Copilotは必要か。会社で有料版を入れるかを決める損益分岐と5つの問い

Copilotが必要かという問いで対象になるMicrosoft 365 Copilotとは、法人のMicrosoft 365に1人ずつ追加する有料のAIアドオンのことです。社内のメールや会議、ファイルをまたいで答えさせたい業務があり、その業務をする方を名指しできる会社なら、まずその方だけに入れる価値があります。時給3,000円で計算すると、年払いの席は1人が月に約63分短くなれば元が取れるため、全員に配るより使う方に絞るほうが回収しやすくなります。そうした業務が見当たらないうちは、追加料金なしのCopilot Chatを会社のアカウントで使い、判断を先に延ばしても困りません。

「Copilot いらない」の声は3種類ある

Copilotについての「いらない」という声は、個人のWindowsに出てくる無料のCopilotへの不満、Copilot+ PCというパソコンの買い替えの話、会社が有料版に払うかどうかの判断、の3つに分かれます。検索結果にもこの3つが混ざって並ぶため、読む記事によって結論が正反対に見えてしまいます。ここで扱うのは3つ目の、社員10〜200名の会社がMicrosoft 365 Copilotの有料アドオンを入れるべきか、という問いだけになります。

機能の一覧と3段階のライセンスはMicrosoft 365 Copilotでできること|ライセンス3段階と前提条件、人数別の総額はMicrosoft 365 Copilotの料金|2年目以降を含む人数別総額にまとめました。ここでは、入れるか入れないかを決める材料だけに絞って見ていきます。

Copilot+ PCは、AIの処理を得意とする部品を積んだパソコンの種類の名前で、ソフトの契約ではありません。公式ドキュメントが前提条件に挙げているのはMicrosoft 365のライセンスやMicrosoft Entraのアカウントなどで、有料版を入れるかどうかとパソコンの買い替えは別々に決めることが出来ます。Copilotという名前の付いた製品の全体像はCopilotとは|種類の違いを1枚で整理で地図にしています。

名前の変化にも注意が要ります。公式ドキュメントの冒頭には、有料版の名前がMicrosoft Copilotへ、法人の無料チャットの名前がMicrosoft Copilot Chatへ変わったという注記があります。一般法人向けの料金ページは今もMicrosoft 365 Copilot Businessという表記のため、以下では有料のアドオンをMicrosoft 365 Copilot、無料のチャットをCopilot Chatと呼んで区別します。

最初の判断軸は、Microsoft 365を毎日の仕事で使っているか

有料版を検討する前に、社員がWord・Excel・Outlook・Teamsを毎日の仕事でどれだけ開いているかを確かめてみてください。有料版の強みは、これらのアプリの中で動き、社内のメールや会議、共有フォルダーのファイルを踏まえて答えられる点にあります。会議はZoom、資料はGoogleドキュメント、社内の連絡は別のチャットツールという会社では、有料版が読める材料そのものが社内に溜まっていません。

見積もりはExcel、報告書はWord、顧客とのやり取りはOutlook、社内の打ち合わせはTeamsという会社なら、有料版が読む材料は毎日増えていきます。判断の出発点は、AIの性能の比較ではなく、自社の仕事がMicrosoft 365の上に載っているかどうかになります。同じ会社の中でも、管理部門はMicrosoft 365の上で働き、現場は紙と電話で動いているという差はよく見られるものです。

部署ごとに、どのアプリで一日を過ごしているかを書き出す

全社でひとまとめに考えると、使う部署と使わない部署の差が見えなくなってしまいます。部署ごとに、メール・会議・資料づくり・表計算のそれぞれを、どのアプリでしているかを1行ずつ書き出してみましょう。Microsoft 365のアプリが3つ以上並ぶ部署が、有料版の候補になる部署です。

Microsoft 365 管理センターの準備状況レポートを使うと、どの社員が技術的にCopilotの対象になるかも洗い出せます。ライセンスの種類やメールボックスの条件で対象から外れる社員がいれば、その方を候補から除いたうえで人数を数えましょう。前提条件の細かな中身は親記事にまとめてあるので、ここでは対象になる人数だけを押さえておいてください。

Copilotがいらないと言われる4つの理由

有料版がいらないと判断される理由は、使う機会が少ない、教育とルールがない、組織の課題には向かない、費用が見合わない、の4つにほぼ集約されます。どれも製品の欠点というより、会社の側の準備と使い道の問題となります。

使う機会が少ない

文章の下書きや翻訳、Webの調べものが中心なら、追加料金なしのCopilot Chatや他の生成AIでも足りてしまいます。有料版でしか出来ないのは、社内のメール・会議・ファイルを自動で横断した回答や、アプリ内での優先アクセスといった部分が中心になります。その作業が週に何回あるかを、部署ごとに数えてみましょう。

教育とルールがないと、一部の人しか使わない

ライセンスを配っただけでは、もともとAIが好きな一部の方しか使わない状態になりがちです。何を聞けばよいか分からない方、誤りが怖くて使えない方、入力してよい情報が分からない方は、画面にCopilotのボタンがあっても押しません。最初の1か月に、部署ごとの使い方の例を3つずつ配り、入力してよい情報の線引きを文書で示すだけでも、使う方の数は変わってくるでしょう。ルールづくりの土台は生成AIの社内ガイドラインの作り方にまとめています。

組織の課題には向かない

部署の間で情報が回らない、社内の問い合わせが総務に集中する、といった組織の課題は、1人ずつに配るAIでは解きにくい課題です。Copilotの席を配るだけでは、問い合わせ窓口のように会社全体の知識を1か所で答える仕組みにはなりません(社内向けのエージェントを作る場合は別の設計が要ります)。課題が組織の側にあるなら、先に業務の流れを整えるほうが近道となります。

使わない人に配った席は、費用だけが残る

有料版はユーザーごとの課金で、席を割り当てた人数分の費用が毎月かかります。使っても使わなくても金額は同じため、使わない方に配った席は、効果のないまま費用だけが残ってしまいます。20席を配って実際に使うのが10名なら、使っている方の1席あたりの費用は2倍に膨らむ計算です。この実質の単価の出し方は、後の節で数字にしています。

まず無料のCopilot Chatで足りるかを見る

対象のMicrosoft 365を契約している会社なら、職場のアカウントを持つ社員はCopilot Chatを追加料金なしで使えます。料金ページでも、Copilot Chatの欄には「含まれています」と書かれています。ただし、アプリの中で使える範囲は一部で、組織のデータを使うエージェントは従量課金となります。

無料と有料の差は、社内のデータを自動で読みにいくかどうかにあります。無料のCopilot Chatでも、資料を貼り付けたりアップロードしたりすれば要約や下書きは作れますが、Microsoft Graphという社内のメールやファイルをつなぐ仕組みには届きません。Outlookの中では、アドオンがなくても受信トレイや予定表、会議についての限られた質問には答えられます。それでも、メール・会議・ファイルをまたいで自動で材料を集め、先月の取引先とのやり取りを踏まえた報告書の骨子を作る、といった依頼に応えるのは有料版の区分です。

判断の順番としては、まず全員に無料のCopilot Chatを使ってもらい、貼り付けでは手間がかかりすぎる業務が出てきた方から有料を検討するのが無理のない流れになります。無料版の範囲とアプリごとの違いはCopilotの無料版と有料版の違い、試用の組み立て方はCopilotの無料体験・試用の進め方で扱っています。管理者が[Microsoft Copilot セルフサービス購入]を[試用版のみを許可]にすれば、社員は無料で試せて、期間が過ぎても自動で有料には切り替わりません。料金ページの[無料で試す]は1か月後に有料へ切り替わる別の入口なので、混同しないようにしましょう。

有料版の料金|1人ずつの席に付く課金

一般法人向けのMicrosoft 365 Copilot Businessは、年払いで1ユーザーあたり月3,148円相当、月払いで月3,778円の料金です。2026年7月1日から12月31日までの申込で、対象プランを使っている既存の顧客が年間契約を結ぶ場合に限り、初年度だけ月2,698円相当に下がる割引があります。大企業向けのMicrosoft 365 Copilotは年払いで月4,497円相当と表示されており、一般法人向けは最大300ユーザーまでとなります。いずれも対象のMicrosoft 365のライセンスが別に必要で、Copilotの料金はその上に乗る追加の費用です。

社員20名に年払いで付けると、毎月62,960円、年間では755,520円の上乗せとなってしまいます。割引の2,698円は初年度だけなので、2年目からの予算は3,148円で組んでおきましょう。料金ページの注記には、年間契約は自動で更新され、年ごとの定期請求の対象になるとも書かれています。

※料金は2026年9月20日時点でMicrosoftの公式料金ページ(一般法人向け・大企業向け)に表示されている金額で、いずれも税抜です。割引は初年度のみのため、本文の計算は通常価格を基本にしています。割引は予告なく変更・終了される場合があります。

損益分岐の早見表|月に何分の時短で元が取れるか

有料版の元が取れるかは、1人あたりの月額を時給で割ると、月に何時間短くなれば足りるかという形で見えてきます。式は、月額÷時給×60=元が取れる時短(分/月)です。年払いの3,148円を時給3,000円で割ると約1.05時間、分に直すと約63分となります。

1人あたりの月額(税抜)時給2,000円時給3,000円時給4,000円時給3,000円で1日あたり(月20日)
年払い 通常 3,148円約94分約63分約47分約3.1分
年払い 初年度割引 2,698円約81分約54分約40分約2.7分
月払い 3,778円約113分約76分約57分約3.8分
大企業向け 年払い 4,497円約135分約90分約67分約4.5分

時給は、会社が社員1人に払う1時間あたりの人件費を仮に置いた例です。給与だけでなく社会保険料などを含めると実際の人件費は給与より高くなるため、自社の数字に置き換えて計算してみてください。時給3,000円の方なら、月20日働くとして1日あたり約3分の時短で年払いの席代をまかなえる計算になります。

1日3分をどう数えるか

1日3分という数字は小さく見えますが、元が取れたかを確かめるには、何の作業で何分短くなったかを記録する必要があります。会議の議事メモを作る時間、長いメールのスレッドを読む時間、報告書の下書きの時間など、測る作業を1人2〜3個に決めてから始めてみましょう。測る作業を決めずに配ると、効果は「なんとなく便利」という感想しか残らず、更新のときに判断の材料がなくなってしまいます。使っている方の平均が63分でも、使わない席があれば会社全体では回収できていません。短くなった時間を別の仕事に回せているかまで見ると、数字の説得力が上がります。

使われない席まで含めた実質の単価

配った席のうち実際に使われている割合で月額を割ると、使っている方1人あたりの実質の単価が出ます。管理センターのMicrosoft Copilotの使用状況レポートには、ライセンスを持つ有効なユーザーのうち、実際に使ったアクティブ ユーザーの割合がアクティブ ユーザー率として表示されます。Microsoftの説明では、Copilotのアイコンを押して画面を開いただけでは数えられず、プロンプトを送るなど意図的な操作をした方だけがアクティブに数えられる仕組みです。

年払いの3,148円で、アクティブ ユーザー率が50%なら実質の単価は6,296円になり、時給3,000円の方で月約126分の時短が必要となります。率が80%なら実質3,935円、必要な時短は月約79分です。使われない席が増えるほど、残りの方に求められる時短は長くなっていきます。

レポートの期間は7日・28日・90日・180日から選べ、ユーザーごとのアクティブな日数や最終利用日もCSVで書き出せます。アクティブ ユーザー率は期間中に1回でも使えば数えられるため、1人ひとりのアクティブな日数も合わせて見ると実態に近づきます。ユーザー名などは既定で非表示になっており、名前つきで見るには設定を変える必要があります。更新前の見直しでは、この率と最終利用日を並べて、席を残す方と外す方を決めていきましょう。

※使用状況レポートの指標名と定義は、2026年9月20日時点でMicrosoft Learnの「Microsoft Copilot の使用状況レポート」に記載されている内容です。管理センターの画面の表記は更新で変わることがあります。

ライセンス料の外にかかる費用も円に直す

導入の初年度には、ライセンス料のほかに、社員の研修、ルールづくり、共有範囲の棚卸しに社内の時間がかかります。どれも請求書には出てこない費用ですが、時間×人数×時給で円に直すと、ライセンス料と同じ土俵で比べられます。

共有範囲の棚卸しが要る理由

有料版は、その社員がアクセスできる社内のファイルを回答の材料に使います。Microsoftの導入準備のドキュメントには、SharePointの共有設定は既定で共有を広く許す側になっているという趣旨の記載があります。本来は見せるつもりのなかった人事や給与のファイルが全員に共有されたまま残っていると、Copilotの回答を通じて目に入ってしまうおそれも出てきます。Copilotがアクセス権を超えて読むわけではなく、今のアクセス権の設定がそのまま回答の範囲になる点を押さえておきましょう。

初年度の総額の例

社員20名に年払いで付ける会社で、仮の数字を置いて計算してみます。

  • ライセンス料 20名×3,148円×12か月=755,520円
  • 研修 2時間×20名×時給3,000円=120,000円
  • ルールづくり 総務の担当者が10時間×時給3,000円=30,000円
  • 共有範囲の棚卸し 情シスの担当者が20時間×時給4,000円=80,000円

合計は985,520円となり、1人1か月あたりに直すと約4,106円です。この金額で損益分岐を計算し直すと、時給3,000円の方で月約82分の時短が必要になります。ライセンス料だけで見ると63分、社内の時間まで含めると82分と、ハードルは3割ほど上がります。研修やルールづくりの時間は2年目に大きく減るため、2年目以降の実質の単価はライセンス料に近づいていきます。

※時間と時給はすべて仮の例です。自社の人数と時給に置き換えて計算してください。

年払いは途中でやめにくい|解約の条件も判断材料にする

年払いは月払いより安い代わりに、途中でやめても払った分が戻らない場合がある点を先に知っておきましょう。Microsoft Learnの解約のページによると、課金アカウントがMicrosoft 顧客契約(MCA)の場合、日割りのクレジットや返金を受けられるのはサブスクリプションの開始か更新から7日以内に取り消したときだけです。7日を過ぎた後は、継続請求をオフにして次の更新を止め、期間の終わりまで使い続ける形になります。

マイクロソフト オンライン サブスクリプション契約(MOSA)の場合は、開始や更新の後に解約すると日割りのクレジットか返金を受けられると書かれており、課金アカウントの種類で扱いが変わります。自社がどちらに当たるかは、同じページが案内している課金アカウントの種類の確認方法で確かめてみてください。料金ページでも、割引の注記には購入後7日間は日割りで返金するとあり、別の注記には、キャンセルの扱いは状況や製品で異なり、キャンセル料が発生する場合もあると書かれています。

※解約の条件は、2026年9月20日時点でMicrosoft Learnの「Microsoft 365 管理センターでサブスクリプションを取り消す」と公式料金ページの注記に記載されている内容です。MCAの課金アカウントで販売店を通じて購入した場合は、解約の窓口が販売店になると案内されています。

小さく始めるなら月払いも選べる

年払いの3,148円は、月払いの3,778円より毎月630円安くなります。1年続けた場合は月払いが45,336円、年払いが37,776円となり、1席あたり年7,560円の差で年払いのほうが安く済みます。ただし年払いの1年分37,776円は、月払いのほぼ10か月分(37,780円)にあたる金額です。MCAで7日を過ぎると返金がない場合、10か月より前にやめれば月払いのほうが安くなります。MOSAであれば年払いの途中で解約しても日割りの扱いになるため、この計算は当てはまりません。続けるか分からないうちは最初の数か月を月払いにし、使う方と使い道が固まった席から年払いで契約し直す、という順番も考えられます。

Officeの中で動くのが強み|ChatGPTなどとの使い分け

Copilotと、ChatGPT・Claude・Geminiのような汎用の生成AIとの大きな違いは、Word・Excel・Outlook・Teamsの中で動き、有料版では社内のデータを踏まえて答えられる点にあります。開いているExcelの表をその場で分析する、Teamsの会議の後に決まったことを確かめる、といった作業はアプリの外に出る必要がありません。一方で、長い文章の推敲、Webの最新情報の調査、プログラムのコードを書く作業などは、AIごとに得意不得意が分かれると感じる方も多いでしょう。ChatGPTとの違いを料金・社内データの扱い・管理の面から細かく比べた内容はChatGPTとCopilotの違いにまとめています。

実際の会社では、Officeの中の作業はCopilot、それ以外の文章づくりや調べものは別のAI、と用途で使い分ける形がよく出てきます。4つの生成AIの得意な作業はChatGPT・Claude・Gemini・Perplexityの使い分けで整理しています。複数のAIを使うと、契約と管理画面、入力ルールの確認先がAIの数だけ増えてしまう点にも気を付けてください。複数のAIを1つの環境でまとめる考え方はマルチAI(複数の生成AIを1つの環境で使う方法)にまとめました。

Copilotを決める前に、複数のAIを1つの契約で比べる

Office以外の作業にもAIを使うなら、使う環境を会社で1つに決めて複数のAIを比べる方法もあります。UPGEAR AI(アップギアAI)は、ChatGPT・Claude・Gemini・Perplexityを1つの契約で使える法人向けサービスです(人数無制限)。

5つの問いで決める|入れる・一部の人だけ・今は入れない

ここまでの材料を、5つの問いにまとめました。上から順に答え、いいえが出たところで止まって、その行の結論と次の行動に進んでください。

  1. 社内のメール・会議・ファイルをまたいで答えさせたい業務はありますか。いいえなら、今は入れないが結論です(Copilot Chatで足ります)。
  2. その業務を、Word・Excel・Outlook・Teamsの中で行っていますか。いいえなら、今は入れないが結論です(アプリの外の作業が中心のため)。
  3. 有料を配る人を名指しできますか。誰も名指しできなければ今は入れない、一部だけ名指しできるなら一部の人だけとなります。
  4. SharePoint・OneDriveの共有範囲の棚卸しは終わっていますか。いいえなら、今は入れないが結論です(棚卸しを先に行います)。
  5. 効果を測る作業と、測る人は決まっていますか。いいえなら、一部の人だけとなります(月払いで小さく始め、測り方を決めます)。
結論当てはまる答え次にやること
入れる5つともはいで、配る人が使う部署の大半を占める使う部署の全員に年払いで付け、3か月後にアクティブ ユーザー率と測る作業の時間を確かめる
一部の人だけ問い3で名指しできるのが一部、または問い5がいいえ名指しした方だけに月払いで付け、測る作業を決めて3か月で判定する。続けると決めた席は年払いへ切り替える
今は入れない問い1・2・4のどれか、または問い3がいいえCopilot Chatを会社のアカウントで使い、足りない条件を整えて半年後に答え直す

問い4で止まった会社は、入れないと決めたのではなく、先にやることが決まった段階となります。棚卸しが終わり次第、問い5に進めば判断を先に延ばす必要はありません。迷ったときは、全員に配るより一部の人だけに付けるほうが、失うお金は小さく済みます。一部の人だけで始めた会社も、3か月後に同じ5つの問いに答え直してみてください。

Copilotが必要な会社・今は要らない会社の条件

5つの問いを、会社の状態に置き換えると次のようになります。自社がどちらに多く当てはまるかを、部署ごとに数えてみましょう。

必要性が高い会社

  • 顧客や取引先とのメールが多く、過去のやり取りをまとめて報告する業務がある
  • Teams会議が多く、議事録や決定事項の整理に時間を取られている
  • ExcelとWordで作る定型の資料が多く、作る担当者が決まっている
  • 共有フォルダーの権限が部署や取引先ごとに整理されている
  • AIの使い方を部署に広める担当者がいる

今は要らない会社

  • 社内の連絡や会議がMicrosoft 365の外にある
  • AIを使う作業が、文章の下書きや調べものにとどまっている
  • 共有フォルダーの権限が長く見直されていない
  • 配っても使うか分からない方が多い
  • 効果を測る担当者がいない

今は要らない側に当てはまっても、それは有料版がいらないという結論ではなく、今の時点では払う理由がまだ弱いという状態です。条件は半年ほどで変わることもあるため、判定の結果と日付を記録に残しておきましょう。

人数別のモデルケース|誰に何席付けて何を測るか

条件を当てはめたときの結論を、規模の違う3つの会社の例で示します。会社は架空の例で、金額は年払いの通常価格か月払いの価格(税抜)で計算しています。

社員10名の会計事務所

所長を含む10名で、顧問先とのやり取りはOutlook、申告書の周りの資料はExcelとWordで作っている事務所を想定します。問い1と2ははいですが、顧問先の資料が入った共有フォルダーの権限は担当者ごとに分けきれておらず、問い4で止まります。この場合の結論は今は入れないで、先に共有フォルダーの権限を顧問先ごとに見直すことになります。見直しが終わったら、顧問先とのメールが多い所長と事務長の2名にだけ月払いで付けると、月7,556円で試せる計算です。

社員40名の製造業(管理部門)

現場の社員は工場の端末をあまり使わず、Microsoft 365を毎日使うのは総務・経理・購買の管理部門8名という会社を考えます。管理部門は取引先とのメールと社内の会議が多く、問い1から4まではすべてはいとなりました。ただし効果を測る担当が決まっていないため、問い5でいいえとなり、結論は一部の人だけとなります。まず8名に月払いで付けると月30,224円で、時給3,000円なら1人あたり月約76分の時短が回収の目安です。3か月後の判定で続けると決めた席を年払いに切り替えれば、8名で月25,184円、年間302,208円となり、目安は月約63分まで下がります。切り替えの手順と時期は、管理センターの表示か購入した販売店で確かめてください。測る作業は、取引先とのメールのスレッドを読む時間と、月次の会議資料を作る時間の2つに絞ると決めやすくなります。

社員150名の卸売業

営業担当が外回り中心で、社内の連絡は主に電話と別のチャットツール、Microsoft 365を毎日使うのは本社の30名ほどという会社です。全員に年払いで付けると月472,200円、年間5,666,400円にのぼり、問い2の段階で多くの社員がいいえとなってしまいます。本社の30名も、共有フォルダーの棚卸しと効果の測り方が決まっていないため、結論は今は入れないとなります。その代わりに、Copilot Chatを会社のアカウントで全員に使わせ、入力してよい情報のルールを配り、半年後に本社の部署から問い1に答え直す段取りを組むのが現実的でしょう。

稟議に書く7項目とひな形

社内の稟議では、目的、対象者と人数、費用、効果の見込み、リスクと対策、評価の時期と指標、やめる条件の7項目をそろえると、承認する側が判断しやすくなります。やめる条件まで最初に書いておけば、更新のときに議論を一からやり直す手間も減ります。ひな形は40名の製造業の例で書いていますので、人数と金額を自社に合わせて書き換えてください。

件名:Microsoft 365 Copilot(有料アドオン)の試行導入について

1. 目的
管理部門の取引先対応と会議資料の作成にかかる時間を減らす。

2. 対象者と人数
総務3名・経理3名・購買2名の計8名(氏名は別紙)。その他の社員は追加料金なしのCopilot Chatを会社のアカウントで利用する。

3. 費用
最初の3か月は月払い:Microsoft 365 Copilot Business 1人月3,778円(税抜)×8名=月30,224円。
3か月後の評価で続けると決めた席は年払いへ切り替え:1人月3,148円相当(税抜)×8名=月25,184円、年302,208円。
初年度の割引(月2,698円相当)は2026年12月31日までの申込・年間契約・既存のMicrosoft 365顧客が条件で、2年目以降は通常価格。割引は予告なく変更・終了される場合がある。
年間契約は自動更新。課金アカウントがMCAの場合、日割りの返金は開始・更新から7日以内の取り消しに限られる。

4. 効果の見込み
時給3,000円で計算すると、月払いの期間は1人あたり月約76分、年払いに切り替えた後は月約63分の時短で費用を回収できる。
測る作業は、取引先とのメールのスレッドを読む時間と、月次の会議資料を作る時間の2つ。導入前の1か月で現状の所要時間を記録しておく。

5. リスクと対策
共有範囲が広すぎるファイルが回答に出るおそれ → 導入前に共有フォルダーの権限を棚卸しする。
回答の誤り → 数字・固有名詞・日付は人が確かめてから社外に出す。
入力してよい情報の線引き → 社内の生成AIガイドラインに従う。

6. 評価の時期と指標
開始から3か月後に、使用状況レポートのアクティブ ユーザー率と、2つの作業の所要時間の変化を報告する。

7. やめる条件
3か月後のアクティブ ユーザー率が50%未満、または時短が損益分岐(年払いで1人月約63分)を下回る場合は、次の更新で席を減らすか解約する。見直しは更新日の60日前から始める。

7の数字は仮の置き方で、自社で決めた損益分岐に合わせて変えて構いません。承認する側が知りたいのは、いくら払って何が何分短くなり、うまくいかなければいつやめるのか、の3点に尽きます。

更新前の見直し手順|やめる条件を先に決めておく

年払いは自動で更新されるため、更新日から逆算して見直しの日程を先に入れておくのが安全です。導入の稟議と同じ日に、やめる条件と見直しの日付まで決めておきましょう。

  1. 更新日の60日前:使用状況レポートの期間を90日にして、ユーザーごとのアクティブな日数と最終利用日をCSVで書き出す
  2. 50日前:最終利用日が30日以上前の方や、アクティブな日数が少ない方を洗い出し、本人と上長に使い道を聞く
  3. 40日前:アクティブ ユーザー率で実質の単価を計算し直し、損益分岐と比べる
  4. 30日前:次の期間の席数を決め、外す席と追加する席を一覧にする
  5. 更新の前日まで:やめる席があれば継続請求の設定や席の減らし方を、管理センターの表示か購入した販売店で確かめて手続きする
  6. 更新後7日以内:課金アカウントがMCAなら、この期間の取り消しに限り日割りの返金があるため、手続きの漏れを確かめる最後の日にする

使用状況レポートの数字は、その日の終わりから通常48時間以内に反映されると案内されているため、見直しの直前ではなく余裕を持って書き出してください。席を減らす手続きの細かな条件は、課金アカウントの種類と購入した経路によって変わります。MCAの課金アカウントで販売店を通じて買った場合は、解約の窓口も販売店になると公式ページに書かれています。

縮小してよい、という前提を社内で共有する

段階導入というと席を増やす話ばかりになりがちですが、使われない席を外すことも同じ手順の一部です。外した席の方は、無料のCopilot Chatに戻るだけで、仕事の道具を失うわけではありません。外す基準を事前に共有しておけば、席を減らす判断が個人への評価のように受け取られることも防げます。

会社で安全に使うには|入れる場合も入れない場合も決めること

有料版を入れるかどうかにかかわらず、会社として決めておきたいのは、学習させない設定、ログの管理、社員への配り方、複数のAIの使い分けの4つです。入れないと決めた会社ほど、この4つを先に整えないと、社員が個人のAIを勝手に使い始めるおそれがあります。

入力したデータは学習に使われるか

職場のMicrosoft Entraアカウントでサインインして使う場合、Copilot Chatから有料版まで、エンタープライズ データ保護の対象になります。公式ドキュメントでは、Microsoft Graph経由でアクセスされるプロンプト、応答、データは基礎となる大規模言語モデルのトレーニングに使われないと説明されています。個人のMicrosoftアカウントでサインインした場合は一般向けのCopilotになるため、業務では会社のアカウントで使うことを社内ルールの1行目に書いておきましょう。

ログの管理と保持

プロンプトと応答は保存され、管理者はコンテンツ検索やMicrosoft Purviewで確認でき、Purviewでは保持の期間も決められます。誰がどのくらい使っているかは使用状況レポート、何を入力したかの記録はPurviewと、目的に応じて見る場所が分かれる点を押さえておいてください。

今は入れない会社がやること

今は入れないと決めた会社でも、社員のAI利用そのものを止める必要はありません。追加料金なしのCopilot Chatを会社のアカウントで使えるようにし、入力してよい情報の線引きを文書で配り、Microsoft 365の外で使うAIもどこで何を使ってよいかを決めておくことが先になります。入れない判断のまま何も用意しないと、社員が個人のアカウントで生成AIを使い、会社から見えない利用が増えてしまいます。会社が把握していないこうした利用はシャドーAI(野良AI)と呼ばれ、情報漏洩の経路にもなり得ます。公認の環境を先に渡すことが、入れない判断をしたときの守りとして効いてきます。

社員への配り方と、複数のAIの使い分け

配り方は、無料のCopilot Chatを全員に、有料版は名指しした方に、Officeの外の作業に使うAIは会社で決めた環境に、という三段で考えると整理しやすくなります。法人向けの生成AIの料金は法人向け生成AI 38サービスの料金比較で並べていますので、Copilotの席の費用と比べる材料にしてみてください。

Copilotの前に、会社のAI環境を1つに決める

UPGEAR AI(アップギアAI)は、ChatGPT・Claude・Gemini・Perplexityを1画面で切り替えて使える法人向けAI基盤です。全モデルで学習非利用を標準で適用し、UPGEAR AI上の利用状況は利用者・日時・利用モデルの単位まで管理画面で確かめられます。使わせるAIは会社で選ぶことができ、会話履歴と利用ログは国内サーバー(AWSの日本リージョン)で管理されます。料金は月額30,000円(税抜)から。どのプランも利用人数は無制限で、料金は利用量に応じたプラン設計です(人数の目安はライト1〜5名、スタンダード6〜20名、プレミアム21〜50名)。初期費用100,000円(税抜)が別途かかります。

UPGEAR AIの詳細を見る

よくある質問

Copilotは会社に必要ですか?
社内のメール・会議・ファイルをまたいで答えさせたい業務があり、その業務をする方を名指しできるなら、その方だけに有料版を付ける価値があります。そうした業務がなければ、追加料金なしのCopilot Chatを会社のアカウントで使い、判断を先に延ばしても困らない場合が多いです。
Copilotの費用対効果はどう計算しますか?
1人あたりの月額を時給で割って60を掛けると、元が取れる月の時短(分)が出ます。年払いの3,148円(税抜)を時給3,000円で計算すると約63分です。使われない席がある場合は、月額を使用状況レポートのアクティブ ユーザー率で割った実質の単価で計算してください。
Copilot+ PCを買わないとCopilotは使えませんか?
Copilot+ PCはパソコンの種類の名前です。Microsoft 365 Copilotの前提条件として公式ドキュメントに挙がっているのはMicrosoft 365のライセンスやMicrosoft Entraのアカウントなどで、有料版を入れるかどうかとパソコンの買い替えは別々に判断できます。
年払いのCopilotは途中で解約できますか?
課金アカウントがMicrosoft 顧客契約(MCA)の場合、日割りの返金を受けられるのは開始か更新から7日以内の取り消しに限られます。それを過ぎると継続請求をオフにして、期間の終わりまで使う形です。マイクロソフト オンライン サブスクリプション契約(MOSA)では扱いが異なるため、自社の課金アカウントの種類を確かめてください。
Copilotに入力した内容は学習に使われますか?
職場のMicrosoft Entraアカウントでサインインしていればエンタープライズ データ保護の対象となり、Microsoft Graph経由のプロンプト・応答・データは基礎となる大規模言語モデルのトレーニングに使われないと公式に説明されています。業務では個人のアカウントではなく、会社のアカウントで使うようにしてください。
一部の社員だけに有料版を付けることはできますか?
できます。有料版は1人ずつライセンスを割り当てる課金のため、名指しした方にだけ付け、ほかの社員は追加料金なしのCopilot Chatを使う形が取れます。

まとめ

Copilotが必要かどうかは、社内のメール・会議・ファイルをまたぐ業務があるか、その業務をする方を名指しできるかで大きく決まります。年払いの席は時給3,000円の方で月約63分の時短が回収の目安ですが、使われない席や研修の時間まで含めると、求められる時短は長くなっていきます。迷ったら一部の方だけに月払いで付け、測る作業とやめる条件を稟議に書いてから始めてみてください。入れないと決めた場合も、Copilot Chatと社内ルールで公認の環境を先に用意しておきましょう。法人のAI活用に関するほかの記事はAI活用コラム一覧にまとめています。