学習塾のAI活用。教材・保護者連絡・面談記録と生徒情報の線引き

学習塾のAI活用とは、確認テストのたたき台や保護者への連絡文、面談記録の下書きなど、塾の事務と授業準備を生成AIに手伝わせる使い方のことです。教材や連絡文の下書きはAIに任せ、生徒を特定できる情報は入れずに、塾として管理した環境で使う形が現実的な落としどころになります。個人情報保護法と個人情報保護委員会の注意喚起を土台に、何を入れてよいかを業務ごとに線引きし、そのまま貼れる指示文も載せました。AI導入の一般的な進め方や補助金は中小企業のAI導入の進め方にまとめてあるので、あわせてご覧ください。

塾の事務負担と属人化を、AIでどこまで軽くできるか

AIで軽くできるのは、授業の外側にある書く仕事と整える仕事で、生徒と向き合う時間そのものは人の手に残ります。個別指導の教室でも集団塾の校舎でも、教室長の一日を思い浮かべると、授業の合間に保護者へのLINEやメールの返信、欠席の振替の調整、確認テストの準備、講師のシフト調整が重なっていることが多いでしょう。定期テストの前や講習の申込の時期には、案内文やお知らせづくりがさらに積み上がってしまいます。

講師の側にも事情があります。アルバイト講師の多い塾では、学期の区切りで講師が入れ替わり、そのたびに授業の進め方や報告書の書き方を教え直すことになります。面談の記録が教室長の頭の中やノートにしかなく、担当が替わると生徒の経緯が引き継がれない、という属人化も起こりやすい部分です。

AIは講師の代わりではなく、下書きと整理の係

AIに渡すのは、最初の一稿と、散らかったメモの整理までと決めておくと現場の迷いが減ります。生徒のつまずきを見抜く、保護者の不安を聞き取る、志望校を一緒に考えるといった判断は、講師と教室長の仕事として残しておきましょう。AIの文はもっともらしい間違いを含むことがあるので、生徒や保護者に出す前に、必ず人が読む前提で使ってください。

AIに渡しやすい仕事 確認テストのたたき台、保護者への連絡文の下書き、面談メモの整理、講習の案内文、研修資料の骨組みが当てはまります。
人に残す仕事 成績の評価、進路の助言、保護者への最終的な返事、退塾の相談への対応は、講師と教室長が受け持ちます。

実際に、生徒と向き合う時間を増やすためにAIを使う、という順番で考えると、講師にも保護者にも説明しやすくなります。

生徒・保護者の情報をAIに入れてよいかの線引き

生徒の氏名や在籍校、点数の生データは入れず、「生徒A」「中2」「前回比で12点上がった」のように置き換えてから入れるのが基本の形になります。塾が預かる情報には、成績や面談での発言だけでなく、家庭の事情や健康、発達のことまで含まれる場合があります。どれも保護者が塾を信頼して伝えたものなので、AIに入れる前に一度立ち止まる仕組みを作っておきましょう。

生徒・保護者の情報の線引き表

塾で扱う情報を項目ごとに、AIへの入れ方で3つに分けました。要配慮個人情報に当たりうるものや、生徒の特定につながるものは「入れない」に寄せてあります。

情報AIへの入れ方置き換えの例・注意
生徒・保護者の氏名入れない「生徒A」「保護者様」「お子さま」に置き換えます。下の名前やあだ名も同じ扱いです
連絡先(電話・メール・住所・LINEのID)入れない文面づくりに要らないので、最初から入れません
塾の生徒番号・会員ID入れない塾のシステムと突き合わせると本人が分かるため入れません
家庭の事情(離婚・経済状況・きょうだいの事情など)入れない文面に要る場合も「ご家庭の事情」とだけ書き、中身は人が補います
健康・病歴・発達に関わること入れない要配慮個人情報に当たりうる情報です。診断名・通院・服薬・学習上の配慮の申し出は入れません
顔写真・教室での写真入れないチラシの文づくりでも写真は渡さず、文だけを作らせます
生徒の在籍校(生徒の情報としての学校名)置き換えれば入れてよい「市内の公立中」「私立の中高一貫校」などに。在籍校・学年・部活がそろうと特定につながります
テストの点数・偏差値置き換えれば入れてよい点数表は貼らず、「前回比で12点上がった」「平均点前後」と言い換えます
成績の推移置き換えれば入れてよい「1学期から上がり調子」「英語だけ下がり気味」のように傾向に直します
面談での発言置き換えれば入れてよい要点に直し、家庭や健康に触れる部分を消してから入れます
志望校置き換えれば入れてよい「県立の上位校」「第1志望は私立」など幅を持たせます。在籍校と同時に入れません
答案・ノートの画像置き換えれば入れてよい氏名・学校名・生徒番号を隠してから入れます
学校名・教科書(教材づくりの条件として)そのまま入れてよい「◯◯中の2学期中間の範囲に合わせる」のような教材の条件なら入れられます。生徒の名前や成績と同じ会話には入れません
学年・教科・単元そのまま入れてよい「中2・数学・連立方程式」程度なら特定につながりにくい情報です

※線引きは、個人情報保護法と個人情報保護委員会の注意喚起(2023年6月2日)をもとに、塾の業務に合わせて整理した目安です。法的な判断が要る場面では、顧問の弁護士などにご確認ください。確認日は2026年10月16日です。

個人情報保護法で押さえる条文

塾の業務に関わりが深いのは、個人情報保護法の第17条・第18条・第20条第2項・第23条・第27条・第28条です。利用目的を特定し(第17条)、その範囲を超えて扱わず(第18条)、要配慮個人情報は原則として本人の同意なく取得せず(第20条第2項)、漏えいなどを防ぐ安全管理の措置を取る(第23条)、というのが基本の流れになります。第三者への提供は本人の同意が原則で(第27条)、業務の委託は第三者への提供に当たらないという定めが同じ条の第5項にあります。外国にある第三者への提供に、原則として本人の同意を求めているのが第28条です。海外の事業者のAIに個人データを入れると、この条の確認が要ります。線引き表のとおり生徒を特定できない形に置き換えてから入れるのが、塾にとって手間の少ない対処です。条文の全文は、e-Govの法令検索で読むことが出来ます。入塾の書類に書いている利用目的に、AIを使った文書づくりがどう収まるかを、本部で一度確かめてみてください。

個人情報保護委員会の注意喚起(2023年6月2日)

個人情報保護委員会は、2023年6月2日に「生成AIサービスの利用に関する注意喚起等について」を公表しています。事業者に向けては、個人情報を含むプロンプトを入力するなら、特定した利用目的の達成に必要な範囲内かを十分に確かめるよう求めました。あわせて、本人の同意なく個人データを含むプロンプトを入力し、その個人データが応答の出力以外の目的で扱われると、法律の規定に違反するおそれがあると示しています。そのため、提供事業者が個人データを機械学習に使わないことなどを十分に確認するように、というのが委員会の呼びかけです。

原文は個人情報保護委員会のページで読むことが出来ます。塾に当てはめると、講師個人の無料アカウントに面談メモを貼る使い方は、この確認が取れていない状態になってしまいます。

子どもの同意は12歳から15歳までが目安

何歳から本人の同意でよいかについて、個人情報保護委員会はQ&Aで一般的な目安を示しています。対象の項目や事業の性質で個別に判断すべきとしたうえで、一般的には12歳から15歳までの年齢以下の子どもは、法定代理人などから同意を得る必要があると考えられる、という説明です。小学生と中学生が中心の塾では、同意を取る相手が保護者になる場面が多いでしょう。詳しくは個人情報保護委員会のQ&A 1-62で確かめてください。

この表を講師全員が同じように守れるかは、使っているAIの環境にも左右されます。教室ごと、講師ごとに使うAIがばらばらだと、線引きが守られているかを本部が確かめる手段がなくなってしまいます。

教材と授業準備:確認テストから講師研修まで

教材づくりでAIに任せられるのは問題のたたき台と解説の下書きで、正誤と難易度の判断は講師が持ちます。業務ごとに、入れる材料、そのまま貼れる指示文、出てくる文の例、人が必ず確かめる点の順に並べました。

定期テスト前の類題・確認テストづくりと著作権の注意

入れる材料は、教科書の単元名と範囲、生徒がつまずいた問題の型の3つで足ります。塾のプリントや市販の問題集の問題文をそのまま貼るのではなく、「連立方程式の文章題で、代金と個数の型」のように型を言葉で伝えるのがコツになります。

【指示文1:定期テスト前の確認テスト】
あなたは中学2年生の数学を教える塾講師です。
次の条件で、定期テスト前の確認テストを作ってください。

・単元:連立方程式の利用(文章題)
・範囲:「代金と個数」「速さ・時間・道のり」の2つの型
・問題数:基本4問、少し難しい問題2問の計6問
・生徒のつまずき:式は立てられるが、どの量をxとyに置くかで迷う
・各問題に、解答と、式の立て方の短い解説(3行以内)をつける
・答えは整数になるように数値を選ぶ
・市販の問題集や入試問題の文章をそのまま使わず、場面と数値は新しく作る
・最後に、講師が採点するときに見るポイントを3つ

たとえば、次のような問題と解説が返ってきます。

【出てくる文の例】
問1 1個120円のりんごと1個80円のみかんを合わせて15個買ったところ、代金は1,560円でした。りんごとみかんを、それぞれ何個買いましたか。

解答 りんご9個、みかん6個

解説 りんごをx個、みかんをy個とします。個数の式は x+y=15、代金の式は 120x+80y=1,560 です。1つ目の式を80倍して引くと 40x=360 となり、x=9、y=6 が求まります。
  • 講師が自分で解いて答えを確かめるAIの解答や途中式には誤りが混ざることがあります。割り切れない数値や、現実にありえない場面がないかも見ます。
  • 学校の教科書の範囲と用語に合っているかまだ習っていない解き方や、学校と違う呼び方が入っていないかを確かめます。
  • 市販の教材の問題に似すぎていないか場面と数値の組み合わせが、手元の問題集とほぼ同じになっていないかを見ます。

著作権で押さえておきたいのは、AIに作らせた問題であっても、元にした問題集や過去問の文章に似すぎていれば、問題になるおそれがあるという点です。市販の問題集の問題文を丸ごと入れて数字だけを替えさせ、塾のプリントとして配る使い方は避けましょう。迷う教材は出版社の利用条件を確かめ、入試問題のように出典のある文章の扱いは、塾の中で決めておいてください。

講師研修・授業マニュアルの骨組みづくり

入れる材料は、教室長が口頭で伝えている授業の流れと、新人講師がつまずきやすい場面のメモです。生徒の個人情報が要らないので線引きの心配が少なく、最初に試すのに向いた業務になります。

【指示文2:新人講師向けの授業マニュアル】
あなたは個別指導塾の教室長です。
アルバイトの新人講師向けに、1コマ80分の個別指導(講師1人に生徒2人)の進め方を、A4で2枚ほどのマニュアルにまとめてください。

・下のメモを、授業の時間の流れに沿って並べ直す
・場面ごとに「やること」「よくある失敗」「声かけの例」を書く
・専門用語は使わず、大学1年生が読んで分かる言葉で書く
・最後に、勤務の初日に確認するチェック項目を10個

【メモ】
授業の最初の5分で前回の宿題を確認する。宿題をしてこない生徒も責めずに理由を聞く。2人を交互に見るので、片方が解いている間にもう片方へ説明する。終わる前に指導報告を書く時間を5分取る。保護者が迎えに来たら教室長に声をかける。
【出てくる文の例】
1.授業の始まり(最初の5分)
やること:前回の宿題を2人分確認し、できていない問題に印をつけます。
よくある失敗:宿題をしてこなかった生徒を、その場で強く注意してしまう。
声かけの例:今週は忙しかった?どこで止まったか、一緒に見てみよう。

2.2人を交互に見る(授業の中ほど)
やること:片方に問題を解かせている間に、もう片方へ説明します。……
  • 塾の指導方針と違うことが書かれていないか声かけの例や宿題の扱いが、教室の決まりに合っているかを見ます。
  • 教室長が決めることをAIに決めさせていないか保護者への対応や緊急時の連絡の手順は、本部や教室長が自分で書き足します。

出来上がったマニュアルは、教室ごとに違う部分だけを書き足せば使えるので、毎学期の研修の準備がずいぶん軽くなるでしょう。

アルバイト講師の私物スマホと個人アカウントという抜け道

塾でAIを使うときに見落とされやすいのが、アルバイト講師が自分のスマホと個人のアカウントで生徒の情報を扱ってしまう経路です。授業後の報告書を早く書き終えたい、保護者への返信の言い回しに迷う、といった場面で、講師が善意で手元のChatGPTに貼ることは十分に考えられます。会社が把握していないところで使われるAIは、野良AIやシャドーAIと呼ばれ、野良AI(シャドーAI)の対策でも取り上げている課題になります。

ChatGPTの無料版やPlusといった個人向けのプランでは、学習に使われない設定を講師一人ひとりが済ませたかを、塾の側から確かめる手段がありません。しかも講師が退職したあとも、個人のアカウントに残った会話の履歴は、塾の手の届かない場所に残り続けてしまいます。

対策は、禁止の一言で終わらせず、代わりに使える場所を塾が用意することです。講師が手元のAIに頼るのは、報告書や連絡文を早く仕上げたいからなので、同じことが出来る環境を塾の管理下に置けば、私物のアカウントに頼る理由は薄れていきます。採用の時点で、生徒の情報を個人のアカウントに入れないことを誓約書や研修で伝え、退職の手続きにもAIのアカウントの扱いを入れておきましょう。私物のスマホを含めた利用の点検には、生成AIのセキュリティ対策チェックリストも参考になります。

講師の私物アカウントに頼らない、塾の使い場所を用意する

講師ごとの個人アカウントをやめ、塾で管理するAIの環境を1つにまとめる方法もあります。UPGEAR AI(アップギアAI)は、ChatGPT・Claude・Gemini・Perplexityを1つの契約で使える法人向けサービスです(人数無制限)。

保護者連絡と問い合わせ:月次報告・体験授業・講習案内

保護者への文はAIの得意分野ですが、送る前に教室長が読み、事実と数字を確かめる工程を外さないことが前提になります。LINEや紙の報告書、メールなど送り方を指示文に書くと、文の長さと硬さがそろってきます。

授業ごとの指導報告(保護者アプリに載せる100字)

個別指導の塾では、アルバイト講師が授業のたびに指導報告を書き、保護者アプリに載せる形を取っているところがあります。授業の終わりの数分で書く報告は、講師が私物のスマホのChatGPTに貼って整えたくなりやすい場面なので、塾の環境で使う指示文を先に配っておきましょう。入れる材料は、その日の単元、できたこと、つまずいたこと、宿題の4つを、名前を書かずにまとめた講師のメモです。

【指示文3:授業ごとの指導報告】
あなたは個別指導塾の講師です。
下のメモをもとに、保護者アプリに載せる今日の指導報告を書いてください。

・全角100字程度
・「今日の内容」「できたこと」「まだ迷うところ」「次回までの宿題」の順に書く
・メモにない事実や、成績が上がるといった約束は書き足さない
・生徒の名前は書かず「お子さま」とする

【メモ】
中1・英語。一般動詞の疑問文。Doを使った疑問文は自分で作れた。三人称単数のDoesはまだ迷う。宿題はワークの24〜25ページ。
【出てくる文の例】
今日は英語で、一般動詞の疑問文を学習しました。Doを使った疑問文は、お子さまが自分で作れました。三人称単数のときに使うDoesは、まだ迷うところがあります。次回までの宿題は、ワークの24〜25ページです。
  • メモと中身が一致しているかできたことを大きく言い換えたり、メモにない励ましの言葉が足されたりしていないかを、書いた講師が読み直します。
  • 私物のスマホで作っていないか報告は塾の環境のAIで作り、保護者アプリへの貼り付けも塾の端末から行う決まりにします。
  • 載せる前に誰が読むかを決めているか新人のうちは教室長が目を通すなど、教室の決まりに合わせます。

保護者への月次の学習報告・連絡文

入れる材料は、講師の指導報告から氏名を「生徒A」に替え、点数を前回比に直したメモになります。学校名や家庭の話が書かれていれば、貼る前に消しておきましょう。

【指示文4:保護者への月次の学習報告】
あなたは学習塾の教室長です。
下のメモをもとに、保護者に送る今月の学習報告を書いてください。

・送り方:LINE(全角250字以内)
・丁寧な敬語で、硬すぎない文にする
・よかった点を先に書き、課題は1つに絞り、次の1か月でやることを最後に書く
・メモにない事実や数字、評価の言葉は書き足さない
・生徒の名前は書かず「お子さま」とする

【メモ】
生徒A(中2)。数学の小テストが前回比で12点上がった。連立方程式の文章題で式を立てられるようになった。英語は単語テストの合格が月4回中2回。来月から授業の最初の10分で英単語を確認する。宿題の提出は毎回できている。
【出てくる文の例】
いつもお世話になっております。今月の学習のご報告です。
数学では、小テストが前回より12点上がり、連立方程式の文章題で自分で式を立てられるようになりました。宿題も毎回提出できています。
英語は、単語テストの合格が今月4回中2回でした。来月から、授業の最初の10分で英単語を確認します。
引き続きよろしくお願いいたします。
  • 点数と回数がメモと一致しているか前回比や合格の回数を、AIが言い換えたり丸めたりしていないかを見ます。
  • メモにない褒め言葉や約束が足されていないか「苦手だった」「姿勢が安定してきた」のような、メモにない評価や、塾が約束していないことが入っていないかを確かめます。
  • 宛名は送信の画面で人が入れる生徒と保護者の名前は、AIの文を貼ったあとに教室長が書き入れます。

集団塾の学年通信(クラス平均と前回比だけで書く)

集団塾では、保護者に届ける文の中心が、学年全体に配る通信になる場合もあるでしょう。個人の名前や点数、順位は出さず、クラス平均と前回比だけを材料にします。成績上位者の名前を載せる習慣がある塾でも、AIに入れるのは集計した数字だけにしてください。

【指示文5:集団塾の学年通信】
あなたは集団指導の学習塾で、中2の学年を担当する教室長です。
下の情報をもとに、中2の保護者全員に配る学年通信(全角200字程度)を書いてください。

・「2学期中間テストの振り返り」「冬に向けた学習のポイント」「ご家庭へのお願い」の順に書く
・下の数字だけを使い、個人の名前・点数・順位は書かない
・平均点をほかの学校やほかの塾と比べる言い方はしない
・情報にない事実や評価は書き足さない

【情報】
5教科合計のクラス平均:前回比で14点上がった。数学のクラス平均:前回比で9点上がった。英語のクラス平均:前回比で3点下がった。英語は長文読解での失点が多かった。12月は英語の長文読解の演習を毎週1回入れる。ご家庭へのお願い:英語の教科書の音読を毎日5分。
【出てくる文の例】
2学期中間テストの振り返り
中2のクラス平均は、5教科合計で前回より14点上がりました。数学は前回より9点上がっています。一方、英語は前回より3点下がり、長文読解での失点が多く見られました。

冬に向けた学習のポイント
12月は、英語の長文読解の演習を毎週1回、授業に入れていきます。

ご家庭へのお願い
英語の教科書の音読を、毎日5分ほど続けられるよう、お声かけをお願いいたします。
  • 数字が本部の集計と一致しているか前回比のプラスとマイナスが入れ替わっていないかまで見ます。
  • 個人が分かる書き方になっていないか人数の少ない学年では、「1人だけ満点」のような書き方でも特定につながります。
  • ほかの学校や塾と比べる言葉がないか平均点の比較は、AIが足していても消します。

体験授業・問い合わせへの返信

問い合わせへの返信は、料金表やコース、空いている時間帯など、塾がもともと公開している情報を材料にします。問い合わせてきた保護者の名前や電話番号は入れず、質問の中身だけを貼りましょう。体験授業の候補日は日付まで人が書き入れ、AIに日付を作らせないのがコツになります。

【指示文6:体験授業の問い合わせへの返信】
あなたは個別指導塾の受付担当です。
下の問い合わせに、メールで返信する文を書いてください。

・最初に、問い合わせへのお礼を書く
・体験授業の日時は、下の候補日の2つだけを示して都合を聞く(日付や時間を新しく作らない)
・料金や入塾の手続きは、体験授業のあとで説明すると伝える
・入塾を急かす言い方や、成績が上がると約束する言い方はしない
・全角300字以内

【塾の情報】
体験授業は無料で1回80分。持ち物は学校の教科書とノート。
候補日:【11月5日(木)19時】【11月10日(火)19時】

【問い合わせの中身】
中3の子どもの数学が苦手で、高校受験に向けて体験授業を受けたい。部活が終わるのが遅いので、平日の夜でも大丈夫か知りたい。
【出てくる文の例】
このたびは体験授業のお問い合わせをいただき、ありがとうございます。
平日は19時からの枠がございます。11月5日(木)19時、または11月10日(火)19時はいかがでしょうか。ご都合のよい日時をお知らせください。
当日は、学校の教科書とノートをお持ちください。料金や入塾の手続きについては、体験授業のあとにご説明いたします。
  • 日時・料金・持ち物が塾の実際の情報と合っているか空き枠は日々変わるので、【 】の候補日は送る直前に予定表と照らし合わせて差し替えます。
  • 合格や成績の向上を約束する言い回しがないか問い合わせへの返事でも、塾が約束できないことは書きません。

講習(夏期・冬期)の案内文とチラシの文

講習の案内では、日程・コマ数・料金の数字を塾の資料から人が写し、AIには読みやすい並びと見出しづくりを任せる分け方が安全です。特に気をつけたいのが、契約に関わる説明になります。

受験対策や学校の補習のための学習塾の契約は、期間が2か月を超え、かつ金額が5万円を超えると、特定商取引法の特定継続的役務提供に当たります。金額には入学金や受講料のほか、教材費や関連商品の代金なども含まれる、と消費者庁の特定商取引法ガイドは説明しています。1か月ごとに更新する月謝制は原則として対象外とされますが、実態によっては対象になり得るため、講習と通常授業をまとめて申し込む形では確かめておきたいところでしょう。AIで書いた案内文やチラシの文だけで済ませず、契約の書面や説明が特定商取引法の決まりに沿っているかは、人が確かめてください。

【指示文7:冬期講習の案内文】
あなたは学習塾の本部で広報を担当しています。
下の情報をもとに、保護者向けの冬期講習の案内文(A4で1枚)を書いてください。

・見出し、講習のねらい、日程、対象学年、料金、申込方法の順に並べる
・日程と締切は、下の情報の数字をそのまま使い、言い換えない
・料金は書かず「別紙の料金表をご覧ください」とする
・合格や点数アップを約束する言い方、ほかの塾と比べる言い方はしない
・最後に、問い合わせ先を書く欄を【 】で空けておく

【情報】
対象:小6〜中3。日程:12月26日〜1月7日(12月31日〜1月3日は休み)。中3は入試対策の演習が中心、中1・中2は2学期の復習と3学期の予習。申込締切:12月15日。
【出てくる文の例】
冬期講習のご案内
2学期の学習を振り返り、新しい学年に向けて土台を固める冬にしませんか。
中3生は入試本番を見すえた演習を中心に、中1・中2生は2学期の復習と3学期の予習を進めます。

日程 12月26日〜1月7日(12月31日〜1月3日はお休み)
対象 小学6年生〜中学3年生
料金 学年とコマ数により異なります。別紙の料金表をご覧ください。
お申込み 12月15日までに教室へお申し出ください。
お問い合わせ 【 】
  • 日程・締切が本部の資料と一致しているか休みの日や締切の日付を、AIが書き換えていないかを見ます。
  • 根拠のない実績や約束の言葉が入っていないか「必ず上がる」「合格保証」のような言葉は、AIが足していても消します。
  • 契約の書面と説明は別に人が用意しているか案内文やチラシは、契約の書面の代わりになりません。

面談記録と退塾の相談:三者面談から次回の準備まで

面談の記録はメモを整える作業にAIが向く一方で、線引き表で「入れない」とした情報が混ざりやすい業務でもあります。録音や手書きのメモを使う前に、人が一度目を通して消す工程を挟みましょう。面談を録音する場合は、録音してよいかを先に保護者に確かめてください。

三者面談・保護者面談の記録と次回の準備

入れる材料は、面談中に取ったメモから、氏名・学校名・家庭や健康に関わる発言を消した要点になります。録音をそのまま文字起こしに回すと雑談の中の家庭の話まで入ってしまうため、文字起こしは塾で管理した環境だけで使い、要約の前に人が不要な部分を消すのが安全です。

【指示文8:三者面談の記録と次回の準備】
あなたは学習塾の教室長です。
下の面談メモを、塾の面談記録の形に整えてください。

・見出しは「面談の要点」「本人の希望」「保護者の希望」「塾が約束したこと」「次回までにやること」「次回の面談で確かめること」の6つ
・メモにない内容は書き足さず、分からない所は【要確認】と書く
・「やる気がない」のような評価や決めつけの言葉は使わず、事実と発言で書く

【メモ】
生徒A(中3)、保護者同席。第1志望は県立の上位校、第2志望は私立の併願。本人は数学の図形が不安と話す。保護者は塾での自習を週2回から3回に増やしたい。模試の数学は前回比で8点上がったが、図形の大問は半分ほど失点。塾からは11月から図形の演習を週1コマ追加すると提案し、保護者も了承。12月の面談で志望校を最終確認する。
【出てくる文の例】
面談の要点:数学の図形への不安を共有し、11月から図形の演習を週1コマ追加することで合意した。
本人の希望:第1志望は県立の上位校。数学の図形に不安がある。
保護者の希望:塾での自習を週2回から週3回に増やしたい。
塾が約束したこと:11月から図形の演習を週1コマ追加する。
次回までにやること:自習を増やす曜日を決める【要確認】。
次回の面談で確かめること:志望校の最終確認。模試での図形の大問の得点。
  • 塾が約束したことと次回の日程が、実際の面談と合っているか約束の中身は、保護者との信頼に直結するので、教室長が必ず読み直します。
  • 【要確認】を人が埋めたか空欄のまま塾のシステムに残さないようにします。
  • 氏名などは塾のシステムに戻すときに人が入れ直すAIの画面には「生徒A」のまま残し、記録の正本は塾のシステムに置きます。

退塾の相談が出たときの面談準備

退塾の相談は、成績の伸び悩みや通い方、塾への不満、費用、ほかの塾との比較、部活や家庭の事情が重なって出てくる場合があり、AIに結論を出させる業務ではありません。一方で、これまでの記録から論点を整理し、面談で聞くことを並べる準備にはAIが役立ちます。家庭や健康に関わる理由が含まれていそうなときは、その部分を「ご家庭の事情」と一語に置き換えて入れてください。

【指示文9:退塾の相談が出たときの面談準備】
あなたは個別指導塾の教室長です。
保護者から辞めることも考えていると連絡があった生徒について、面談の準備メモを作ってください。

・下の記録から、考えられる理由を「成績」「通い方」「塾への不満」「費用」「他塾との比較」の5つに分けて整理する
・記録に手がかりがない分類は「記録になし」と書き、面談で聞く質問だけを挙げる
・それぞれについて、面談で保護者に聞く質問を2つずつ書く
・塾として提案できることを、記録にある範囲で挙げる
・押しつけの引き止めや、教室長の判断なしの値引きの提案は書かない
・理由はあくまで仮説として書き、断定しない

【記録】
生徒B(中1)。4月入塾、週2回。2学期から宿題の未提出が増えた。英語の単語テストの合格が減っている。担当講師が9月に交代。保護者からは部活が忙しくなったと連絡あり(ほかにご家庭の事情もあるとのこと)。
【出てくる文の例(抜粋)】
考えられる理由1(成績):単語テストの合格が減り、伸びを実感しにくくなっている可能性があります。
質問の例:ご家庭では、英語の勉強の様子をどうご覧になっていますか。

考えられる理由2(通い方):部活が忙しくなり、週2回の通塾と宿題の両立が難しくなっている可能性があります。
質問の例:部活のある日とない日で、帰宅の時間はどのくらい違いますか。

考えられる理由3(塾への不満):9月の講師の交代で、授業の進め方が変わったと感じている可能性があります。
質問の例:講師が替わってから、お子さまから授業について何か聞いていますか。

考えられる理由4(費用):記録になし。
質問の例:通塾の回数やコースについて、見直したい点はございますか。

考えられる理由5(他塾との比較):記録になし。
質問の例:ほかの塾や学習の方法も検討されていますか。

塾として提案できること:通塾の曜日や時間帯の見直し、宿題の量の調整、講師の交代についての説明。
  • 理由の整理は仮説として扱う面談では、準備メモを読み上げず、保護者の話を先に聞きます。
  • 値引きや約束は教室長が決めるAIの提案に値引きや特別な約束が混ざっていても、そのまま伝えません。

面談の準備にAIを使うと聞き漏らしは減らせますが、相手の表情や言葉の間合いから本音をくみ取るのは、教室長の仕事のまま変わりません。面談のあとの記録も、線引き表に沿って残すようにしてください。

実名で公表されている塾の生成AI活用

塾が生成AIを使う事例は、事業者自身の発表で少しずつ出てきており、ここで取り上げる2件はどちらも講師の書く仕事を軽くする使い方になります。

城南コベッツ:指導記録をChatGPTで整える実証(2023年12月発表)

城南進学研究社は2023年12月6日、個別指導の城南コベッツで、経済産業省の「未来の教室」2023年度実証事業に採択された取り組みを発表しました。講師が指導内容のサマリーをiPadで録音し、Whisperで文字起こししたものをChatGPTで校正・要約して指導記録にまとめ、学習管理システムで保護者に公開する、という実証です。対象は首都圏の1教場で、期間は2023年12月から2024年1月までの約2か月とされています。発表は、PR TIMESで配信されリセマムに転載された記事で読むことが出来ます。

個別指導学院サクシード:教育向けのスクールAIを全教室へ(2026年6月から)

個別指導学院サクシードを運営するサクシードは、教育向けの生成AI「スクールAI」を全教室の教室長と講師に2026年6月から導入する、と開発元のみんがくが2026年6月8日に発表しています。講師向けに問題集の作成や授業の準備、指導報告書の下書きを支えるもので、入力した内容は外部のAIの再学習に使われないとみんがくは発表の中で記載しており、汎用のChatGPTではなく教育向けの専用サービスを選んだ形になります。発表の全文はPR TIMESのみんがくの発表にあります。

2つの事例から読み取れること

2件とも事業者側の発表で、効果を第三者が検証したものではありません。それでも、指導記録や報告書の下書きという、どの塾にもある書く仕事から始めている点は、規模の小さな塾でもまねしやすいところでしょう。研修の例としては、スクールTOMASで2026年1月から3月にHEROZの生成AI研修を200名超が受講したと、HEROZが2026年4月13日に発表しています。河合塾は、講師の指導ではなく職員の資料検索にソフトバンクの「生成AIパッケージ」を使う事例としてソフトバンクのサイトで紹介されており、使う場面が講師の仕事とは異なります。

AI教材・塾向けサービスと、汎用の生成AIの位置づけ

生徒が使うAI教材と、講師や本部が書く仕事に使う汎用の生成AIは、目的も契約の相手も別のものとして考えると整理しやすくなります。塾のAIの話題で名前が挙がりやすいatama+やMonoxer、すららなどは、生徒の学習そのものを支える教材やアプリの側に入ります。これらは教材として選ぶもので、使うかどうかは指導方針やカリキュラムとの相性で決まります。

サクシードが入れたスクールAIのように、教育の現場向けに作られた生成AIのサービスもあり、講師の書く仕事を支える点では汎用の生成AIと役割が重なります。ChatGPTやClaude、Geminiのような汎用の生成AIは、保護者への連絡文から講習のチラシ、研修資料まで、教室の書く仕事を広く受け持てるのが持ち味です。どれを選ぶにしても、生徒の情報をどこまで入れるかは線引き表で決め、提供事業者が入力を学習に使わないかを契約や設定で確かめておきましょう。各AIの得意分野の違いは、主要4AIの違いと使い分けで詳しく見ることが出来ます。

文科省ガイドラインVer.2.0の校務の考え方を、塾に置き換える

文部科学省の生成AIガイドラインは学校向けで、民間の学習塾は直接の対象ではありませんが、教職員の校務の考え方は塾の事務にも参考になります。文部科学省は2024年12月26日に、「初等中等教育段階における生成AIの利活用に関するガイドライン(Ver.2.0)」を公表しています。読み手として想定されているのは、教職員や教育委員会などの学校教育の関係者です。概要資料の「教職員の校務」の項には、次のような考え方が並んでいます。

  • 重要性の高い成績情報などは、原則として入力しないとされています。塾では、生の点数表や成績の一覧をAIに貼らないことに置き換えられます。
  • 個人情報保護法などを守ることが前提とされ、点検項目では、プロンプトに個人情報を入力していないかを確かめるよう求めています(提供者が入力を応答の出力以外の目的で扱わないと確かめている場合は除く)。塾では、学習に使われない契約や設定を本部で確かめることに当たります。
  • AIサービスの最新の利用規約を確かめて守るよう書かれています。塾では、講師に使わせるサービスを本部が決め、規約の変更に目を配る役になります。
  • 出力を採用するかは必ず教職員が判断する、とされています。塾では、保護者に送る文や配る問題を、講師か教室長が読んでから出す決まりになります。
  • 管理職が利用の状況を確かめる、とされています。塾では、教室長や本部が利用の状況を定期的に見ることに置き換えられます。

利用例として、教材や確認テストのたたき台、お便りや通知文のたたき台、保護者面談の日程調整が挙がっており、塾の業務とよく重なります。児童生徒向けの項では、氏名や写真などの個人情報を入力させないことと、保護者への情報提供の大切さにも触れています。全文は文部科学省のページで確かめることが出来ます。

塾の業界団体である全国学習塾協会のサイトでは、確認日の2026年10月16日時点で、生成AIの指針は見当たりません。業界の指針がないぶん、文科省の考え方を下敷きに、塾ごとにルールを決めておくのが現実的でしょう。

小さく始めて広げる導入の順番と、費用の考え方

導入は、個人情報を使わない業務を1つの教室で試し、ルールを固めてから全教室へ広げる順番が無理のない形になります。

1教室・1業務から始める3か月の進め方

最初の1か月は、講師研修の資料や講習の案内文のように、生徒の情報が要らない業務から始めてみてください。2か月目に、確認テストのたたき台と、氏名を置き換えた月次報告に広げ、どの指示文がうまく働いたかを教室長が記録していきます。3か月目には面談記録の整理を加え、うまくいった指示文と線引き表を本部でまとめて、ほかの教室へ配る流れにします。指示文を教室ごとに作り直さず、本部で1つの型として持っておくと、講師が入れ替わっても同じ品質の文を出せるようになります。

費用の考え方:社員とアルバイト講師を合わせた人数で見積もる

費用は、使う人数と、1人ごとに払う形か会社でまとめて払う形かで大きく変わります。社員だけでなくアルバイト講師にも使わせるなら、教室数と講師の人数を掛け合わせて数えることになり、1人ごとの月額で契約するサービスでは人数がそのまま費用に跳ね返ってしまいます。かといって、費用を抑えるために一部の社員にだけアカウントを配ると、配られなかった講師が個人のアカウントに流れやすくなります。公式の法人プランの料金はChatGPTの法人プランの料金で確かめることが出来ます。法人向けサービスの横並びは、法人向け生成AIサービスの料金比較にあります。見積もりの前に、社員とアルバイト講師を合わせて何人がAIを使うのかを、教室ごとに数えてみましょう。

教室に配るAI利用ルールのひな形と、保護者への説明文

ルールは本部で1枚にまとめ、教室長が新しい講師に渡せる形にしておくと、教室ごとのばらつきが抑えられます。

教室に配るルールのひな形(そのまま使える例)

下のひな形は、使ってよいAIと端末、使ってよい業務、入れない情報、確かめる人、困ったときの連絡先でできています。塾の規模や指導の形に合わせて、【 】の中を書き換えてお使いください。

【【塾名】 生成AIの利用ルール(教室配布用)】

1.使ってよいAI
 塾が用意したAIの環境(【サービス名】)だけを使います。個人のアカウントや私物スマホのAIアプリに、塾の仕事の情報を入れてはいけません。
 塾のAIも、私物のスマホや自宅のパソコンからは開きません(【許可する場合はその範囲】)。アカウントは講師ごとに本部が発行します。

2.使ってよい業務
 確認テスト・プリントのたたき台、保護者への連絡文の下書き、講習の案内文、研修資料、面談メモの整理。

3.入れてはいけない情報
 生徒・保護者の氏名、連絡先、生徒番号、家庭の事情、健康・病歴・発達に関わること、顔写真。

4.置き換えてから入れる情報
 生徒の在籍校は「市内の公立中」、点数は「前回比で◯点上がった」、志望校は「県立の上位校」のように置き換えます(教材の範囲を指定するための学校名は、生徒の名前や成績と同じ会話に入れなければ可)。

5.出す前に必ず人が読む
 保護者に送る文、生徒に配る問題は、【教室長/担当講師】が読んでから出します。

6.教材の扱い
 市販の問題集や過去問の文章をそのまま入れて作り替えたものは配りません。

7.退職するとき
 最終勤務日に、塾のAIのアカウントを【教室長】が停止します。

8.困ったとき・間違えて入れたとき
 すぐに【教室長/本部の担当者と連絡先】へ連絡します。責めることはしません。

制定日・改定日:【 年 月 日】

間違えて入れたときの連絡先と、責めないことを書いておくのは、講師が報告をためらわないようにするためです。社内ガイドライン全体の作り方は、生成AIの社内ガイドラインの作り方も参考になります。

保護者への説明文の例(入塾案内・お知らせに使える形)

保護者への説明は、入塾案内やお知らせに短く添える形が取り入れやすいでしょう。個人情報の利用目的との関係もあるので、入塾時の書類にある利用目的の書きぶりと合わせて、本部で文面を決めてください。

【保護者への説明文の例】
当塾では、教材の作成や、保護者の皆さまへのご連絡文の下書きなど、一部の業務に生成AIを使っています。

生成AIには、お子さまのお名前・ご連絡先・ご家庭のご事情・健康に関することなど、個人を特定できる情報は入力しません。成績などを扱う場合も、個人が分からない形に置き換えてから使います。

使うのは、入力した内容がAIの学習に使われない設定の、塾で管理するサービスだけです。

AIが作った文や問題は、必ず講師または教室長が内容を確かめてからお届けしています。

ご不明な点は、【教室名・担当者】までお気軽にお問い合わせください。

説明文に書いたことが実際の運用とずれていると、かえって保護者の信頼を損ねてしまいます。ルールのひな形と同じ時期にそろえて出しましょう。

塾として安全に使うための環境の整え方

塾として安全に使うには、学習させない設定、講師個人のアカウントを使わせないこと、退職時のアカウント停止、利用状況の把握、複数のAIの使い分けの5つを、塾の側でそろえる必要があります。

各AIの学習させない設定

ChatGPTの無料版やPlusなど個人向けのプランでは、設定のデータコントロールにある「すべての人のためにモデルを改善する」をオフにすると、新しい会話は学習に使われなくなります。「良い回答」「良くない回答」のフィードバックを送ると、その会話全体が学習に使われることがある点にも注意が要ります。一時チャットは履歴に残らず学習にも使われず、30日後に削除されるとOpenAIのヘルプは説明しています。ChatGPT BusinessやEnterpriseなど法人向けの製品では、入力と出力は既定で学習に使われません。

Claudeは、設定のプライバシーにある「Help Improve our AI models」をオフにすると、モデルの改善に使われなくなります。Geminiアプリは、[アクティビティの保存]をオフにすると、フィードバックを送った場合を除き、今後のチャットは学習に使われません。ただし応答と保護のために72時間は保持される、とGoogleのヘルプにあります。

※各AIの設定は、2026年10月16日時点で各社の公式ヘルプ(OpenAI、Anthropic、Google)で確認した内容です。画面の表記は変わることがあります。

講師個人のアカウントを使わせない・退職したら止める

塾の仕事に使うAIのアカウントは、塾が発行し、塾が止められるものに限ると決めましょう。個人のアカウントでは、講師が辞めたあとも会話の履歴が本人の手元に残ってしまいます。アルバイト講師は学期の区切りで入れ替わることがあるので、最終勤務日にAIのアカウントを止める作業を、退職手続きの一覧に入れておくと漏れにくくなります。鍵や入館カードの返却と同じ並びに書いておけば、教室長が替わっても引き継げます。

利用状況の把握と、複数のAIの使い分け

誰がどのAIをどのくらい使っているかが見えると、使われていない教室への研修や、入れてはいけない情報が入っていないかの見直しにつなげることが出来ます。複数のAIを使い分けたい場面も出てきます。たとえば、Web検索で入試制度の新しい情報を当たる作業と、長い面談メモを整理する作業では、向いているAIが違うことがあります。AIごとに別々の契約を結ぶと、学習の設定もアカウントの停止も契約の数だけ繰り返すことになり、管理の手間が積み上がってしまいます。1つの環境でまとめて使える形にすれば、本部の管理が1か所にまとまり、講師にも「このAIだけを使う」と伝えやすくなります。複数のAIを併用する考え方は、複数AIの併用(マルチAI)を参考にしてください。

塾で使うAIを、1つの契約と1つの管理画面に

UPGEAR AI(アップギアAI)は、ChatGPT・Claude・Gemini・Perplexityを1画面で切り替えて使える法人向けのサービスです。入力データを学習に使わない設定を標準で適用し、会話履歴・利用ログ・アカウントは国内サーバー(AWSの日本リージョン)で管理します。管理者ダッシュボードで利用ログ・権限・モデルのON/OFFを確かめられ、契約・請求・アカウント管理も1本にまとまるため、講師の入れ替わりにも本部で対応しやすくなります。料金は月額30,000円(税抜)から。どのプランも利用人数は無制限で、料金は利用量に応じたプラン設計です(人数の目安はライト1〜5名、スタンダード6〜20名、プレミアム21〜50名)。初期費用100,000円(税抜)が別途かかります。

UPGEAR AIの詳細を見る

よくある質問

小規模な塾でもAIを使えますか?
使えます。教室が1つで講師が数名の塾でも、講習の案内文や確認テストのたたき台のように、生徒の情報を使わない業務から始められます。始める前に、生徒の氏名や連絡先を入れないことと、出す前に必ず人が読むことの2つを決めておくと安心です。
AIを使うと講師はいらなくなりますか?
いらなくなるわけではありません。AIが受け持てるのは、問題のたたき台や連絡文の下書きといった書く仕事の一部です。生徒のつまずきを見抜く、保護者の不安を聞き取る、進路を一緒に考えるといった仕事は講師と教室長に残ります。書く仕事が軽くなった分を、生徒と向き合う時間に回す使い方が向いています。
無料版のChatGPTを講師に使わせてもよいですか?
生徒の情報を扱う塾の仕事には、おすすめしません。個人向けの無料版はデータ共有が既定で有効になっており、学習に使われない設定に変えたかを塾の側から確かめられないためです。講師が退職したあとも、個人のアカウントに会話の履歴が残ってしまいます。塾が発行し、塾が止められるアカウントを用意するほうが安全です。
AIを使っていることを保護者に伝えるべきですか?
伝えておくことをおすすめします。文部科学省の学校向けガイドラインも、保護者への情報提供の大切さに触れています。入塾案内やお知らせに、生徒の個人情報を入れないこと、学習に使われない環境で使うこと、出す前に人が確かめることの3点を短く書くと伝わりやすくなります。
AIで作った問題をそのまま生徒に配ってもよいですか?
配る前に、講師が必ず自分で解いて確かめてください。AIの作る問題には、答えの誤りや割り切れない数値、学校の範囲から外れた内容が混ざることがあります。市販の問題集や過去問の文章を入れて作り替えたものは、著作権の面で問題になるおそれがあるため避けましょう。
生徒が宿題をAIで済ませてきたらどうすればよいですか?
一律に責めるより、教室での扱いを先に決めておくことをおすすめします。たとえば、どこまで自分で考えたかを口頭で説明してもらうと、答えを写しただけなのか、考え方を調べるのに使ったのかが見えてきます。どこまでの使い方を認めるかを塾として決め、保護者にも伝えておくと、家庭と塾で言うことがそろいます。
講習の申込や契約の説明文もAIに書かせてよいですか?
案内文の下書きには使えますが、契約の書面や説明はAIに任せきりにしないでください。受験対策や学校の補習のための学習塾の契約は、期間が2か月を超え、かつ金額が5万円を超えると、特定商取引法の特定継続的役務提供に当たります。書面や説明が決まりに沿っているかは、本部で人が確かめる必要があります。

まとめ

学習塾のAI活用は、確認テストのたたき台、保護者への連絡文、面談記録の整理といった書く仕事から始めると、効果と安全の両方を取りやすくなります。生徒の氏名や連絡先、家庭の事情や健康のことは入れず、学校名や点数は置き換えてから入れる、という線引きを先に決めてください。アルバイト講師の多い塾では、講師の私物スマホと個人のアカウントに頼らず、塾が発行して塾が止められる環境を用意することが土台になります。教室に配るルールと保護者への説明文をそろえて出せば、講師にも保護者にも同じ説明が出来ます。法人のAI活用のほかの記事は、AI活用コラム一覧にあります。