管理者が押さえておくべき点は2つあります。1つは、Anthropicのモデルファミリーの設定とCoworkのアクセスの関係です。Microsoft Learnの管理者向けページは、Anthropicモデルファミリーをオフにするのはモデルの制御であって、ユーザーがCoworkにアクセスできるかどうかには影響しない、と説明しています。オフにした場合、社員はGPTモデルなど組織で許可されている他のモデルで作業を続けるとされています。なお、Copilot Credits Guide(2026年9月版)は前提条件にテナントでのAnthropicの有効化を挙げており、公式資料の間で記述が分かれています。もう1つは、Coworkの利用とアクセスが、現在はAnthropicがサポートする地域に限定されていることです。

Copilot Studioのエージェントや、ほかの従量課金サービスとの関係

Coworkと同じく使った分で費用がかかるMicrosoftのAIの仕組みは、ほかにもあります。Microsoft Learnの使用量ベースの課金のページは、Copilot ChatやSharePointのエージェント、Copilot Studioの従量課金について、それぞれ別の説明ページを案内しています。Cost Managementの支出ポリシーで管理されるサービスとして現在挙げられているのは、CoworkとWork IQ APIです。

管理者にとっては、同じCopilotクレジットという単位でも、どの画面で上限を管理するサービスなのかを分けて把握しておくことが大切です。例えば、Copilot Studioの容量パックを持っている会社では、そのクレジットがCoworkにも使われ得る一方、Power Platform 管理センターで環境に割り当てた分はCoworkに使える分から差し引かれます。自社でエージェントを作る計画がある会社は、Coworkの支出ポリシーと、Copilot Studio側のクレジットの割り当てを、同じ担当者がまとめて見る体制にしておくと、費用の見落としを防げます。

Copilot Coworkでできることと、仕様上できないこと

Coworkでできることは、公式FAQの一文にほぼ集約されています。メールの送信、会議のスケジュール設定、ドキュメント(Word、Excel、PowerPoint、PDF)の作成、Teamsへの投稿、予定表の管理、毎日のブリーフィングの作成、組織全体の検索、詳細な調査の実施、関係者とのコミュニケーションの下書きで、プロンプトを自動で実行するスケジュールも組めます。ここでは、社内で使い道を決めるときに役立つよう、公式ドキュメントの記載を仕事の種類ごとに並べ直します。

できること:メール送信・会議設定・Word/Excel/PowerPoint/PDF作成・Teams投稿・調査・定期実行

  • メールとTeams:メールの作成と送信、Teamsへの投稿、関係者向けの連絡文の下書き。送信や投稿の前には承認を求める画面が出ます。
  • 予定と会議:会議のスケジュール設定、予定表の管理、会議の準備。予定を作る前にも承認を求めます。
  • 文書の作成:Word、Excel、PowerPoint、PDFのファイル作成。作ったファイルはOneDriveとSharePointのワークスペースに保存され、画面右側のサイドパネルからプレビューやダウンロードができます。複数のファイルは「すべてダウンロード」でzipにまとめて落とせます。
  • 検索と調査:組織全体の検索と、詳しい調査(ディープ リサーチ)。社員がもともと見られるファイルとメールの範囲で探します。
  • 画像の生成:組み込みの画像生成スキルで画像を作ります。完成した画像はセッションとOneDriveの出力フォルダーに保存されます。
  • ブラウザーでの作業:デバイスのMicrosoft Edgeで、社員がすでにサインインしているサイトを使ってWebの作業を進められます。資格情報とCookieは端末に残り、Coworkが自分でできないサインインの手順に来ると、ブラウザーを社員に戻して操作を任せます。
  • 定期実行:毎朝9時にブリーフィングを送る、のように、何をいつ実行するかをメッセージで伝えるとスケジュールを組みます。スケジュールしたプロンプトは、タスクの画面の自動化のタブなどから編集・一時停止・再開・削除できます。
  • 出来事をきっかけにした実行:条件に合うメールが届いたときや、Teamsでメッセージが送られたとき(@メンションを含む)に動くイベント駆動型のタスクも設定できます。

入力欄には250,000文字まで書けると公式の手順ページに書かれており、ファイルを添付したり、マイクで話しかけたりもできます。添付の方法は、作業コンテキストとしてファイル・ユーザー・会議を追加する、デバイスから画像やファイルをアップロードする、OneDrive・SharePoint・Teamsのクラウド ファイルを添付する、の3通りです。

作業中の様子は画面に表示されます。考えている間は思考中のインジケーター、必要なスキルを読み込むときはスキル メッセージ(メール作成の準備、Word文書の作成の準備など)、各段階の作業はツールの手順(メールの作成、プレゼンテーションの作成など)として出て、応答はリアルタイムで流れます。サイドパネルには完了したタスクの割合と使ったスキルを示す進行状況バーも出ます。社員が途中で一時停止(今の手順が終わるのを待つ止め方と、すぐに止める止め方がある)、再開、キャンセルを選べることも公式に書かれています。

ユースケース:会議準備・受信トレイ整理・報告書作成

公式の手順ページでは、最初の会話の候補として、最新情報を確認する、受信トレイを整理する、会議の準備、といった推奨プロンプトが示されています。社員10〜200名の会社で最初に試す題材を選ぶときは、失敗しても社外に影響が出ない仕事から始めるのが安全です。公式ドキュメントに載っている使い道を、社内で試す順番の目安とあわせて並べます。

1. 会議の準備(社内で完結しやすい):関連するメールやファイルを集め、論点をまとめた資料を作る使い方です。成果物はファイルとして残るだけで、誰かに送るまでは社外に出ません。最初の試験に向いています。

2. 受信トレイと予定表の整理(自分の範囲で完結しやすい):公式FAQがCoworkの上位のシナリオとして挙げている使い方です。返信の下書きまでに留め、送信は承認画面で一通ずつ確認する運用にすれば、誤送信の心配を抑えられます。

3. 報告書の作成(社内向け):公式の手順ページの例は、先週のキャンペーン結果を要約し、PDF形式に整えてマーケティングチームにメールで送る、というものです。集計から文書化、送信まで一続きで任せられる題材ですが、送信先が社内の決まったチームなら承認の判断もしやすくなります。

4. 毎朝のブリーフィング(定期実行):スケジュールで毎日決まった時刻に動かす使い方です。自分宛てに送る形なら影響範囲が小さく、定期実行の動きと費用のかかり方を確かめる試験になります。

公式の手順ページには、依頼は具体的なほど結果がよくなる、というヒントも載っています。メールを送信して、とだけ書くより、何を要約し、どの形式で、誰に送るのかまで書くほうが、Coworkが余計な手順を踏まずに済みます。費用が使った分だけかかる仕組みなので、依頼の書き方を社内で共有しておくことは、品質だけでなくコストの面でも意味があります。

スキル・プラグインで拡張できる範囲

Coworkは、スキルとプラグインで扱える仕事を広げられます。スキルは、特定の仕事のやり方をまとめた部品のようなものです。公式FAQによると、組み込みのスキルとして、Word、Excel、PowerPoint、PDF、メール、スケジュール設定、予定表管理、会議、毎日のブリーフィング、エンタープライズ検索、コミュニケーション、ディープ リサーチ、アダプティブ カード、アプリ(Frontier)などがあります。

  • カスタム スキル:社員が自分で作れます。OneDriveの /Documents/Cowork/skills/ フォルダーの下にサブフォルダーを作り、SKILL.md というファイルを置く形で、50個まで作成できます。Coworkは各セッションの開始時に自動で見つけます。ただし公式FAQは、ユーザーが作ったカスタム スキルをMicrosoftは検証しないので、出力を注意深く確認するよう求めています。
  • カスタム指示:カスタマイズ ページの基本設定タブで、好みの口調、文書の形式、スケジュールのルールなどを書いておくと、Coworkがすべてのタスクに当てはめます。個人ごとの設定で、20KBまで書けます。
  • プラグイン:Microsoft 365 App Storeのプラグインで、新しいスキルとコネクタ(他のシステムとつなぐ部品)を追加できます。社員はプラグインの参照メニューから探して入れられ、入れたプラグインのスキルは組み込みのスキルと並んで表示されます。プラグインのツールを実行する前にも承認を求めます。
  • アプリ スキル:コードを書かずに軽い対話型のアプリを作れるスキルですが、使えるのはFrontierプログラムに参加しているユーザーだけと公式に書かれています。

管理者の側では、Microsoft 365 管理センターで、組織全体または特定のグループにプラグインを配布でき、App Storeに表示されるプラグインを制限することもできます。管理者が配布したプラグインは自動で使える状態になり、社員が削除することはできません。管理者がプラグインを取り消すと、次のセッションからそのスキルとコネクタは使えなくなります(進行中のセッションは中断されません)。社外のシステムとつなぐプラグインは、どのデータがどこへ送られるかを確かめてから許可するのが基本です。

仕様上できないこと

便利な機能ほど、できないことを先に知っておくと社員からの問い合わせが減ります。公式FAQは、次の制限を仕様によるものとしています。

  • デバイスにローカルに保存されたファイルにはアクセスできず、編集もできません。対象はOneDriveとSharePointのファイルです(添付としてアップロードすることはできます)。
  • OneDriveやSharePointの中のファイルやフォルダーを削除できません。
  • ユーザーが作ったカスタム スキルをMicrosoftは検証しません。
  • 添付ファイルは200MB未満にする必要があります。
  • 社員にアクセス権があっても、暗号化されたファイルは読み取れません。

このうち削除できないという仕様は、安心材料として社員に伝えやすい点です。一方で、PCのデスクトップに置いたままのファイルは扱えないため、Coworkに任せたい資料はOneDriveかSharePointに置く運用を先に決めておく必要があります。また、暗号化されたファイルは読めないので、秘密度ラベルで暗号化している資料をCoworkで扱えないことは想定どおりの動きです。問い合わせが来たときに故障と誤解しないよう、情シスの手元のメモに入れておきましょう。

Coworkに任せやすい仕事、任せる前に考えたい仕事

Coworkに向くのは、複数のアプリをまたぎ、手順が決まっていて、結果を人が確かめやすい仕事です。公式FAQがCopilot Chatとの違いとして示す、複数のアプリにまたがる仕事を最初から最後まで進める、という性格に合うかどうかで考えると、社内で試す題材を選びやすくなります。ここでは公式ドキュメントに書かれた機能と制限をもとに、判断の目安を示します。

任せやすい仕事の条件

  • 材料がOneDrive、SharePoint、メール、予定表、Teamsの中にある:Coworkは社員がアクセスできる範囲のファイルとメールを読んで動きます。材料がMicrosoft 365の中にそろっている仕事ほど、手順をまとめて任せやすくなります。
  • 成果物がファイルか、社内向けの連絡である:作ったファイルはサイドパネルでプレビューでき、送信や投稿は承認画面で止まります。社内向けであれば、確認の手間も小さく済みます。
  • 毎週・毎朝のように繰り返す:スケジュールしたプロンプトで定期実行できるので、毎回同じ依頼を書く手間が省けます。ただし実行のたびにクレジットがかかることは、費用の見積もりに入れておきます。
  • 手順を言葉で説明できる:公式の手順ページは、依頼は具体的なほど結果がよくなると案内しています。手順が決まっている仕事なら、カスタム指示やカスタム スキルにまとめて、社員ごとの書き方の差を減らせます。

任せる前に考えたい仕事

  • 材料がPCのローカルや紙にある:ローカルに保存されたファイルは扱えません。先に保存場所を整える必要があります。
  • 暗号化された資料が中心になる:暗号化されたファイルは、社員にアクセス権があっても読めません。
  • 社外への送信が大量に発生する:承認のたびに内容を確かめる必要があり、確認を省くと誤送信の歯止めがなくなります。1通ずつ確かめる運用が回るかを先に考えます。
  • 業務システムへのブラウザー操作を伴う:Coworkは社員がサインイン済みのサイトを操作できます。影響の大きい操作を任せる前に、Cowork Browsingの設定と、Microsoft Edgeの許可リスト・ブロックリストを見直します。
  • 社外のシステムにデータを渡すプラグインを使う:プラグインのツールはファイルを受け取って動くことがあります。どのデータがどこへ渡るかを確かめてから許可します。

向かない仕事があるからといって、Coworkを使えないわけではありません。材料の置き場所、承認の運用、ブラウザーやプラグインの設定を整えると、任せられる仕事の範囲が少しずつ広がります。試験導入では、任せやすい条件をすべて満たす仕事から始め、1つずつ条件を外していく順番がおすすめです。

承認の仕組みと、社内ルールの線引き

Coworkは、社員の承認がなければメール送信などの行動をしません。公式の手順ページには、Coworkはユーザーの承認なしにアクションを実行しない、と書かれています。ただし承認画面には、以後の確認を省く選択肢もあるため、どこまで省いてよいかを会社として決めておくことが、社内に出す前の大事な準備になります。

重要な操作(送信・投稿・予定作成)の前に承認を求める仕組み

Coworkが社員に代わってメールの送信、Teamsメッセージの投稿、会議のスケジュール設定などを行う前に、承認のダイアログが出ます。ダイアログには、Coworkがしようとしている内容のプレビューと、行動の名前が付いたボタンが表示されます。公式FAQによると、中リスクと高リスクの行動の承認には、影響の大きさを判断するためのリスク レベルの表示が付きます。

アクション ボタン(送信、投稿、作成など):この1回だけ、行動を進めることを許可します。

その他のオプション(アクション ボタンの横のドロップダウン):行動を承認し、現在のセッションの残りの間、同じような行動の確認を省きます。メールとTeamsメッセージでは、特定の受信者のみ、ドメインのみ、そのアクションの常にスキップ、というように、今後の確認を省く範囲を選べます。

キャンセル:Coworkがその行動をしないようにします。

パラメーターの表示:決める前に、行動の技術的な詳細を確認できます。

Coworkが依頼の内容をはっきりさせるために、選択肢付きの質問をしてくることもあります。社員は選択肢を選ぶか、自分で答えを書くか、スキップを選べます。回答待ちの間、タスクの状態には「ユーザー入力が必要」と表示されます。

以後の確認を省く範囲を、社内ルールでどう線引きするか

承認画面のドロップダウンは便利ですが、社外宛ての送信で確認を省くと、誤送信の歯止めが1つなくなります。このドロップダウンを管理者側で使えなくする方法は、この記事で参照した公式ドキュメントには書かれていません。そのため、線引きは社内ルールとして社員に伝えることになります。次は、公式の選択肢に合わせて作った判断の目安です。

承認の選択肢社内宛て(自社ドメイン)社外宛て(取引先など)判断の理由
その1回だけ承認(アクション ボタン)許可許可(本文と宛先を毎回確認)1通ずつ目で確かめるので、歯止めとして働く
現在のセッションの残りで同様の確認を省く許可(社内への一斉連絡など)原則禁止同じ会話の中で宛先が変わっても確認が出なくなるおそれがある
特定の受信者のみ省く許可上長の了解を得た定型の宛先だけ許可宛先が固定されるので影響範囲を限れる
ドメインのみ省く自社ドメインに限り許可禁止取引先ドメインを丸ごと省くと、担当外の相手にも確認なしで届く
そのアクションを常にスキップ原則禁止禁止送信前の確認そのものがなくなる

表の禁止・許可は一例です。社員10名前後の会社なら、社外宛ては毎回承認、の1行だけでも十分に効果があります。社員が多い会社では、部署ごとに定型の宛先(顧問税理士、決まった取引先の窓口など)を登録制にして、その宛先に限って特定の受信者のみ省くことを認める、という運用も考えられます。いずれの場合も、ルールを文章で配り、後の通知文のひな形のように、使い始める前に全員に伝えることが大切です。

自動タスク(スケジュール・イベント駆動)の承認

定期実行やイベント駆動のタスクは、社員が画面の前にいないときに動くので、承認の扱いが特に大事です。公式の管理者向けページによると、既定では、Coworkは自動タスクがメールを送信したり、メッセージを投稿したり、共有システムを変更したりする前にユーザーに承認を求めます。ただし社員は、タスクを作るときに行動を事前に承認できます。イベント駆動型のタスクも、既定では、Coworkが単独で実行するのではなく、承認用にアクションを準備する動きです。

ほかに公式に書かれている安全策は、次の3つです。

  • 作成したユーザーの権限で実行:自動タスクは作った社員として動き、その社員が見られるデータしか見ません。
  • レート制限とループ保護:自動タスクには実行できる頻度の制限があり、自分で自分を呼び出し続けるタスクから守る仕組みがあります。
  • 監査:自動タスクの活動は、他のCoworkの活動と一緒に統合監査ログに記録され、Microsoft Purviewのデータセキュリティとコンプライアンスのポリシーが適用されます。

社内ルールとしては、社外宛ての送信を含む自動タスクは事前承認を使わない、自動タスクを作ったら情シスに登録する、の2点を決めておくと管理しやすくなります。自動タスクは使うたびにクレジットを消費するので、放置された定期実行が費用を積み上げることも防げます。

Coworkを使う場所と開き方

Coworkは、Copilotの画面上部にある切り替えから開きます。公式の手順ページでは、Microsoft Copilot(m365.cloud.microsoft)を開き、上部の[チャット]の横にあるトグルで[コワーク]を選ぶ、と案内されています。

使う場所:Copilotアプリ上部のチャット/Coworkトグル(Web・デスクトップ・モバイル)

公式の手順ページが挙げる動作環境は、ブラウザー(m365.cloud.microsoft)、OutlookとTeams、WindowsとMac用のMicrosoft Copilotデスクトップ アプリ、iPhoneとAndroid用のMicrosoft Copilotモバイル アプリです。ブラウザーはMicrosoft EdgeまたはGoogle Chromeが推奨されています。モバイル アプリでもプラグインを見つけて設定でき、添付のメニュー(+)からスキルを選ぶと表示されます。

社員に案内するときは、開き方を1行で伝えると迷いにくくなります。例えば、ブラウザーでm365.cloud.microsoftを開き、画面上部の[チャット]の横の切り替えで[コワーク]を選ぶ、と書けば迷いません。切り替えが表示されない場合は、後の確認リストの順に原因を切り分けます。

Coworkのホーム画面にあるもの

  • チャット入力:やりたいことを書く欄。中断したところから再開できる最近のタスクも表示されます。
  • 検索:以前のタスクを探して再確認できます。
  • 自動化:スケジュールしたタスクの表示、編集、スケジュールの変更、整理ができます。
  • カスタマイズ:カスタム指示の設定、個人スキルの追加、プラグインの検索と追加ができます。
  • モデル選択:タスクに合うモデルを選ぶか、Coworkに任せます。
  • 推論の労力レベル:品質、速度、コストのバランスの取り方を決めます。

タスクの画面では、入力が必要なもの、進行中のもの、完了したもの、スケジュールされたものを絞り込んで見られます。公式FAQでは、最近のビューで状態(進行中、入力が必要、完了、失敗)ごとに絞り込めること、自動化のビューはスケジュールされたプロンプトが1つ以上あるときだけ表示されることが説明されています。接続が切れても自動で再接続し、中断したところから再開するとも書かれています。

推論の労力レベルとモデル選択は、費用にも関わる設定です。Copilot Credits Guide(2026年9月版)は、1つのタスクで使うクレジットがモデル、ランタイム、コンテキスト、ツールの4つの要素の組み合わせで変わると説明しています。社員向けの案内では、通常はモデルを自動、労力レベルを既定の中のままにし、変える場合は理由を持って変える、と伝えておくと無駄な消費を避けやすくなります。

Copilot Coworkの料金の仕組みと円換算

Coworkの費用は、Microsoft 365 Copilotのライセンス料に、Copilotクレジットの使用量に応じた料金が上乗せされる形です。Microsoftの日本語の製品ページは、Copilot Coworkは従量課金で、委任する作業の量に応じて請求が発生する、と説明しています。月額が一定の機能ではないので、上限の置き方と、使った量の見方をセットで決めておく必要があります。

料金=Microsoft 365 Copilotライセンス+Copilotクレジットの従量課金

公式FAQによると、Coworkは使用量ベースの課金モデルで、ユーザーがCoworkで行った量にもとづいて組織に課金されます。消費に数えられる活動として、モデルの応答、ツールやスキルの呼び出し、画像生成、ブラウザー タスクなどが挙げられています。会話をするだけでなく、Coworkが裏で呼び出すツールやスキルにもクレジットがかかる、と理解しておくとよいでしょう。

Copilot Credits Guide(2026年9月版)は、1つのタスクで使うクレジットが次の4つの要素の組み合わせで変わると説明しています。

  • モデル:どのAIモデルで処理するか。
  • ランタイム:長時間の作業も含めて、エージェントを動かし続けるクラウド側の実行基盤。
  • コンテキスト:メール・ファイル・会議・過去のやり取りから得る、仕事の背景の理解。
  • ツール:呼び出すツールやスキル。

このため、同じ「報告書を作って」という依頼でも、読み込むファイルの量や使うモデル、Coworkが踏む手順の数によって消費量は変わります。1タスクあたり何クレジットかかるかという具体的な数値は、この記事では扱いません。代わりに、Microsoftが用意している見積もりツールと、実際に使った量を確かめる方法を後で紹介します。

前提:Microsoft 365 Copilotライセンス(個人用アカウントはプレビュー)

Coworkを会社で使う前提は、Microsoft 365 Copilotのライセンスです。Microsoftの公式ブログ(2026年6月16日付)は、Copilot CoworkにはMicrosoft 365 CopilotのUser Subscription License(ユーザー単位のサブスクリプション ライセンス)が必要だと発表しています。Microsoft Learnの手順ページが挙げる前提条件は、次の4つです。

  1. アカウントに、アクティブなMicrosoft 365 Copilotライセンスが割り当てられていること
  2. 最新のブラウザー(Microsoft EdgeまたはGoogle Chromeを推奨)
  3. Microsoft Copilotの環境でCoworkが有効になっていること
  4. 使用量ベースの課金とCoworkの課金が有効になっていること

Copilot Chatだけの状態(Microsoft 365 Copilotのライセンスがない状態)では、この前提を満たしません。Microsoft 365 Copilotのライセンスの料金や種類の違いはMicrosoft 365 Copilotの料金の記事で詳しく扱っているので、ライセンスをまだ持っていない会社は先にそちらで総額を確かめてください。Coworkの費用は、そのライセンス料に上乗せされる部分です。

個人用アカウントのCoworkはプレビューの段階で、Microsoftのサポートページでは、対象となるMicrosoft 365サブスクリプションを持つ個人用Microsoftアカウントでサインインして使う、と案内されています。社員が個人で契約しているMicrosoft 365で試すことは、会社の管理が届かない使い方になるため、社内ルールで扱いを決めておきましょう。個人アカウントでの業務利用は、いわゆる野良AI(シャドーAI)の典型的な入口です。

1クレジット0.01ドルの従量課金と、事前購入(P3)の2つの払い方

Copilot Credits Guide(2026年9月版)に記載されている従量課金の単価は、1 Copilotクレジットあたり0.01米ドルです。払い方は大きく2つあります。

従量課金制:使った分だけ、接続したAzureサブスクリプションに請求されます。Microsoft Learnの課金の概要ページは、課金をサポートするにはAzureサブスクリプションを接続する、と説明しています。

事前購入プラン(Copilot Credit P3):1年分のクレジットを前払いで買う方法です。Copilot Credits Guide(2026年9月版)によると、割引の段階は30万クレジットで5%から始まり、3億クレジットで20%まであります。使い残したクレジットは購入から1年の期間の終わりに失効します。

容量パック:Copilot Studioなどで使う前払いの容量パックを持っている場合は、それもCoworkの支払いに使えます。ただしPower Platform 管理センターで環境に割り当てた分などは、Coworkに使える分から差し引かれます。

Microsoft Learnは、P3は従量課金制の上に重なる仕組みで、別々の請求オプションではないと説明しています。前払いのクレジットがあればそれを先に使い、使い切ると自動的に従量課金制で続きます。容量パックとP3の両方を選んでいる場合の順番は、容量パック、P3の前払いクレジット、従量課金制です。つまり、前払いを使い切った後も、支出ポリシーの上限に達するまでは従量課金で使い続けられます。前払いの額が予算の上限になるわけではない点に注意が必要です。

円に換算するときの計算式(為替は前提として置く)

公式の単価はドル建てです。円での請求額は為替と契約の条件で変わるため、ここでは為替を1つの前提として置いて計算式を示します。以下はすべて、1ドル=150円で計算した場合の目安です。実際の請求額は、Azureの請求書で確認してください。

計算式:月の費用(円)= 使ったクレジット数 × 0.01ドル × 為替レート(円/ドル)

1クレジット:0.01ドル × 150円 = 1.5円

1,000クレジット:1,000 × 0.01ドル = 10ドル → 10ドル × 150円 = 1,500円

5,000クレジット:5,000 × 0.01ドル = 50ドル → 50ドル × 150円 = 7,500円

30万クレジット(P3の最初の割引段階):300,000 × 0.01ドル = 3,000ドル → 3,000ドル × 150円 = 450,000円(割引前の従量課金単価での換算)

為替を1ドル=140円や160円で置き直せば、1クレジットは1.4円や1.6円になります。社内の稟議では、前提の為替を明記したうえで、上限額をドルと円の両方で書いておくと、為替が動いたときにも説明がつきます。消費税などの税の扱いと請求通貨は契約の形態によって異なるため、経理担当と一緒にAzureの請求書の形を確認してください。

この計算式の使いどころは、1タスクの費用を当てることではなく、上限額を決めることです。例えば、試験導入の5名に1人あたり月5,000クレジットの上限を置くと、上限まで使い切った場合の額は、5名 × 5,000クレジット = 25,000クレジット = 250ドル、1ドル=150円で計算した場合は37,500円です。ただし後で説明するとおり、上限はリアルタイムで効くものではないので、実際の消費がこの額を少し超える可能性も頭に入れておきます。

見積もりと実績の確認:見積もりツール、/cost、消費のタブ

使う前の見積もりと、使った後の実績は、Microsoftが用意している仕組みで確認できます。

  • Cowork コスト見積もりツール:Microsoft Learnの管理者向けページから案内されている、コストを見積もるためのツールです。導入前の試算に使います。
  • /cost(社員向け):社員がCoworkで /cost と入力すると、これまでに開いたタスクのおおよそのクレジット使用量と、追加の使用状況の詳細が表示されます。社員自身が使いすぎに気づくための手段として、通知文で案内しておくと効果的です。
  • Cost Managementの概要タブ(管理者向け):Copilotクレジットの合計消費量、前払いと従量課金の比較、使用制限に近づいているポリシーやユーザーなどを確認できます。4時間ごとに更新されます。
  • Cost Managementの消費タブ(管理者向け):支出ポリシー、ユーザー、グループ、エージェント、サービスの切り口で使用状況を見られます。2時間ごとに更新されます。エージェントとサービスのビューでは、Coworkのアクティブ ユーザー、使用済みクレジット、セッション数が表示されます。
  • Cowork 使用状況レポート:社員がCoworkにどう関わっているかを可視化するレポートも、公式ドキュメントで案内されています。

更新の間隔があるため、今この瞬間の消費は画面の数字とずれることがあります。月末に慌てないよう、試験導入の最初の1か月は週に1回、消費タブを見る日を決めておくと、1人あたりの消費の傾向が見えてきます。

稟議書に書いておきたい費用の項目

Coworkの費用を社内で承認してもらうときは、月額が一定のサービスと同じ書き方では説明が足りません。使った分だけ請求が変わるので、上限と確認の仕組みまで書いておくと、決裁者が判断しやすくなります。稟議書に入れておきたい項目を並べます。

  1. 前提となるライセンス:対象の社員がMicrosoft 365 Copilotのライセンスを持っているか。持っていない場合は、ライセンス料が別にかかることを明記します。
  2. 単価と為替の前提:1クレジット0.01米ドル、為替は1ドル=◯円で計算した場合、と書きます。為替が動いたときの幅も、例えば±10円で計算した額を添えます。
  3. ポリシー全体の月の上限と、1人あたりの月の上限:クレジット数と、ドル・円の換算額の両方を書きます。上限は非同期で効くため、少し超える可能性があることも一言添えます。
  4. 請求先:どのAzureサブスクリプションに請求されるか、部署別か全社1つか。
  5. 確認の仕組み:アラートのしきい値と通知先、消費タブを見る担当と頻度。
  6. 試験期間と判断の基準:いつまで試し、何を見て広げるか、やめるかを決めるか。

この形で書いておくと、翌月以降に上限を見直すときも、何を前提に決めた数字かを追いかけられます。費用の説明は、金額そのものより、どこで止まり、誰が見ているかを示すほうが決裁者の安心につながります。

事前購入(P3)を買うかの判断

社員10〜200名の会社では、最初から事前購入を選ぶ理由はあまりありません。P3の割引は30万クレジット(従量課金単価で3,000ドル相当)からで、使い残しは購入から1年の期間の終わりに失効するからです。判断の目安を並べます。

まず従量課金制で始める:利用者が少数の試験導入の段階、1人あたりの消費量がまだ分からない段階、使う部署が決まっていない段階。

P3を検討する:数か月分の実績から、年間の消費が30万クレジットを安定して超えると見込める段階。使い残しの失効を差し引いても、5%以上の割引が意味を持つかを計算します。

容量パックの残りを先に確認する:すでにCopilot Studioの容量パックを持っている会社は、Coworkに使える残りがあるかをCost Managementで確認します。Power Platform 管理センターで割り当てた分は差し引かれます。

生成AIの費用を部署ごとに見える化する考え方は、生成AIのコスト管理の記事で詳しく整理しています。Coworkだけでなく、ほかのAIサービスの費用とあわせて月次で見る仕組みを作っておくと、どこにお金がかかっているかを説明しやすくなります。

誰が使えるかを決めるのは支出ポリシー

Coworkを誰が使えるかは、ライセンスの割り当てでも表示の設定でもなく、Coworkを選んだ支出ポリシーの対象範囲で決まります。支出ポリシーとは、管理センターのCost Managementで作る、どのユーザー・グループが、どのサービスに、いくらまでクレジットを使えるかを決める設定です。この記事でいちばん伝えたいのは、この支出ポリシーが予算の設定であると同時に、使える人を決めるスイッチでもある、という点です。

支出ポリシーは予算であると同時にアクセス制御

Microsoft Learnの管理者向けページは、次の趣旨をはっきり書いています。

支出ポリシーは、予算だけでなくアクセス制御です。

Coworkを選んだ支出ポリシーの範囲内にいるユーザーは、上限がどれほど小さくてもCoworkを使えます。1クレジットの上限のポリシーでも、アクセス権が付与されます。

ユーザーをCoworkから遠ざけるには、上限を引き下げるのではなく、Coworkを選ぶ支出ポリシーにそのユーザーを含めないようにします。

ここが直感と逆になりやすいところです。予算の設定と聞くと、上限を小さくすれば実質的に使えなくなる、と考えがちです。しかし公式の説明では、上限を低くしてもアクセスは妨げられず、上限に達するまで社員はCoworkを開いて作業を始められます。使わせたくない社員がいるなら、その社員をCoworkを選んだ支出ポリシーの対象に入れないことが、公式ドキュメントの示す方法です(アクセスは支出ポリシーを通じてのみ許可される、と明記されています)。

上限1クレジットでも使える:2つのポリシーが重なる例

Microsoft Learnのアクセス制御のページには、2つの支出ポリシーが重なる動作例が載っています。

  • パイロット ポリシー:対象はパイロット ユーザーのセキュリティ グループ、ユーザーごとの上限は5,000クレジット、Coworkを選択。
  • テナント予算ポリシー:対象はすべてのユーザー、ユーザーごとの上限は1クレジット、Coworkを選択。

この場合、どちらのポリシーもCoworkを選んでいて、2つの対象を合わせるとすべてのユーザーが含まれるため、テナント内の全員がCoworkを使えます。1クレジットのテナント予算ポリシーは、ほとんどの社員を締め出す方法ではなく、全社員への利用許可として働きます。パイロットの社員は両方のポリシーに入っていて、優先順位のルールで5,000クレジットの上限が割り当てられますが、これは上限を決めるだけで、使えるかどうかは決めません。

公式ドキュメントが示す直し方は2つです。テナント予算ポリシーからCoworkを外すか、Coworkを選ぶポリシーにパイロット以外の社員を含めないかです。試験導入のつもりで全社向けの予算ポリシーを1クレジットで作り、同時にパイロット用のポリシーを作る、という組み方は、意図と逆に全社員へ開放する設定になります。

上限はリアルタイムでは効かない

もう1つ知っておくべきなのは、上限の効き方です。Microsoft Learnは、クレジットの上限は支出の安全策であって、リアルタイムのアクセス ゲート(その場で入口を閉める仕組み)ではないと説明しています。クレジットの消費と上限の適用は非同期で評価されるため、社員は上限に達した後、適用が有効になる前に1つ以上のタスクを始められる場合があります。

実行中のタスクの扱いも公式に書かれています。グループの支出ポリシーの中で、実行中のタスクがユーザーごとの上限を超えた場合、そのタスクは中断されずに完了できます。公式ドキュメントでは、超過分はポリシーの上限には数えられず、Microsoftの裁量で請求されず、Cost Managementのダッシュボードにも使用済みクレジットとして表示されない、と説明されています。

上限に達した社員は、月の1日にクレジットがリセットされるまで、その月の残りの期間はエージェントやサービスにアクセスできなくなります。まとめると、上限は月の支出の暴走を防ぐ安全策としては働きますが、1クレジット単位で正確に止める仕組みではありません。月の予算を厳密に守る必要がある会社は、上限を予算より少し低めに置き、アラートを早めのしきい値で設定しておくと安心です。

複数の支出ポリシーの優先順位と、グループを移ったときの扱い

社員が複数の支出ポリシーに入っている場合、どの上限が当てはまるかにはルールがあります。Microsoft Learnによると、同じサービスについて複数のポリシーに入っている社員には、次の順でポリシーが割り当てられます。

  1. ユーザーあたりの上限がいちばん高いポリシー
  2. 同じなら、ポリシー全体の上限が高いポリシー
  3. それでも同じなら、最後に作成されたポリシー

ユーザーごとの上限がないポリシーは、ポリシー全体の上限をユーザーごとの値として比べます。選ばれたポリシーがそのまま適用され、他のポリシーの設定と混ざることはありません。より厳しいポリシーが、より緩いポリシーを上書きすることもありません。優先順位のルールは、どの上限を当てはめるかを決めるだけで、使えるかどうかは決めない、という点がここでも繰り返し説明されています。

社員が月の途中でMicrosoft Entra IDのグループを移った場合は、新しいグループの支出ポリシーが有効になりますが、それまでの消費量はリセットされずに引き継がれます。公式の例では、ポリシーAで500クレジットを使った社員がポリシーBのグループに移ると、500クレジットは使用履歴に残ったままで、ポリシーBの上限まで使い続けられます。部署を移れば枠が増える、ということは起きない設計です。

支出ポリシーの組み方は3つの型で考える

ここまでの仕組みを踏まえると、Coworkの支出ポリシーの組み方は、次の3つの型のどれかに当てはめると整理しやすくなります。どの型でも、Coworkを選んだポリシーの対象の合計が、使わせたい社員の範囲と一致しているかを確かめることが基本です。

型1:試験グループだけ:Coworkを選ぶポリシーは、試験用のセキュリティ グループを対象にした1本だけにします。既定の支出ポリシーも、[セットアップ構成のカスタマイズ]で同じグループに絞るか、Coworkを選ばない設定にします。使える社員の範囲がはっきりし、費用も読みやすい型です。

型2:部署ごとに上限を変える:営業、管理、企画のように部署ごとのセキュリティ グループを作り、部署ごとにCoworkを選ぶポリシーを作ります。1人あたりの上限を部署の仕事に合わせて変えられます。社員が複数の部署のグループに入っている場合は、ユーザーあたりの上限が高いポリシーが割り当てられる、という優先順位のルールを前提に設計します。

型3:全社に開き、上限で抑える:すべてのユーザーを対象にしたポリシーでCoworkを選び、1人あたりの上限とアラートで支出を抑えます。ライセンスを持つ社員は全員使えるので、承認のルールと通知文を全員に届けてから選ぶ型です。使わせたくない社員がいる場合は、この型は選べません。

社員10〜200名の会社では、型1で始め、試験の結果を見て型2に広げる順番が進めやすいでしょう。型3は設定が簡単に見えますが、支出ポリシーがアクセス制御でもあることを踏まえると、全社員への利用許可を出す判断と同じ重さがあります。

表示の設定、すべてのエージェント、モデルの設定は、アクセスを決めない

管理センターには、Coworkに関係しそうな設定がほかにもありますが、公式ドキュメントはどれもアクセスを決めるものではないと説明しています。ここを混同すると、止めたつもりで止まっていない、という状態になります。

検出の設定(使用量ベースの課金設定によって実現される AI エクスペリエンス):Microsoft 365全体でCoworkを表示するかどうか、という表示範囲だけを決めます。Coworkを選んだ支出ポリシーの対象の社員は、検出がオフでも使えます。

エージェント > すべてのエージェントのCoworkの項目:FrontierとプレビューのころはここでCoworkの許可・ブロックを設定していましたが、一般提供後はアクセスの制御としては廃止されています。項目は表示されますが、その設定は誰がCoworkを使えるかに影響しません。

テナントのモデル設定:どのモデルが選べるかを決める設定です。Microsoft Learnのアクセス制御のページは、Anthropicのモデルファミリーをオフにしても、Coworkを使えるかどうかは変わらないと説明しています。なお、Copilot Credits Guide(2026年9月版)は前提条件にテナントでのAnthropicの有効化を挙げており、公式資料の間で記述が分かれています。

Frontierのころに、すべてのエージェントの画面で許可リストを作っていた会社は、公式ドキュメントの案内に沿って支出ポリシーに作り直す必要があります。手順は、以前の許可リストの社員をMicrosoft Entra IDのセキュリティ グループに入れ、Copilot > Cost Management > Configurationで支出ポリシーを追加し、対象に特定のグループとしてそのセキュリティ グループを選び、エージェントとサービスの選択でCoworkを選ぶ、という流れです。

管理者の準備|Cost Managementでの設定手順

Coworkを社員に使わせるには、管理者がMicrosoft 365 管理センターで使用量ベースの課金を有効にし、支出ポリシーを作る必要があります。公式の管理者向けページは、ユーザーがCoworkにアクセスできるようにするには管理者が使用量ベースの課金を有効にする必要がある、と書いています。ここでは、画面の名前を公式ドキュメントの表記どおりに使って、最初の設定から試験導入用のポリシー作りまでを順に説明します。

ロールの分担:誰に何を任せるか

設定に必要な権限は、請求方法を扱う権限と、支出ポリシーを扱う権限に分かれています。Microsoft Learnに書かれている分担は次のとおりです。

グローバル管理者、課金管理者
請求方法の追加、選択、変更と、ポリシーでの請求方法の設定ができます。最初の有効化(開始する)もこのどちらかのロールでサインインして行います。管理センターから新しいAzureサブスクリプションを作る場合は、グローバル管理者である必要があります。
AI 管理者、ライセンス管理者
支出ポリシーの作成と、上限とアラートの管理ができます。請求方法の設定や変更はできません。
AI 閲覧者、グローバル閲覧者などの閲覧者ロール
消費のダッシュボードとレポートを読み取り専用で見られます。支出ポリシー、上限、アラート、要求ポリシー、請求方法の作成や変更はできません。

Microsoftは、権限の少ないロールを使うことを勧めており、グローバル管理者は既存のロールが使えない緊急時に限るべき、と説明しています。社員10〜200名の会社に当てはめると、次のような分担が考えられます。

社員10〜30名で、情シス専任がいない会社:最初の有効化と請求方法の設定は、Microsoft 365の契約を管理している人(多くは経営者か総務の責任者)がグローバル管理者として1回だけ行います。日々の上限の調整とクレジット要求の対応は、総務の担当者にAI 管理者ロールを付けて任せます。経理担当には閲覧者ロールで消費の画面を見てもらいます。

社員30〜100名で、情シス担当が1〜2名いる会社:請求方法は経理の責任者に課金管理者ロールを付けて担当させ、支出ポリシーは情シス担当がAI 管理者ロールで管理します。お金の出口と使う人の範囲を別の人が見る形にすると、片方の判断だけで予算が膨らむことを防げます。

社員100〜200名の会社:部署ごとに請求方法(Azureサブスクリプション)を分けるかを最初に決めます。公式ドキュメントは、グローバル管理者か課金管理者であれば、ポリシーごとに請求方法を変えて部門別の請求にできると説明しています。請求方法はポリシー作成後に変えられないので、この判断は作る前に済ませます。

Copilot > Cost Managementで課金を有効にし、月の上限とアラートを設定する手順

最初の有効化の流れは、Microsoft Learnの手順ページに沿うと次のとおりです。画面の名前は公式ドキュメントの表記です(翻訳の都合で英語のまま表示される項目があります)。

  1. グローバル管理者または課金管理者のロールで、Microsoft 365 管理センターにサインインします。
  2. [Copilot]、[Cost Management]の順に移動します。
  3. 使用量ベースの請求で有効になるAIの機能のロックを解除するため、[開始する]を選びます。公式ドキュメントでは、この機能は現在CoworkとWork IQ APIで使えると説明されています。
  4. [Activate the default spending policy for your organization]という題名のサイドパネルが開きます。
  5. [請求方法]で、組織の請求方法(既定のサブスクリプション)を選びます。ここで選んだサブスクリプションは、後で作るポリシーの既定になります。
  6. [このポリシーの月間使用制限を設定する]で、[毎月の支出を制限しない]か[毎月の支出を制限する]を選びます。
  7. [ユーザーの1か月の使用制限を選択する(オプション)]で、1人あたりの月の上限を設定します。省略もできますが、公式ドキュメントは、1人の社員が使えるクレジットをすべて使ってしまうことを防ぐため、この項目を確認して設定するよう勧めています。
  8. [アラートの定義]で、ポリシーの使用量がしきい値に達したときにメールで通知を受け取る人を選びます。しきい値はクレジットの量か割合で決められます。欄には、サインインしている管理者のメールが最初から入っています。
  9. 1人あたりの上限を置いた場合は、社員向けの通知のしきい値も設定します。社員が上限に近づくと、その社員に警告が届きます。
  10. [新しいサービスの自動適用]の設定を確認します。既定でオンになっています。
  11. 既定の設定は組織全体・すべてのユーザーが対象です。対象を絞る場合は、[アクティブ化]を押す前に[セットアップ構成のカスタマイズ]を選び、既定の支出ポリシーを特定のグループに合わせたり、管理するサービスを変えたりします。
  12. [アクティブ化]を選びます。設定の完了が通知されます。
  13. [構成の管理]を選ぶと、Cost Managementの[構成]タブが開きます。ここで、特定のグループ・ユーザー・サービスに限る追加のポリシーを作れます。

アラートのメールは、使用量がしきい値に達した時点で送られ、月の使用期間がリセットされるか、支出ポリシーを調整するまで毎週続きます。通知先には、請求を見る経理の担当者も加えておくと、月末の請求で初めて気づく、ということを避けられます。

手順11の[セットアップ構成のカスタマイズ]を飛ばさない

この手順の中で、社内に出す前の準備として見落としやすいのが、手順11です。既定の支出ポリシーは組織全体とすべてのユーザーが対象なので、[開始する]から既定のまま[アクティブ化]を押すと、Microsoft 365 Copilotのライセンスを持つ社員は全員、Coworkを使える状態になります。前の節で説明したとおり、支出ポリシーはアクセス制御でもあるからです。

試験導入から始めたい会社は、次の順番で準備すると安全です。

  1. Microsoft Entra IDで、試験導入に参加する社員だけを入れたセキュリティ グループ(例:Cowork試験導入)を作ります。公式ドキュメントによると、支出ポリシーに特定のユーザーを入れるには、現時点ではセキュリティ グループを通す必要があります。
  2. [開始する]から始め、手順5〜10を設定します。
  3. [アクティブ化]の前に[セットアップ構成のカスタマイズ]を選び、対象を[すべてのユーザー]から[特定のグループ]に切り替えて、作ったセキュリティ グループを選びます。
  4. [アクティブ化]を選びます。
  5. [構成]タブで、ほかにCoworkを選んだポリシーが対象をすべてのユーザーにしていないかを確認します。

2つ目以降の支出ポリシーを追加する手順

部署ごとに上限を変えたい場合や、試験導入の後に対象を広げる場合は、支出ポリシーを追加します。[Copilot > Cost Management]の[構成]タブで[+ 支出ポリシーの追加]を選び、画面の案内に沿って次の項目を順に決めます。

  1. ユーザーとグループのスコープ:ポリシーに名前を付け、対象を選びます。既定は[すべてのユーザー]です。一部に絞るときは[特定のグループ]に切り替えてグループを選びます。複数のグループを選ぶこともできます。
  2. 制限とアラート:月の予算を[無制限の月予算]か[制限付き月間予算]から選び、必要に応じて1人あたりの月の上限を設定します。ポリシーのしきい値と通知先、1人あたりの上限を置いた場合は社員向けの通知のしきい値も設定します。追加したポリシーは、既定のポリシーのテナント全体の上限を引き継がず、それぞれ独立した上限を持ちます。
  3. エージェントとサービスの選択:チェックボックスでCoworkを選びます。[新しいサービスの自動適用]の切り替えもここにあります。
  4. 請求方法の選択:既定では、既定のポリシーの請求方法が入ります。グローバル管理者か課金管理者なら[変更]で別の請求方法に変えられます。
  5. レビューと作成:対象、上限、通知のしきい値、選んだサービス、新しいサービスの自動適用、請求方法を確認し、[支出ポリシーの作成]を選び、[完了]で閉じます。作ったポリシーは構成の一覧に出て、対象の社員にすぐ適用され始めます。

支出ポリシーを削除すると、そのポリシーの対象だった社員はその上限で管理されなくなります。削除してもクレジットは削除・再割り当て・リセットされず、削除前の使用状況はレポートに残ります。別のポリシーがグループ経由で当てはまる社員は、そのポリシーのもとで使い続けます。削除すれば使えなくなる、と単純には言えないので、止める目的で削除する場合は、ほかのポリシーの対象も確かめます。

課金方法は、ポリシーを作った後に変えられない

請求方法の扱いには、後戻りできない点が1つあります。ここは2つを区別して理解してください。既定の請求方法(新しいポリシーに最初から入るもの)は後から変更できます。一方、Microsoft Learnは、支出ポリシーに請求方法を設定して作ったポリシーは後から変更できず、変えるにはポリシーを削除して新しく作り直す必要がある、と説明しています。

作り直すと、上限やアラート、対象の設定も一からやり直しになります。月の途中で作り直すと、社員への案内や経理の集計にも影響が出ます。部署ごとに請求を分けるのか、全社を1つのAzureサブスクリプションにまとめるのかは、最初のポリシーを作る前に経理と決めておきましょう。

従量課金制を選び、選んだAzureサブスクリプションの所有者または共同作成者である場合は、[課金の詳細設定]で課金リージョンとリソース グループを指定できます。Azureを普段使っていない会社では、Azureサブスクリプションを持っていない場合もあります。公式ドキュメントによると、その場合は管理センターにリンクされた課金アカウントでサブスクリプションが自動で作られるか、サブスクリプションのドロップダウンの[新規作成]から作れます。Microsoft 365を販売店(CSPパートナー)経由で契約している会社は、公式ドキュメントがパートナー向けFAQの手順を参照するよう案内しているので、販売店に相談するのが近道です。

新しいサービスの自動適用を、オンのままにするか決める

[新しいサービスの自動適用]は、支出ポリシーで既定でオンになっている設定です。オンのままだと、今後新しくサポートされたMicrosoft Copilotのサービスとエージェントが、自動的にそのポリシーに追加されます。オフにすると、将来のサービスは自動では入らず、管理者が確認して追加します。

支出ポリシーはアクセス制御でもあるため、この設定がオンのポリシーは、将来の新しい従量課金サービスを、そのポリシーの対象の社員に使える状態で開くことになります。判断の目安は次のとおりです。

オフを勧める場合:全社員を対象にしたポリシー、新しいサービスを使わせる前に社内ルールや費用を確かめたい会社、監査や取引先の要求でAIの利用範囲を説明する必要がある会社。

オンでもよい場合:情シスや企画部門など、新しい機能を試す役割の少人数のグループに限ったポリシーで、上限とアラートを置いている場合。

社員からのクレジット要求の受け方

社員は、初めて使うときや上限を引き上げてほしいときに、クレジットの要求を送れます。管理者はCost Managementの概要タブの[要求の表示]から[クレジット要求]ページを開き、保留中と承認済みの要求を見られます。要求には、求められたサービス、ライセンスの状態、今のポリシー、支出ポリシーの対象かどうかなどが表示されます。公式ドキュメントによると、同じ支出ポリシーの中で上限に達した社員が追加を要求しても、別のポリシーには自動では移らず、今のポリシーに留まります。

管理者の対応として公式に挙げられているのは、社員を支出ポリシーに追加する、チームごとの新しいポリシーやグループを作る、需要に合わせて上限を調整する、要求をエクスポートしてまとめて判断する、の4つです。さらに[要求ポリシー]で[要求ポリシーの追加]を選ぶと、社員が要求を送ろうとしたときに社内の申請ページへ誘導するリダイレクトURLとメッセージを設定できます。社内に稟議や申請の仕組みがある会社は、この機能で申請先を社内のフォームに向けておくと、誰がいつ許可したかを社内の記録として残せます。

データ保護とセキュリティの確認点

Coworkは、社員が普段使っている権限の範囲でしか情報を読みません。公式FAQは、Coworkはユーザーのアクセス許可を継承するため、すでにアクセスできるファイルとメールにのみアクセスできる、と説明しています。逆に言えば、社員の権限が広すぎる会社では、Coworkが読める範囲も広くなります。導入前に確かめたい点を順に説明します。

データ保護:テナント内に保持、ユーザーの既存権限を継承

公式の管理者向けページによると、Coworkがタスクを実行するとき、ファイルはMicrosoft 365のサービス境界の中にある、一時的で隔離された環境で処理されます。Microsoft 365のサービス境界とは、Microsoft 365テナント(会社ごとの契約環境)のセキュリティとデータ処理の境界のことです。Coworkはタスクの間だけファイルを使い、タスクが終わると一時的な環境を削除します。社員はこの環境を見たり触ったりできません。データの所在地は、Copilotと同じモデルに従うと説明されています。

権限の継承については、社員が開けないファイルやメールはCoworkも開けないこと、参照したファイルやメールに秘密度ラベルが付いていれば、Coworkはそのラベルを表示し、セッションの中でいちばん高いラベルを示すことが公式FAQに書かれています。Microsoft 365 Copilotのデータの扱い全般(プロンプトや応答が基盤モデルの学習に使われないこと、エンタープライズ データ保護など)は親記事で整理しているので、あわせて確認してください。

導入前に見直したいのは、共有設定の広さです。全社員が編集できる共有フォルダーに人事や経営の資料が置かれていると、Coworkに社員が頼んだ検索や資料作りの中で、それらが材料として使われる可能性があります。これはCoworkの欠陥ではなく、元の権限設定の問題です。AIに限らず、社内の権限を見直すきっかけとして扱いましょう。確認の観点は生成AIのセキュリティチェックリストにまとめています。

監査ログとMicrosoft Purview

Coworkの活動は記録に残ります。公式の管理者向けページによると、社員に代わってCoworkが始めたブラウザーのタスクや、自動タスクの活動は、ほかのCoworkの活動と一緒に統合監査ログに記録されます。Coworkのセキュリティ保護と管理にはMicrosoft Purviewを使えると案内されており、自動タスクの活動にはPurviewのデータセキュリティとコンプライアンスのポリシーが適用されます。

Purviewのポリシー設計には専門的な知識が要るため、まずは、監査ログを誰が、どのくらいの頻度で、何を目的に見るかを決めておくことから始めるとよいでしょう。例えば、社外への送信に関するトラブルがあったときに誰が確認するか、を決めるだけでも、ログがある意味が生まれます。

ブラウザー操作の管理

Coworkは、社員の端末のMicrosoft Edgeで、社員がすでにサインインしているサイトを使ってWebの作業を進められます。ブラウザーのタブは社員のパソコンで動くので、会社がすでに社員に当てている条件付きアクセス、DLP(情報漏えい対策)、閲覧のポリシーがそのまま引き継がれます。

  • ブラウザーを使えるかどうか:管理センターの[Cowork Browsing]のテナント設定で、組織としてオン・オフできます。
  • アクセスできるサイト:Microsoft Edgeで組織が当てている許可リスト、ブロックリスト、表示のみのポリシーが、Cowork経由のアクセスにも当てはまります。
  • 監査:Coworkが始める各ブラウザー タスクは、統合監査ログに記録されます。

社員がサインインしたままの業務システム(経理システムや顧客管理など)をCoworkが操作できるということは、便利さと同時に影響の大きさも意味します。試験導入の段階では[Cowork Browsing]をオフにしておき、メールや文書作成の使い方が定着してからオンにする、という段階の踏み方も選択肢です。

モデルの管理:Anthropicのモデルとプレビューのモデル

管理者は、管理センターの[Copilot 設定]でAnthropicのモデルファミリーをオフにできます。Anthropicの有効化をユーザーやグループの範囲で指定できるかについては、Microsoft Learnの中で記述が分かれています。管理者向けページは範囲を指定できるとする一方、アクセス制御のページはモデルの設定がテナント全体に適用されるため一部のユーザーにモデルを付与する用途には使えないとしています。設定の前に、自社の管理センターの表示を確かめてください。また、Microsoft Learnの管理者向けページは、モデルの設定はCoworkを使えるかどうかを変えず、オフにすると社員はGPTモデルなどほかのモデルで作業を続け、自動の選択も残りのモデルから選ぶと説明しています。なお、Copilot Credits Guide(2026年9月版)は前提条件にテナントでのAnthropicの有効化を挙げており、公式資料の間で記述が分かれています。

取引先との契約や社内規程で、使ってよいAIの提供元が決まっている会社は、モデルの設定で提供元を絞り、アクセスは支出ポリシーで絞る、というように、2つの設定を役割どおりに使い分けます。公式FAQによると、一部のプレビューのモデルは既定でオフで、管理者がオンにしたときだけ表示され、データ保持が必要になるモデルもあります。プレビューのモデルを有効にするかは、データの扱いを確かめてから判断しましょう。

確認をツールごとに重ねず、AIの入口を会社で一つにする

AIツールが増えるたびにセキュリティを確かめ直していると、どこかで確認が抜けます。UPGEAR AI(アップギアAI)は、ChatGPT・Claude・Gemini・Perplexityを1つの契約で使える法人向けサービスです(人数無制限)。

Coworkの止め方|社員単位・会社全体

Coworkを止める方法は、止めたい範囲によって変わります。上限を下げる、表示を消す、モデルを切る、のどれもアクセスを止める方法ではない、という前提を押さえたうえで、公式ドキュメントが示す方法を整理します。

特定の社員だけを止める

  • Coworkを選んだ支出ポリシーの対象から外す:その社員が入っているセキュリティ グループから外すか、ポリシーの対象グループを見直します。すべてのユーザーを対象にしたCoworkのポリシーが残っていないかも確認します。
  • Copilotの機能から除外するセキュリティ グループに入れる:公式FAQは、特定のユーザーに対して無効にする方法として、Copilotのエクスペリエンスから除外するように構成されたセキュリティ グループにユーザーを追加する、と案内しています。退職予定者や、一時的に利用を止めたい社員に使えます。

社員が別の部署のグループへ移った場合でも、月の消費量は引き継がれます。止める目的でグループを移すのではなく、Coworkを選んだポリシーの対象に入っているかどうかで判断します。

会社全体で止める、配布を止める

  • Coworkを選んだ支出ポリシーからCoworkを外す、またはポリシーを削除する:すべてのポリシーでCoworkが選ばれていなければ、誰もアクセスできません。削除の前に、ほかのポリシーが当てはまる社員がいないかを確認します。
  • Microsoft Copilotアプリの自動インストールを無効にする:公式FAQによると、管理者はMicrosoft 365 Apps 管理センターで自動インストールを無効にしたり、Microsoft Intune、構成マネージャー、グループ ポリシーで配布を管理したりできます。
  • Copilot設定で利用の可否(可用性)を管理する:管理センターのCopilot設定で、組織内のユーザーの利用の可否(可用性)を管理できると案内されています。

社員に使わせたくない理由が費用なのか、情報の扱いなのかで、選ぶ方法は変わります。費用が理由なら上限とアラートの見直しと対象の絞り込み、情報の扱いが理由なら対象から外すことに加えて、権限設定やブラウザー操作の設定の見直しが必要です。

Coworkが表示されない・使えない時の確認リスト

社員からCoworkが出てこないと言われたら、ライセンス、支出ポリシー、表示の設定、請求方法、地域の順に確かめると原因を切り分けやすくなります。公式ドキュメントの記載にもとづく確認リストです。

Coworkが表示されない時の確認と、アクセスの要求が届く仕組み

  • 1. Microsoft 365 Copilotのライセンスが割り当てられているか前提条件の1つ目です。Copilot Chatだけの社員はCoworkの対象になりません。管理センターのユーザーの画面で、アクティブなMicrosoft 365 Copilotライセンスが付いているかを確認します。
  • 2. Coworkを選んだ支出ポリシーの対象に入っているかCopilot > Cost Management > Configurationで、すべての支出ポリシーを確認します。対象(直接、すべてのユーザー、セキュリティ グループのいずれか)に含まれ、エージェントとサービスの選択でCoworkが選ばれているポリシーが1つもなければ、その社員は使えません。
  • 3. 使用量ベースの課金が有効になっているか[開始する]から[アクティブ化]までを済ませていなければ、Coworkは使えません。
  • 4. 請求方法(Azureサブスクリプション)がつながっているか課金にはAzureサブスクリプションの接続が必要です。請求方法の設定は、グローバル管理者か課金管理者しかできません。
  • 5. 月の上限に達していないか上限に達した社員は、月の1日にリセットされるまで使えません。社員に /cost で使用量を見てもらうか、消費タブのユーザー ビューで確認します。
  • 6. 検出の設定表示範囲だけを決める設定です。オフでも、Coworkを選んだ支出ポリシーの対象の社員は使えます。表示されないが使えるはず、という場合の確認に使います。
  • 7. すべてのエージェントの画面の設定は関係ないFrontierのころの許可・ブロックの設定は、一般提供後はアクセスを決めません。ここを直しても解決しないので、支出ポリシーを確認します。
  • 8. Anthropicがサポートする地域か公式FAQは、Coworkの利用とアクセスが現在Anthropicがサポートする地域に限定されている、と説明しています。
  • 9. ブラウザーと開き方推奨はMicrosoft EdgeかGoogle Chromeです。m365.cloud.microsoftを開き、上部の[チャット]の横の切り替えで[コワーク]を選んでいるかを確認します。

もう1つ、社員から、Coworkの画面にアクセスを求める操作が出てきた、と言われることがあります。公式の管理者向けページによると、管理者がCoworkを社員に表示する設定にしていて、使用量ベースの課金をまだ有効にしていない場合、社員はアプリから直接Coworkへのアクセスを要求できます。管理者は、ポリシー、費用、コンプライアンスにもとづいて要求を確認し、承認する必要があります。つまり、この要求は社員が勝手に使い始めるものではなく、管理者に判断を求める申請です。要求が届いたら、社内に出す前に決める項目が済んでいるかを確かめてから対応しましょう。

支出ポリシーの対象外の社員や、上限の引き上げを求める社員からの要求は、Cost Managementの[クレジット要求]ページに届きます。社内の申請フローに乗せたい場合は、前の節で説明した要求ポリシーのリダイレクトURLを使います。

管理者が陥りやすい7つの思い込みと、公式ドキュメントの答え

Coworkの管理で起きやすい失敗は、ほかの機能の設定の感覚をそのまま当てはめることから生まれます。公式ドキュメントの記載と照らし合わせて、よくある思い込みを7つ整理します。社内で設定を任せる担当者と、この節を読み合わせておくと、設定の食い違いを防げます。

思い込み1:ライセンスを割り当てた人だけが使える

Microsoft 365 Copilotのライセンスは前提条件ですが、それだけでは使えず、逆にライセンスを持つ社員のうち誰が使えるかは支出ポリシーで決まります。既定の支出ポリシーを全ユーザーのまま有効にすると、ライセンスを持つ社員は全員が対象になります。ライセンスの割り当てと、Coworkの利用許可は別の設定だと考えてください。

思い込み2:上限を小さくすれば、実質的に使わせないのと同じ

公式ドキュメントは、1クレジットの上限でもアクセス権が付与されると明記しています。上限を小さくするのは、使える社員の支出を抑える設定であって、使えない社員を作る設定ではありません。とくに、全ユーザーを対象に小さな上限のポリシーを作り、別にパイロット用のポリシーを作る組み方は、全社員に使わせる設定になります。

思い込み3:Coworkの表示を消せば、使えなくなる

検出の設定は表示範囲だけを決めるもので、アクセスは決めません。公式ドキュメントによると、Coworkを選んだ支出ポリシーの対象の社員は、検出がオフでも使えます。表示を消すのは、対象外の社員が迷わないようにするための設定、と位置づけるのが正確です。

思い込み4:Frontierのころに作った許可リストが今も効いている

エージェント > すべてのエージェントの画面にあるCoworkの項目は、一般提供後はアクセスの制御として廃止されています。項目は残っていても、その設定は誰がCoworkを使えるかに影響しません。Frontierに参加していた会社は、許可リストの社員をセキュリティ グループにまとめ、支出ポリシーに作り直す必要があります。

思い込み5:前払いのクレジットを使い切れば、そこで止まる

P3の前払いクレジットや容量パックは、使い切ると自動的に従量課金制で続きます。公式ドキュメントは、P3は従量課金制の上に重なる仕組みで、別々の請求オプションではないと説明しています。支出を止めるのは、あくまで支出ポリシーの上限です。前払いの額を予算の上限と考えていると、想定より請求が増えることがあります。

思い込み6:社員が部署を移れば、使える量がリセットされる

社員が月の途中でEntra IDのグループを移ると、新しいグループの支出ポリシーが有効になりますが、それまでの消費は引き継がれます。公式ドキュメントは、グループやポリシー間を移しても消費量はリセットされないと説明しています。部署異動のたびに上限の枠が増えることはありません。

思い込み7:支出ポリシーを消せば、対象だった社員は使えなくなる

支出ポリシーを削除すると、その上限で管理されなくなるだけで、ほかのポリシーがグループ経由で当てはまる社員は、そのポリシーのもとで使い続けます。社員を対象から外したいときは、Cost Managementの[構成]タブで、Coworkを選んでいるすべてのポリシーの対象を確かめます。公式ドキュメントのアクセス制御のページが示すとおり、判断の出発点はいつも、その社員がCoworkを選んだ支出ポリシーの範囲に1つでも入っているかどうかです。

社内に出す前に決める12項目

Coworkを社員に使わせる前に決めることは、誰が使えるか、いくらかかるか、どう止めるか、の3つに分けると整理しやすくなります。ここまでの内容を、管理者が上から順に確認できるチェックリストにまとめました。

誰が使えるか

  • 1. 最初に使う社員を決め、セキュリティ グループを作ったか支出ポリシーに特定の社員を入れるには、セキュリティ グループを通します。試験導入なら数名から始めます。
  • 2. 既定の支出ポリシーの対象を、[アクティブ化]の前に絞ったか既定のままでは組織全体・すべてのユーザーが対象です。[セットアップ構成のカスタマイズ]で特定のグループに切り替えます。
  • 3. Coworkを選んだポリシーで、すべてのユーザーを対象にしたものが残っていないか上限が1クレジットでも、対象の社員は全員使えます。
  • 4. 個人用アカウントでの業務利用をどう扱うか決めたか個人用アカウントのCoworkはプレビューで、会社の支出ポリシーや監査の外で使われます。

いくらかかるか

  • 5. 請求方法(Azureサブスクリプション)を、部署別にするか全社1つにするか決めたかポリシーを作った後は変えられず、作り直しになります。
  • 6. 月の上限と1人あたりの上限を、ドルと円の両方で決めたか計算式は、クレジット数 × 0.01ドル × 為替レート。前提の為替を稟議書に明記します。
  • 7. アラートのしきい値と通知先を決めたか上限は非同期で効くため、早めのしきい値にし、経理の担当者も通知先に入れます。
  • 8. 新しいサービスの自動適用をオンのままにするか決めたか全社向けのポリシーはオフにし、新しいサービスは確認してから追加する運用が目安です。

どう止めるか、どう確認するか

  • 9. 承認のドロップダウンで確認を省いてよい範囲を決めたか社外宛ては毎回承認、ドメイン単位の省略は自社ドメインだけ、などの線引きを文章にします。
  • 10. 自動タスクの事前承認と登録のルールを決めたか社外宛ての送信を含む自動タスクは事前承認を使わない、作ったら情シスに登録する、など。
  • 11. 止めたい社員が出たときの手順を決めたか支出ポリシーの対象から外す、またはCopilotから除外するセキュリティ グループに入れる。上限を下げるだけでは止まりません。
  • 12. 消費と監査ログを誰がいつ見るかを決めたか消費タブは2時間ごと、概要タブは4時間ごとに更新されます。試験導入の最初の月は週1回の確認日を決めます。

このほか、ブラウザー操作(Cowork Browsing)を最初からオンにするか、プラグインの配布と表示をどこまで許すか、プレビューのモデルを有効にするかも、会社の方針に応じて決めておきます。どれも後から変えられる設定ですが、社員が使い始めてから変えると、案内のやり直しが発生します。

社員への通知文のひな形

設定が済んだら、使い始める社員に向けて、対象者、使ってよい業務、承認の扱い、上限、困ったときの連絡先を1通で伝えます。以下は公式ドキュメントに書かれている仕様だけで組み立てたひな形です。【】の部分を自社の内容に置き換えて使ってください。

件名:Copilot Cowork の試験利用について(対象者のみ)

【対象者】のみなさん

【開始日】から、Microsoft 365 の Copilot Cowork を試験的に使えるようにしました。Cowork は、メールの作成と送信、会議の設定、Word・Excel・PowerPoint・PDF の作成、Teams への投稿などを、みなさんの承認を受けながら代わりに進める機能です。

1. 開き方
ブラウザーで m365.cloud.microsoft を開き、画面上部の[チャット]の横の切り替えで[コワーク]を選んでください。Outlook、Teams、Copilot のデスクトップ アプリとモバイル アプリでも使えます。

2. 使ってよい業務
【例:社内会議の準備資料の作成、自分の受信トレイと予定表の整理、社内向け報告書の下書き】
顧客の個人情報を含む資料、【社外秘の区分】の資料を扱う作業には使わないでください。

3. 承認ボタンの扱い
Cowork はメールの送信、Teams への投稿、予定の作成の前に確認画面を出します。社外宛てのメールは、毎回本文と宛先を確認してからボタンを押してください。ボタン横のドロップダウンで以後の確認を省く操作は、【自社ドメイン宛てのみ】に限ります。定期実行やメールをきっかけに動く自動タスクを作るときは、送信の事前承認を使わず、作成後に【情シス窓口】へ知らせてください。

4. 使える量の上限
1人あたり月【○○】クレジットまでです。Cowork の入力欄に /cost と打つと、これまでのおおよその使用量が表示されます。上限に達すると、翌月1日まで使えなくなります。【社員向け通知を設定した場合:上限に近づくとメールでお知らせが届きます。】追加が必要なときは、画面から要求を送るか、【申請先】に申請してください。

5. 知っておいてほしい仕様
・Cowork は、ファイルとメールについては、みなさんが普段開ける範囲でしか読みません。
・PC のデスクトップなどローカルに置いたファイルは扱えません。OneDrive か SharePoint に置いてください(添付としてアップロードはできます)。
・OneDrive や SharePoint のファイルを削除することはできません。
・暗号化されたファイルは読めません。添付は200MB未満です。
・自分で作るカスタム スキルは Microsoft が検証しないため、結果をよく確認してください。
・作業は途中で一時停止、再開、キャンセルができます。

6. 困ったとき・気になったとき
表示されない、思わぬ宛先に送りそうになった、費用が気になる、といったときは【連絡先】まで連絡してください。【試験期間】の終わりに、使ってみた感想と、続けたい業務を聞かせてください。

通知文で大事なのは、禁止事項を並べるより、どこで手を止めて確認するかを具体的に書くことです。Coworkは承認の画面が歯止めになっているので、社員が承認の意味を理解していれば、事故を減らせます。社内のAI利用ルールを別に整える場合は、生成AIガイドラインの作り方の記事も参考にしてください。

試験導入の最初の30日の進め方

試験導入の最初の30日は、使い方を覚える期間であると同時に、費用と承認のルールが現実に合っているかを確かめる期間です。週ごとに見る画面と決めることを、ここまでの設定を前提に並べます。

1週目:設定の確認と、最初のタスク

試験に参加する社員に通知文を送り、全員がCoworkを開けるかを確かめます。開けない社員がいれば、確認リストの順に原因を切り分けます。同時に、管理者はCost Managementの[構成]タブで、Coworkを選んだポリシーが試験用のグループだけを対象にしているかをもう一度確認します。

最初のタスクは、社外に何も送らない仕事にします。会議の準備資料を作る、自分の予定表を整理する、といった依頼で、承認画面がどのタイミングで出るか、作ったファイルがOneDriveのどこに保存されるかを、参加者に体験してもらいます。

2週目:使用量の見方をそろえる

参加者に、1週目に使ったタスクで /cost を打ってもらい、おおよその使用量を共有してもらいます。管理者は消費タブのユーザー ビューとエージェントとサービスのビューで、同じ期間の数字を確認します。消費タブは2時間ごとの更新なので、数字の比較は同じ日の同じくらいの時刻にそろえると混乱しません。

ここで、どんな依頼の書き方だとクレジットが多くかかったかを話し合います。公式ドキュメントが示すとおり、消費はモデル、ランタイム、コンテキスト、ツールの組み合わせで変わるので、読み込ませたファイルの量や、推論の労力レベルの違いが数字に出ていないかを見ます。

3週目:承認のルールと自動タスクを試す

社内宛てのメール送信や、Teamsへの投稿を、承認画面を通して試します。承認画面で内容を直した例があれば記録し、承認のドロップダウンで省いてよい範囲の線引きが現実的かを確かめます。定期実行を試す場合は、自分宛てのブリーフィングのように影響の小さいものにし、作ったら情シスに登録するルールも実際に回してみます。

4週目:費用の見積もりと、広げるかの判断

1か月分の消費を、ポリシー全体と1人あたりで確認し、前に示した計算式で円に換算します。前提の為替を明記したうえで、全社や別の部署に広げた場合の月の費用を見積もり、上限とアラートのしきい値を見直します。アラートが何回届いたか、上限に達した社員がいたか、クレジット要求が何件来たかも、判断の材料になります。

広げると決めた場合は、部署ごとのグループを支出ポリシーに順に加え、1部署ずつ翌月の消費を確かめながら進めます。広げないと決めた場合も、試験で作ったポリシーの対象からCoworkを外すか、ポリシーを削除し、ほかにCoworkを選んだポリシーが残っていないかを確認して終わります。試験の結果は、次に新しいAIの機能を検討するときの社内の判断材料として残しておきましょう。

会社の規模別の進め方

同じCoworkでも、社員数と管理の体制によって、最初の一歩の置き方は変わります。社員10〜200名の会社を3つの規模に分け、ここまでの設定をどの順で進めるかの例を示します。いずれも、Microsoft 365 Copilotのライセンスをすでに持っている前提です。

社員10〜30名:経営者と総務の2人で始める

この規模では、情シスの専任がいないことが多く、設定も運用も少人数で回すことになります。最初の試験は、経営者と総務の担当者の2〜3名に絞るのが現実的です。支出ポリシーは試験用のセキュリティ グループを対象にした1本だけにし、[新しいサービスの自動適用]はオフ、1人あたりの上限は小さめに置きます。

試す仕事は、経営会議の準備資料、取引先への定型連絡の下書き、月次の数字をまとめた社内向け報告書など、結果を自分で確かめやすいものにします。1か月使ってみて、/costで見た使用量と、消費タブの数字を並べ、どの仕事に何クレジットかかったかの感触をつかみます。その数字を、前に示した計算式に当てはめて、全社に広げた場合の月の費用を見積もります。

この規模で気をつけたいのは、設定した人しか仕組みを分からない状態になることです。支出ポリシーの名前、対象グループ、上限、請求方法、通知先を1枚のメモにして、Microsoft 365の管理者アカウントの情報と一緒に保管しておきましょう。

社員30〜100名:部署を1つ選んで試験導入する

この規模では、部署ごとに仕事の性質が違うため、まず1つの部署で試すと効果と費用の関係が見えやすくなります。例えば、会議の多い営業企画や、報告書づくりの多い管理部門などです。支出ポリシーは試験部署用に1本作り、既定のポリシーの対象も試験部署のグループに絞ります。

ロールは、請求方法を経理の責任者(課金管理者)、支出ポリシーを情シス担当(AI 管理者)に分けます。クレジット要求の受け方も試験の段階で決めておき、要求ポリシーのリダイレクトURLで社内の申請フォームに向けておくと、全社展開のときにそのまま使えます。

試験の終わりには、部署の社員に、どの仕事で時間が減ったか、承認画面で止めて直した例があったか、を聞きます。承認画面で内容を直した例は、社内ルールの線引きを見直す材料になります。

社員100〜200名:部署別の請求とルールの文書化から始める

この規模では、費用を部署ごとに説明できるかが大事になります。請求方法をポリシーごとに分けられることを使い、部署別のAzureサブスクリプションで請求を分けるか、全社1本にして消費タブのグループ ビューで按分するかを、最初のポリシーを作る前に経理と決めます。請求方法は作成後に変えられないので、ここで迷ったまま進めないことが大切です。

社員の数が増えるほど、個人の判断に任せる部分を減らす必要があります。承認のドロップダウンの線引き、自動タスクの登録、プラグインの許可の基準を文書にし、通知文と一緒に配ります。監査ログを見る担当と頻度も決め、社外への送信に関する問い合わせが来たときの確認の流れを用意しておきます。

全社へ広げるときも、すべてのユーザーを対象にしたポリシーでいきなり開放するのではなく、部署ごとのグループを順にポリシーへ加えていく形にすると、費用の増え方を月ごとに確かめながら進められます。

会社で安全に使うために、Cowork以外で整えること

Coworkの設定を整えても、会社のAI利用全体が安全になるわけではありません。Coworkは、Microsoft 365の中で、Microsoft 365 Copilotのライセンスを持つ社員が使う機能です。社員の中には、ライセンスを持たない人や、Microsoft 365の外にある生成AIを使いたい人もいます。会社として安全に使うには、Coworkを含めたAIの使い方全体で、次の4つを決めておく必要があります。

1. 誰に、どのAIを、何の仕事に使わせるか:Coworkのように社員に代わって送信まで行うAIと、文章の下書きや調べ物に使うAIでは、任せてよい仕事の範囲が違います。社員の役割ごとに、使ってよいAIと仕事を決めておきます。

2. 利用の記録を会社で管理できるか:誰がいつ、どのAIに何を頼んだかを会社として確認できる状態にします。CoworkならMicrosoft 365の監査ログやCost Managementの消費タブがその役を担います。それ以外のAIでも、同じように記録を残せる環境を選びます。

3. 社員への配布と、やめるときの手順:アカウントの配布、異動や退職のときの停止、上限に達したときの申請先を決めます。個人で契約したAIを業務に使う状態は、会社の記録にも止める手順にも乗らないため、野良AIになりやすい使い方です。

4. 複数のAIの使い分け:Coworkの中でもGPT系とClaude系のモデルが使われているように、仕事によって向くAIは変わります。1つのAIだけに寄せるより、用途ごとに使い分ける前提で、管理の仕組みをそろえておくほうが現実的です。

複数のAIをどう使い分けるかは4つの生成AIの使い分けで、複数のAIを1つの環境でまとめて使う考え方はマルチAIの記事で解説しています。法人向けの生成AIサービスを料金で比べたい場合は、法人向け生成AI 38サービスの料金比較が参考になります。CoworkのようにMicrosoft 365の中で完結する自律型のAIと、社内の別の用途に使うAIを、それぞれどう管理するかを並べて検討すると、会社にとっての全体の費用と手間が見えてきます。

よくある質問

Copilot Coworkとは何ですか?

Copilot Coworkとは、Microsoft 365 Copilotの中で、メールの送信、会議の設定、Word・Excel・PowerPoint・PDFの作成、Teamsへの投稿などの複数ステップの仕事を、社員の承認を受けながら代わりに実行するAIの機能です。質問に答えるCopilot Chatと違い、実際の行動まで進める点が特徴です。

Copilot Coworkの料金はいくらですか?

Microsoft 365 Copilotのライセンスに加えて、Copilotクレジットの使用量に応じた従量課金がかかります。Copilot Credits Guide(2026年9月版)に記載されている単価は1クレジットあたり0.01米ドルで、請求は接続したAzureサブスクリプションに行きます。1ドル=150円で計算した場合、1クレジットは1.5円です。1タスクあたりの消費量は、モデル、ランタイム、コンテキスト、ツールの組み合わせで変わります。

Microsoft 365 Copilotのライセンスがあれば、追加の設定なしで使えますか?

管理者の設定が必要です。公式ドキュメントが挙げる前提条件には、Microsoft 365 Copilotのライセンスに加えて、使用量ベースの課金とCoworkの課金が有効になっていることが含まれます。管理者がMicrosoft 365 管理センターのCopilot > Cost Managementで課金を有効にし、Coworkを選んだ支出ポリシーの対象に社員を入れる必要があります。

支出ポリシーの上限を1クレジットにすれば、社員は使えなくなりますか?

使えなくなるわけではありません。Microsoft Learnは、支出ポリシーは予算だけでなくアクセス制御であり、1クレジットの上限のポリシーでもアクセス権が付与されると説明しています。社員に使わせたくない場合は、上限を下げるのではなく、Coworkを選ぶ支出ポリシーの対象からその社員を外します。

月の上限を設定すれば、それ以上の費用はかかりませんか?

上限はリアルタイムで効く仕組みではありません。公式ドキュメントによると、クレジットの消費と上限の適用は非同期で評価されるため、上限に達した後も1つ以上のタスクを始められる場合があります。上限に達した社員は、月の1日にリセットされるまで使えなくなります。予算を厳密に守りたい場合は、上限を少し低めに置き、アラートを早めのしきい値で設定します。

社員が使った量はどうやって確認できますか?

社員はCoworkで /cost と入力すると、おおよそのクレジット使用量を確認できます。管理者はMicrosoft 365 管理センターのCopilot > Cost Managementの概要タブと消費タブで、支出ポリシー、ユーザー、グループ、エージェント、サービスごとの使用状況を確認できます。消費タブは2時間ごと、概要タブは4時間ごとに更新されます。

Coworkが表示されないのはなぜですか?

主な確認点は、Microsoft 365 Copilotのライセンスが割り当てられているか、Coworkを選んだ支出ポリシーの対象に入っているか、使用量ベースの課金が有効か、請求方法のAzureサブスクリプションがつながっているか、月の上限に達していないか、です。表示の設定(検出の設定)は表示範囲だけを決める設定で、エージェント > すべてのエージェントの画面の設定は一般提供後はアクセスを決めません。

Coworkはメールを勝手に送信しませんか?

公式ドキュメントは、Coworkはユーザーの承認なしにアクションを実行しないと説明しています。メールの送信、Teamsへの投稿、会議のスケジュール設定などの前に、内容のプレビュー付きの承認画面が出ます。ただし、ボタン横のドロップダウンで、以後の確認を特定の受信者のみ、ドメインのみ、常にスキップ、の範囲で省くこともできるため、どこまで省いてよいかを社内ルールで決めておくことが大切です。

Anthropicのモデルをオフにすれば、Coworkを止められますか?

Microsoft Learnの管理者向けページは、Anthropicのモデルファミリーをオフにするのはモデルの制御であり、ユーザーがCoworkにアクセスできるかどうかには影響しないと説明しています。オフにすると、社員はGPTモデルなど組織で許可されている他のモデルで作業を続けるとされています。なお、Copilot Credits Guide(2026年9月版)は前提条件にテナントでのAnthropicの有効化を挙げており、公式資料の間で記述が分かれています。止めるには、Coworkを選んだ支出ポリシーの対象から外すか、Copilotから除外するセキュリティ グループに入れます。

Coworkが扱えないファイルはありますか?

公式FAQによると、デバイスにローカルに保存されたファイルにはアクセスも編集もできず、対象はOneDriveとSharePointのファイルです。暗号化されたファイルは、社員にアクセス権があっても読み取れません。添付ファイルは200MB未満にする必要があります。また、OneDriveやSharePointのファイルやフォルダーを削除することはできません。

事前購入(P3)は買ったほうが得ですか?

使う量によります。Copilot Credits Guide(2026年9月版)によると、P3は1年分の前払いで、割引は30万クレジットの5%から3億クレジットの20%までの段階があり、使い残したクレジットは購入から1年の期間の終わりに失効します。利用量がまだ分からない段階では従量課金制で始め、数か月の実績を見てから判断するのが無理のない進め方です。

個人のMicrosoft 365アカウントでもCoworkは使えますか?

個人用アカウントのCoworkはプレビューの段階で、対象となるMicrosoft 365サブスクリプションを持つ個人用Microsoftアカウントでサインインして使うと案内されています。会社の業務に個人のアカウントで使うと、会社の支出ポリシーや監査の外での利用になるため、社内ルールで扱いを決めておく必要があります。

まとめ

Copilot Coworkは、社員の承認を受けながら、メール、会議、文書作成、Teamsへの投稿といった仕事を代わりに進めるAIです。会社で社員に使わせる前に、管理者が決めることは3つに集約できます。

  • 誰が使えるか:Coworkを選んだ支出ポリシーの対象範囲で決まります。上限が1クレジットでも対象の社員は使えます。既定の支出ポリシーは全ユーザーが対象なので、[アクティブ化]の前に[セットアップ構成のカスタマイズ]で試験用のグループに絞ります。
  • いくらかかるか:Microsoft 365 Copilotのライセンスに、1クレジット0.01米ドルの従量課金が上乗せされます。円の費用は、クレジット数 × 0.01ドル × 為替レートで、為替を前提として明記して計算します。上限は非同期で効くので、アラートを早めに置きます。
  • どう止めるか:支出ポリシーの対象から外すか、Copilotから除外するセキュリティ グループに入れます。上限を下げる、表示を消す、Anthropicのモデルを切る、はどれもアクセスを止める方法ではない、とMicrosoft Learnは説明しています(AnthropicについてはCopilot Credits Guide(2026年9月版)の前提条件の記述と分かれています)。

あわせて、請求方法はポリシー作成後に変えられないこと、新しいサービスの自動適用が既定でオンであること、承認画面で確認を省ける範囲を社内ルールで決めることも、社内に出す前に押さえておきたい点です。Microsoft 365 Copilot全体のライセンスや機能は親記事で、ほかのテーマの解説はAI活用コラムの一覧でまとめています。

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