AXとは AIを業務の中心に置く変革

AX(AIトランスフォーメーション)とは、AIを使うことを前提に、仕事の進め方や意思決定、組織の動き方そのものを見直していく取り組みです。社員10〜200名の会社にとっての第一歩は、大がかりなシステム開発ではなく、全社員が安全に使える生成AIの環境と、入力してよい情報のルールを会社として用意することです。AXはAI Transformationの略で、データとデジタル技術で会社を変えるDX(デジタルトランスフォーメーション)のうち、AIを中心に据えたものと考えると整理しやすくなります。この記事では、定義とDXとの違いを先に押さえ、背景・メリット・業務別の使い方・進め方・注意点を解説したうえで、中小企業が最初の30日で整えることをチェックリストにまとめます。

AXとは|AI Transformationの略と、公的資料での説明

AXは、AIトランスフォーメーション(AI Transformation)を略した言葉です。AIツールを1つ入れることではなく、AIがある前提で、業務の手順・判断の仕方・役割分担を組み替えることを指して使われます。

政府の計画にも、AXの定義が書かれています。2025年12月23日に閣議決定された最初の人工知能基本計画は、「AIを基軸とした組織経営改革(AIトランスフォーメーション)」を促すとし、その脚注で次のように定義しています。

「AIを活用して、顧客や社会のニーズを基に、製品やサービス、ビジネスモデルを変革するとともに、業務そのものや、組織、プロセス、企業文化・風土を変革し、競争上の優位性を確立すること。」

2026年7月14日に変更された現行の人工知能基本計画(副題「日本AX、より強く、より豊かに」)は、本文で「あらゆる組織で、AIを前提として意思決定や業務の進め方を根底から見直す「AIトランスフォーメーション(AX)」を進めていく」と書いています。同じ計画は、行政について「単にAIを導入することにとどまらず」と念を押しており、ツールを入れただけではAXと呼ばない、という考え方がうかがえます。

この記事での意味:AXとは、AIを使うことを前提に、仕事の進め方と判断の仕方、さらに製品やサービスまでを見直す取り組みのことです。対象は大企業だけではありません。2026年7月の人工知能基本計画は産業について、中堅・中小企業や地方部を含めてAIを成長の基盤と位置づけるとしています。

なお、AXという語は企業や媒体によって少しずつ違う意味で使われています。AIを使った新規事業づくりまでを含める説明もあれば、社内業務の効率化を中心に置く説明もあります。社内で話すときは、どこまでを指しているかを最初にそろえておくと、議論がかみ合いやすくなります。

AXとDXの違いと関係

AXはDXと別物ではなく、DXのうち、AIを中心に据えて進める部分と考えると整理できます。DXの定義は、経済産業省のデジタルガバナンス・コード3.0(2024年9月19日公表)に次のように書かれています。

「企業がビジネス環境の激しい変化に対応し、データとデジタル技術を活用して、顧客や社会のニーズを基に、製品やサービス、ビジネスモデルを変革するとともに、業務そのものや、組織、プロセス、企業文化・風土を変革し、競争上の優位性を確立すること。」

前の章で紹介した人工知能基本計画のAXの定義と並べると、AXの定義は、DXの定義から冒頭の「企業がビジネス環境の激しい変化に対応し、」が無く、「データとデジタル技術を活用して」が「AIを活用して」に置き換わった文になっています。変革の対象や目指す姿は同じで、使う手段の中心がAIに移ったものがAXだと読み取れます。違いが出るのは、日々の仕事の中で変わる部分と、進めるときの前提です。

DXAX
中心にある技術データとデジタル技術全般(クラウド、業務システム、電子化など)AI、特に文章や画像を作る生成AI
主に変わるもの紙や手作業を、データとシステムの流れに置き換える人が考えて書く・調べる・判断する部分の進め方を変える
進め方の前提システムを入れ、業務をそれに合わせる社員一人ひとりがAIに指示を出し、結果を人が確かめる
つまずきやすい所システム投資の大きさ、データの整備入力する情報の管理、出力の誤り、使い方の個人差

順番の関係もあります。請求書や日報がまだ紙で回っている会社では、AIに読ませるデータ自体がありません。一方で、文章の下書きや要約のように、手元の文書をそのままAIに渡せる業務は、DXの進み具合にかかわらず今日から変えられます。中小企業のAXは、DXを待たずに始められる部分と、DXを進めないと届かない部分に分けて考えると、手が止まりにくくなります。

デジタルガバナンス・コード3.0は、デジタルの力を「効率化・省力化を目指したITによる既存ビジネスの改善にとどまらず」、付加価値の向上や新しいビジネスにも向けるよう求めています。この考え方はAXにもそのまま当てはまります。

AXが注目される背景|生成AIの普及と人手不足

AXという言葉が広がった理由は、生成AIが短い期間で会社の中に入ってきたことと、人手を増やして仕事を回す方法が取りにくくなったことの2つです。

生成AIの導入が前回調査から約2倍に

IPA(独立行政法人情報処理推進機構)の「DX動向2026」(2026年4月中旬〜6月中旬に調査、国内企業1,799社が有効回答、2026年7月30日公開)では、生成AIを導入していると答えた企業が前年度調査の22.6%から44.0%に増えました。生成AIを含むAI全体では、導入済み42.3%と試験利用中15.7%を合わせて58.0%です。

総務省の令和8年版情報通信白書(概要、2026年7月)では、従業員10名以上でデジタル化に取り組む企業の管理職以上への調査で、日本企業の86.4%(n=477)が自社の何らかの業務で生成AIを利用していると答えています。

中小企業だけを対象にした調査もあります。中小企業基盤整備機構の「中小企業のAI等の利活用に係る実態調査」(2025年11月17日〜12月12日、全国の中小企業10,000社を対象にWebで実施、2026年3月公表)では、AIを全社または一部の業務で導入している企業は20.4%(n=1,647)、導入を検討している企業は18.6%でした。導入済みの企業が使っているAIは生成AIが82.6%(n=322)で、業務分野別では総務・管理部門の導入率が68.3%と最多です。

人手不足と、政府の後押し

2026年7月の人工知能基本計画は、人手不足が特に顕在化する地方部の中堅・中核企業へのAI導入と定着を伴走しながら進める「地域AX」を掲げています。中小企業がAXを進めるための地域ごとのネットワークづくりや、支援機関の底上げも取組として挙げられています。人を採用して業務量に追いつくことが難しい会社ほど、1人あたりの仕事の進め方を変えるAXの意味は大きくなります。

※IPA「DX動向2026」は国内企業の経営層またはICT関連部門を対象にした調査で、設問ごとに回答の対象企業が異なります。総務省の企業調査は日本515件(大企業353・中小企業162)で、設問ごとの回答数は本文に記載しています。

AXで得られる4つのメリット

AXのメリットは、効率化・コスト削減・判断の質・新しい価値の4つに整理できますが、実際に多く出ているのは1つ目の効率化で、次いで残業時間の削減(29.2%)です。期待を正しく置くために、調査の数字と合わせて見ていきます。

1. 書く・まとめる・調べる時間が短くなる

IPA「DX動向2026」でAIを導入または試験利用している企業のうち、効果があったと答えた企業に内容を聞くと、業務が効率化したり迅速化したりしたという回答が91.6%でした。用途も、文書・音声の要約・翻訳・校正が82.5%、文書・レポートの作成が80.5%、情報検索・収集・分析が77.0%と、日々の事務作業に集中しています。

2. 残業時間を減らせる

同じ調査で、残業時間の削減につながったという回答は29.2%でした。議事録の清書、社内向け文書の下書き、問い合わせ回答のたたき台など、これまで時間外や外注で吸収していた作業を社内で早く終えられるようになると、人件費や外注費の伸びを抑える効果が期待できます。

3. 判断の材料がそろうのが早くなる

企画提案などの品質や速さが向上したという回答は48.9%です。AIに判断を任せるのではなく、比較表の作成、論点の洗い出し、反対意見の想定といった判断の前準備をAIに手伝わせることで、会議や決裁に必要な材料が早くそろいます。

4. 新しいサービスや顧客価値につなげる

ここはまだ多くの会社で成果になっていません。同調査で顧客満足度が向上したという回答は4.5%、売上や利益が向上したという回答は3.9%にとどまります。AXの最終的な狙いはここにありますが、社内の効率化で浮いた時間と、社員がAIに慣れた状態があって初めて届く段階だと考えておくのが現実的です。

※効果の内容の割合は、AI導入の効果について期待以上・期待どおり・一定の効果はあったと答えた企業が対象の複数回答です。期待以上または期待どおりの効果があったと答えた企業は合わせて31.8%、一定の効果はあったは50.6%でした。

業務別に見るAXの活用例

中小企業のAXは、業界ごとの特別なAIより、どの会社にもある業務から始めるほうが進めやすくなります。ここでは実在企業の事例ではなく、業務ごとに、AIを前提にすると仕事の進め方がどう変わるかを示します。

業務これまでAIを前提にした進め方人が必ず確認すること
営業提案書を毎回ゼロから作る顧客の業種と課題を渡して構成案を作らせ、過去の提案と照らして仕上げる金額、納期、できることの範囲
顧客対応担当者が記憶を頼りに回答するよくある質問と回答例を整理しておき、回答のたたき台をAIで作る契約条件や個別の事情に触れる部分
製造・現場手順書の改訂が後回しになる作業の口頭説明を文字起こしし、手順書の形に整える安全に関わる手順と数値
企画・マーケティング調査と資料作りに数日かかる公開情報の下調べと論点整理をAIに任せ、出典を人が確認する出典の実在と日付
会計事務所・士業顧問先への説明文を個別に書く制度の一般的な説明の下書きをAIで作り、個別の判断は専門家が加える顧問先の情報を入力するかどうかの判断

どの業務でも共通するのは、AIが作るのは下書きで、最終的な内容に責任を持つのは人だという点です。業務の中にAIの工程と人の確認工程を最初から書き込んでおくことが、ツールを配っただけで終わらせないための分かれ目になります。

会計事務所や士業のように、顧客から預かった情報を扱う仕事では、入力してよい情報の線引きを他の業種より厳しく決めておく必要があります。どのAIをどの用途に割り当てるかの考え方は主要4AIの違いと使い分けで解説しています。

バックオフィス業務から始めるAX

最初の対象にするなら、総務・経理・人事などのバックオフィス業務が向いています。文書を扱う作業が多く、効果を時間で測りやすく、社外の顧客に直接影響しにくいためです。

実際に、IPA「DX動向2026」で生成AIを利用している部署を見ると、ITシステム71.9%、経営企画69.0%、総務・法務68.4%と、管理系の部門が上位です。調達(31.3%)や製造(35.7%)など現場に近い部署はまだ低く、同報告書はバックオフィス系・管理系部門での利活用が先行していると分析しています。

  • 総務:社内通知・規程の改訂案・会議の議事録を下書きする。社内のよくある問い合わせへの回答文をそろえる
  • 経理:取引先への確認メールや、社内向けの締め処理の案内文を作る。表計算の関数やマクロの書き方を聞く
  • 人事:求人票や面接の質問案、研修資料の構成を作る。応募者の個人情報は入力しない運用にする
  • 情シス担当:操作マニュアルの作成、社員からの質問への回答案、ツールの設定手順の整理

効果を測るときは、作業ごとに、AIを使う前と後で1件あたり何分かかったかを担当者に記録してもらうだけで十分です。後で説明するステップ4の材料になります。

AX導入の5つのステップ

AXは、課題を決め、小さく試し、効果を測ってから広げる順で進めます。この基本の流れに、中小企業で抜けやすい、ルールと環境を先に決める手順を加えると次の5つになります。

ステップ1:解決したい課題と目標を決める

「AIで何かできないか」から始めると、試して終わりになりがちです。「毎月の議事録作成に合計10時間かかっている」のように、業務と時間で課題を書き出し、どれを減らしたいかを経営者が決めます。

ステップ2:使い方のルールと、会社の環境を決める

試す前に、入力してよい情報の範囲と、どのAIサービスを会社として使うかを決めます。ここを後回しにすると、試験期間中に社員がそれぞれ個人のアカウントで使い始め、後から回収するのが難しくなります。具体的な線引きは、この後の「社員10〜200名の会社のAX第一歩」で説明します。

ステップ3:1つの部署・3つの業務で小さく試す

最初から全社に広げず、意欲のある部署で2〜4週間試します。業務も3つ程度に絞ると、効果と問題点が見えやすくなります。

ステップ4:効果を時間で測る

IPA「DX動向2026」では、DXに取り組んでいる企業のうち成果指標を設定している企業は23.9%でした。成果が「わからない」と答えた企業も26.8%あります。AXでも同じことが起きやすいため、ステップ1で決めた作業の時間を、試す前と後で比べます。

ステップ5:ルールを直して全社に広げる

試した部署で見つかった、入力に迷った情報や、AIの誤りを見逃しかけた場面を、ルールと社内研修に反映してから全社に広げます。効果が出た使い方は、指示文の例として共有しておくと他部署でも再現しやすくなります。

AXを進めるときの注意点

注意点は、導入コスト、AI人材、社内の理解、データの扱いの4つです。中小企業では、このうちデータの扱いが後回しにされやすく、問題が起きてからの対応が重くなります。

導入コスト:1人あたりの月額は人数で増える

主要な法人向け生成AIサービスの多くは、ユーザー1人あたりの月額料金です。たとえばChatGPT Businessの標準シートは、日本から表示した料金ページで月3,050円(年額課金の場合)と表示されています。30名に配ると月91,500円、年間で1,098,000円です。全社員に配ると費用がかさむため一部の社員にだけ配ると、配られなかった社員が個人のアカウントで使い始めるという別の問題が起きます。

※料金は2026年9月15日に日本から表示したOpenAIの料金ページの円表示(標準シート・年額課金=年払いの場合の月額)で、料金ページに税の記載はありません。OpenAIのヘルプでは、ワークスペースごとに2シート以上が必要とされています。計算は3,050円×30名=91,500円、91,500円×12か月=1,098,000円です。価格は変わるため、検討時は公式ページで最新の内容をご確認ください。サービス別の料金はChatGPT法人プランの料金と法人向け生成AI 38サービスの料金比較、費用の抑え方は生成AIのコスト管理で解説しています。

AI人材:専門家がいなくても始められるが、担当者は要る

IPA「DX動向2026」でAI導入・運用上の課題を聞くと、専門人材が不足しているが50.1%で上位です。ただし、文章作成や要約のような使い方に、AIを開発する専門家は必要ありません。必要なのは、ルールを決め、社員の質問に答え、効果を集計する社内の担当者です。

社内の理解:メリットが伝わっていない

同調査では、DXに取り組んでいない従業員100人以下の企業のうち54.0%が、取り組まない理由として自社がDXに取り組むメリットがわからないことを挙げています。AXでも、経営者が「何の時間を減らしたいのか」を社員に示さないと、一部の人だけが使う状態で止まりやすくなります。商工組合中央金庫の調査でも、生成AIの導入・推進の課題や導入しない理由として、具体的な活用場面が不明が35.6%、導入を推進する人材がいないが32.0%、従業員の知識不足や心理的抵抗が29.2%挙がっています。使う場面を業務の名前で示すことが、社内の理解を得る近道です。

データの扱い:入力した情報の行き先を管理する

IPA「DX動向2026」のAI導入・運用上の課題では、生成AIの効果やリスクに関する理解が不足しているが45.8%、適切な利用を管理するためのルールや基準の作成が難しいが39.7%でした。IPAが2026年1月29日に公表した情報セキュリティ10大脅威2026でも、組織編の3位に「AIの利用をめぐるサイバーリスク」が初めて入り、AIへの理解不足による意図しない情報漏えいや、生成結果を検証せずにうのみにすることで生じる問題が例に挙げられています。個人情報保護委員会は2023年6月2日の注意喚起で、個人情報取扱事業者が本人の同意なく個人データを含むプロンプトを入力し、それが応答の出力以外の目的で扱われる場合、個人情報保護法に違反する可能性があるとして、提供事業者が機械学習に利用しないこと等を十分に確認するよう求めています。点検項目は生成AIのセキュリティ対策チェックリストにまとめています。

部署ごとにAIが分かれる前に、全社でひとつの環境を

部署ごとに違うAIが入ると、誰がどこまで使っているかを一度に見る手段がないままです。UPGEAR AI(アップギアAI)は、ChatGPT・Claude・Gemini・Perplexityを1つの契約で使える法人向けサービスです(人数無制限)。

AI人材の育成と、全社員のAIリテラシー

中小企業が育てるべきなのは、AIを作る人より、AIを正しく使える全社員と、社内の使い方をまとめる少数の担当者です。

2026年7月の人工知能基本計画は、AIに関わる人材を5つの類型に整理しています。そのうち、全ての国民が目指すべきものとされているのがAI適正活用人材で、「AIに関連する基礎的な知見・知識として最低限のリテラシーを身につけ、適正な形でAIを利活用できる人材」と説明されています。ほかに、AI研究開発人材、現場に合ったAIを提供するAI実装人材、ルールや仕組みを整えるAIガバナンス人材、AIで変革を先導するAIイノベーション人材が挙げられています。

社内での役割対応する人材像(2026年7月の人工知能基本計画)中小企業での現実的な形
全社員AI適正活用人材入社時と年1回の研修で、ルールと確認の仕方を身につける
推進担当(1〜2名)AIガバナンス人材総務や情シスが兼務し、ルールの改訂と利用状況の確認を担う
部署ごとの使い手AI実装人材に近い役割業務に合った指示文の例を作り、部署内に共有する

研修で最低限伝えることは3つです。入力してはいけない情報、AIの回答には誤りが含まれるため事実と数字は必ず確かめること、困ったときの相談先です。総務省の「生成AIはじめの一歩」は、注意点として情報の正確性、情報流出、知的財産権の侵害、活用者としてのモラルの4つを挙げており、社内研修の骨組みにそのまま使えます。

IPA「DX動向2026」では、AIによる効率化・自動化が見込まれる既存業務の把握に着手している企業は19.0%でした。どの業務がAIで変わるかを洗い出すこと自体が、人材育成の出発点になります。

3つの役割を誰から、どの順に育てるかは、AI人材育成の進め方|3つの役割と90日で育てる計画で90日の計画表にしていますので、あわせて参考にしてみてください。

社員10〜200名の会社のAX第一歩

社員10〜200名の会社のAXは、全社員が同じ条件で、安全に生成AIを使える状態を会社として作ることから始めるのが現実的です。理由は、すでに社員が個人の判断で使い始めているのに、会社としての管理が追いついていないためです。

IPA「DX動向2026」で生成AIを導入・試験利用・検討中の企業に組織での利用状況を聞くと、個人で業務利用しているが63.3%だったのに対し、部署の業務プロセスに組み込まれているは11.9%、全社的なサービスに組み込まれているは18.6%でした。総務省の令和8年版情報通信白書(概要)でも、生成AIによる業務変革について、日本企業の27.0%(n=497)が組織的な取り組みはないと答えており、米国の1.4%、ドイツの4.9%、中国の2.6%を大きく上回ります。

中小企業を対象にした調査でも、個人任せの利用が多いという結果が出ています。商工組合中央金庫の「中小企業の生成AIの利用にかかる調査」(2025年12月19日〜2026年1月16日、同金庫の取引先中小企業3,892社が有効回答、2026年3月31日公表)では、会社での導入はなく使用は個人の判断に任せているという回答が64.9%でした。会社での使用を禁止・制限している企業は1.4%です。同金庫は、会社による導入のほうが個人登録の利用を推奨する形より経営へのプラス効果を感じている割合が10ポイント以上高いとして、会社主導の取り組みが必要である可能性を指摘しています。

※商工中金の調査のうち、経営への効果の比較は、会社で導入しているか個人の利用を推奨している企業(回答全体の31.1%)が対象です。

第一歩の考え方:個人任せの利用を、会社が管理できる利用に置き換えることが、中小企業のAXの土台です。業務プロセスの組み替えや新しいサービスづくりは、その土台の上で進めます。

手順1:いま社内で使われているAIを洗い出す(野良AI対策)

会社が把握していないところで社員が個人のアカウントを使って業務にAIを使う状態は、野良AI(シャドーAI)と呼ばれます。禁止から入るより、まず実態を知ることが先です。

  1. 無記名のアンケートで、業務で使っているAIサービス名、用途、個人アカウントか会社のアカウントかを聞く
  2. 使っている理由を聞く。会社の環境では足りない用途が見えてくる
  3. 個人アカウントに業務の情報を入力したことがあるかを聞き、あれば入力した情報の種類を把握する
  4. 結果を受けて、会社として使うサービスと移行の期限を決め、全社員に案内する

回答した社員を責めない前提を最初に伝えないと、正直な回答は集まりません。見つけ方の詳細は野良AI(シャドーAI)とはで解説しています。

手順2:入力してよい情報といけない情報を線引きする

ルールの中心は、入力してよい情報の線引きです。長い規程より、社員が迷ったときに見る1枚の表のほうが守られます。

区分情報の例扱い
入力してよい公開済みの自社情報、一般的な質問、個人や取引先が特定されない文章の言い換え会社が指定したサービスで利用可
条件付きで入力可社内限定の資料、議事録、見積の考え方学習に使われない設定を会社として確認したサービスに限る。固有名詞は伏せる
入力しない顧客や社員の個人情報、取引先から預かった資料、未発表の決算・人事・M&Aの情報、パスワードや認証情報原則禁止。必要な場合は責任者の承認を得る

総務省の「生成AIはじめの一歩」は、情報流出を防ぐ行動として、生成AIサービスの規約を確認すること、個人情報や機密情報の入力は必要最小限にすること、入力したデータを学習に使わせないように設定すること(オプトアウト設定)の3つを挙げています。表の区分は、この3つを社内の言葉に置き換えたものです。ルール文書全体の作り方は生成AIの社内ガイドラインの作り方をご覧ください。

手順3:AI事業者ガイドラインのAI利用者向け項目を社内ルールに読み替える

総務省と経済産業省のAI事業者ガイドライン(第1.2版、2026年3月31日)は、事業活動でAIシステムやAIサービスを利用する事業者をAI利用者と位置づけ、守るべき事項を挙げています。法的な拘束力のないソフトローですが、社内ルールの抜け漏れを点検する物差しになります。

ガイドラインの項目(AI利用者)社内ルールでの書き方の例
U-2)安全を考慮した適正利用:出力の精度とリスクの程度を理解して使う数字・日付・固有名詞・法令に関わる出力は、担当者が元の資料で確認してから使う
U-3)入力データやプロンプトに含まれるバイアスへの配慮採用・評価など人に関わる判断にAIの出力をそのまま使わない
U-4)個人情報を不適切に入力しない顧客・社員の氏名や連絡先は入力しない。必要な場合は伏せ字にする
U-5)機密情報等を不適切に入力しない取引先から預かった資料と未発表情報は入力しない
U-7)AI提供者が定めたサービス規約を守る会社が契約したサービスの規約を推進担当が確認し、変更があれば周知する

手順4:会社で安全に使える環境の条件を決める

ルールだけでは、個人アカウントへの流出は止まりません。社員が迷わず会社の環境を選ぶように、使いやすさと管理を両立した環境を用意します。確認したい条件は次の4つです。

  • 学習に使わせない設定:入力した内容がAIの学習に使われない条件を、社員ごとの操作ではなく会社側で確認・適用できるか
  • 利用ログの管理:誰がいつどのAIを使ったかを会社側で確認でき、問題が起きたときにさかのぼれるか
  • 社員への配布:一部の社員だけでなく、使う必要のある社員全員に配れるか。退職や異動のときに、会社側でアカウントを管理できるか
  • 複数AIの使い分け:調べもの、長文の読み込み、文章作成など、用途に合うAIを選べるか

複数のAIを1つの環境でまとめて使う方法はマルチAIとはで詳しく比較しています。

30日で立ち上げるチェックリスト

総務・情シスの担当者が、AXの第一歩を30日で形にするための手順です。週ごとに区切ると、通常業務と並行しても進めやすくなります。

  • 1〜7日目:経営者が減らしたい業務と時間を決める議事録、社内文書、問い合わせ対応など3つ程度に絞り、いま1件あたり何分かかっているかを記録する。
  • 1〜7日目:社内のAI利用を無記名アンケートで洗い出す使っているサービス、用途、個人アカウントかどうか、入力した情報の種類を聞く。
  • 8〜14日目:入力してよい情報の線引きを1枚にまとめる入力してよい・条件付き・入力しないの3区分で、自社の情報の例を書き込む。
  • 8〜14日目:会社として使うAIサービスを決める学習に使わせない設定、利用ログ、全社員への配布、複数AIの使い分けの4条件で比べる。
  • 15〜21日目:1つの部署で試験運用を始める推進担当を決め、試す業務の指示文の例を配る。個人アカウントからの移行期限を伝える。
  • 15〜21日目:全社員向けに30分の研修を行う入力しない情報、出力の確認の仕方、相談先の3点に絞る。
  • 22〜30日目:作業時間を前後で比べる1日目に記録した業務について、AIを使った後の時間を記録し、経営者に報告する。
  • 22〜30日目:ルールを直し、全社展開の日程を決める試験運用で迷った情報や誤りを見逃しかけた場面をルールと研修に反映する。

優先順位:30日で全部が終わらなくても、アンケートによる実態の把握と、入力してよい情報の線引きの2つだけは先に済ませてください。この2つがないまま利用を広げると、後から回収する負担が大きくなります。

AXの第一歩を、全社員が使える生成AI環境から

UPGEAR AIは、ChatGPT・Claude・Gemini・Perplexityを1画面で使える法人向けプラットフォームです。管理者ダッシュボードで利用ログ・権限・使えるモデルを管理でき、データは国内サーバー(AWSの日本リージョン)で管理します。UPGEAR AIの料金は月額30,000円(税抜)からで、ユーザーごとの課金はありません(人数の目安はライト1〜5名、スタンダード6〜20名、プレミアム21〜50名)。初期費用100,000円(税抜)が別途かかります。

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よくある質問

AXとは何の略ですか?
AXはAIトランスフォーメーション(AI Transformation)の略です。AIを使うことを前提に、業務の進め方や意思決定、組織の動き方を見直す取り組みを指します。最初の人工知能基本計画(2025年12月23日閣議決定)は、「AIを活用して、顧客や社会のニーズを基に、製品やサービス、ビジネスモデルを変革するとともに、業務そのものや、組織、プロセス、企業文化・風土を変革し、競争上の優位性を確立すること。」と定義しています。
AXとDXの違いは何ですか?
DXはデータとデジタル技術全般を使った変革で、AXはそのうちAIを中心に据えた変革と考えると整理できます。経済産業省のデジタルガバナンス・コード3.0にあるDXの定義と、人工知能基本計画にあるAXの定義を比べると、AXの定義はDXの定義から冒頭の「企業がビジネス環境の激しい変化に対応し、」が無く、「データとデジタル技術を活用して」が「AIを活用して」に置き換わった文です。実務では、DXが紙や手作業をシステムに置き換えることを中心にするのに対し、AXは人が書く・調べる・判断する部分の進め方を変える点に違いが出ます。
AXは何から始めればよいですか?
社員10〜200名の会社であれば、社内で使われているAIの実態を無記名アンケートで把握し、入力してよい情報といけない情報を線引きすることから始めるのが現実的です。そのうえで、学習に使わせない設定や利用ログを会社として管理できる環境を用意し、1つの部署で3つ程度の業務に絞って試し、作業時間を前後で比べてから全社に広げます。
AI人材がいない会社でもAXは進められますか?
進められます。文章の下書きや要約、調べものといった使い方に、AIを開発する専門家は必要ありません。必要なのは、ルールを決め、社員の質問に答え、効果を集計する社内の推進担当です。総務や情シスの担当者が兼務し、全社員には入力してはいけない情報と出力の確かめ方を研修で伝える形が現実的です。
社員が個人の無料アカウントで生成AIを使っている状態から始めてもよいですか?
業務情報を入力する使い方はおすすめしません。個人のアカウントは本人の管理下にあり、入力した情報や設定を会社として管理する手段がないためです。まず利用の実態を把握し、会社として使うサービスと移行の期限を決めて、個人アカウントから会社の環境へ移すことをAXの最初の作業に位置づけてください。
AXでどのくらいの効果が期待できますか?
現時点で多くの会社が実感しているのは業務の効率化です。IPAのDX動向2026では、AIの導入で効果があったと答えた企業のうち91.6%が業務の効率化や迅速化を挙げた一方、売上や利益の向上は3.9%でした。まずは書く・まとめる・調べる時間の短縮を時間で測り、浮いた時間を顧客対応や新しい取り組みに回す順で考えるのが現実的です。

まとめ

AX(AIトランスフォーメーション)は、AIを前提に仕事の進め方と判断の仕方を見直す取り組みです。2026年7月の人工知能基本計画は、単にAIを導入するだけでなく、意思決定や業務の進め方を根底から見直すものとして説明しています。DXとは別物ではなく、DXのうちAIを中心に据えた部分と考えると整理しやすくなります。

調査を見ると、生成AIを導入する企業は前回の調査からほぼ倍に増えた一方で、使い方は個人の業務利用が中心で、効果も社内の効率化にとどまっている会社が多いのが実情です。社員10〜200名の会社のAXは、この個人任せの利用を、会社が管理できる利用に置き換えることから始まります。

最初の30日でやることは、減らしたい業務と時間を決めること、社内の利用実態を知ること、入力してよい情報を線引きすること、学習に使わせない設定と利用ログを会社として管理できる環境を用意すること、そして効果を時間で測ることです。業務プロセスの組み替えや新しいサービスづくりは、その土台の上で進めてください。

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