
AIモデルの比較とは、ChatGPT・Claude・Gemini・Perplexityといった生成AIのモデルを、得意な仕事、一度に読める文書の長さ、入力データの扱い、費用などの軸で並べ、自社の業務に割り当てるための検討のことです。会社で使うなら1つに絞らず業務ごとに使い分けるのが結論で、比べる軸はベンチマークの順位よりも、業務との相性と、入力データを学習に使わせない設定や利用ログを会社側で管理できるかを優先します。この記事では、社員10〜200名の会社で選定を担う総務・情シス・経営者に向けて、部署別の割り当て表、社員数別の月額試算、管理者の確認項目、稟議用のひな形をまとめました。
LLM(大規模言語モデル)の定義や仕組み、歴史、リスクの全体像は、LLM(大規模言語モデル)とは?仕組みとChatGPTとの違い、会社で使う前の確認点で解説しています。この記事はその続きとして、会社で使うAIモデルを何で比べ、どう選ぶかの1点に絞ります。
結論:会社のAIモデルは1つに絞らず、業務ごとに使い分ける
社員に使わせるAIモデルは、全社で1つに決め打ちするより、業務ごとに主に使うものと2番手を決めておくほうが、選定をやり直す回数が減ります。ここでいうAIモデルとは、ChatGPTやClaudeといったサービスの中で実際に文章を作っているプログラムのことです。同じChatGPTの中にも複数のモデルがあり、サービス名とモデル名は別の階層にあります。
選定担当者が決めるのは、どのサービスを社員に配るかと、配ったサービスの中でどのモデルを標準にするかの2段です。この記事は主に前者を扱い、後者は各社の公式ドキュメントが示す選び方として後半で紹介します。
1つに絞らない理由は3つある
1つ目は、得意な仕事の出発点が各社で違うことです。Perplexityは質問のたびにWebを検索して出典を付ける作りを基本にし、Geminiは会社向けにはGmailやGoogleドキュメントの中に組み込まれています。1つがすべてで上回る前提で選ぶと、業務によっては回り道が増えます。
2つ目は、モデルの入れ替わりが速いことです。後の節で紹介するように、提供終了の日付が公式ページに並ぶことも珍しくなく、1つに決め打ちすると、その交代や終了がそのまま業務の止まりどころになります。
3つ目は、国の指針も目的に応じた使い分けに触れていることです。総務省・経済産業省のAI事業者ガイドライン(第1.2版、令和8年3月31日)は、計算量の多いAIシステムについて、モデルの軽量化や目的に応じたモデルの使い分け等の対策を講じることを挙げています。これは環境負荷の文脈の記述ですが、重い処理を何でも上位モデルに回さないという考え方は、費用の面でもそのまま当てはまります。
この記事の前提:使い分けといっても、社員一人ひとりに4つのサービスを自由に選ばせるという意味ではありません。会社が業務ごとの割り当てを決め、学習利用の設定と利用ログを会社側で管理できる形で配ることを指します。社員が個人アカウントでばらばらに使い分ける状態は、後半で説明するシャドーAI(野良AI)そのものです。
主要なAIモデルの一覧(2026年9月19日時点)
会社で比較の候補に挙がりやすいのは、OpenAIのChatGPT、AnthropicのClaude、GoogleのGemini、Perplexityの4系統です。まず、それぞれの会社向けプランと現行の主なモデルを、公式ドキュメントの説明の範囲で整理します。
| サービス(開発元) | 会社向けの主なプラン | 現行の主なモデル | 公式の説明の要点 |
|---|---|---|---|
| ChatGPT(OpenAI) | ChatGPT Business(従業員数2〜200名のチーム向け)、ChatGPT Enterprise | GPT-5.6 Sol、GPT-5.6 Luna、GPT-6 Astra(GPT-6 Proとして提供) | Solはコーディング、知識労働・調査、デザインなど複雑な仕事向け。Businessでは管理者が使えるモデルを制御できる |
| Claude(Anthropic) | Team(2〜150名のチーム向け)、Enterprise | Claude Fable 5.1、Opus 5、Sonnet 5、Haiku 4.5 | 迷ったら多くの用途でOpus 5から始めるよう案内。Teamはデフォルトでコンテンツを学習に使わない |
| Gemini(Google) | Google Workspaceの各エディション、Gemini Enterprise | GeminiアプリではFlash-Lite・Flash・Proを選択。APIの新しいモデルはGemini 3.8 Flash | Gmail・ドキュメント・スプレッドシート・Meetなどに組み込まれる。Workspaceではコンテンツを許可なくドメイン外の学習に使わない |
| Perplexity | Enterprise Pro、Enterprise Max | 検索用のSonar系モデル(API) | Webを検索して出典つきで答えるAI検索エンジン。Enterpriseのデータは学習に使わない |
※モデル名・プラン名は2026年9月19日時点で各社の公式ドキュメント・公式ヘルプの表示を確認したものです。ChatGPTの有料プランでは、Instant・Medium・High・Extra Highの各思考レベルをGPT-5.6 Solが担うと公式ヘルプに記載されています(使えるレベルはプランで異なります)。
4系統の補足
ChatGPT:公式ヘルプでは、GPT-5.6 Solはコーディング、知識労働と調査、デザインなど複雑な仕事向けと説明され、無料版とGoプランでは、既定のモデルはGPT-5.6 Lunaに切り替わりつつあります。会社にとって大事なのは、BusinessとEnterpriseでは管理者がメンバーの使えるモデルを制御できる点です。法人プランの詳細はChatGPTの法人向けプランの料金で解説しています。
Claude:公式のモデル一覧では、Fable 5.1が高度な推論と長時間の自律的な作業向け、Opus 5が複雑なコーディングと企業の業務向け、Sonnet 5が速さと賢さのバランス、Haiku 4.5が速さ重視と説明されています。4モデルの違いはClaudeのモデルの違いをご覧ください。
Gemini:会社向けには単体のチャットより、Google Workspaceの中に組み込まれる形が中心です。Geminiアプリでは、スピード重視のFlash-Lite、バランスのFlash、複雑な数学やコーディングに向くProの3つがあり、個人アカウント向けの公式ヘルプでは、プランの有無にかかわらず3つを選べると記載されています。Workspaceでは、エディションによって使える範囲や上限が異なります。
Perplexity:開発者向けには、検索に特化したSonar・Sonar Pro・Sonar Reasoning Pro・Sonar Deep Researchが提供されています。使い方と注意点はPerplexityとはで解説しています。
オープンモデル・自社サーバーで動かすという選択肢
4系統のようなクラウドのサービスのほかに、モデルの重み(学習済みのデータ本体)が公開され、自社のサーバーで動かせるオープンモデルという選択肢もあります。OpenAIのモデル一覧には、1枚のH100 GPUに収まる公開モデルとしてgpt-oss-120bが掲載されています。国内では、NTTが自社開発のtsuzumi 2について、1GPUで動作可能でオンプレミスやプライベートクラウドで運用できる点を特長として発表しています(同社発表)。
自社サーバーで動かせば入力データを外に出さずに済む一方、GPUサーバーの調達、モデルの更新、障害対応をすべて自社で抱えます。情シスが1〜2名の会社では、まずクラウドの法人プランで学習に使われない条件を確保するほうが現実的です。また、公開モデルであっても、提供元のアプリやサイトから使う場合は別の規約が適用されます。たとえばMoonshot AIのKimiは、消費者向けのプライバシーポリシーに、入力内容をAIモデルの学習と最適化に使うと記載しています。モデルが公開されていることと、アプリに入力したデータの扱いは、分けて確認してください。
会社でAIモデルを比べる6つの軸
会社でAIモデルを比べるときに見るべき軸は、性能の点数ではなく、業務との相性、読める文書の長さ、扱える情報の種類、入力データの扱い、既存の業務環境との相性、管理のしやすさの6つです。会社の選定では、後ろの3つが抜けやすくなります。
軸1:業務・用途との相性
出典つきの調査結果が欲しいのか、長い規程を読み比べた改定案が欲しいのか、メールの下書きが欲しいのかで、向くサービスが変わります。具体的な割り当ては次の節の早見表と部署別の表で示します。
軸2:長文を一度に読める量(コンテキスト長)
コンテキスト長(コンテキストウィンドウ)とは、AIが1回のやり取りで読み込んで考慮できる情報の量のことで、トークンという単位で表されます。トークンはAIが文章を処理するときの区切りの単位で、Google for Developersは、1トークンあたりの文字数は言語によって違い、英語では約4文字にあたると説明しています。日本語の換算を公式に示した資料は見当たらないため、文字数からトークン数を決めつけないのが安全です。
注意点は、開発者向けAPIの上限と、チャット画面のプランの上限が違うことです。API(システムからAIを呼び出す仕組み)では、GPT-5.6 Solのコンテキストウィンドウは105万トークン、ClaudeのFable 5.1・Opus 5・Sonnet 5は100万トークン、Haiku 4.5は20万トークン、Gemini 3.8 Flashは入力104万8,576トークンと公式ドキュメントに記載されています。一方、チャット画面では、ChatGPTの個人向け料金ページの比較表が推論モデルの上限をPlusで256K、Proで400Kと表示し、Google Workspaceの比較表はGeminiアプリのコンテキストウィンドウをBusiness Starterで32,000、Business Standard・Plusで100万としています。Claudeの料金ページは、プランの比較表で最大100万(モデルによって異なる)と表示しています。
※コンテキストの値は2026年9月16日〜19日に各社の公式ドキュメント・料金ページで確認した表示です。
AnthropicはAPIのドキュメントで、100万トークンを約250万のUnicode文字にあたる目安として示しています(言語別の内訳は示されていません)。社内規程一式や長い契約書をまとめて読ませたい業務があるなら、使うプランの画面でどこまで読めるかを、実際の文書で確かめるのが確実です。
軸3:画像・音声などを扱えるか(マルチモーダル対応)
マルチモーダルとは、文字だけでなく画像・音声・動画など種類の違う情報をまとめて扱えることです。OpenAIとAnthropicはどちらも、現行モデルはすべてテキストと画像の入力に対応していると公式ドキュメントに記載しています。GoogleはGemini APIの説明で、動画は1秒あたり263トークン、音声は1秒あたり32トークンとして数えると示しており、音声や動画をそのまま入力として扱う前提の設計です。Google WorkspaceではMeetの自動メモ生成がBusiness Standard以上に含まれます。スクリーンショットの読み取りなら差は出にくく、会議の録音や動画を扱う業務があるかどうかが分かれ目になります。
軸4:入力データが学習に使われるか・データの保存先
会社で比べるときに、特に重く見るべき軸がここです。各社とも、法人向けプランでは入力データを学習に使わないことを既定にしています。ChatGPTの料金ページはBusinessについてデフォルトではビジネスデータを学習に使用しないと明記し、Claudeの料金ページはTeamとEnterpriseの「モデルのトレーニング」を「デフォルトではなし」と表示しています。GoogleはWorkspaceのプライバシーハブで、お客様のコンテンツは人間によってレビューされることも、許可なくドメイン外で生成AIモデルのトレーニングに使用されることもないと説明しています。Perplexityは、Enterpriseのデータは学習目的に使わないとしています。
反対に、個人向けプランでは学習利用が本人の設定に任されています(詳しくは後半のシャドーAIの節)。比べるべきはモデルの賢さより先に、どのプランで契約するかです。同じモデルでも、個人向けと法人向けでは入力データの扱いが違います。ChatGPTの設定の詳細はChatGPTに学習させない方法にまとめています。
データの保存先・処理される場所も、取引先に説明を求められる項目です。たとえばMicrosoftは、Copilotの言語モデルへの呼び出しは地域内の近いデータセンターに送られるが、利用が集中するときは容量のある他の地域に送ることもあると公式ドキュメントで説明しています。どの国で処理され、どこに履歴が残るかは、サービスごとに公式の説明を確認してください。
軸5:Microsoft 365・Google Workspaceとの相性
社員が1日の大半を過ごすアプリの中で使えるかどうかは、定着の速さを左右します。Google WorkspaceならBusiness Standard以上で、ドキュメント・スプレッドシート・スライド・ドライブ・MeetにGeminiが組み込まれます(Business StarterはGmailのGeminiとGeminiアプリまで)。
Microsoft 365を使っている会社では、対象のMicrosoft 365のサブスクリプションを持つユーザーはMicrosoft Copilot Chat(旧 Microsoft 365 Copilot Chat)を追加料金なしで使える一方、WordやExcelの中で社内データを参照するCopilotは別料金のアドオン(一般法人向けのCopilot Businessは年払いで1ユーザー月額3,148円相当・税抜)になります。ChatGPTも2026年9月17日のリリースノートで、ChatGPTのアドインがWord・Excel・PowerPointで使えると発表しており、Word版は無料版を含む全プランが対象とされています。ChatGPT Businessの料金ページには、Google Workspace・Slack・GitHub・Microsoft 365などとの連携が含まれると記載されています。
※Microsoft 365 Copilot Businessの価格は2026年9月16日時点の公式料金ページの表示です。2026年12月31日までの申込で初年度のみ割引価格(年払い月額2,698円相当)が適用されると記載されており、2年目以降は通常価格に戻ります。
軸6:管理のしやすさ(アカウント・ログ・使わせるモデル)
管理者が見るべきは、アカウントの一括発行・停止、利用状況の把握、使わせるモデルの制御の3点です(詳細は後半のチェックリスト)。ChatGPT Businessの料金ページには請求と管理の一元化、利用状況の分析が含まれると書かれています。Google Workspaceは、管理コンソールでGeminiアプリのオン・オフを設定でき、Geminiの使用状況レポートでアクティブユーザー数やアプリごとの使用状況を確認できます。
Workspaceのサービスごと(Gmail・ドキュメント・Meetなど)にGeminiをオン・オフする設定は、公式ヘルプの対応エディションがEnterprise Standard・Enterprise Plus等で、Businessエディションは含まれていません。また、Workspaceのスマート機能は、ドメインの拠点が日本にある場合にデフォルトでオフになると案内されており、管理者が既定値を設定して適用するか、ユーザーが各自で有効にしないと、Workspace内のGeminiは使えません。導入したのに誰も使えていない、という事態はこうした既定値から起きることがあります。管理画面でできることとできないことは、契約前に公式ヘルプで確かめてください。
用途・業務別の早見表
業務ごとに向くモデルは、各社が公式に説明している設計の出発点から、ある程度まで絞り込めます。次の表は、社員10〜200名の会社で頻度の高い業務を並べ、主に使う候補と、その根拠になる公式の説明を並べたものです。
| 業務・用途 | 主に使う候補 | 根拠にした公式の説明 |
|---|---|---|
| 出典つきの下調べ(業界動向・取引先の情報・制度の確認) | Perplexity | 質問のたびにWebを検索し、回答ごとに引用元のリンクを付ける(Perplexity公式ヘルプ) |
| 長い規程・契約書を読み比べ、改定案や報告書に仕上げる | Claude | Sonnet 5の用途にコンテンツ作成・データ分析を、Opus 5の用途に企業の業務を挙げている(Anthropicのモデル一覧・選び方ガイド) |
| メール・社内通知・議事録の要約(Google Workspaceの会社) | Gemini | Gmailの文書作成サポート、ドキュメントのサイドパネル、Meetの自動メモ生成(Google公式ヘルプ) |
| Word・Excel・PowerPointでの下書きと修正 | ChatGPT | ChatGPTはWord・Excel・PowerPoint向けのアドインを提供(2026年9月17日のリリースノート。対象プランは公式で確認) |
| マクロ・スクリプト・社内ツールの作成 | Claude、ChatGPT | Opus 5は複雑なコーディング向け(Anthropic)、BusinessにはCodexが含まれる(OpenAI料金ページ) |
| 大量で定型の処理(問い合わせの分類、定型文の要約の繰り返し) | 各社の軽量モデル | Haiku 4.5はコスト重視の大量処理向け(Anthropic)、GPT-5.6 Lunaは費用を抑えたい大量処理向け(OpenAI) |
| 画像・スクリーンショット・図の読み取り | 4系統とも候補 | OpenAI・Anthropicとも現行モデルはすべて画像入力に対応と明記 |
| 会議の録音・動画の要約 | Gemini | 音声・動画を入力として数える設計(Gemini API)、Meetの自動メモ生成(Workspace) |
※この表は各社の公式な説明と業務の性質から組んだ割り当ての初期案で、各モデルの出力を同じ条件で測った結果ではありません。モデルと機能は2026年9月19日時点の表示にもとづきます。
表の読み方のコツは、Gemini・ChatGPTの行が、モデルの賢さではなく作業場所で決まっていることです。社員が普段Googleのアプリで仕事をしているならGeminiが、Microsoftのアプリで仕事をしているならChatGPTのアドインやMicrosoft Copilotが、切り替えの手間なく使えます。4つのAIそれぞれの性格の違いは主要4AIの違いと使い分けで詳しく比べています。
部署別の割り当て表(総務・経理・営業・情シス)
選定担当者が社内に説明するときは、業務別の表よりも部署別の表のほうが通りやすくなります。部署の責任者が、自分の部署は何を使えばよいかを1行で読めるからです。次の表は、各部署の主な業務に対して、主に使うAIと2番手を1つずつ置いた初期案です。
| 部署 | AIに任せる主な業務 | 主に使うAI | 2番手 | 割り当ての理由 |
|---|---|---|---|---|
| 総務・人事 | 就業規則や社内規程の改定案、社内通知の文面、会議の議事録、社内からの問い合わせへの回答案 | Claude | Gemini(Workspaceの会社)/ChatGPT(Microsoft 365の会社) | 公式がSonnet 5の用途にコンテンツ作成を、Opus 5の用途に企業の業務を挙げており、規程の読み比べと文書化を任せる。議事録と通知は普段のアプリの中で作れる2番手に回す |
| 経理・財務 | 月次の数字の説明文、取引先への支払い・請求の連絡メール、表の整形、関数の相談 | ChatGPT | Gemini(スプレッドシートを使う会社・Business Standard以上) | ChatGPTはWord・Excel・PowerPoint向けのアドインを提供(対象プランは公式で確認)。スプレッドシートの会社はAI関数(=AI())が使える2番手を置く |
| 営業 | 提案書の下書き、訪問前の業界・取引先の下調べ、お礼や日程調整のメール | ChatGPT | Perplexity | 提案書はPowerPointの中で作る。下調べは出典を開いて確かめられるPerplexityに分ける |
| 情報システム | 社内ツールの手順書、PCやアカウントの問い合わせへの回答案、簡単なスクリプトやマクロ | Claude | ChatGPT | コーディングと手順書の作成を主に任せる。回答案の定型化は2番手で試して比べる |
| 経営者・管理職 | 稟議や事業計画の壁打ち、業界動向の把握、社外向け文書の推敲 | ChatGPT | Perplexity | 日常の相談は1つに寄せ、動向の把握は出典つきで確かめる |
※公式の説明と業務の性質から組んだ初期案です。実際の割り当ては、後述の試行で各部署の実際の文書を使って確かめてから決めてください。
部署別に割り当てるときの3つの原則
1つ目は、主に使うAIは部署に1つだけにすることです。主役が2つあると、同じ部署の中で使い方が割れ、手順やプロンプト(AIへの指示文)の共有が進みません。2番手は、主役が苦手な場面にだけ使う補助の位置づけにします。
2つ目は、部署の中で扱う情報の機密度で入力の範囲を決めることです。総務・人事は個人情報、経理は取引先と金額、情シスは社内システムの構成といったように、部署ごとに入れてはいけない情報の種類が違います。割り当て表と一緒に、部署ごとの入力してよい情報・いけない情報の例を1行ずつ書いておくと、現場で迷いが減ります。
3つ目は、半年ごとに見直す前提で書くことです。表に固定のモデル名(GPT-5.6 Solなど)まで書き込むとすぐに古くなるため、表にはサービス名までを書き、モデルの選択は管理者の設定に任せます。
ベンチマークの順位で選ばない理由と、第三者指標の読み方
ベンチマーク(AIの性能を同じ問題で測る試験)の順位は、会社で社員に配るモデルを決める主な根拠にはなりません。理由は、測っている仕事が自社の業務と違うこと、順位が短期間で入れ替わること、提供元が公表する数値と第三者の測定が混ざって流通していることの3つです。ただし、指標が何を測っているかを知っておくと、社内で数字を見せられたときに読み違えずに済みます。
提供元の公表値と第三者の測定を分けて読む
新しいモデルの発表では、提供元が自社で測ったベンチマークの結果が添えられるのが通例です。これは提供元の自己申告で、測り方の条件(どの設定で、何回試して、どの結果を採ったか)は提供元が決めています。第三者の比較サイトの数値とは前提が違うため、同じ表に並べて比べることはできません。社内資料に数字を引用するときは、誰が測った数字かを必ず添えてください。
第三者の比較指標は何を測っているか(2026年9月19日確認)
LMArena(現在はarena.aiへ転送)は、同じ質問に対する2つの回答を人が見比べ、好ましい方に投票する方式で順位を作っています。人の好みを集めた指標で、正確さそのものを採点しているわけではありません。
Artificial Analysisの知能指数(Intelligence Index v4.3)は、業務に近いタスクや知識の正確さなど10の評価を組み合わせた指標です。1つの試験の点数ではなく複数の評価の合成である点を押さえて読みます。
Nejumi LLMリーダーボードは、Weights & Biases Japanが日本語での推論・知識・開発・安全性を評価する指標で、2025年8月に第4版が公開されています。日本語の性能を見るなら、英語中心の指標より近い条件で比べられます。
※各指標の順位や点数は日々更新されるため、この記事には載せていません。見るときは、確認した日付と、比べたモデルのバージョンを一緒に記録してください。
第三者の指標は、候補から明らかに外れるものを除くところまでに使い、上位同士の差が自社の業務でどう表れるかは、実際の文書で試して判断します。
各社の公式ドキュメントが示すモデルの選び方
OpenAIとAnthropicは、開発者向けの公式ドキュメントでモデルの選び方を示しており、どちらも最初から一番安いモデルを探すのではなく、まず質を確かめてから費用を下げる順番を勧めています。開発者向けの文書ですが、会社で標準モデルを決めるときにもそのまま使える考え方です。
OpenAI:まず精度、届いたら安く速いモデルで保つ
OpenAIのモデル選びのガイドは、精度の目標に届くまでは精度を優先して最適化し、届いたら、できるだけ安く速いモデルで同じ精度を保つことを目指す、という2段階を示しています。会社に置き換えると、最初の試行では上位のモデルで業務に使える品質が出るかを確かめ、使えるとわかった業務から順に、軽いモデルや低い思考レベルで足りるかを試す、という順番になります。
Anthropic:迷ったらOpus 5から、モデルを替えるより考える深さの調整
Anthropicのモデル一覧は、どのモデルを使うか迷ったら、多くの用途でOpus 5から始めるよう案内しています。選び方のガイドでは、モデルを替えるよりeffort(モデルが考える深さの設定)を調整するほうが効くことが多い、と書かれています。さらに、実際のプロンプトとデータで試すこと、回答の正確さ・質・例外的なケースの扱いをモデル間で比べること、性能と費用の釣り合いを見ることを評価の手順として挙げています。
同じガイドには、費用の低いモデルと上位のモデルを組み合わせ、処理の大半を低い単価で済ませる複数モデルの戦略も書かれています。これは、この記事の結論である業務ごとの使い分けと同じ構造です。
アプリの中でモデルや思考レベルを選ぶ(Gemini・ChatGPT)
GeminiアプリではFlash-Lite・Flash・Proの3つを、ChatGPTではInstant・Medium・High・Extra Highといった思考レベルを利用者が選べます。会社として決めておくべきなのは、日常の相談は速いモードで十分であること、重要な文書や数字の確認は上位のモードを使うこと、という2段の使い分けのルールです。ChatGPT側で、どの段をどのプランで選べるのか、社内で誰にどの段を割り当てるのかはChatGPTのモデル比較で詳しく整理しています。
OpenAIとAnthropicに共通する考え方:どちらも、自社の実際の業務で試してから決めることを前提にしています。上位のモデルで質を確かめ、足りる業務から軽いモデルに回す。この順番は、サービスの選定にも、サービスの中でのモデル選びにも同じように当てはまります。
小さく試してから決める
AIモデルの選定は、全社に配る前に、少人数・短期間・実際の業務文書で試してから決めるのが確実です。PoC(概念実証)と呼ばれる進め方ですが、社員10〜200名の会社なら大がかりな計画は要りません。
無料版で試すときの注意
個人向けの無料版で試すこと自体はできますが、業務の文書をそのまま入れるのは避けてください。前述のとおり、個人向けプランでは入力データの学習利用が本人の設定に任されており、会社側から設定を強制できません。無料版で試すなら、公開済みの資料や架空のデータに限ります。実際の業務文書で試すなら、法人向けプランを最少人数で契約する方法があります。ChatGPT Businessは2シートから、Claude Teamは2名から契約でき、どちらも月払いを選べます。
2〜4週間の試行の進め方
- 対象業務を3つに絞る。部署別の割り当て表から、頻度が高く、結果の良し悪しを人が判断しやすい業務を選びます(例:議事録の要約、取引先へのお詫びメール、規程に関する社内の質問への回答案)。
- 評価の基準を先に決める。そのまま使えた、少し直せば使えた、使えなかった、の3段階程度で十分です。Anthropicのガイドが挙げる正確さ・質・例外の扱いを、この3段階の中で見ます。
- 同じ依頼文を2つのサービスに入れる。主役の候補と2番手の候補に同じ文書・同じ指示で依頼し、結果を並べて記録します。
- かかった時間を記録する。AIを使わなかった場合の作業時間と比べ、修正にかかった時間も含めて記録します。
- 試行の最後に割り当て表を書き直す。初期案と違う結果が出た業務は、結果に合わせて主役と2番手を入れ替えます。
費用の比較:社員10名・30名・100名の月額試算
会社でAIモデルを比べるとき、費用はAPIの単価ではなく、社員の人数分の月額合計で比べます。各社の法人向けチャットプランは、基本料金が1ユーザーあたりの月額で決まるためです。ここでは、4つのサービスを各社の法人プランで個別に契約した場合の総額を、社員10名・30名・100名で試算します。
1人あたりの月額(各社の法人プラン・年払い)
- ChatGPT Business 標準シート:日本から表示した料金ページで月3,050円(年額課金の場合)。月額課金の場合は月3,850円。米ドル表示では年額課金の場合20ドル、月額課金の場合25ドル
- Claude Team スタンダードシート:年払い時の月額20ドル(税抜)。月払いの場合は25ドル(税抜)。日本から表示すると消費税10%込みの22ドル・27.50ドルと表示されます
- Google Workspace Business Standard:年間プランで1ユーザー月額1,600円(税別)。Geminiはエディションに含まれ、メール・ドライブなどのグループウェア全体の料金です
- Perplexity Enterprise Pro:1シートあたり月40ドル、または年400ドル
※料金は各社の公式料金ページ・公式ヘルプの表示です(ChatGPTは2026年9月15日〜16日、Claudeは9月16日、Perplexityは9月16日、Google Workspaceは9月19日に確認)。ChatGPTの円表示とPerplexityの料金には税の記載がなく、Claudeは税抜、Google Workspaceは税別の表示です。ドル建ての料金は1ドル=155円で計算した場合の金額で、この試算では税を足していません。
4つを全員に配った場合の試算
| 契約の形 | 1人あたり月額(円) | 10名 | 30名 | 100名 |
|---|---|---|---|---|
| ChatGPT Business(標準・年額課金) | 3,050 | 30,500円 | 91,500円 | 305,000円 |
| Claude Team(スタンダード・年払い) | 3,100 | 31,000円 | 93,000円 | 310,000円 |
| Google Workspace Business Standard(年間プラン) | 1,600 | 16,000円 | 48,000円 | 160,000円 |
| Perplexity Enterprise Pro(年払い) | 約5,167 | 約51,667円 | 155,000円 | 約516,667円 |
| 4つの合計(月額) | 約12,917 | 約129,167円 | 387,500円 | 約1,291,667円 |
| 4つの合計(年額) | 155,000 | 1,550,000円 | 4,650,000円 | 15,500,000円 |
※計算式:Claudeは20ドル×155円=3,100円。Perplexityは400ドル×155円÷12か月=約5,167円(年額は1人62,000円)。10名の月額合計は30,500+31,000+16,000+51,667=約129,167円、年額は(30,500+31,000+16,000)×12+620,000=1,550,000円です。ChatGPT Businessの新しいワークスペースの上限は200シート、Claude Teamは150名までのため、100名はどちらも範囲内です。
4つを全員に配ると、100名で年額1,550万円になります。現実には、全員に4つを配る会社はほとんどないでしょう。この数字は、使い分けを個別契約で実現しようとすると、人数とサービス数の掛け算で費用が増えることを示すための上限の目安です。なお、すでにGoogle Workspace Business Standard以上を使っている会社では、Geminiの分は既存の料金に含まれており、追加の費用はかかりません。
現実的な配り方の試算:全員に1つ、2番手は必要な人だけ
部署別の割り当て表どおりに配ると、全員に主役を1つ配り、2番手は必要な部署の人にだけ配る形になります。ここでは、全員にChatGPT Business、社員の2割にClaude Team、別の2割にPerplexity Enterprise Proを配り、Geminiは既存のGoogle Workspaceに含まれるものとして試算します。
| 契約の形 | 10名 | 30名 | 100名 |
|---|---|---|---|
| 全員にChatGPT Business | 30,500円 | 91,500円 | 305,000円 |
| 2割にClaude Team | 2名 6,200円 | 6名 18,600円 | 20名 62,000円 |
| 2割にPerplexity Enterprise Pro | 2名 約10,333円 | 6名 31,000円 | 20名 約103,333円 |
| 合計(月額) | 約47,033円 | 141,100円 | 約470,333円 |
| 参考:複数のAIを1契約で使う型の例(UPGEAR AI) | 50,000円(スタンダード・人数の目安6〜20名) | 100,000円(プレミアム・人数の目安21〜50名) | LPに目安の記載なし(要相談) |
※個別契約の行は上の表と同じ前提(年払い・1ドル=155円・税は足していない)です。参考の行はUPGEAR AIのLPに記載された月額(税抜)で、料金は利用量に応じたプラン設計のため、人数ではなく利用量でプランが決まります。人数の目安はLPの料金表の記載で、別途初期費用100,000円(税抜)がかかります。
この形なら、30名で月14万円台に収まります。一方で、2番手を配られなかった8割の社員は、2番手が得意な仕事を主役のAIで済ませるか、個人アカウントで補うことになります。後者が起きると、費用を抑えた分だけ見えない利用が増えるという関係にあるため、配る人数は費用だけで決めず、次の節以降のリスクと合わせて判断してください。
APIの単価で比べる場合の注意
比較記事でよく見かける100万トークンあたりの単価は、開発者がAPIでシステムに組み込むときの料金です。公式ドキュメントでは、GPT-5.6 Solが入力4ドル・出力20ドル、Claude Opus 5が入力5ドル・出力25ドル、Sonnet 5が2ドル・10ドル、Haiku 4.5が1ドル・5ドル、Gemini 3.5 Flash-Liteが0.30ドル・2.50ドルと表示されています(いずれも100万トークンあたり、2026年9月19日時点)。OpenAIの開発者向けページには、GPT-5.6 Lunaが入力0.20ドル・出力1.20ドルと表示されています。
社員がチャット画面で使う限り、この単価は月額料金に直接は関係しません。効いてくるのは、問い合わせの自動分類など、システムでAIを呼び出す業務を作るときで、大量の定型処理を軽量モデルに回す設計が費用を左右します。
社員がチャット画面で使う分は、モデルの単価より、どの契約で使うかで費用が決まります。UPGEAR AI(アップギアAI)は、ChatGPT・Claude・Gemini・Perplexityを1つの契約で使える法人向けサービスです(人数無制限)。
1社依存・障害や提供終了のリスク
1つのサービスだけに業務を寄せると、そのサービスの障害・仕様変更・提供終了が、そのまま会社の業務の止まりどころになります。これは仮定の話ではなく、ここ1〜2年のあいだにも各社の公式ページで次のような変更が告知されています。
- OpenAI:ChatGPTのリリースノートで、o3が2026年8月26日にChatGPTから提供終了すると告知。2026年5月28日には、GPT-5.5 InstantとGPT-5.5 Thinkingでcanvas(文書やコードを並べて編集する画面)が使えなくなると告知されました。9月11日には、カスタムGPTを全プランで提供終了し、プラグインへ移行する計画が発表されています。
- Google(2025年1月):Gemini BusinessやGemini Enterpriseといったアドオンの販売を終え、Workspaceの各プランに統合すると発表しました。
- Perplexity:公式ヘルプで、法人向けのOrganization File Repositoryを2026年10月1日に廃止し、残ったファイルは削除すると案内しています。
告知された変更のほかに、提供終了の目安が示されている例もあります。Anthropicの公式のモデル一覧は各モデルに提供終了の最短日を示しており、Claude Haiku 4.5は2026年10月15日以降に終了し得るとされ、ほかの現行モデルより早い日付です(2026年9月19日時点で終了予定の告知はありません)。
特定の機能に頼った業務手順は、こうした変更のたびに作り直しになります。対策は3つです。1つ目は、主要な業務に2番手を決めておき、主役が止まったときに同じ依頼文で切り替えられるようにしておくこと。2つ目は、社内の手順書にモデル名を書き込みすぎず、サービスの中の設定で差し替えられるようにしておくこと。3つ目は、カスタムGPTのような各社固有の仕組みに社内の知識を置く場合、元の資料を社内側にも保管しておくことです。
使い分けは障害対策にもなる:業務ごとに主役と2番手を決めておく運用は、性能を生かすためだけでなく、どれか1つが止まったときに業務を続けるための備えでもあります。複数のAIを1つの環境でまとめて使う形の詳しい比較はマルチAIとはで解説しています。
モデルの更新は速い:確認日を書き、最新は公式で確かめる
AIモデルの情報は、確認日のない比較表をそのまま信じないことが原則です。モデル名・料金・上限は数か月単位で変わり、同じ公式サイトの中でもページによって更新の時期がずれます。
同じ公式サイトでも英語版と日本語版で更新時期がずれ、新しいモデルが日本語版に遅れて載ることがあります。確認するときは英語版と日本語版の両方と更新日を見ます。OpenAIの公式ヘルプは、利用できるモデルや利用制限は随時変更されるため、モデル選択メニューで確認するよう案内しています。
社内の比較表を古くしないための3つのルール
- すべての行に確認日を書く。社内の比較表や稟議書のモデル名・料金には、何年何月何日に公式のどのページで確認したかを必ず添えます。
- 英語版の公式ページも見る。日本語版は翻訳の反映が遅れることがあります。モデル名や料金を決裁の根拠にするときは、英語版の更新日も確認します。
- 半年に一度、割り当て表と一緒に見直す。見直しの時期をあらかじめ決めておくと、新しいモデルが出るたびに議論をやり直さずに済みます。
ハルシネーション(誤った回答)への対策
どのモデルを選んでも、ハルシネーション(もっともらしいが事実と違う回答)はなくならないため、比べるべきはモデルの正確さの順位より、誤りを見つける仕組みを業務に組み込めるかです。OpenAIは2022年のChatGPT公開時から、もっともらしく聞こえるが誤った回答を書くことがあると説明しており、Google for Developersも、LLMはハルシネーションを起こし、その予測にはしばしば誤りが含まれると説明しています。
業務に組み込む5つの対策
- 出典を開いて確かめる。OpenAIの公式ヘルプは、ウェブ検索の結果や引用は不完全、古い、または誤っている場合があるとして、引用元を開いて回答を裏付けているか確認し、公開日や更新日も確認するよう案内しています。出典つきで答えるPerplexityでも同じで、出典があることと出典どおりであることは別です。
- 数字・固有名詞・日付は原典と照合する。社外に出す文書では、金額・日付・社名・法令名を、AIの回答ではなく元の資料で確かめる工程を決めておきます。
- AIに真偽の判定を任せない。総務省の「生成AIはじめの一歩」は、生成AIが偽・誤情報を回答する恐れがあることから、生成AIに真偽を問うことは適切ではないと解説しています。
- 2つのモデルの答えを比べる。同じ質問を主役と2番手に入れ、答えが食い違った箇所を人が確認すべき箇所として扱います。使い分けの環境があれば、追加の費用をかけずにできる対策です。
- 社内の資料を根拠に答えさせる。AI事業者ガイドラインは、RAG(検索拡張生成。社内文書などを検索して回答の根拠にする仕組み)の活用等により、ハルシネーションの抑制や根拠の透明性の向上が期待されていると脚注で触れています。
管理者が選定で確認する項目のチェックリスト
AIモデルを会社で選ぶとき、管理者が契約前に確認すべきなのは、モデルの性能ではなく、入力データの扱いと管理の仕組みです。次のチェックリストは、法人向けプランの公式ページと国の指針をもとに、選定担当者が契約前に確かめる項目をまとめたものです。
- 入力データの学習利用は、既定で使わない設定になっているか法人向けプランの既定値を公式ページで確認します。個人向けプランのように本人の設定に任される形では、会社として担保できません。
- 学習させない設定を、会社側で全員に一律に適用できるか社員ごとの操作に任せる方式では、設定漏れが起きても管理者が気づけません。
- 会話の履歴やアップロードしたファイルが、どの国で処理され、どこに、どのくらいの期間残るか取引先や顧問先から聞かれたときに答えられるかが基準です。保存期間を会社が決められるかも確認します。
- 管理画面で、アカウントの発行・停止をまとめて行えるか退職者や異動者のアカウントを、その日のうちに止められるかを見ます。
- 誰が・いつ・どのAIを使ったかの利用状況を、会社側で把握できるか利用状況のレポートや書き出しの形式まで確認します。個人向けプランでは会社から見えません。
- 使わせるモデルや機能を、管理者が絞れるか部署や職種によって使わせたくないモデル・機能が出たときに、後から制御できるかを見ます。
- 請求を一本化でき、支払い方法が社内の経理処理に合うかサービスごとに請求が分かれると、経理の処理と契約の棚卸しの手間が増えます。請求書払いに対応しているかもプランごとに違います。
- 利用量の上限に達したときにどうなるか止まるのか、追加料金で続くのかを確認します。上限の数え方が変わる告知も各社で出ています。
- 障害や提供終了のとき、別のモデルに切り替えて業務を続けられるか主要な業務に2番手を用意できるか、同じ依頼文で切り替えられるかを確認します。
- 提供元のサービス規約と、個人情報の扱いの条件を読んだか個人向けと法人向けで適用される規約が別になっているサービスがあります。契約する法人向けの規約を確認します。
国の指針を確認項目に落とし込む
国の指針は、AIモデル選びの確認項目にそのまま落とし込めます。AI事業者ガイドライン(第1.2版、令和8年3月31日、総務省・経済産業省)は、2026年9月時点の最新版で、法的な拘束力のない非拘束的なソフトローと位置づけられています。事業活動でAIシステムやAIサービスを利用する事業者を「AI利用者」と定義し、第5部で次のような事項を求めています。
- U-2)i.AIの出力について精度及びリスクの程度を理解し、様々なリスク要因を確認した上で利用する → ハルシネーション対策の工程を業務に組み込む
- U-4)i.AIシステム・サービスへ個人情報を不適切に入力することがないよう注意を払う → 部署ごとの入力してよい情報・いけない情報の例を決める
- U-5)i.AIシステム・サービスに機密情報等を不適切に入力することがないよう注意を払う → 学習利用の既定値と、会社側で一律に設定できるかを確認する
- U-7)ii.AI提供者が定めたサービス規約を遵守する → 契約する法人向けプランの規約を読む
個人情報保護委員会の「生成AIサービスの利用に関する注意喚起等」(令和5年6月2日)は、個人情報取扱事業者に対して、個人情報を含むプロンプトを入力する場合は利用目的の達成に必要な範囲内であることを十分に確認するよう求めています。さらに、本人の同意なく個人データを含むプロンプトを入力し、その個人データが応答結果の出力以外の目的で取り扱われる場合は、個人情報保護法の規定に違反することとなる可能性があるとして、生成AIサービスの提供事業者が当該個人データを機械学習に利用しないこと等を十分に確認するよう求めています。チェックリストの1番目と2番目は、この注意喚起に対応する項目です。
点検項目を網羅的に確認したい場合は生成AIのセキュリティ対策チェックリストも併せてご覧ください。
社員がばらばらに使い分けると起きること
会社が使い分けの仕組みを用意しないと、社員は自分の判断で個人アカウントを使い分け始め、会社から見えない利用が広がります。会社が把握していないAIの業務利用は、シャドーAI(野良AI)と呼ばれます。
商工中金が取引先の中小企業に行った調査では、会社として導入せず個人任せという回答が最も多くなっています。商工組合中央金庫の「中小企業の生成AIの利用にかかる調査」(2026年1月調査・取引先の中小企業3,892社の回答・同年3月31日公表)では、会社での導入はなく使用は個人の判断に任せているという回答が64.9%で、会社での使用を禁止・制限している企業は1.4%でした。
個人アカウントの使い分けで起きる3つの問題
- 学習利用の設定が人によって違う。ChatGPTの個人向けプランは本人がオフにしない限り学習に使われ得る設定で、Perplexityの個人向けプランは学習用のデータ保持が既定で有効、その設定は個人ごとにしか適用されません。Geminiアプリの個人アカウントでは、人間のレビュアーが一部のデータを確認することがあると公式に説明されています。
- 誰が何を入力したかを会社が確認できない。情報が漏れた疑いがあっても、個人アカウントの中身を会社は調べられません。
- 退職・異動の後も、業務の会話が本人のアカウントに残る。会社がアカウントを止める手段がありません。
禁止だけで抑えるより、部署別の割り当て表に沿って必要なAIを会社の管理下で渡すほうが、見えない利用を減らせます。対策の全体像はシャドーAI(野良AI)の記事で解説しています。
稟議・社内説明用の1枚のひな形
AIモデルの選定を決裁に通すときは、なぜ1つに絞らないのか、いくらかかるのか、何が起きたらどう対処するのかの3点を1枚で示すと通りやすくなります。次のひな形は、部署別の割り当て表と月額試算をそのまま流し込める形にしています。【 】の中を自社の内容に書き換えて使ってください。
件名:業務で使う生成AIの導入と、業務ごとの使い分けについて
1. 目的:【議事録・社内文書・調査・メール】の作成時間を短縮し、社員が個人アカウントで生成AIを使っている状態を、会社の管理下に移す。
2. 導入の内容:全社員【 】名に主に使うAIとして【 】を配る。2番手として【 】を【総務・情シス】の【 】名に、【 】を【営業】の【 】名に配る。部署ごとの割り当ては別紙の表のとおり。
3. なぜ1つに絞らないか:①各社のAIは得意な仕事の出発点が違い、1つでは回り道になる業務がある。②各社のモデルは数か月単位で入れ替わり、提供終了も告知されている。1つに決め打ちすると、その変更が業務の止まりどころになる。③国のAI事業者ガイドラインも、計算量の多いAIについて、目的に応じたモデルの使い分け等を対策に挙げている。
4. 費用:月額【 】円、年額【 】円(【年払い・税抜】、ドル建ては1ドル=【 】円で計算)。料金は【 年 月 日】に各社の公式ページで確認。全員に4つを配った場合の年額【 】円と比べ、【 】円を抑える配り方とした。
5. リスクと対策:①入力データの学習利用:法人向けプランの既定で使わない設定を確認済み。②個人情報・機密情報の入力:部署ごとに入力してよい情報・いけない情報を定め、社内ガイドラインに記載する。③誤った回答:社外に出す文書は数字・固有名詞・日付を原典と照合する工程を設ける。④障害・提供終了:主要業務に2番手を決め、同じ依頼文で切り替えられるようにする。⑤個人アカウントの利用:導入後は業務での個人アカウントの利用を禁止し、利用状況を【毎月】確認する。
6. 試行と評価:【 月 日】から【4】週間、【部署名】の【 】名で試行し、そのまま使えた・少し直せば使えた・使えなかったの3段階で評価する。結果を踏まえて割り当て表を確定する。
7. 見直し:割り当て表と契約内容は【半年】ごとに見直し、確認日を更新する。
経営者への説明で質問が出やすいのは、3番の理由と4番の費用の比較です。4番には、全員に4つを配った場合の上限の目安と比べて、配り方でどれだけ抑えたかを書くと、1つに絞らない判断が費用の無駄ではないことを示せます。社内ルール側の文書の作り方は生成AIの社内ガイドラインの作り方で公開しています。
会社で安全に使い分けるための4つの条件
AIモデルを業務ごとに使い分けるなら、学習させない設定、利用ログ、社員への配布、使い分けの割り当ての4つを会社の管理下に置くことが条件になります。どれか1つでも社員任せになると、使い分けはシャドーAI(野良AI)と見分けがつかなくなります。
- 学習させない設定を、会社側で一律に効かせる。法人向けプランで契約し、社員一人ひとりの設定操作に頼らない。
- 利用ログを会社側で見られるようにする。問題が起きたときの調査に加え、使われていない部署を見つけて支援するためにも使う。
- 必要な社員に、漏れなく配る。配られなかった社員が個人アカウントで補う形が、見えない利用の典型的な入口になる。
- 使い分けの割り当てを会社が決めて共有する。部署別の割り当て表と入力してよい情報の例を1枚にまとめ、半年ごとに見直す。
この4つを個別契約で満たそうとすると、サービスの数だけ管理画面・請求・設定の確認が分かれます。複数のAIを1つの契約と管理画面でまとめて使える形と、個別契約との違いはマルチAIとはで、国内の法人向けサービスの料金の横並びは法人向け生成AIサービスの比較でまとめています。
4つのAIを、業務ごとに使い分けられる環境を1つの契約で
UPGEAR AIは、ChatGPT・Claude・Gemini・Perplexityを1画面で切り替えて使える法人向けAI基盤です。全モデルで学習非利用を標準適用し、会話履歴・利用ログ・アカウントは国内サーバー(AWSの日本リージョン)で管理。管理画面では誰が・いつ・どのAIを・どう使ったかが一覧でき、使わせるAIも会社が選べます。料金は月額30,000円(税抜)から。どのプランも利用人数は無制限で、料金は利用量に応じたプラン設計です(人数の目安はライト1〜5名、スタンダード6〜20名、プレミアム21〜50名。初期費用100,000円(税抜)は別途)。
UPGEAR AIの詳細を見るよくある質問
会社でまず1つだけ選ぶなら、どのAIモデルがよいですか?
無料版のAIで済ませてもよいですか?
最新・最上位のモデルでなければいけませんか?
4つのAIを契約すると費用が高くなりませんか?
日本語に強いAIモデルはどれですか?
モデルが入れ替わるたびに社内ルールを作り直す必要がありますか?
まとめ
AIモデルの比較で会社が見るべきなのは、ベンチマークの順位ではなく、業務との相性と、入力データの扱いを会社が管理できるかどうかです。会社で使うなら1つに絞らず、部署ごとに主に使うAIと2番手を決めて使い分けるのが、選定のやり直しと業務の止まりどころを減らす方法です。
第三者の指標は候補を絞るところまでに使い、最終的には自社の実際の文書で試して決めます。費用は人数分の月額合計で比べ、配られなかった社員が個人アカウントで補わない配り方を選んでください。この記事の割り当て表・チェックリスト・稟議のひな形は、社内の検討にそのまま使えます。
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