ChatGPTの活用事例。企業が使っている環境と公表された数字を一次資料で整理

ChatGPTの活用事例とは、企業や自治体がChatGPT、またはOpenAIのモデルを使った社内環境を業務に取り入れ、その用途や成果を公表したものです。一次資料で確かめると、名前の挙がる会社は現在どこも会社として契約した環境や自社専用の環境で使っており、MIXIのように個人向けのPlusを補助する形から会社の契約へ一括で移った会社もあります。公表されている数字の多くは社員アンケートにもとづく各社の発表で、第三者が検証したものはほとんどありません。以下では9つの事例を、使っている環境・用途・数字の出どころで整理し、社員10〜200名の会社が真似できる形に直していきます。

事例を読む前に分けたい3つの物差し

ChatGPTの事例を正しく読むには、「どんな環境で使ったか」「誰が発表した数字か」「いつの話か」の3つを分けて見るのが近道です。同じ「ChatGPT導入」という見出しでも、中身は会社によってまったく違うことがあります。

物差し1:どの環境で使ったか

1つ目の形は、OpenAIと会社として契約するChatGPT EnterpriseやChatGPT Businessになります。ChatGPT Businessは、2025年8月29日にChatGPT Teamから名前が変わったプランで、OpenAIのヘルプに名称変更の案内が載っています。2つ目は、MicrosoftのAzure OpenAI Serviceなどを使ってOpenAIのモデルを自社専用の環境に組み込み、社内版のChatGPTとして社員に配るやり方を指します。3つ目は、自社のサービスの中にOpenAIのモデルを組み込み、お客様向けの機能として提供する形で、社内の業務効率化とは目的が違ってきます。

検索で上位に出る記事では、この3つが同じ列に並べられていることが多く、比べるときに混乱の元となってしまいます。本記事の事例には、どの形なのかを必ず添えました。

物差し2:誰が発表した数字か

事例の数字には、会社自身がプレスリリースで出したもの、OpenAIが取材して自社サイトに載せたもの、大学などと共同で検証したものの3種類があります。前の2つは、どちらも会社側が社員アンケートなどで集めた数字をもとにしていることが多く、外部の機関が確かめた値ではありません。削減時間の数字は「その会社がそう発表している」と受け止めるのが正確になります。3つ目の共同研究は、今回確かめた事例の中ではビズリーチの1件だけでした。

物差し3:いつの話か

ChatGPTの企業導入は2023年に一気に広がったため、よく引用される事例には2023年の発表が今も多く残っています。当時はChatGPTの法人向けプランが日本で広く使われる前で、三菱UFJ銀行のように、Azure上に自社専用の環境を作る会社がありました。その後、同じ会社がChatGPT Enterpriseへ移った例もあり、発表の年を見ないと今の姿を読み違えてしまうでしょう。本記事では、事例ごとに発表日を書いています。

企業・自治体のChatGPT活用事例9件|会社名・環境・用途・公表された数字

ここでは、各社のプレスリリースやOpenAI公式の事例ページを2026年9月27日に開いて確かめた事例だけを並べました。まとめ記事にだけ載っている数字や、一次資料で見つからなかった数字は入れていません。各事例の囲みには、発表日・発表した主体・使っている環境・公表された数字の種類を添えています。

1. MIXI|ChatGPT Plusの補助からEnterpriseへ一括移行

発表日:2025年8月20日(OpenAI公式の事例ページ)、2025年8月21日(同社プレスリリース)
発表した主体:同社発表とOpenAI公開の事例
環境:ChatGPT Enterprise(2025年3月から全従業員。2025年4月時点で約2,000名)
数字の種類:社員アンケート(有効回答338件)からの同社の見込み値
出典:MIXIのプレスリリース/OpenAIの事例ページ

MIXIは、希望する従業員にChatGPT Plusの利用料を補助し、1,000人以上が使っていた会社です。OpenAIの事例ページによると、個人向けのPlusを会社で使うには「AIの学習についての設定」や「社内情報の扱いに関するルール整備」が壁になっていました。取締役の村瀬氏は、入力した情報を安全に使うには一人ずつアカウント設定をする必要があった、と振り返りました。そこで2025年3月にChatGPT Enterpriseへ一括で移り、OpenAIの支援を受けて約1.5か月で全社導入を終えたと紹介されています。

同社のプレスリリースでは、導入から3か月未満で週1回以上使う人の割合が80%に達し、1,800個以上のカスタムGPTが社員の手で作られたと発表しました。OpenAIの事例ページでは同じ時期の数を「1,600個以上」と書いているため、数を引用するときは出典ごとに分けておくのが安心です。全社の削減時間は月間約17,600時間の見込みで、利用者1人あたり月約11時間に当たるとしています。

総務や経理の方に参考になるのは、部門ごとの使い方でしょう。法務部では利用規約を確認するカスタムGPTを作り、1件30分〜1時間かかっていた確認が約10分になったと発表されています。予算の申請や問い合わせに答えるボットでは、1件あたりの所要時間が約50%減り、年間約150時間の効率化を見込んでいると発表されました。

2. Zenken|全社導入の3か月後にアンケートで効果を測る

発表日:2025年4月24日
発表した主体:同社発表(PR TIMES)
環境:ChatGPT Enterprise(2024年1月に一部社員で先行導入、2024年11月から全社員)
数字の種類:全社導入3か月後の社内アンケート(有効回答380)などにもとづく同社発表
出典:Zenkenのプレスリリース

Zenkenは、ChatGPT Enterpriseを全社員に入れた効果を細かい業務の単位で公表している会社です。発表によると、全社で月間約12,500時間の工数が減り、社員1人あたりでは月5〜15時間の余った時間が生まれたとされています。外部への委託費は、先行導入の期間を含めた2024年通年で前年より約5,000万円減ったと同社は説明しました。

業務ごとの数字も具体的で、メール作成は1通10分から3〜5分へ、提案書の作成工程は8〜10時間から4〜6時間へ短くなった例が挙げられています。メールの誤字脱字や表記ゆれが60%減ったという品質面の数字もあり、速さだけでなく仕上がりの変化まで追っている点が特徴的です。ただし、どの数字もアンケートなどによる同社の集計である点は押さえておきましょう。

3. 三井不動産|部門ごとに推進役を置いてカスタムGPTを500件

発表日:2025年12月23日
発表した主体:同社発表
環境:ChatGPT Enterprise(2025年10月1日から約2,000人の全社員)と、Microsoft Azure上の内製AI開発環境の併用
数字の種類:運用中のカスタムGPTの件数(実績)と業務削減時間10%以上(目標)
出典:三井不動産のニュースリリース

三井不動産は、全社85部門から約150名の「AI推進リーダー」を選び、現場で使うカスタムGPTを作る役を任せました。利用開始から約3か月で約500件のカスタムGPTが動いていると発表されており、例として物件情報の参照・要約、経理部の経理処理アシスタント、広報部のプレスリリース下書き支援が挙がっています。全社員向けの研修には延べ1,300人が参加したそうです。

業務削減時間10%以上は、これから目指す目標として書かれています。実績の数字として扱わないよう注意してください。また、社長の考え方を再現したAIエージェントなどは、ChatGPT Enterpriseとは別に作った内製環境の成果です。

4. 三菱UFJ銀行|Azure上の社内版から約35,000人のEnterpriseへ

発表日:2023年9月4日(MUFGのDXサイトの記事)、2025年11月12日(同社発表)、2026年7月7日(OpenAI公式の事例・英語)
発表した主体:同社発表とOpenAI公開の事例
環境:2023年はAzure OpenAI Serviceと連携した社内版、2026年1月以降はChatGPT Enterprise
数字の種類:研修の受講率・カスタムGPTの件数(実績)と、一部の調査業務での負荷の減り方(社員の報告)
出典:MUFG版ChatGPTの記事/2025年11月の発表(PDF)/OpenAIの事例ページ

三菱UFJ銀行の歩みは、環境の移り変わりがよく分かる事例になります。2023年の記事では、すでに使っていたAzureの基盤上にAzure OpenAI Serviceと連携したアプリを作り、入力したデータがOpenAI側で学習されない形で「MUFG版ChatGPT」を用意したと説明されていました。当時の用途には、稟議書の作成支援や金融レポートの要約、行内手続きの照会など110以上の使い道が集まっていたそうです。

その後、2025年11月の発表で、2026年1月以降に全行員約35,000人がChatGPT Enterpriseを使えるよう順次広げると公表しました。OpenAIの事例ページによると、eラーニングを終えないとEnterpriseを使えない仕組みにし、アカウントを受け取った社員の受講率は100%に達しています。研修後の4か月で1,800個を超えるカスタムGPTが作られ、AIの動向調査や役員向けの報告準備といった一部の調査業務では、社員から20〜30%の負荷の減少が報告されたと紹介されました。担当者は、障壁は技術ではなく、使い方や何に使ってよいかが分からないことだった、と語っています。

5. 三井住友フィナンシャルグループ|Teamsの中で使う専用のAIアシスタント

発表日:2024年3月8日更新(グループのDX情報メディアの記事)
発表した主体:同社発表
環境:グループ専用の環境で動く従業員専用AIアシスタント「SMBC-GAI」(2023年7月から)
数字の種類:1日の利用件数(実績)
出典:SMBC-GAI開発秘話

記事によると、SMBCグループは2023年3月にAzure上でChatGPTが使えるようになったのを機に開発に取りかかり、約4か月でSMBC-GAIを社内に出しました。工夫したのは、毎回Webページを開かなくても済むよう、日頃使うMicrosoft Teamsの中に組み込んだ点だと記事では説明されています。

用途は、専門用語の検索やメールの下地作り、文章の要約・翻訳、プログラムのソースコードの生成と幅広く挙げられていました。1日の利用はリリース当初の約6,000件から約12,000件に増え、2秒に1回使われる計算になるそうです。一方で、指示の出し方によっては期待した答えが返らないという課題もあり、回答の後に具体的な指示の候補を3つほど示す工夫をしたと紹介されています。

6. パナソニック コネクト|OpenAIのモデルで作った社内AI「ConnectAI」

発表日:2024年6月25日
発表した主体:同社発表
環境:OpenAIの大規模言語モデルをベースに開発した自社向けAIアシスタント(国内全社員約12,400人に展開)
数字の種類:社員に削減時間を回答してもらった自己申告の集計
出典:パナソニック コネクトのニュースリリース

パナソニック コネクトは、2023年6月から2024年5月までの1年間で、全社員の労働時間を18.6万時間減らしたと発表しました。12か月のアクセス回数は1,396,639回で、1回あたり平均約20分の削減になったとしています。削減時間は、生成AIを使ってどれだけ時間が減ったかを社員に答えてもらう方式で集めた数字です。

なお、同社が2025年7月に出した発表では、ConnectAIの基盤はOpenAI・Google・Anthropicの3社のモデルに広がっていました。ChatGPT、つまりOpenAIのモデルの事例として引用するなら、2024年6月の発表の数字を使うのが筋でしょう。

7. ビズリーチ|サービスに組み込み、大学と共同で効果を検証

発表日:2023年7月6日
発表した主体:同社と東京大学マーケットデザインセンターの共同研究
環境:自社サービスへの組み込み(職務経歴書の自動作成機能で、OpenAIのGPTモデルに指示を送る形)
数字の種類:ランダム化比較実験(2023年4月20日〜6月23日)
出典:ビズリーチのプレスリリース

ビズリーチは、転職サイトの会員が職務経歴書を作るのを助ける機能に、OpenAIのGPTモデルを組み込みました。東京大学マーケットデザインセンターとの共同研究では、会員に機能を使う・使わないをランダムに割り当てて比べ、使った会員は平均40%多くスカウトを受け取ったと発表しています。

今回確かめた事例の中で、比較の方法まで公開しているのはこの1件だけになります。ただ、これは社員の業務効率ではなく、お客様向け機能の効果です。自社の社員が使う場面の参考にするより、数字の確かめ方の手本として読むのがよいでしょう。

8. 横須賀市|全庁での活用実証と、数字の出し方の公開

発表日:2023年6月5日
発表した主体:市の報道発表と活用実証結果報告
環境:業務用チャット(LoGoチャット)から使うChatGPTのボット(発表時点はGPT-3.5-turbo)
数字の種類:職員アンケートと、条件を明記した概算
出典:横須賀市の報道発表/活用実証結果報告(PDF)

横須賀市は、2023年4月20日から約3,800人の職員を対象にChatGPTの全庁的な活用実証を行いました。約半数の職員が実際に使い、最終アンケートの回答者の約8割が仕事の効率が上がる・使い続けたいと答えています。一方で、ChatGPTに向かない検索目的の利用が約3割あり、6%程度の職員はおおむね不適切な答えが返ってくると答えました。

企業の方に参考になるのは、時間の概算の出し方を式ごと公開している点です。利用者1,913人のうち文書作成に使っている割合29.3%、短縮できる時間1日10分、年243日を掛け合わせ、年約22,700時間と見積もっています。自社で効果を見積もるときの型として、そのまま借りることが出来るでしょう。

9. OpenAIの発表に名前が挙がる企業|ダイキン・楽天・トヨタコネクテッド

発表日:2024年4月14日
発表した主体:OpenAIの発表
環境:ChatGPT Enterprise
数字の種類:なし(社名だけ)
出典:OpenAI、東京オフィスを開設

OpenAIが2024年4月14日に東京オフィスの開設を発表した文章には、ダイキン、楽天、トヨタコネクテッドなどが日本の主要企業としてChatGPT Enterpriseを使っていると書かれています。業務の自動化やデータ分析の支援、社内報告の効率化に使っているとの記載で、人数や時期、効果の数字は示されていません。OpenAIの発表として名前が確認できる、という程度にとどめて読むのが安全です。

9件を使っている環境で並べ直すと

ここまでの9件を、物差し1の環境の違いで並べ直してみます。見出しはどれも「ChatGPTの活用事例」ですが、並べると3つの形がはっきり分かれてきます。

  • OpenAIの法人契約(ChatGPT Enterprise):MIXI、Zenken、三井不動産、2026年以降の三菱UFJ銀行、OpenAIの発表に名前が挙がるダイキン・楽天・トヨタコネクテッド
  • OpenAIのモデルで作った自社専用の環境:2023年の三菱UFJ銀行、パナソニック コネクト、横須賀市
  • 専用環境で動く自社開発のAIアシスタント(Azure OpenAI Serviceの提供を機に開発):SMBCグループ
  • 自社サービスへの組み込み:ビズリーチ

2023年ごろの事例は自社専用の環境が中心で、2024年以降はChatGPT Enterpriseの事例が増えている流れが読み取れます。現在の姿としては、どの会社も会社として契約した環境や自社専用の環境で使っています。MIXIは、会社が補助する個人向けのPlusから、2025年3月にEnterpriseへ一括で移りました。

ChatGPT Enterpriseを入れた国内企業をさらに知りたい方は、ChatGPT Enterpriseの国内導入企業で発表日と人数を整理しています。生成AI全般に広げた事例は生成AIの活用事例をご覧ください。

個人のアカウント任せを、会社の環境に切り替える

事例の会社のように、会社として契約した環境を1つそろえるところから始める方法もあります。UPGEAR AI(アップギアAI)は、ChatGPT・Claude・Gemini・Perplexityを1つの契約で使える法人向けサービスです(人数無制限)。

事例の数字の読み方|同社発表・OpenAI公開・共同研究の違い

事例の数字は、算出の方法を読んでから自社に当てはめるのが基本です。同じ「月◯時間削減」でも、数え方によって意味は大きく変わってきます。

アンケートの下限値から全社に広げた数字

MIXIの月間約17,600時間は、算出方法が注記で公開されています。週に何時間節約できたかという質問への回答329件を、選択肢の下限値で足し合わせると週836時間になりました。これに1か月の平均週数4.33を掛けた月3,620時間を、週1回以上使う約1,600名の規模に引き直したのが17,600時間という流れです。

下限値で数えている点は控えめな集計と言えますが、回答した人と回答しなかった人が同じくらい時間を減らしたという前提が入っています。大きな数字ほど、何人の回答を何人分に広げたのかを確かめてから引用しましょう。今回確かめた9件の中では、算出方法を式で公開していたのはMIXIと横須賀市でした。

回答率が低いアンケートの割合

横須賀市の最終アンケートは、約3,800人の対象に対して回答が433人で、回収率は約11%にとどまります。約8割が効率が上がると答えたという数字は、この433人の中の割合を指します。使ってみて手応えを感じた職員ほど回答しやすい、という偏りが入りうる点は頭に置いておくとよいでしょう。

OpenAI公開の事例と会社の発表の関係

OpenAIの事例ページは、OpenAIが企業に取材して書いた記事になります。会社のプレスリリースより使い方の背景が詳しく書かれていることが多く、MIXIがPlusからEnterpriseに移った理由も事例ページのほうが具体的でした。ただし、数字の多くは会社から提供されたもので、OpenAIが別に測り直したものではありません。MIXIのカスタムGPTの数のように、同じ時期の数字でも2つの資料で食い違うことがあるため、引用する側が出典を1つに決めて書くことが大切です。

比較の方法を明かした共同研究

ビズリーチの事例は、機能を使う会員と使わない会員をランダムに分けて比べた結果として公表されています。社員アンケートと違い、使った人の思い込みが入りにくい測り方と言えます。社内の業務効率化でここまでの比較を公開した例は、今回の調べでは見つかりませんでした。

目標値と実績を分けて読む

発表の中には、すでに出た結果ではなく、これから目指す目標が書かれているものもあります。三井不動産の業務削減時間10%以上は目標で、運用中のカスタムGPT約500件のほうが実績にあたります。三菱UFJ銀行の2025年11月の発表も、約35,000人への展開の計画と用途が中心で、削減時間の数字は載っていません。まとめ記事で大きな時間の数字を見かけたら、元の発表に同じ数字があるかを一度開いて確かめてみましょう。

同じ会社でも、年によって使っている環境が変わる点にも気をつけたいところです。パナソニック コネクトの社内AIは、2024年の発表ではOpenAIのモデルをベースにしたと説明されていましたが、2025年の発表では3社のモデルを組み合わせる形に広がっていました。

事例の会社はどんな環境で使っているか|個人アカウントとの違い

今回確かめた事例の会社は、現在はどこも会社が管理できる環境で使っており、MIXIのように個人向けのPlusから会社の契約へ移った会社もあります。ChatGPT EnterpriseのようなOpenAIの法人契約か、Azure上に作った自社専用の環境かの違いはあっても、会社として契約し、設定とルールを握っている点は共通していました。

個人向けのプランでは学習の設定が一人ずつになる

OpenAIのヘルプでは、無料版やPlusなど個人向けのサービスでは、入力した内容がモデルの改善に使われることがあると説明されています。止めるには、利用者がそれぞれ設定の「データコントロール」で「すべての人のためにモデルを改善する」をオフにする必要があります。これに対して、ChatGPT Business・ChatGPT Enterprise・APIからの入力と出力は、既定でモデルの改善に使われないと書かれています。

MIXIが直面したのは、まさにこの点でした。1,000人以上がPlusを使っていても、学習の設定は一人ずつ任せるしかなく、会社として確かめる手段がありません。三菱UFJ銀行が2023年にAzure上で社内版を作った理由も、入力データがOpenAI側で学習されない環境で使うためと説明されていました。

会社として管理できるかどうかの差

個人アカウントのままだと、誰がどのサービスを使い、何を入力しているかを会社が把握できません。退職した社員のアカウントに業務の会話が残り続けることもあり、会社の側からは止めようがない状態となってしまいます。事例の会社が法人契約や専用環境を選んだのは、便利さよりも、会社として説明できる状態を先に作るためだったと読むことが出来ます。

社員が会社の許可なく個人のAIアカウントで仕事をする状態は、野良AIやシャドーAIと呼ばれています。実態と対策は野良AI(シャドーAI)の記事で詳しく扱いました。まずは自社の社員がどのAIをどのアカウントで使っているかを、一度たずねてみてください。

個人アカウントから移るときに確かめたいこと

個人アカウントから会社の環境へ移るときは、過去の会話やファイルの扱いを先に決めておくことが大切です。OpenAIのヘルプによると、ChatGPT Enterpriseでは組織によって、招待を受けるときに個人用のワークスペースをEnterpriseのワークスペースへ統合するよう求められることがあります。統合すると個人のチャットやファイル、カスタムGPTは組織の管理下に移り、元には戻せないと書かれていました。個人で払っていた有料サブスクリプションは自動で解約され、未使用の期間の分は一部返金されるそうです。

社員が個人で作ったカスタムGPTや会話の中に、業務の情報がどれだけ残っているかは会社からは見えません。移行を案内するときは、業務で使っていた会話を会社の環境に移すのか、個人の側で消してもらうのかを、社員と一緒に決めておくことをおすすめします。

1人あたり・10人あたりに直すと|大企業の数字を自社の規模で読む

大企業の削減時間は、社員数で割って1人あたりに直すと、社員10〜200名の会社でも比べられる大きさになります。18.6万時間や月17,600時間といった総量は、規模が違いすぎて自社の見積もりには使えません。

1人あたりで見ると月約1時間から月15時間まで開きがある

各社の発表の数字を、そのまま人数で割ってみました。割り算に使ったのは発表に書かれた数字だけで、前提をそろえ直したものではありません。

  • パナソニック コネクト:18.6万時間÷約12,400人=1人あたり年約15時間、月にして約1.25時間(全社員数で割った値)
  • 横須賀市:年約22,700時間÷利用者1,913人=1人あたり年約11.9時間、月にして約1時間(文書作成だけの概算)
  • Zenken:同社の発表どおり、社員1人あたり月5〜15時間
  • MIXI:同社の換算どおり、利用者1人あたり月約11時間

同じChatGPTの事例でも、1人あたりにすると10倍ほどの開きがあることが分かります。差が出る理由として考えられるのは、全社員で割るか利用者だけで割るか、文書作成だけを数えるか業務全体を数えるか、といった数え方の違いが挙げられます。他社の数字は目安の幅として使い、自社の値は自社で測るのが確実です。

10人の会社に当てはめると

社員10人の会社に当てはめると、控えめな横須賀市やパナソニック コネクトの水準なら月10〜12時間ほど、MIXIの水準なら月約110時間になります。Zenkenの幅で見ると、月50〜150時間という計算です。どれも他社の発表を割り算しただけの数字で、自社でも同じ時間が浮くと約束するものではありません。

比べる相手として、ChatGPT Businessの料金を置いてみます。OpenAIの公式ヘルプでは、標準シートは月払いで1ユーザーあたり月25ドル、年払いで月20ドルとされています。10人全員に配ると月払いで毎月250ドル、年払いなら年2,400ドルの出費となります。月10時間でも浮けば元が取れると考える会社もあれば、月110時間を前提に計画を立てると外れてしまう会社もあるでしょう。

1時間あたりのコストで比べてみる

浮いた時間と料金を並べると、判断の目安がもう一段はっきりします。10人全員に年払いで配ると年2,400ドルで、1人あたり月1時間しか浮かなければ年120時間に対して1時間あたり20ドルの計算です。MIXIの水準の月11時間が浮くなら年1,320時間となり、1時間あたりでは2ドルを下回ります。同じ料金でも、使いこなせるかどうかで1時間あたりの費用は10倍以上変わってしまいます。

事例の会社が導入と同時に研修や推進役の配置に力を入れているのは、この差を埋めるためと考えられます。料金を比べる前に、社員がどの業務で使うのかを先に決めておきましょう。

※料金は2026年9月27日時点で確認しているOpenAIの公式ヘルプ(ChatGPT Businessの請求とシートの管理)の米ドル表示です。日本から表示した料金ページでは円で表示され、2026年9月16日時点で標準シートは月払い3,850円・年払い3,050円(月額)でした。税の扱いは料金ページに記載がありません。法人向けプランの詳しい比較はChatGPTの法人プランの料金にまとめています。

自社で測るなら横須賀市の式を借りる

自社の効果を見積もるときは、横須賀市が公開した式の形がそのまま使えます。利用者数に、ある業務で使っている人の割合と、1回あたり短くなる時間と、年間の日数を掛けるだけです。たとえば社員30人の会社で、半分の15人がメールの下書きに使い、1日10分ずつ短くなるなら、15人×10分×243日で年約608時間という計算になります。まずは1つの業務に絞って、使う前と使った後の時間を2週間ほど記録してみましょう。

生成AI全般の効果の計算の仕方は、生成AIで業務効率化した事例と効果の計算でも詳しく扱っています。

業務別に見るChatGPTの使い方|事例の会社はこう使っている

ChatGPTの業務での使い方は、メール・要約・翻訳・資料作成・コード・Excelの6つにほぼ集約でき、事例の会社もこの範囲から使い始めて広げていきました。MIXIが社員に聞いた主な使い方も、1位は文章コンテンツの作成と編集でした。

メール作成|Zenkenは1通10分が3〜5分に

メールの下書きは、事例の会社で最初に使われやすい業務の1つになります。Zenkenは、1通10分かかっていたメール作成が3〜5分になったと発表し、誤字脱字や表記ゆれも60%減ったとしています。SMBCグループでもメールの下地作りが用途の1つに挙がっていました。総務であれば、社内通知や取引先への日程調整のメールから試すのが手軽でしょう。

要約|稟議書・レポート・議事録

三菱UFJ銀行は2023年の時点で、金融レポートの要約や稟議書の作成支援を用途に挙げていました。三井不動産でも、物件情報の参照と要約がカスタムGPTの例になっています。長い資料を渡して要点を3行で、と頼む使い方は、社員の数にかかわらず効果が出やすい場面です。

翻訳|海外向けの文面や資料の下訳

SMBCグループは文章の翻訳を、Zenkenは翻訳を含む業務全般で平均30〜50%の時間短縮を挙げています。MIXIの「みてね」の部門では、ネイティブではない社員が海外向けの広告を計画するときに、ブランドに合う表現を指定した言語で作るGPTを使っていると紹介されました。専門的な契約書などは、下訳として使い、最後は人が確認する流れが欠かせません。翻訳の使い方はChatGPTの翻訳でも取り上げました。

資料作成|提案書・プレスリリース・利用規約の確認

Zenkenは提案書の作成工程が8〜10時間から4〜6時間に短くなったと発表し、三井不動産の広報部はプレスリリースの下書きを支援するカスタムGPTを使っています。MIXIの法務部では、利用規約の確認作業が1件30分〜1時間から約10分になりました。資料を一から書かせるより、社内のひな形や過去の文書を渡して形をそろえてもらう使い方が、事例の会社では多く見られます。

コード生成|社員が自分で小さな道具を作る

SMBCグループではプログラムのソースコードの生成が用途に挙がり、Zenkenはバグ修正や原因の特定が50%効率化したとしています。MIXIでは、以前はエンジニアに頼んでいた業務支援ツールを社員が自分で作るようになり、非エンジニアの社員から「プログラマーになった気分」という声が出たと発表されました。専門の担当者がいない会社ほど、この変化は大きく感じられるかもしれません。

Excel関数・データ整理|経理の問い合わせにも

横須賀市の報告では、関数を作る作業をChatGPTに手伝わせ、ほかの担当者に聞かずに済むようになった職員の例が紹介されています。三井不動産の経理部は経理処理アシスタントを、MIXIの経営推進本部は予算の申請や問い合わせに答えるボットを作りました。どちらも、社内の決まりやマニュアルを読み込ませたカスタムGPTという形です。機能ごとの細かな使い方はChatGPTで業務効率化する使い方にまとめていますので、あわせてご覧ください。

ChatGPTを業務で使う際の注意点|情報漏えい・誤った回答・著作権

ChatGPTを業務で使うときの注意点は、入力した情報の扱い、誤った答え、生成物の権利の3つに分けて考えると整理しやすくなります。事例の会社も、この3つへの手当てをしてから全社に広げていました。

入力した情報の扱い

個人向けのChatGPTでは、設定を変えない限り入力内容が学習に使われることがあります。OpenAIの個人向けサービスの説明には、閲覧されたり使われたりしてほしくない機密情報は入力しないでほしい、という趣旨の一文も入っています。個人情報保護委員会は2023年6月の注意喚起で、本人の同意なく個人データを含む指示を入力し、それが回答の出力以外の目的で扱われる場合、個人情報保護法に違反する可能性があると示しました。顧客名や個人情報は、会社の環境であっても入れる前に社内ルールで線を引くことが要ります。

誤った答え(ハルシネーション)

ChatGPTはもっともらしい誤りを返すことがあり、これはハルシネーションと呼ばれています。横須賀市の実証でも、6%程度の職員がおおむね不適切な答えが返ってくると答えていました。検索の代わりに使った利用が約3割あったことも、誤りを増やす原因として報告されています。数字・日付・法令・固有名詞は、必ず元の資料で確かめてから使うようにしてください。

著作権と生成物の扱い

生成した文章や画像を社外に出すときは、既存の作品に似すぎていないかを人の目で確かめる工程が欠かせません。日本の考え方の整理や判断の目安は、生成AIと著作権で公的資料をもとに説明しています。事例の会社が全社員に研修を行ってから使わせているのも、こうした判断を現場任せにしないためと考えられます。

事例の会社はどう手当てしたか

事例の会社は、注意点を研修と仕組みの両方で補っています。三菱UFJ銀行はeラーニングを終えないとEnterpriseを使えない仕組みにし、SMBCグループは回答の後に次の指示の候補を示して、使い方のずれを減らす工夫を取り入れました。横須賀市は、検索の代わりに使う利用が約3割あった結果を公表し、質問や指示の仕方の課題は本格実装を進めながら解決していくとしました。社内で注意点を伝えるときは、禁止事項と一緒に、向いている使い方の例を3つほど添えてみてください。

ChatGPTに聞いてはいけないこと|仕事で禁止されやすい使い方

ChatGPTに聞いてはいけないことは、質問の中身そのものより、入力してしまう情報と、答えを確かめずに使う場面の2つで考えるのが実務的です。会社で禁止されやすいのは、次のような使い方になります。

  • 顧客の氏名・住所・マイナンバーなどの個人情報を、そのまま貼り付ける
  • 未公表の決算・人事・取引の条件など、社外秘の情報を個人アカウントに入力する
  • パスワードやAPIキーなど、認証に使う情報を入れる
  • 法律・税務・医療の判断を、専門家の確認なしにそのまま顧客へ伝える
  • 最新のニュースや統計を、出典を確かめずに資料へ載せる
  • 会社が認めていないサービスや、個人で契約したアカウントで業務をする

リストの中で特に見落とされやすいのは、最後の項目にある、会社が認めていないアカウントでの業務利用です。入力する情報に気をつけていても、個人のアカウントでは学習の設定や会話の保存期間を会社が確かめられず、退職後も会話が本人の手元に残ってしまいます。質問の中身が安全でも、使っている場所が会社の外であれば、会社としては説明のしようがありません。

もう1つは、答えをそのまま顧客に渡す使い方になります。ChatGPTの答えは下書きとして扱い、社外に出す前に担当者が一度読み直す、という決まりを1行加えておくだけでも事故は減らせるはずです。

会社として全面的に禁止する例は減っています。JUASの企業IT動向調査報告書2025(言語系生成AI全般・2024年度はn=961)では、言語系生成AIの利用ツールを尋ねた設問で「利用を禁止している」と答えた企業が2023年度の12.3%から2024年度は3.9%に下がり、「各人に任せている」も40.5%から16.3%に減りました。代わりに増えたのが「既存のSaaSを利用」で、38.3%から47.9%へと伸びました。

MIXIは、機密情報のラベルに応じて入力してよい情報を決める社内ガイドラインを設けていると発表しています。三菱UFJ銀行の担当者も、使い方や何に使ってよいかが分からないことが障壁だったと語っていました。禁止事項を並べるだけでなく、ここまでなら入れてよいという線をはっきり示すことが、使われる仕組みにつながります。入力してはいけない情報の具体的な分け方はAIに入れてはいけない情報で、社内ルールの作り方は生成AIの社内ガイドラインの作り方で解説しました。

法人向けプランが必要になる理由|ChatGPT BusinessとEnterprise

法人向けプランが必要になるのは、学習の扱い・アカウントの管理・支払いの3つを、社員一人ひとりではなく会社の単位でそろえられるからです。事例の会社がEnterpriseや専用環境を選んだ理由も、この3つに集約されます。

ChatGPT Businessの条件

OpenAIの公式ヘルプによると、ChatGPT Businessは1つのワークスペースに2シート以上が必要で、2026年8月24日以降に作られたワークスペースでは有料シートの上限が200になります。支払いはクレジットカードとデビットカードで、請求書払いや銀行振込はセルフサービスのBusinessでは使えないと書かれていました。ワークスペースのデータは、既定でモデルの学習に使われない設定になっています。

ChatGPT Enterpriseの条件

ChatGPT Enterpriseは組織単位で購入するプランで、個人が直接申し込むことは出来ません。料金ページでは「カスタム価格設定」とされ、定価は公表されていない状態です。年間プランで、購入はOpenAIの営業チームへの問い合わせから始まります。

社員10〜200名の会社であれば、まず候補になるのはChatGPT Businessでしょう。個人向けプランとの違いはChatGPTのビジネスプランと個人プランの違いで、Enterpriseの中身はChatGPT Enterpriseの解説で詳しく比べています。法人向けの生成AIサービスを料金で横に並べたい方は、法人向け生成AI 38サービスの料金比較も参考になるはずです。

ChatGPTだけに絞るかどうか

事例の会社の中にも、ChatGPTだけを使っているわけではない会社があります。MIXIはChatGPT Enterpriseに加えて複数の生成AIツールを使っていると発表し、パナソニック コネクトの社内AIも今はOpenAI・Google・Anthropicのモデルを組み合わせる形になりました。1社に絞るか複数を使い分けるかは、業務の中身と管理の手間で決めることになります。複数の生成AIを1つの環境で使う考え方はマルチAIの記事で整理しました。

社員10〜200名の会社が真似できる形|総務・経理から始める手順

中小企業が事例から真似するなら、全社導入の規模ではなく、環境を1つにそろえる・推進役を決める・1つの業務で測るという順番を借りるのが近道です。三井不動産の150名の推進リーダーや、三菱UFJ銀行の必須研修は、規模を小さくすればそのまま取り入れられます。

事例の会社に共通する進め方

事例の会社を並べると、道具を配るだけで終わらせず、使い方を広げる仕組みを同時に用意している点が共通しています。三菱UFJ銀行はeラーニングを終えないとEnterpriseを使えない仕組みにし、三井不動産は85部門から推進リーダーを選びました。MIXIは各部門にAIアンバサダーを置き、OpenAIと全社員向けの研修や新卒向けのワークショップを開いています。

横須賀市は実証の結果を受けて外部のAI戦略アドバイザーを迎え、職員向けのスキル強化プログラムや、庁内でのプロンプトコンテストを計画しました。SMBCグループは、システムを素早く出す一方で、ルールづくりにこそ時間をかけたと語っています。規模は違っても、推進役・研修・ルールの3点は社員数十人の会社でも小さく取り入れられるはずです。

明日から始める6つの手順

  • 社員が今どのAIを使っているかをたずねる個人アカウントでの利用が見つかったら、責めるより先に、会社の環境へ移ってもらう案内を用意します。
  • 会社として使う環境を1つに決めるChatGPT Businessなどの法人向けプランか、法人向けの生成AIサービスかを選び、学習の扱いと管理画面を確かめます。
  • 入力してよい情報の線を1枚にまとめる顧客情報・社外秘・認証情報の3つを入れない情報として書き、迷ったら誰に聞くかも決めます。
  • 部門ごとに推進役を1人決める10〜200名の会社なら、総務と経理と営業に1人ずつで足ります。使い方を集めて共有する役です。
  • 最初の業務を1つに絞り、2週間だけ時間を記録するメールの下書きや議事録の要約など、毎日発生する業務を選び、使う前と使った後の時間を比べます。
  • よく使う指示をカスタムGPTなどにまとめて共有する社内規程や経理のマニュアルを読み込ませたボットは、事例の会社でも効果が出やすい形でした。

総務なら社内通知と規程の問い合わせ、経理なら経費精算の問い合わせ対応から始めるのが取り組みやすいでしょう。どちらも同じ質問が繰り返される業務で、ボットの効果が見えやすい特徴があります。

もう1つ真似したいのは、効果を測った結果を数字の算出方法ごと社内に残すことです。MIXIや横須賀市のように式を残しておけば、半年後に続けるかどうかを判断するときの材料になります。最初の1か月は、使った回数より、使った業務と減った時間をメモしてもらうよう頼んでみてください。社員研修の組み立て方は生成AI研修の記事でも紹介しています。

事例の会社と同じく、会社の環境でChatGPTを使うなら

UPGEAR AIは、ChatGPT・Claude・Gemini・Perplexityを1画面で切り替えて使える法人向けサービスです。会話履歴・利用ログ・アカウントは国内サーバー(AWSの日本リージョン)で管理し、管理者ダッシュボードで利用ログや権限を確かめられます。料金は月額30,000円(税抜)から。どのプランも利用人数は無制限で、料金は利用量に応じたプラン設計です(人数の目安はライト1〜5名、スタンダード6〜20名、プレミアム21〜50名)。初期費用100,000円(税抜)が別途かかります。

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よくある質問

ChatGPTの活用事例で、企業が公表している数字は信用できますか?
多くは会社自身が社員アンケートなどで集めた数字で、第三者が検証したものではありません。嘘というわけではありませんが、算出方法によって大きく変わります。MIXIのように算出方法を注記で公開している発表や、ビズリーチのように大学と共同でランダム化比較実験を行った発表は、読み手が中身を確かめられる分だけ信頼しやすくなります。
ChatGPT Enterpriseを入れないと、事例のような効果は出ませんか?
Enterpriseでなければならないわけではありません。三菱UFJ銀行(2023年)やパナソニック コネクトは、OpenAIのモデルを使った自社専用の環境を作って使っていました。大切なのは、学習の扱いやアカウントの管理を会社として握れる環境で使うことです。社員10〜200名の会社なら、ChatGPT Businessや法人向けの生成AIサービスが現実的な選択肢になります。
チャットGPTに聞いてはいけないことは何ですか?
質問の中身より、入力する情報に注意が必要です。顧客の個人情報、未公表の社外秘の情報、パスワードなどの認証情報は入れないのが基本になります。また、法律・税務・医療の判断や最新の統計を、確かめずにそのまま使う使い方も避けてください。
ChatGPTを仕事で使うのを禁止している会社はありますか?
日本情報システム・ユーザー協会(JUAS)の企業IT動向調査報告書2025で、言語系生成AIの利用ツールを尋ねた設問(言語系生成AI全般・n=961)に「利用を禁止している」と答えた企業は、2024年度で3.9%でした(2023年度は12.3%)。全面的に禁止すると、社員が個人のアカウントで隠れて使う状態が生まれやすくなります。MIXIや三菱UFJ銀行のように、使ってよい環境とルールを先に示すほうが、管理しやすい形になります。
中小企業でも参考になるChatGPTの事例はありますか?
公表されている実名の事例は大企業が中心で、社員数十人規模の一次資料付きの事例はほとんど見つかりません。大企業の全社実績を1人あたりに割り直すと月約1〜11時間、Zenkenは同社発表で月5〜15時間と開きがあります。自社で使うときは、横須賀市が公開した、利用者数に割合と短縮時間と日数を掛ける式を借りて、1つの業務から測るのがおすすめです。
総務や経理の業務に近いChatGPTの事例はありますか?
あります。三井不動産は経理部で経理処理アシスタントのカスタムGPTを使い、MIXIは予算の申請や問い合わせに答えるボットで1件あたりの所要時間を約50%減らしたと発表しています。MIXIの法務部では、利用規約の確認が1件30分〜1時間から約10分になりました。いずれも社内の決まりやマニュアルを読み込ませ、同じ質問に繰り返し答える業務から始めている点が共通しています。

まとめ

ChatGPTの活用事例として名前が挙がる会社は、MIXI・Zenken・三井不動産・三菱UFJ銀行のようにChatGPT Enterpriseを使う会社と、2023年の三菱UFJ銀行やパナソニック コネクトのようにOpenAIのモデルで自社専用の環境を作った会社に分かれます。現在はどの会社も会社が管理できる環境で使っており、MIXIは個人向けのPlusを補助する形から2025年3月にEnterpriseへ一括で移りました。

公表されている数字の多くは社員アンケートにもとづく会社の発表で、1人あたりに直すと月約1時間から月15時間まで大きく開いています。他社の数字は幅として受け止め、自社では1つの業務に絞って測ることが、事例を確実に自社へ生かす方法になるでしょう。

社員10〜200名の会社が真似できるのは、全社導入の規模そのものではありません。会社が管理できる環境を1つに決め、入力してよい情報の線を引き、部門ごとの推進役と1つの業務の計測から始めるという順番です。最初の2週間の記録が、次の半年を続けるかどうかを決める材料になってくれます。

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※本記事の事例は、2026年9月27日に各社・各団体のプレスリリース、報告書、OpenAI公式の事例ページを開いて確かめた内容です。効果の数字は、特に断りのない限り各社の発表(社員アンケートなどによる自己申告)で、第三者による検証を経たものではありません。1人あたりの時間は、発表の数字を人数で割って算出しました。