
デジタル化・AI導入補助金とは、中小企業・小規模事業者が労働生産性を上げるためにAIを含むITツール(ソフトウェア、サービス等)を導入するとき、その費用の一部を補助する中小企業庁の制度で、旧IT導入補助金の後継にあたります。生成AIも、事務局に登録されたITツールであれば対象になりえますが、実際に補助を受けられるかは、登録の有無、業務プロセスの扱い、契約の形、契約する時期の4点で決まります。この記事では、社員10〜200名の会社が生成AIの導入にこの補助金を使えるかを、公募要領とITツール登録要領の規定に沿って確かめる手順と、補助が終わった後まで含めた費用の考え方を整理します。
※制度の内容・金額・日程は、2026年9月18日時点で事務局の公式サイト(事業スケジュール・ITツール検索)・公募要領(通常枠、2026年8月28日更新版)・ITツール登録要領で確認したものです。規定を生成AIに当てはめた部分は、公式の見解ではなく読み方の一例です。申請の可否の最終確認は、IT導入支援事業者と事務局に行ってください。
補助金を含めて、中小企業がAI導入をどう進めるかの全体像は、親記事の中小企業のAI導入 はじめ方と進め方|事例16件・費用・補助金で解説しています。名称変更の経緯、5つの申請枠の名前、GビズIDやSECURITY ACTIONの準備、自治体の制度などはそちらに詳しく、この記事では短く触れるにとどめます。ここでは、生成AIを入れる場合に何を確かめ、いくらかかり、補助金を待つべきかどうかに絞って掘り下げます。
結論:生成AIが対象になるかは4つの確認で決まる
生成AIをこの補助金で入れられるかどうかは、ツールの名前ではなく、次の4つの確認で決まります。ChatGPTやClaudeといったサービス名だけを見て「対象だ」「対象外だ」と判断することはできません。同じ生成AIでも、どの事業者がどの形で登録し、どう契約するかによって扱いが変わるためです。
申請前に確かめる4つの問い
- 1. 入れたいツールは、ITツール検索に登録されているか補助の対象は、事務局の審査を受けて公開(登録)されたITツールだけです。登録がなければ、どれほど業務に役立つツールでもこの補助金の対象になりません。
- 2. そのツールは業務プロセスを持っているか、汎用プロセスだけか通常枠では、業務プロセスを1種類以上持つソフトウェアを申請する必要があり、汎用プロセスだけのツールは単独で申請できません。文章を作る生成AIチャットは汎用プロセスとして登録されている可能性があり、その場合は業務プロセスを持つツールとの組み合わせが必要になると読めます。
- 3. 契約の形は、補助の対象になる形か支払先はIT導入支援事業者の口座である必要があり、利用金額が定まらないもの、無償で提供されているもの、すでに買ったソフトの追加ライセンスは対象外です。無料版、使った分だけの従量課金、提供元へ直接カードで払う契約は、この規定に照らすと対象になりにくいと考えられます。
- 4. 交付決定まで契約を待てるか交付決定前に契約・発注・支払いをすると補助は受けられません。次の締切は2026年9月29日(5次)で、交付決定は11月9日の予定です。その間の数か月、社員の利用をどう扱うかも合わせて決める必要があります。
要点:4つすべてに「はい」と答えられれば、補助金を使う検討に進めます。1つでも「いいえ」「分からない」があれば、IT導入支援事業者に確認するか、補助金を使わずに始める選択肢と比べて判断します。この記事の各節は、4つの問いの順に答えを確かめられるように並べています。
デジタル化・AI導入補助金2026の要点
制度の骨格は、登録された支援事業者と組んで、登録されたITツールを入れる費用の一部を補助する、という点で旧IT導入補助金と変わっていません。ここでは生成AIの検討に必要な数字だけを表にまとめます。
旧IT導入補助金からの名称変更と、AIを打ち出した背景
中小企業庁の告知では、令和7年度補正予算事業から「デジタル化・AI導入補助金(旧:IT導入補助金)」に名称が変わり、制度の目的はデジタル化やDX等に向けたAIを含むITツールの導入支援とされています。事務局は2026年1月23日のお知らせで、名称を変えた理由を、ITツールの導入にとどまらず、より踏み込んだデジタル化の推進とAIの活用が重要であることを広く周知するため、と説明しています。
事務局が示した変更点と加点項目を見る限り、AI導入向けの新しい枠や補助率の上乗せはありません。変わった点は、ITツール検索でAI機能を持つツールを絞り込めるようになり、AIツールであることが明記されるようになったことです(後述)。名称変更の経緯と中小企業庁の説明は親記事でも扱っています。
5つの申請枠と補助額・補助率
申請枠は5つです。生成AIの導入で主に検討対象になるのは、業務の効率化を目的とする通常枠と考えられます。インボイス枠はインボイス制度への対応、セキュリティ対策推進枠はIPAの「サイバーセキュリティお助け隊サービスリスト」に掲載されたサービスが対象です。
| 申請枠 | 補助額 | 補助率 |
|---|---|---|
| 通常枠 | 業務プロセス1〜3つ:5万円以上150万円未満/4つ以上:150万円以上450万円以下 | 1/2以内(最低賃金近傍の事業者は2/3以内) |
| インボイス枠(インボイス対応類型) | ITツール:〜350万円(1機能のみの場合は〜50万円)/PC・タブレット等:〜10万円/レジ・券売機等:〜20万円 | ITツールの補助額50万円以下:3/4以内(小規模事業者は4/5以内)/50万円超350万円以下:2/3以内/PC・レジ等:1/2以内 |
| インボイス枠(電子取引類型) | 〜350万円 | 2/3以内(申請者が大企業の場合は1/2以内) |
| セキュリティ対策推進枠 | 5万円〜150万円 | 1/2以内(小規模事業者は2/3以内) |
| 複数者連携デジタル化・AI導入枠 | インボイス対応類型の経費と消費動向等分析経費の合計で上限3,000万円、事務費・専門家経費〜200万円 | 経費の種類ごとに設定(2/3以内など) |
※2026年9月18日時点で事務局の公式サイト(2026年1月23日のお知らせ・通常枠のページ)で確認。最低賃金近傍の事業者とは、令和6年10月から令和7年9月までの間で3か月以上、令和7年度改定の地域別最低賃金未満で雇用している従業員が全従業員の30%以上であることを示した事業者です。
通常枠の補助額は業務プロセスの数で決まる
通常枠の補助額の範囲は、申請するITツールが持つ業務プロセスの数で決まります。事務局の通常枠のページでは、1プロセス以上で5万円以上150万円未満、4プロセス以上で150万円以上450万円以下と表記されています。業務プロセスとは、顧客対応・販売支援、決済・債権債務・資金回収管理、供給・在庫・物流、会計・財務・経営、総務・人事・給与・教育訓練・法務・情シス・統合業務といった共通プロセスと、業種固有のプロセスを指します。
生成AIの導入を中心にした申請で、4プロセス以上をそろえるのは簡単ではないと考えられます。多くの場合、補助額は150万円未満の範囲、つまり補助率1/2なら補助対象経費が300万円未満の範囲で考えるのが現実的です。補助額には下限もあり、5万円に届かない小さな申請は対象になりません。補助率1/2の場合、補助対象経費が10万円以上必要になる計算です。
補助対象経費とクラウド利用料の最大2年分
通常枠で補助の対象になる経費は、ソフトウェア、オプション、役務の3つに分かれます。
- ソフトウェア(必須):ソフトウェア購入費、クラウド利用料(最大2年分)
- オプション:機能拡張、データ連携ツール、セキュリティ
- 役務:導入コンサルティング・活用コンサルティング、導入設定・マニュアル設定・導入研修、保守サポート
月額課金の生成AIサービスは、クラウド利用料として最大2年分が対象になります。ITツール登録要領では、月額・年額で料金が決まっている製品は1年分の利用料で登録し、2年分を申請する場合は交付申請のときに利用年数を申請する、と定めています。つまり、2年分にするかどうかは申請する側が交付申請の段階で決める形です。3年目以降の利用料は補助の対象外で、全額が自社の負担になります。この点は費用の試算の節で数字にします。
PC・ハードウェアの扱い
生成AIを使うためにPCを買い替えたい、という相談もありますが、通常枠の補助対象はソフトウェア・オプション・役務で、PCなどのハードウェアは含まれません。公募要領(通常枠)でも、ハードウェアと一体になったシステムについて、ソフトウェアのみが対象でハードウェア部分は対象外と繰り返し注記されています。PC・タブレット等の補助は、インボイス枠(インボイス対応類型)に補助額〜10万円・補助率1/2以内として設けられており、インボイス制度への対応を目的とする申請の中で扱われます。ITツール検索の結果一覧にも、PC・タブレット・プリンター・スキャナー・複合機は含まれないと案内されています。
対象になる会社の規模|社員10〜200名での当てはめ
申請できる中小企業は、業種ごとに決められた資本金と従業員数のどちらか一方が基準以下であれば対象です。両方を満たす必要はありません。主な業種の基準は次のとおりです。
| 業種 | 資本金 | 常時使用する従業員 |
|---|---|---|
| 製造業(ゴム製品製造業を除く)、建設業、運輸業 | 3億円 | 300人 |
| 卸売業 | 1億円 | 100人 |
| サービス業(ソフトウェア業、情報処理サービス業、旅館業を除く) | 5,000万円 | 100人 |
| 小売業 | 5,000万円 | 50人 |
| ソフトウェア業または情報処理サービス業 | 3億円 | 300人 |
| 旅館業 | 5,000万円 | 200人 |
| その他の業種(上記以外) | 3億円 | 300人 |
社員10〜200名の会社に当てはめると、次のように読めます。
- 社員150人のサービス業:従業員は100人を超えますが、資本金が5,000万円以下なら規模の基準は満たします。資本金も5,000万円を超える場合は対象外です。
- 社員60人の小売業:従業員は50人を超えますが、資本金が5,000万円以下なら規模の基準は満たします。
- 社員80人の卸売業:従業員が100人以下なので、資本金にかかわらず規模の基準は満たします。
- 社員200人の製造業・建設業:従業員が300人以下なので規模の基準は満たします。
- 社員120人の旅館業:従業員が200人以下なので規模の基準は満たします。
ここでいう従業員は、労働基準法第20条に規定する、あらかじめ解雇の予告を必要とする者を指す「常時使用する従業員」です。会社役員は従業員に数えません。パートなどの扱いは雇用の形で変わるため確認してください。なお、同一の大企業が株式の2分の1以上を持つ会社や、課税所得の年平均額が15億円を超える会社など、規模の基準を満たしても対象外になる場合があります。事務局のサイトには申請対象者チェッカーもありますが、事務局自身が結果は参考情報で申請要件はこれだけではないと注記しているため、最終的には公募要領と交付規程で確認してください。
生成AIが補助対象になる条件
生成AIが補助対象になるための条件は、登録済みのツールであること、業務プロセスを満たす形で申請すること、そして2回目以降の申請や補助額150万円以上の申請では賃上げの要件も満たすことの3つに整理できます。加点項目にAIの項目はなく、AIを使うこと自体で加点されるわけではありません。
IT導入支援事業者と共同で申請し、対象は登録済みITツールだけ
事務局の説明では、対象となるITツールは事前に事務局の審査を受け、補助金のホームページに公開(登録)されているものに限られます。申請者は、事務局に登録された「IT導入支援事業者」とパートナーシップを組んで申請する必要があります。IT導入支援事業者とは、ITツールを登録し、申請者と一緒に交付申請の事業計画を作る事業者のことです。
そのため、生成AIを補助金で入れる場合、相手はAIの開発元とは限りません。登録された販売・導入の事業者が、生成AIを含むツールを登録し、その事業者と契約する形になります。親記事のFAQ「補助金でChatGPTの利用料は対象になりますか」で答えているとおり、サービス名だけでは判断できず、登録の有無を確かめる必要があります。
生成AIチャットは汎用プロセス扱いになりうる|単独では申請できない可能性
通常枠では、1種類以上の業務プロセスを保有するソフトウェアを申請することが条件で、汎用プロセスのみは不可とされています。汎用プロセスとは、業種・業務が限定されないが生産性向上への寄与が認められる、汎用・自動化・分析ツールのことです。
ITツール登録要領は、汎用プロセス(汎P-07)の機能例として、文書作成ワープロソフト、表計算ソフト、プレゼンテーションツール、社内チャットツール、RPA、チャットボットシステムなどを挙げています。生成AIチャットを名指しした記述はありませんが、文章の作成や社内の質問対応に使う汎用的な生成AIチャットは、この汎用プロセスとして登録されている可能性があると読めます。
その場合でも、道がないわけではありません。公募要領は、汎用プロセスのみを保有するITツールは単独では交付申請不可だが、共通プロセス(共P-01)から各業種のプロセス(各業種P-06)までのいずれかと組み合わせて申請すれば、1プロセスとしてカウントされ申請が可能になる、と定めています。つまり、生成AIチャット単体ではなく、会計・販売管理・勤怠などの業務プロセスを持つツールと一緒に申請する形が考えられます。
ここが分かれ目:同じ生成AIでも、業務プロセスを持つツールとして登録されていれば単独で申請でき、汎用プロセスとして登録されていれば組み合わせが必要です。どちらで登録されているかは製品ごとに異なるため、ITツール検索と支援事業者への確認で確かめます。業務ソフトに組み込まれたAI機能(例:会計ソフトの自動仕訳など)は、そのソフトの業務プロセスとして申請できる場合が多いと考えられます。
AI搭載は加点項目にない|クラウド製品は加点1番目
公募要領(通常枠)の加点項目は15あり、1番目は「導入するITツールとしてクラウド製品を選定していること」です。続いて、サイバーセキュリティお助け隊サービスの選定、インボイス制度対応製品の選定、デジタル化セカンドオピニオンの実施、賃金引上げ計画、健康経営優良法人、えるぼし・くるみん、省力化ナビなどが並びますが、1〜15のどこにもAIや生成AIの項目はありません。
加点項目を見る限り、AI搭載のツールを選ぶこと自体に加点はありません。補助金のためにAI製品を選ぶ理由はなく、自社の業務に合うかどうかで選ぶのが筋です。一方、クラウドで提供される生成AIサービスであれば、クラウド製品の加点には当てはまる可能性があります。
加点項目・減点措置と審査で見られる点
審査では、提出された書類をもとに、事業面と政策面の両方から評価されます。公募要領が挙げる主な審査事項は次のとおりです。
- 自社の経営課題を理解し、経営改善に向けた具体的な問題意識を持っているか
- 改善すべきプロセスが、導入するITツールの機能で期待される効果と合っているか
- 社内横断的なデータ共有・分析などを取り入れ、継続的な生産性向上に取り組んでいるか
- セキュリティ対策を進めているか
- 労働生産性の向上率(計画目標値)
- 国の推進する関連事業やセキュリティサービスに取り組んでいるか、賃金引上げに取り組んでいるか
減点措置もあります。IT導入補助金2022から2025までの間に交付決定を受けた事業者、2026年のインボイス枠で申請中または交付決定を受けた事業者は減点の対象で、同じ機能(会計・受発注・決済)のツールを入れる場合はさらに減点されます。IT導入補助金2024・2025で交付決定を受けたソフトウェアとプロセスが重複する場合も減点され、完全に一致する場合は不採択です。以前にこの補助金を使った会社は、どのプロセスで申請したかを先に確認しておく必要があります。
なお、加点を受けて採択されたのに加点要件を達成できなかった場合は、効果報告で未達が報告されてから18か月の間、中小企業庁が所管する他の補助金への申請で大幅に減点されると定められています。加点は取れるものを取ればよいのではなく、達成できるものを選ぶ必要があります。
採択に近づくには加点項目を満たす
採択に近づくための打ち手は、生成AIだからといって特別なものはなく、加点項目のうち自社が無理なく満たせるものを満たし、審査事項に沿って事業計画を書くことです。生成AIの導入を計画に書くときは、どの業務の時間をどれだけ減らし、それが労働生産性の目標にどうつながるかを数字で示すことが、審査事項の「改善すべきプロセスと導入効果が合っているか」に答えることになります。「AIを入れて効率化する」という書き方だけでは、何のプロセスを改善するのかが伝わりません。
2回目以降・150万円以上の申請に加わる賃上げ要件と返還
過去にIT導入補助金2022〜2025で交付決定を受けた事業者には、2026年から申請要件が加わっています。事務局の2026年1月23日のお知らせによると、交付申請時点の翌事業年度以降3年間の事業計画で、次の要件をすべて満たすことが求められます。
- 事業計画期間において、1人当たり給与支給総額(非常勤を含む全従業員)の年平均成長率を、日本銀行が定める「物価安定の目標」+1.5%以上向上させること
- 交付申請時点で、賃金引上げ計画を従業員に表明していること
要件未達や効果報告の未提出の場合は、補助金の全部または一部の返還になると案内されています。保険医療機関、介護サービス事業者、社会福祉事業を行う事業者、学校などは、この要件の適用外と公募要領に定められています。補助額150万円未満で初めて申請する会社には、この賃上げ要件はかかりません。一方、補助額150万円以上を申請する場合は、初めての会社でも、1人当たり給与支給総額の年平均成長率を3%以上とし、事業場内最低賃金を地域別最低賃金+30円以上の水準にする計画を立て、交付申請時点で従業員に表明することが公募要領で求められています(過去に交付決定を受けた会社には、より高い水準が定められています)。労働生産性については全申請者に、1年後に3%以上、事業計画期間の年平均で3%以上向上させる計画が求められます(IT導入補助金2023の通常枠〈A・B類型〉・デジタル化基盤導入枠〈複数社連携IT導入類型〉、IT導入補助金2024・2025の通常枠・複数社連携IT導入枠で交付決定を受けた事業者は4%以上)。労働生産性は、(営業利益+人件費+減価償却費)÷年間の総労働時間で計算します。
ITツール検索で生成AIツールを確かめる手順
生成AIツールが登録されているかは、事務局サイトのITツール検索で確かめます。2026年の制度では、生成AIを使った機能を持つツールを絞り込める作りになっており、候補を探す段階から使えます。
AI機能を有するツールの明確化で変わったこと
事務局は2026年の主な変更点として、ITツール検索でAI機能を持つツールを絞り込めること、AI機能を持つツールにAIツールであることを明記することを挙げています。ただし、対象はIT導入支援事業者がAI機能を持つとして申請した場合だけです。
ITツール登録要領では、AIを用いた機能を搭載したソフトウェアは登録申請時にその旨を申告することとされ、AIは次の2つに分けて扱われます。
- (ア) 生成AI:文章、画像、プログラム等を生成できるAIモデルに基づくAI
- (イ) 生成AI以外のAI技術:分類・分析・判断・予測等を行うAIモデルに基づくAI
社内の文章作成や要約、質問への回答に使う生成AIを探すなら、(ア)の区分で絞り込むことになります。AI-OCRや需要予測のように、読み取りや予測を行うAIは(イ)に分類されます。
検索の手順
- ITツール検索を開く:事務局サイト(it-shien.smrj.go.jp)の「ITツール・IT導入支援事業者検索」を開き、「ITツールを探す」を選びます。
- 対応希望エリアを選ぶ:自社の所在地の都道府県を選びます。支援事業者の対応エリアが合わないと、相談や導入支援を受けにくくなります。
- 申請枠と機能で絞る:「要件/目的から探す」で通常枠を選び、ITツールが有する機能(業務プロセス)を指定します。ツール名が分かっている場合は「ツール名から探す」からも検索でき、その場合も要件・目的で絞り込めます。
- 絞り込みオプションで生成AIを指定する:絞り込みオプションには「生成AIを用いた機能を搭載したツールで絞り込む」「生成AI以外のAI技術を用いた機能を搭載したツールで絞り込む」の2つがあります。生成AIを探す場合は前者を選びます。
- 候補ごとに詳細を確かめ、支援事業者に問い合わせる:次の項で挙げる項目を見て、候補を2〜3に絞ったら、登録している支援事業者に問い合わせます。
※検索画面の項目名は、2026年9月18日時点で事務局サイトの検索ページで確認したものです。画面の構成は変わることがあります。
検索結果で確かめる5つの項目
- AIの表示と区分生成AIか、生成AI以外のAIか。自社の用途(文章作成・要約か、読み取り・予測か)と合っているかを見ます。
- 登録されている業務プロセス業務プロセスを持つツールとして登録されているか、汎用プロセスだけか。汎用プロセスだけなら、組み合わせる業務プロセスのツールが必要になります。
- 登録しているIT導入支援事業者と対応エリア同じ製品でも、登録している支援事業者が複数ある場合があります。導入後のサポートを受けられる相手かを確かめます。
- 価格の形月額・年額の定額か、利用量で変わるか。人数単位か、契約単位か。2年分の総額と、3年目以降の月額を試算できるかを見ます。
- クラウド製品かどうかクラウド製品の選定は加点項目の1番目です。クラウドで提供される生成AIサービスなら、加点の対象になりうるかを支援事業者に確認します。
申告ベースの表示なので、機能は支援事業者に確かめる
検索画面には、生成AIと生成AI以外のAI技術の搭載有無はIT導入支援事業者からの申告を前提に記載しており、搭載されているAI関連機能の詳細はIT導入支援事業者に確認してほしい、という趣旨の注記があります。AIの表示があるからといって、期待どおりの生成AI機能が使えるとは限りません。反対に、AIの表示がないツールにAI機能がないとも限りません。
また、2026年の制度への移行登録が済んだツールは順次更新中で、検索結果に表示されない場合があると案内されています。検索結果一覧には、オプションと役務の区分や、PC・タブレット等は含まれません。検索で見つからなかったら対象外と決めつけず、支援事業者に登録状況を確認するのが確実です。支援事業者には、少なくとも次の点を聞いておくと判断が早くなります。
- どのプロセスで登録しているか。汎用プロセスだけなら、何と組み合わせて申請する想定か
- どのAIモデルを使い、入力したデータが学習に使われない設定になっているか
- 料金は定額か。2年分の総額と、3年目以降の月額はいくらか
- 支払いは支援事業者への振込かクレジットカード1回払いか
- 効果報告の期間中に、人数やプランを変えたらどうなるか
対象になりにくい契約の形
ITツール検索に似た名前のツールが見つかっても、契約の形によっては補助の対象になりません。公募要領の補助対象外経費と支払いのルール、ITツール登録要領の登録対象外の規定を生成AIに当てはめると、次の5つの形は対象になりにくいと考えられます。いずれも規定の当てはめ(推論)なので、実際の可否は支援事業者と事務局に確認してください。
無料版の生成AI
公募要領は補助対象外経費として「対外的に無償で提供されているもの」を挙げています。無料で誰でも使えるプランは、そもそも補助する費用がなく、この規定にも当たると読めます。無料版で使い勝手を試すこと自体は自由ですが、その利用料が補助されることはありません。
使った分だけ払う従量課金
補助対象外経費には「交付申請時において、ITツールの利用金額が定められないもの」も含まれます。生成AIのAPIのように、使った文字量や回数に応じて毎月の請求額が変わる契約は、申請の時点で金額が決まらないため、この規定に当たる可能性が高いと考えられます。定額の月額料金に上限付きの利用量が含まれる形なら、金額は定まっているので扱いが異なると読めますが、判断は支援事業者に確認してください。
提供元への直接契約・海外サービスへのカード払い
公募要領は、支払元口座を補助事業者の口座、支払先口座をIT導入支援事業者の口座とすることを必須としています。支払方法は原則として銀行振込かクレジットカード1回払いで、法人の場合は法人名義の口座から決済されるカードを使う必要があります。海外の生成AIサービスの公式サイトから直接カードで申し込む契約は、支払先がIT導入支援事業者ではないため、この条件を満たさないと考えられます。同じサービスでも、登録された支援事業者を通して契約する形であれば、扱いが変わる可能性があります。
すでに契約している生成AIの追加ライセンス
ITツール登録要領は、登録の対象外となるものとして、すでに購入済みのソフトウェアに対する増台や追加購入分のライセンス費用、すでに導入済みのソフトウェア等の機能を追加・拡張することを目的としたもの、を挙げています。いま一部の社員で法人契約している生成AIを全社に広げるために席を買い足す費用は、この規定に照らすと対象になりにくいと読めます。
リース・レンタルと中古
補助対象外経費には、リース・レンタル契約のITツール(サイバーセキュリティお助け隊サービスを除く)と中古品も含まれます。生成AIの導入で問題になる場面は多くありませんが、機器とセットで提供されるサービスでは確認しておきます。
対象になりやすい形の目安:ITツール検索に登録されたツールを、登録したIT導入支援事業者と交付決定後に新たに契約し、金額の決まった料金を支援事業者の口座へ振込かカード1回払いで支払う形です。この形から外れる部分があれば、その部分は補助の対象外になると考えておくと、見積もりのずれを防げます。
交付決定前の契約は対象外|試用中・契約済みの会社はどうするか
生成AIの導入で補助金を使う場合、交付決定が出るまでは契約も発注も支払いもできません。いま試している、あるいはすでに使っている会社ほど、この順番に注意が必要です。
公募要領は、交付決定前にITツールを契約・発注した場合は補助対象とならず、交付決定後に契約・発注を行うこと、と定めています。留意事項でも、交付決定前に契約、発注、納品、支払い等を行った場合は補助金を受けられないとされ、補助対象外経費にも「交付決定前に購入したITツール」が挙がっています。実績報告の後の確定検査で、契約より先に納品や支払いが行われていたことが分かると、交付決定の取消しになる場合もあります。
公募スケジュール・締切日と交付決定日(5〜7次)
2026年9月18日時点で事務局が公表している通常枠の今後の日程は次のとおりです。インボイス枠の2類型とセキュリティ対策推進枠も、5〜7次は同じ日程です。
| 募集回 | 締切日 | 交付決定日(予定) | 事業実施期間(予定) |
|---|---|---|---|
| 5次 | 2026年9月29日(火)17:00 | 2026年11月9日(月) | 交付決定〜2027年4月30日(金)17:00 |
| 6次 | 2026年10月30日(金)17:00 | 2026年12月10日(木) | 交付決定〜2027年5月31日(月)17:00 |
| 7次 | 2026年12月1日(火)17:00 | 2027年1月19日(火) | 交付決定〜2027年7月30日(金)17:00 |
※2026年9月18日時点で事務局の事業スケジュールのページで確認。事務局は確定している募集回の日程だけを公表しており、8次以降は随時更新するとしています。複数者連携デジタル化・AI導入枠は日程が異なります。
締切から交付決定まではおよそ6週間です。9月18日から数えると、5次で申請して契約できるのは早くて11月9日、7次なら翌年1月19日になります。準備に使える時間も短く、GビズIDプライムの発行にはおおむね2週間かかると事務局が案内しており(GビズIDの公式サイトでは、書類申請の審査期間が2026年7月から最大1か月に変わったと告知されています)、書類申請で取得する会社が9月29日の5次締切に間に合わせるのは難しい日程です(法人代表者のオンライン申請なら審査はすぐ行われると公式サイトで案内されています)。現実的には6次(10月30日締切)か7次(12月1日締切)が目安になります。
いま無料版や試用版で試している場合
無料版や試用期間で使い勝手を試していても、有償の契約をしていなければ、その後に同じツールを交付決定後に契約して申請する道は残ると考えられます。ただし、試用の申込みが契約とみなされるかどうかは、サービスの利用規約や申込みの形によって変わりえます。試用から自動的に有償契約へ切り替わる設定になっていないか、試用中に社員が業務情報を入力していないかも合わせて確認してください。判断に迷う場合は、試用を始める前に支援事業者に相談しておくのが安全です。
すでに法人契約して使っている場合
すでに有償で法人契約している生成AIは、その契約分が交付決定前の購入に当たり、補助の対象にはなりません。前の節で見たとおり、同じツールの追加ライセンスも登録対象外とされています。つまり、使い慣れたツールの席を増やす費用に、この補助金を使うのは難しいと読めます。
その場合に考えられる選択肢は2つです。1つは、既存の契約はそのまま続け、この補助金は別の業務ソフト(業務プロセスを持つツール)の導入に使うこと。もう1つは、補助金を使わず、今の契約を全社に広げるか、会社として使う環境を整え直すことです。補助金のために、使っている生成AIを一度解約して別のツールに乗り換える判断は、乗り換えの手間と、社員がそれまでの使い方を失う負担を考えると、割に合わない場合が多いと考えられます。
スマートレジの事前着手制度は生成AIには関係しない
事務局は2026年9月に、スマートレジの導入やPOSレジの改修等を9月15日以降に先に行い、事後に補助金を申請できる事前着手制度を設けると告知しています(申請受付は2027年1月頃の予定)。この告知の対象はスマートレジとPOSレジの改修等で、生成AIを含むITツール全般が先に契約できるようになったわけではありません。現時点の公募要領(通常枠)では、生成AIは交付決定後の契約が前提です。
交付決定より前に契約すると補助の対象から外れるため、選定と契約の順番が問われます。UPGEAR AI(アップギアAI)は、ChatGPT・Claude・Gemini・Perplexityを1つの契約で使える法人向けサービスです(人数無制限)。
申請の流れと必要書類
申請は、事前準備、支援事業者とツールの選定、交付申請、交付決定、契約・導入・支払い、実績報告、補助金の交付、効果報告の順に進みます。補助金が振り込まれるのは実績報告の後で、効果報告は3年度目まで続きます。
事前準備:GビズIDプライムとSECURITY ACTION
交付申請には、GビズIDプライムの取得と、IPAが実施するSECURITY ACTIONの宣言(「★一つ星」または「★★二つ星」)が必要です。事務局の案内では、GビズIDプライムの発行までにおおむね2週間、SECURITY ACTIONの宣言済アカウントIDの発行までにおおむね2〜3日かかります。新しいシステムでの宣言が必要な点など、つまずきやすい点は親記事で解説しています。
申請から交付・効果報告までの流れ
- 制度の理解:事務局サイトと公募要領・交付規程を読みます。
- GビズIDプライムの取得とSECURITY ACTIONの宣言:上記のとおり日数がかかるため最初に進めます。
- IT導入支援事業者とITツールの選定:この段階は選定であって契約ではありません。
- 交付申請の作成:支援事業者から申請マイページの招待を受け、申請者の基本情報を入力し、必要書類を添付します。支援事業者が導入するツールの情報と事業計画値を入力します。
- 交付申請の提出:申請マイページで内容を最終確認し、宣誓したうえで事務局に提出します。
- 交付決定:審査が終わると交付決定が通知され、申請者は補助事業者になります。
- 契約・導入・支払い:交付決定後に契約・発注し、納品・導入、請求を受けて支払います。契約・発注はすべての手続きに先立って行う必要があり、支払いの前に支援事業者からの請求が必要です。
- 実績報告:請求書、支払いの証憑、ツールの利用を示す画面のキャプチャなどを提出します。公募要領では、実施と実績報告の期間は交付決定日から6か月程度とされています。
- 補助金の額の確定と交付:事務局が額を確定し、補助金が振り込まれます。
- 効果報告:事業の終了後、生産性向上の数値と、ITツールを継続的に活用していることを証する書類等を報告します。
交付申請と実績報告の必要書類
公募要領(通常枠)が定める交付申請の必要書類は、法人の場合は次の3種類で、代替書類は一切認められないとされています。
- 実在を証明するもの:履歴事項全部証明書(発行から3か月以内のもの)
- 事業実態を確認するもの:税務署で発行された直近分の法人税の納税証明書(「その1」または「その2」)
- 財務状況を確認するもの:直近分の貸借対照表と損益計算書
個人事業主の場合は、本人確認書類、所得税の納税証明書、税務署が受領した確定申告書の控え、青色申告決算書または収支内訳書の4種類です。最低賃金近傍の事業者として補助率2/3以内の適用を受ける場合は、追加の様式が必要です。申請には、申請者自身が管理する携帯電話番号の登録も求められます。
実績報告では、支援事業者が発行した請求書・請求明細書、自社名義の口座から支援事業者名義の口座へ支払った証憑(振込明細書やインターネットバンキングの取引完了画面など)、カード払いの場合はカード会社発行の利用明細、補助金を受け取る口座の情報、導入したツールの名前と利用者が自社であることが分かる画面のキャプチャなどを提出します。生成AIのように画面で使うサービスは、管理画面でアカウントや利用状況を示せるかどうかが、この書類の用意のしやすさにも関わります。
活用事例は事務局の公式サイトで確認できる
事務局の通常枠のページには活用事例が掲載されており、業種、導入したツールの種類、業務プロセス、従業員数の区分とともに、PDFやインタビュー動画で紹介されています。自社と近い業種・規模の事例を見ると、どのプロセスで申請し、どのような効果を計画に書けばよいかの参考になります。生成AIに限った事例を探す場合も、まずはこのページから業種の近いものを確かめるのが近道です。
費用の試算|2年分の補助と3年目以降の自己負担
生成AIの利用料に補助金を使うと、最初の2年間の負担は下がりますが、3年目以降は全額が自社の負担になり、年間の支出はそこで増えます。導入を決める前に、2年間だけでなく3年目以降まで含めた総額で比べることが大切です。
計算の型
月額課金の生成AIツールの場合、計算は次の型で行えます。
- 2年分の利用料 = 1人あたりの月額 × 人数 × 24か月
- 補助額 = 2年分の利用料 × 補助率(下限5万円、1〜3プロセスなら150万円未満の範囲に収まるか確認)
- 2年間の自己負担 = 2年分の利用料 − 補助額
- 3年目以降の自己負担(年)= 1人あたりの月額 × 人数 × 12か月
以下の数字は、1人月3,000円(税抜)の登録ツールを使うと仮定した計算例です。特定の製品の価格ではありません。消費税の扱いや導入設定などの役務の費用は含めていないため、実際の補助対象額は支援事業者の見積もりで確認してください。
人数別の試算(1人月3,000円・補助率1/2の場合)
| 人数 | 2年分の利用料 | 補助額 | 2年間の自己負担 | 3年目以降の自己負担(年) |
|---|---|---|---|---|
| 1人 | 72,000円 | 36,000円(この1件だけで申請すると下限5万円に届かない) | 72,000円 | 36,000円 |
| 5人 | 360,000円 | 180,000円 | 180,000円 | 180,000円 |
| 20人 | 1,440,000円 | 720,000円 | 720,000円 | 720,000円 |
| 50人 | 3,600,000円 | 1,800,000円の計算だが、1〜3プロセスでは150万円未満が上限 | 2,100,000円超 | 1,800,000円 |
20人の場合で検算すると、3,000円×20人×24か月=1,440,000円、その1/2で補助額は720,000円です。5万円以上150万円未満の範囲に収まっています。2年間の自己負担は720,000円、年に直すと360,000円です。3年目からは3,000円×20人×12か月=720,000円を毎年自社で払うことになり、年間の負担は補助がある2年間の2倍になります。
総額で比べると、3年間では補助なしが2,160,000円、補助ありが1,440,000円(720,000円+720,000円)、5年間では補助なしが3,600,000円、補助ありが2,880,000円で、差はどちらも補助額の720,000円です。補助金が減らしてくれるのは最初の2年分の半分であり、その後の毎年の支出は変わりません。
最低賃金近傍の事業者として補助率2/3以内が適用される場合、20人の例では1,440,000円×2/3=960,000円が補助額になり、2年間の自己負担は480,000円です。3年目以降の年720,000円は同じです。
50人の例では、1/2で計算すると1,800,000円になりますが、業務プロセスが1〜3つの申請では補助額が150万円未満に収まる範囲までになります。人数が多い会社ほど、補助の上限に当たって実際の補助率は1/2を下回ることになります。
生成AIだけで申請できない場合の組み合わせ試算
生成AIツールが汎用プロセスとして登録されていて、業務プロセスを持つツールと組み合わせる場合の例です。これも仮の数字です。
- 生成AIツール:1人月3,000円×20人×24か月=1,440,000円
- 業務プロセスを持つクラウドの業務ソフト:月30,000円×24か月=720,000円
- 合計2,160,000円、補助率1/2で補助額は1,080,000円(150万円未満の範囲内)
- 2年間の自己負担は1,080,000円、3年目以降は720,000円+360,000円=年1,080,000円
組み合わせる業務ソフトが、もともと入れる予定のものであれば合理的です。反対に、補助金を使うためだけに必要のない業務ソフトを足すと、3年目以降にその利用料も毎年残ります。補助額の大きさではなく、2つのツールをどちらも使い続けるかで判断してください。
支払いは先、補助金は後
申請の流れのとおり、補助金が振り込まれるのは、契約・導入・支払いを済ませて実績報告をし、額が確定した後です。いったん全額を自社で支払う必要があります。さらに、実施と実績報告の期間が交付決定日から6か月程度とされ、実績報告では支払いの証憑を出すことから、2年分の利用料を申請する場合は、その2年分を実績報告までにまとめて支払う形になると読めます。20人の例なら、1,440,000円を先に払い、720,000円が後から戻る資金繰りになる可能性があります。支払いの時期と方法は支援事業者に確認してください。
効果報告期間中の解約は辞退扱い
補助金で入れたツールは、効果報告が終わるまで使い続けることが前提です。今回の通常枠では効果報告期間が次のように定められています。
- 1年度目:2028年4月〜2029年1月
- 2年度目:2029年4月〜2030年1月
- 3年度目:2030年4月〜2031年1月
公募要領は、導入したITツールを解約・利用停止した場合は辞退の手続きが必要で、複数のツールを入れてその一部を解約する場合でも辞退とみなす場合がある、と定めています。辞退した場合は、交付規程に基づいて補助金の全部または一部の返還が必要になる場合があります。効果報告では、ITツールを継続的に活用していることを証する書類等も求められます。
利用料の補助は2年分ですが、縛られる期間は2031年1月の3年度目の効果報告まで続く、ということです。生成AIは新しいモデルやサービスが短い周期で出る分野です。補助金で入れたツールがその間に自社の使い方に合わなくなっても、簡単には乗り換えられない点を、費用と同じ重さで考えておく必要があります。補助が終わる3年目以降の費用をどう管理するかは、生成AIのコスト管理も参考になります。
補助金でまかなえない費用と作業
補助金がカバーするのは、登録されたツールの費用と、ツールと一緒に登録された役務の費用だけです。生成AIを会社で安全に使うために必要な作業の多くは、補助金の外側に残ります。
通常枠の役務には、導入コンサルティング・活用コンサルティング、導入設定・マニュアル設定・導入研修、保守サポートが含まれます。ただし、これらは登録されたITツールの役務として支援事業者が登録したものに限られると読めます。社員向けの生成AI研修を単独で外部に頼む費用は、この補助金ではなく、研修向けの助成金などの対象になりうるものです(親記事で扱っています)。
補助の対象外で、自社で用意する必要がある主なものは次のとおりです。
- 社内の利用ルール何に使ってよいか、出力を誰が確認するか、禁止する使い方は何か。ルール文書の作り方は生成AIの社内ガイドラインの作り方で解説しています。
- 入力してよい情報の線引き顧客の個人情報、取引先の契約内容、未公開の数字などをどこまで入力してよいか。ツールの設定だけでは決まらず、社内で決める必要があります。
- 利用状況の記録と確認誰がいつどのAIを使ったかを会社として把握できるか。効果報告で継続的な活用を示す書類が求められることを考えると、利用状況が記録に残る環境かどうかは、補助金の運用にも関わります。
- セキュリティの点検アカウントの発行と停止、学習利用の設定、退職者の棚卸し。点検項目は生成AIのセキュリティ対策チェックリストにまとめています。
- 社員の時間申請書類の準備、支援事業者との打ち合わせ、社内説明、効果報告の作成にかかる時間は補助されません。
- 3年目以降の利用料試算の節で見たとおり、補助が終わった後の利用料は全額が自社の負担です。
もう1つ、補助金ではまかなえないのが、待っている間の社員の利用です。会社が環境を用意するまでの数か月、社員が個人のアカウントで生成AIを業務に使い続けると、入力した情報を会社が把握できない状態が続きます。いわゆる野良AI(シャドーAI)です。補助金の申請準備と並行して、少なくとも入力してよい情報のルールだけは先に社員へ伝えておくことをおすすめします。
補助金を待つか、先に始めるかの判断フロー
補助金を待つべきかどうかは、補助で減る金額と、待つ間に失うものを並べて決めます。次の順に答えていくと、自社がどちらに当たるかを判断できます。
判断の5ステップ
- 入れたい生成AIツールは、ITツール検索に登録されているか:登録されていなければ、この補助金は使えません。補助金を前提にせず、ツールそのものの比較に進みます。国内の法人向けサービスの料金の横並びは法人向け生成AI38サービスの料金比較、ChatGPTの法人プランはChatGPT法人プランの料金にまとめています。
- 業務プロセスの条件を満たせるか:汎用プロセスだけのツールなら、一緒に入れる業務ソフトが本当に必要かを確かめます。必要がなければ、補助金のために足すことはおすすめしません。
- 補助額は、申請の手間に見合うか:試算の型で補助額を出します。5万円の下限に届かない、あるいは数十万円の補助のために、GビズIDの取得から効果報告まで3年以上の手続きが続くことを、社内の手が回るかで判断します。
- 交付決定まで待てるか:6次なら12月10日、7次なら翌年1月19日が交付決定の予定日です。それまでの間、社員の生成AIの利用をどう扱うか(禁止するのか、ルールを決めて限定的に認めるのか)を決められるかを考えます。
- 3年度目の効果報告まで同じツールを使い続けられるか:2031年1月まで乗り換えにくくなることを受け入れられるかを確認します。
状況別の目安
| 状況 | 考え方の目安 |
|---|---|
| 入れたいツールが登録済みで、業務プロセスの条件も満たし、交付決定まで利用を待てる | 補助金を使う検討に進む。6次・7次の締切から逆算してGビズIDとSECURITY ACTIONを先に準備する |
| 入れたいツールが登録されていない、または汎用プロセスだけで組み合わせる業務ソフトの予定がない | 補助金を前提にせず、ツール自体の費用と管理のしやすさで選ぶ |
| すでに社員が個人のアカウントで業務に使っている | 待つ間の見えない利用が続くことを重く見る。先に会社として使う環境を用意し、補助金は別の業務ソフトに使うことも考える |
| すでに一部の社員で法人契約している生成AIがある | 追加ライセンスは登録対象外と読めるため、この補助金で席を増やすのは難しい。既存の契約を広げるか、全社で使う環境を整え直すかで判断する |
| 業務ソフトの入れ替えも同時に予定している | 業務ソフトと生成AIツールを組み合わせた申請を支援事業者に相談する価値がある |
判断の軸:補助金で減るのは最初の2年分の利用料の一部です。待つ数か月の間に社員の個人利用が広がると、後から会社の環境に移す手間と、入力された情報が把握できないリスクが残ります。補助額が大きく、待つ間の利用をルールで抑えられる会社は待つ価値があり、そうでない会社は先に始めて、補助金は別の業務ソフトの導入に回すほうが合理的な場合があります。
よくある質問
ChatGPTやClaudeなどの生成AIは、デジタル化・AI導入補助金の対象になりますか?
生成AIのツールだけで申請できますか?
いま無料版や試用版で使っている生成AIを、あとから補助金で契約できますか?
補助金で入れた生成AIは、2年後にやめてもよいですか?
社員150人のサービス業でも申請できますか?
生成AIの社員研修の費用は、この補助金の対象になりますか?
IT導入補助金と何が違いますか?
今から申請して間に合う締切はどれですか?
まとめ
デジタル化・AI導入補助金は、旧IT導入補助金の後継で、AIを含むITツールの導入費用の一部を補助する制度です。生成AIも対象になりえますが、補助を受けられるかは、ITツール検索への登録、業務プロセスの扱い、契約の形、契約の時期の4つで決まります。
- 対象は登録されたIT導入支援事業者が登録したITツールだけ。ITツール検索では生成AIと生成AI以外のAIの2区分で絞り込めるが、表示は支援事業者の申告に基づく
- 汎用的な生成AIチャットは汎用プロセスとして登録されている可能性があり、その場合は業務プロセスを持つツールとの組み合わせが必要と読める
- AIの搭載は加点項目にない。クラウド製品の選定は加点1番目
- 無料版、利用金額が定まらない従量課金、支援事業者を通さない直接契約、既存契約の追加ライセンスは対象になりにくいと考えられる
- 交付決定前の契約・発注・支払いは対象外。次の締切は5次9月29日、6次10月30日、7次12月1日
- 利用料の補助は最大2年分。3年目以降は全額自社負担で、効果報告は2031年1月まで続き、途中の解約は辞退扱いと返還の可能性がある
- 社内ルール、入力情報の線引き、利用状況の記録、待つ間の社員の利用は、補助金の外側で自社が用意する
補助金は、入れたいツールがたまたま条件に合うときに使うものであり、補助金に合わせてツールや時期を決めるものではありません。まずITツール検索で候補を確かめ、補助がある場合とない場合の3年目以降までの総額を並べてから判断してください。法人のAI活用に関する他の記事はAI活用コラム一覧をご覧ください。
補助金を待つ間も、会社として使える環境を
補助金の対象になるのは登録されたITツールだけです。候補が対象かどうかと、補助金がない場合の月額を並べて判断してください。補助金を待つ間も社員の個人利用は続くため、学習させない設定・利用ログの管理・社員への配布・複数AIの使い分けができる環境を先に用意する選択肢もあります。UPGEAR AIは、ChatGPT・Claude・Gemini・Perplexityを1画面で切り替えて使える法人向けAI基盤です。全モデルで学習非利用を標準適用し、管理者ダッシュボードで利用ログ・権限・モデルのON/OFFを管理できます。会話履歴・利用ログ・アカウントは国内サーバー(AWSの日本リージョン)で管理します。UPGEAR AIの料金は月額30,000円(税抜)からで、ユーザーごとの課金はありません(人数の目安はライト1〜5名、スタンダード6〜20名、プレミアム21〜50名)。初期費用100,000円(税抜)が別途かかります。
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