
生成AIとは、文章・画像・プログラム等を生成できるAIモデルにもとづくAIの総称です(総務省・経済産業省「AI事業者ガイドライン(第1.2版)」令和8年3月31日の用語欄)。操作そのものは、アカウントを作って書きたいことを文章で頼み、返ってきた答えを人が確かめて直すだけで、数分で覚えられます。難しいのはその先、会社の業務として配るときに必要になる判断のほうです。この記事では、生成AIの仕組みと種類を押さえたうえで、登録から最初の1回までの手順、業務別の使い方、プロンプトのコツ、注意点を並べ、さらに個人アカウントのままでは何が足りないか、社内に配る前に決める5項目、部署ごとの最初の一歩、最初の1か月の測り方まで、順番どおりに解説します。
生成AIとは何か|仕組みと種類を先に押さえる
使い方の話に入る前に、道具の性質を3つだけ押さえます。定義、文章を作る仕組み、そして種類です。この節は手順を理解するための前置きなので短く済ませ、詳しい解説は別のページに分けています。
生成AIとは何か|分類・予測が中心だった従来のAIとの違い
総務省・経済産業省「AI事業者ガイドライン(第1.2版)」(令和8年3月31日)の用語欄には、生成AIとは文章、画像、プログラム等を生成できるAIモデルにもとづくAIの総称を指す、と書かれています。従来のAIは、データを分類したり次の値を予測したりする、用途ごとに作り込む道具でした。生成AIは、同じ1つのサービスに文章でも表でも翻訳でも頼めます。この違いは進め方に効きます。道具が先に手元にあり、どの業務に当てるかを後から決める形なので、小さく始めやすい反面、何に使うかを決めないまま配ると誰も使わないまま終わります。定義や歴史の詳細は生成AIとは何かで整理しています。
生成AIの仕組み|次に来る言葉を確率で選んで文章を作る
文章を作る生成AIの中心にあるのは、大規模言語モデル(LLM)です。Google for Developers の解説「Introduction to Large Language Models」には、言語モデルとは、より長いトークンの並びの中で、あるトークンまたはトークンの並びが出現する確率を推定するものだという説明があります。意味を理解して答えを探しているのではなく、ここまでの文章に続く確率が高い語を選び続けているということです。実務で意味を持つのはこの1点だけです。事実かどうかを判定する工程が仕組みの中に入っていないため、使い方の手順には、出力を人が確かめる工程が必ず入ります。
生成AIの種類と代表サービス|文章・画像・音声・動画・コード
種類は、作るものの違いで分かれます。総務省の教材「生成AIはじめの一歩~生成AIの入門的な使い方と注意点~」の13ページには、生成AIは幅広い場面で活用できるとして、テキスト生成(文章の作成・要約/情報検索/翻訳/議論のパートナー)、画像・映像生成、音声生成、その他(3Dモデルの作成)が代表例として挙げられています。業務でまず触るのは文章の系統で、代表的なサービスは ChatGPT・Gemini・Claude・Copilot です。なお Copilot については、Microsoft の公式ドキュメントに、Microsoft 365 Copilot の名称が Microsoft Copilot に変更されたと記載されています。社内文書に製品名を書くときは、書いた時点の公式表記を確かめてください。種類ごとの一覧は生成AIの種類、業務ごとの割り振りは主要4AIの違いと使い分けにまとめています。
生成AIで何ができるか|公的な教材が挙げる代表例
できることの一覧を眺めるより、公的な教材が代表例として示している範囲を押さえるほうが早く進みます。総務省の教材「生成AIはじめの一歩~生成AIの入門的な使い方と注意点~」は、表紙に ver1.0 と記載された全75ページの資料で、掲載ページから PDF と PPTX の両方をダウンロードできます。
この教材は、2ページで対象を、今後の生活の中で生成AIに触れうる国民の方としており、IT関連の専門職等のみを対象としたものではないと明記しています。目的は、生成AIを自身で利活用できるリテラシーを身に付けることとされています。社内の誰に渡しても前提知識で詰まりにくい作りになっている点が、実務では大きな利点です。
構成は3部で、基礎知識、どのように使うか(用途とサービスの使い方)、そして注意点です。注意点は4つに整理されています。情報の正確性、情報流出、知的財産権の侵害、活用者としてのモラルです。各章には説明ページと事例ページのほか理解度チェックのページがあり、4ページには章ごとに基礎・応用各1問と書かれています。読んで終わりにせず、その場で確認まで回せる形です。
用途の選び方について、同教材の19ページには、目的に沿った生成AIサービスを選ぶことが大事だと書かれています。裏を返せば、できることの一覧から入るのは順番が逆です。いま自分の部署でいちばん時間を取られている作業を1つ決め、その作業に向くサービスを選ぶほうが、短い時間で結果が出ます。以降の節は、その1つを決めたあとの手順です。
※この教材の画面例は、原文の注記のとおり ChatGPT(GPT-4)を例として紹介したもので、2023年時点で主流のテキスト系生成AIサービスにもとづいています。画面の見た目や操作の位置は現在のものとは異なる場合があるため、実際の操作は各サービスの公式ヘルプで確認してください。
生成AIの始め方|登録・入力・確認の3ステップ
始め方は3ステップです。アカウントを登録し、プロンプト(頼みたいことを書いた文章)を入力し、出てきた出力を確認して直す。この3つで最初の1回が終わります。登録から最初の1回までは、同じ日のうちに終わります。
ステップ1:アカウントを登録する
登録に必要なのは、メールアドレスと、本人が受け取れる認証コードです。まず無料版で試すのが順番で、いきなり有料版に上げる必要はありません。ここで1つだけ会社として先に決めておくべきことがあります。会社の業務で使うアカウントを、私用のメールアドレスで作らせないことです。会社が契約したアカウントでなければ、そのアカウントは本人の管理下に置かれたままになります。
料金の目安も押さえておきます。ChatGPT の場合、日本から料金ページを表示したときの円表示は、無料版が0円、Go が月1,400円、Plus が月3,000円でした。同ページに税の記載がないため、税を足さずにそのまま示します。Claude の場合は、個人向けの Pro プランについて、公式の料金ページのHTMLには月額20ドル(表示価格に該当する税は含まれていないという記載つき)、日本から同じページをブラウザで開いたときの表示は月額22ドル(消費税10%込み)でした。ドル建ての金額は、為替の前提を置かなければ円に直せないため、ここでは換算しません。
※ChatGPT と Claude の料金は2026年9月16日、各サービスの設定に関する記載は2026年9月18日に、それぞれ公式ページで確認した内容です。料金とプラン構成は変更されるため、実際に申し込む前に各社の公式ページをご確認ください。
ステップ2:プロンプトを入力する
最初の1回は、練習用の題材ではなく、実際に自分が今日やる作業を持ち込むほうが早く上達します。入力欄に文章を書いて送るだけですが、1行だけ書いて送ると、たいてい当たりのない答えが返ってきます。次の4つを足すと、最初の1回でも使える下書きになります。何のために、誰に向けて、どういう形で(字数や箇条書きの数)、そして材料です。
最初の1回の穴埋めの型:あなたは(自分の立場)です。(作りたいもの)の下書きを作ってください。目的は(何をしてもらうため)です。読み手は(誰)で、(前提や気をつけたいこと)があります。条件は、(字数)以内、箇条書きは(数)つまで、(使わない言葉や表現)。最後に(入れてほしい一文や項目)を置いてください。──(材料をここに貼る)
この型のかっこを自分の業務の言葉で埋めれば、最初の1回は終わります。プロンプトの書き方をもっと詰めたい場合はプロンプトの書き方、Gemini を使う場合の操作はGeminiの使い方で解説しています。
ステップ3:出力を確認して直す
3ステップのうち、業務で効いてくるのはここです。出てきた文章を、次の3点だけ見ます。事実として書かれている数字・日付・固有名詞が合っているか、社外に出せない情報が混ざっていないか、会社の言葉づかいになっているか。合わない箇所は、書き直すのではなく、どこがどう違うかを伝えてもう一度出させます。
直し方も文章で頼みます。たとえば、3つ目の箇条書きは社内規程と合わないので削ってください、全体をあと100字短くしてください、最後の1行を締め切り日から先に書いてください、といった形です。1回で完成させようとするより、2回か3回やりとりするほうが、結果として早く終わります。
登録の直後にやる1つの設定
登録が終わったら、入力した内容をモデルの学習に使わせない設定を先に済ませます。ChatGPT のヘルプ「データコントロールに関する FAQ」には、ウェブでサインインしている場合の手順として、プロフィールアイコンをクリックし、設定を選択し、データコントロールに移動して、すべての人のためにモデルを改善するをオフにする、と記載されています。同じ記事には、この設定はいつでも変更でき制限はないこと、オフにするとデバイスに関係なくアカウント全体に適用され、ウェブ版とモバイルの間で同期されることも書かれています。
ここで誤解しやすいのは、オフにしても会話そのものが消えるわけではないという点です。同じヘルプには、オフにした場合も会話は引き続きチャット履歴に表示されるが、学習には使用されないと書かれています。履歴の扱いと学習の扱いは別の話です。設定の画面と手順の詳細はChatGPTに学習させない方法にまとめているので、社員に配る手順書はそちらを下敷きにしてください。
業務での使い方|どの業務から始めると効果を感じやすいか
最初に当てる業務は、勘で選ばなくてもすみます。総務省「令和8年版情報通信白書(概要)」(2026年7月・全19ページ)の9ページには、日本と米国について、業務類型ごとの活用状況と、活用効果を感じる割合を並べた図が載っています。日本の値をこの図から読み取ると、議事録・メール作成補助が72.3%、社内ヘルプデスクが42.7%、製造・生産が39.8%、研究・商品開発が39.1%、営業・販売が37.5%で、経営は20.1%でした。同ページの本文には、日本では議事録・メール作成補助の回答割合が約7割と最も高く、導入効果を実感すると回答した割合も同様だった、と記載されています。
※この企業調査は、総務省が令和8年版情報通信白書のために2026年1月から2月に実施したもので、企業調査全体の日本の有効回答は515件(大企業353・中小企業162)です。対象は、従業員10名以上かつ2025年までにデジタル化の取組を開始した企業に勤務し、企業全体の戦略等を理解する管理職以上の役職とされています。上に挙げた数値は概要版9ページの図から読み取った値で、同図には、従業員が個人作業の効率化で活用している、部署内の特定業務で活用している、業務プロセスがAI中心に変更されている、を選択した場合のみという注記があり、その業務類型で生成AIを活用していると回答した企業に限った割合と読めます。図ごとの回答者数は同ページに記載がありません。
この並びが示しているのは、経営判断のような重い仕事より、日々の文書仕事のほうが効果を感じやすいということです。順番としては、下から上に手を付けるのではなく、上の2つ、つまり議事録とメールの作成補助、そして社内からの問い合わせ対応から始めるのが素直です。以下、上位に来やすい4つの使い方を、そのまま真似できる形で示します。
使い方1:メール・文書・報告書の下書き
まず効くのは、ゼロから書き起こす時間を削る使い方です。返信メール、社内のお知らせ、日報や月次の報告書、議事録の整形など、形が決まっているものほど向きます。逆に、相手との関係や交渉の含みが強い文章は、下書きまでにして、最後は人が書き直すほうが安全です。
頼むときに必要なのは、材料と条件です。材料は、返信のもとになった相手のメールや、報告に入れる数字。条件は、字数、宛先、文体、入れてはいけない表現です。材料を渡さずに書かせると、もっともらしいけれど中身のない文章が返ってきます。
そのまま使えるプロンプト:以下のメールへの返信の下書きを作ってください。条件は、300字以内、お礼と、日程の候補を3つ提示、こちらの都合で1週間返信が遅れたことへのひとことを入れる。断定を避け、確認中の事項は確認のうえ改めてご連絡すると書く。文体は初めて取引する相手に向けた丁寧な形で。──(ここに受信メールを貼る。社名と担当者名は伏せる)
報告書の下書きに使う場合は、社内の様式に合わせるところまで頼めます。見出しの順番と各項目の字数を指定し、書けない項目は空欄のまま置いておくよう頼むと、埋まっていない箇所がひと目で分かります。資料づくりへの広げ方はAIで資料作成する手順で解説しています。
使い方2:長文・議事録・ニュース記事の要約と整理
2つ目は、読む時間を削る使い方です。長い資料、会議の文字起こし、業界のニュース、長文のメールの往復などを、決めた形に整理させます。ここでのコツは、要約してくださいと頼まないことです。何のために読むのかを書き、出してほしい形を指定します。
たとえば会議の文字起こしなら、決まったこと、誰がいつまでに何をするか、次回に持ち越したこと、の3つに分けさせます。ニュースなら、事実として報じられていること、関係者の見解として書かれていること、自社に関係しそうな点、の3つに分けさせます。同じ材料でも、分け方を指定するだけで使える度合いが変わります。
そのまま使えるプロンプト:以下の会議の文字起こしを読んで、3つに分けて整理してください。1つ目は会議で決まったこと、2つ目は担当者と期限が決まった宿題(期限が書かれているものは日付を先頭に置く)、3つ目は結論が出ず次回に持ち越したことです。それぞれ箇条書きで、書かれていないことは推測せず、不明と書いてください。最後に、議事録として社内に出す前に確認が必要な箇所を3つ挙げてください。──(ここに文字起こしを貼る)
会議の録音をAIに渡す場合は、参加者への断りを先に済ませます。会議の冒頭で、記録のために録音し、議事録の作成に文章化した内容を使うと伝えて、反対がないか確認する。この一手間を運用に入れておかないと、あとから社内でもめます。会議記録の作り方はGoogle Meetの議事録の作り方にまとめています。
使い方3:企画・アイデア出し・資料やプレゼンのたたき台
3つ目は、出発点を作る使い方です。企画の案出し、研修の構成、提案資料の骨組み、社内説明のスライドの流れなど、白紙から考えると止まってしまう作業に向きます。ここで大事なのは、完成品を求めないことです。たたき台として出させ、人が選んで捨てる、という進め方にします。
案出しを頼むときは、数を多めに指定します。3案だと似たものが並びますが、10案と指定して、そのうち半分は実現しにくくてもよいと添えると、幅が出ます。そのうえで、この3つが自社に合いそうなので深掘りしてください、と続けます。
そのまま使えるプロンプト:社員50名の会社で、はじめて社内向けのAI勉強会を開きます。60分の構成案を10案出してください。条件は、参加者の半分はパソコン操作に苦手意識がある、講師は社内の総務担当、資料作成に使える時間は2時間まで。各案は、タイトル、時間配分、参加者が持ち帰るもの、を3行で。うち3案は、実現のハードルが高くてもよいので思い切った案にしてください。
スライドのたたき台にする場合は、1枚あたりの見出しと本文の行数まで指定すると、そのまま流し込める形で出てきます。ただし、図やグラフの数値は自分で入れてください。数値を作らせると、出典のない数字が混ざります。
使い方4:翻訳と、Excelの数式やプログラムのコード生成
4つ目は、専門の人に頼んでいた作業を自分で試せるようにする使い方です。翻訳は、単語の置き換えではなく、誰に向けた文章かを添えると精度が上がります。取引先に出す英文メールなら、相手の立場、自社の立場、避けたい表現を書いておきます。出てきた英文は、そのまま送る前に日本語に訳し直させて、意味が変わっていないかを確認します。
Excel の数式も得意な分野です。やりたいことを日本語で書き、表の列がどうなっているかを説明すると、数式が返ってきます。返ってきた数式は、必ず小さな範囲で試してから全体に当ててください。プログラムのコードも同じで、動かしてみて初めて正しさが分かります。
そのまま使えるプロンプト:Excel の数式を作ってください。A列に日付、B列に担当者名、C列に金額が入った表があります(1行目は見出し、データは2行目から1000行目まで)。指定した担当者について、指定した年月の金額の合計を出したいです。担当者名は F1、年月は F2(2026/9 の形で入力)に入れます。数式を1つ出したうえで、なぜその関数を使うのかを3行以内で説明し、うまく動かないときに確認する点を3つ挙げてください。
この4つ目だけは、扱いに一段の注意が要ります。社内システムのコードや、顧客データを含む表をそのまま貼ると、次の注意点の節で触れる情報流出の話に直結します。列の構造だけを説明して、実データは渡さないという書き方に慣れておくと安全です。
プロンプトのコツ|公的な教材の3つの工夫に、業務で2つ足す
コツは、公的な教材が3つに整理しています。総務省の教材「生成AIはじめの一歩~生成AIの入門的な使い方と注意点~」の22ページには、生成AIから最適な回答を得るための指示(プロンプト)の工夫をプロンプトエンジニアリングと呼ぶと説明があり、工夫として次の3つが挙げられています。
- 工夫1:目的・詳細な設定・検討の材料を書く|何のために欲しいのか、誰に向けたものか、判断の材料は何か。ここが抜けていると、当たりのない一般論が返ってきます。役割を与える(あなたは総務担当です、など)のもこの工夫に含まれます。
- 工夫2:欲しい回答の例を与える|こういう形で欲しいという見本を1つ添えます。過去に自社で作った文書の一部を例として渡すと、言葉づかいまで寄ってきます。
- 工夫3:書式・回答方法を制限する|字数、箇条書きの数、見出しの順番、表にするか文章にするか。制限があるほうが、直しが少なくなります。
同教材の23ページから26ページには、悪い例と良い例の対比が載っています。誕生日プレゼントを選ぶ例と、みかんの栄養成分を表形式で出させる例です。身近な題材なので、社内勉強会でそのまま使えます。
業務で使うなら、これに2つ足します。
- 足す1:段階的に指示する|1回で完成させようとせず、まず構成だけ、次に本文、最後に字数調整という順に分けます。長い文書ほど差が出ます。
- 足す2:うまくいかなければ作り直す|同じ会話の中で何度も直すと、前のやりとりに引っぱられて改善しなくなることがあります。3回直して良くならなければ、新しい会話を開いて、プロンプトを書き直すほうが早いです。
プロンプトの型を社内で共有する運用
うまくいったプロンプトは、個人のメモに置くと消えます。共有の置き場所と、名前の付け方と、捨てる決まりの3つをセットで決めてください。この3つがないと、人によって出力の質が揃わないまま数か月が過ぎます。
置き場所は、すでに社員が毎日開いている場所にします。共有ドライブでも社内ポータルでもかまいませんが、新しいツールを増やすと見に行かれません。使っているサービスにテンプレートを保存する機能があれば、そちらのほうが手数は少なくなります。ただしアプリ側に置く場合は、退職や契約の変更でまとめて消える可能性があるため、文面そのものは共有ドライブにも残しておくのが安全です。
名前は、部署、業務、何を出すかの順に並べます。たとえば、総務_お知らせ文_件名3案つき、経理_問い合わせ返信_短い版と詳しい版、といった形です。この順にしておくと、部署名で絞ってから業務名で探せます。逆に、便利プロンプト集のような名前の1枚のファイルに全部を書くと、数が増えた時点で誰も開かなくなります。
捨てる決まりも先に決めます。月に1回、10分でよいので、使われていない型を消す時間を取ります。残すかどうかの基準は、直近1か月で誰かが使ったかどうかだけで足ります。増やす運用より、減らす運用のほうが定着します。
型に必ず入れておく1行:共有する型の末尾に、貼ってはいけない情報の注意を1行入れておきます。たとえば、顧客名・担当者名・金額は伏せて貼ること、といった具合です。使う人はプロンプトをコピーして使うので、注意文もいっしょに手元に届きます。ルールの文書を読ませるより、この1行のほうが守られます。
ハルシネーションと、出力は人が必ず確認するという原則
生成AIは、もっともらしい誤りを出します。これをハルシネーションと呼びます。IBM の解説記事「What are AI hallucinations?」(2023年9月1日公開・2026年7月31日更新)には、AIのハルシネーションとは、AIシステムが、もっともらしく聞こえるが事実として誤っている、無関係である、あるいは完全に作り出された出力を生み出す事例だという説明があります。前の節のとおり確率の高い語を選び続ける仕組みなので、新しいモデルになれば減りますが、ゼロにはなりません。誤りの種類やそのほかのリスクの全体像は生成AIとは何かで扱っています。
ここで手順として決めるのは、確認する箇所です。全文を疑う運用は続きません。次の5点だけを、出力をそのまま信じずに元の資料で照合する、と決めます。数字、日付、固有名詞、法令や規程の条番号、引用した文章です。逆に、文章の流れや言葉づかいは、読んで違和感がなければ通してかまいません。
この5点に絞るのは、誤りが出やすい場所が偏っているからです。統計の数値、施行日や公表日、人名や製品名、条文の番号、そして引用の文言は、いずれも確率で選ぶと崩れやすい部分です。実際の作業では、出力に対して、この数字の出典を示してください、と聞き返すのが早道です。ただし返ってきた出典もそのまま信じず、示されたページを自分で開いて、同じ数字が載っているかを見ます。開けないURLや、ページ内に見つからない数字は、使わないと決めます。
確認の担い手を先に決める:誰が確認するかを決めないと、確認したつもりで誰も見ていない文書が社外に出ます。社外に出る文書は、作った人ではない別の人が見る。社内で回る文書は、作った人が上の5点だけ照合する。この2段で足ります。
注意点|機密情報・個人情報の入力、著作権などの権利侵害、倫理面
注意点は4つに整理されています。総務省の教材が挙げているのは、情報の正確性、情報流出、知的財産権の侵害、活用者としてのモラルです。1つ目は前の節で扱ったので、残る3つを見ていきます。
入力してはいけないものの例
入力してはいけないものは、具体例まで示されています。同教材の46ページの脚注には、個人情報の例として、氏名、電話番号、住所、メールアドレス、生年月日、公的ID番号、学校・職場の情報、顔写真などが挙げられています。機密情報の例としては、経営・営業に関する情報、顧客や社員のデータ、技術情報、法的文章、業務上の秘密、議事録などが挙げられています。
この一覧は、社内ルールの本文にそのまま使えます。抽象的に機密情報を入力しないと書くより、具体例が並んでいるほうが現場で判断できます。とくに議事録が機密情報の例として挙げられている点は、社内で驚かれることが多いところです。前の節で議事録の整理を勧めましたが、社外に出せない内容を含む議事録を、会社が契約していないサービスに貼るのは別の話になります。
同教材の本文には、リスクとして、生成AIは利用者が入力したデータを学習データとして利用することがある、個人情報や社外秘の機密情報を入力すると他人の質問への回答に使われ情報が漏洩する可能性がある、と書かれています。47ページには事例として、2023年3月、海外の電子機器メーカーで生成AIの使用による社内情報流出が立て続けに発生したことが挙げられ、内容として、社内機密のソースコードを生成AIに入力して修正を依頼した件が2件、社内会議の録音データを音声認識アプリで文章に変換して生成AIに入力し議事録を作成した件が1件、と記載されています。
※この事例について、教材には社名は記載されていません。海外の電子機器メーカーという表記までです。
情報流出を防ぐ3つの行動
防ぐ側の行動も3つに整理されています。同教材の48ページが挙げているのは、生成AIサービスの規約を確認すること(データの利用目的や範囲等)、個人情報や機密情報の入力は必要最小限にすること、生成AIに入力したデータを学習に使わせないように設定すること(オプトアウト設定)です。同ページの脚注には、オプトアウトとはユーザーが提供したデータを提供先の企業が利用することを拒否すること、という説明と、ChatGPT ではオプトアウト設定をした場合も不正利用の監視に備えて30日間履歴が保存される、という記載があります。なお、この脚注は教材の記載です。現在の保存期間や設定名は OpenAI のヘルプで確認してください(同ヘルプでは、30日は一時チャットが削除されるまでの期間として説明されています)。
この3つは、73ページの学習のまとめにも、生成AIサービスの規約を確認する(商用利用可否、損害発生時の責任所在等)、個人情報や機密情報の入力は必要最小限にする、生成AIに入力したデータを学習に使わせないように設定する、という形で再掲されています。教材が繰り返して書いている項目なので、社内ルールでも中心に置いてよい3つです。
個人情報については、行政の注意喚起が確認事項を示しています。個人情報保護委員会の「生成AIサービスの利用に関する注意喚起等について」(令和5年6月2日)は、本人の同意を得ずに個人データを含むプロンプトを入力し、応答結果の出力以外の目的で取り扱われる場合には個人情報保護法の規定に違反することとなる可能性があるため、当該サービスを提供する事業者が当該個人データを機械学習に利用しないこと等を十分に確認すること、と示しています。手順に落とすと、顧客の情報を入れる可能性があるなら、学習に使われない設定になっていることを会社として確認しておく、という1行になります。社員が各自の判断で設定しているかどうかを会社が把握できない状態は、この確認ができていない状態にあたります。
ルール文書の作り方は生成AIの社内ガイドラインの作り方、点検の観点は生成AIのセキュリティ対策チェックリストにまとめています。
著作権などの権利侵害
3つ目の注意点は、出力を使うときの権利の話です。文化庁の文化審議会著作権分科会法制度小委員会「AIと著作権に関する考え方について」(令和6年3月15日)の32ページには、生成AIによる生成物についても、その生成・利用段階において既存の著作物との類似性及び依拠性が認められれば、差止請求や損害賠償請求を請求し得る、と記載されています。同資料は、依拠性が認められる例として、既存の著作物そのものを入力する場合や、既存の著作物の題号などの特定の固有名詞を入力する場合を挙げています。
実務での線引きは3つで足ります。特定の作品名や作家名を挙げて、その作風で作ってくださいと頼まない。他社の資料やウェブページの文章をそのまま貼って、書き換えてくださいと頼まない。出てきた文章や画像が既存のものに似ていないか、社外に出す前に検索で確かめる。この3つを配布時の注意として伝えておきます。
活用者としてのモラル
4つ目は、法令の手前にある話です。生成AIで作った文章を人が書いたものとして社外への説明に使う、誤った情報をそのまま広める、他人を傷つける内容を作る。これらは違法かどうかの前に、会社として止めるべきものです。制度の側から見ても、事業でAIを使う会社に求められていることの多くは、自社で判断して決める形になっています。関係する法令やガイドラインの全体像は生成AIとは何かで整理しているので、ここでは次の節以降の社内ルールの話に進みます。
無料で使えるのか|無料版と有料版の違いと、用途に合わせた選び分け
無料で使えます。ChatGPT にも Gemini にも Claude にも無料で使える範囲があり、文章のやりとりは無料版でもできます。まず試すという段階で、費用をかける必要はありません。
有料版との違いは、機能の有無より、使える量と扱える長さです。ChatGPT の料金ページの比較表を見ると、通常のテキストチャットとチャット履歴は無料・Go・Plus・Pro のすべてで無制限(合理的な範囲での使用と各種ポリシーへの準拠が条件)と示されています。一方で、一度に扱える文章の長さ(コンテキストウィンドウ)は、GPT Instant の上限が無料27K・Go 54K・Plus 54K・Pro 128K、推論のほうは無料が場合によって異なる・Go と Plus が256K・Pro が400K と示されています。同ページには、ユーザーが入力に使用できる領域はコンテキストウィンドウ全体より小さくなるという注記もあります。長い資料を1回で読ませたいなら有料版、短いやりとりが中心なら無料版で足りる、という分かれ方です。
Gemini の場合も、個人アカウントのプランごとの違いを説明する公式ヘルプでは、Gemini 3 Flash-lite、Gemini 3 Flash、Gemini 3 Pro へのアクセスは、AIプランなし・Plus・Pro・Ultra のすべてで可能とされ、差は使用量だと整理されています。コンテキストウィンドウは、AIプランなしが32,000トークン、AI Plus が128,000トークン、AI Pro と AI Ultra が100万トークンと示されています。個人向けの Google AI プランの月額は、日本の料金ページで Google AI Plus が725円、Google AI Pro が2,900円、Google AI Ultra が14,500円からと表示されていました。こちらも税の記載がないため、税を足さずに示します。
※Gemini と Google AI プランの表示は2026年9月16日に確認した内容です。なお同プランのFAQには、Google AI のプランに申し込めるのは個人の Google アカウントのみで、Google Workspace の利用者は既存のサブスクリプションに対するアドオンに申し込むよう案内する記載があります。
用途に合わせた選び分けは、こう考えると迷いません。文章の下書きと要約が中心なら、どのサービスでも差は小さいので、社内で使う人が多いものに合わせます。長い資料を丸ごと読ませたいなら、扱える長さが大きいプランを選びます。調べもので出典が欲しい、表計算と行き来したい、といった用途では得意なサービスが分かれるため、1つに絞らず使い分ける形もあります。複数を併用する考え方はマルチAI(複数の生成AIの併用)、法人向けサービスの横並びは法人向け生成AIサービスの比較、費用の見方は生成AIのコスト管理にまとめています。
ただし、無料版で足りるかどうかの判断には、もう1つの軸があります。会社の業務で使うときに、無料版で満たせないのは機能ではなく、管理のほうです。次の節がその話です。
無料版を社員が各自で使うと、誰が何に使ったかを会社が把握できません。UPGEAR AI(アップギアAI)は、ChatGPT・Claude・Gemini・Perplexityを1つの契約で使える法人向けサービスです(人数無制限)。
個人アカウントのままでは何が足りないか
ここまでの手順は、個人アカウントでもそのまま実行できます。足りないのは1点に集約できます。消したつもりのものが本当に消えているかを、会社として言えないことです。設定を全員に当てることも、誰がいつ使ったかを把握することも、退職や異動のときに止めることも、すべてこの1点に行き着きます。
各社の公式ヘルプは、設定を変えたあとに何が残るかを書いています。まず ChatGPT では、学習をオフにしても会話は引き続きチャット履歴に表示されると記載されています。学習に使わないことと、記録が消えることは別です。一時チャットについても、30日後にシステムから削除され、モデルのトレーニングには使用されず、履歴には保存されずメモリも作成されないが、不正利用の監視目的でのみ確認される場合があると書かれています。
Gemini アプリのヘルプは、残るものをさらに具体的に書いています。アクティビティの保存がオフになっている場合、以降のチャットがAIモデルの改良に使用されることはないとされていますが、フィードバックが送信された場合は除かれます。そして、一時チャットと、アクティビティの保存がオフになっているときのチャットは、72時間アカウントに保持されるとあります。保持期間については、Gemini アプリ アクティビティの自動削除までの期間はデフォルトの18か月から、3か月、36か月、または無期限に変更できるとされています。さらに、人間のレビュアーがレビューしたチャット(および言語、デバイスの種類、位置情報、フィードバックなどの関連データ)は、アクティビティを削除しても削除されず、最長で3年間保存されると明記されています。
ここが分かれ目です:社員が自分で設定をオフにしていても、フィードバックを送った会話や、すでにレビューの対象になった会話は、本人が履歴を消しても残ることがあります。取引先から、うちの情報をどう扱っているかと問われたときに、社員それぞれの設定とその時点の操作次第ですとしか答えられない状態になります。設定の位置や手順そのものはChatGPTに学習させない方法にまとめているので、配布用の手順書はそちらを下敷きにしてください。
この状態のまま業務が回っていると、会社から見えない利用、いわゆる野良AI(シャドーAI)になります。禁止しても、便利なので使われます。使えないから個人で契約するという順番で起きるので、同じ使い方ができる環境を会社側で用意するほうが早く収まります。見つけ方と対処は野良AI(シャドーAI)で解説しています。
もう1つ、日本の会社に共通して足りていないものがあります。学ぶ環境です。総務省「令和8年版情報通信白書(概要)」の10ページには、生成AI活用のための環境整備について国別に並べた図があり、日本(n=326)では、業務プロセスの見直しや生成AI活用検討に必要なスキルやノウハウを学ぶ環境があるという回答が39.9でした。同じ項目は、米国62.7、ドイツ60.4、中国71.7と示されており、日本が低い並びです。
※上の数値は、概要版10ページの図から読み取った値です。この項目の母数は日本がn=326で、同じページの他の図とは母数が異なります。
差が出ているのは、道具の性能ではなく、学ぶ場と決めごとのほうです。使い方を教える前に、次の5項目を決めておくと、教えたあとの事故が減ります。
社内に配る前に決める5項目
決めるのは5つだけです。全部そろって1枚に収まれば、それが社内ルールの初版になります。完璧な文書を作るより、5項目が埋まった1枚を先に配るほうが実務は動きます。
- 1. 入れてはいけない情報の線引き抽象的に書かず、具体例で書きます。総務省の教材が挙げている個人情報の例(氏名、電話番号、住所、メールアドレス、生年月日、公的ID番号、学校・職場の情報、顔写真など)と機密情報の例(経営・営業に関する情報、顧客や社員のデータ、技術情報、法的文章、業務上の秘密、議事録など)を、自社の言葉に置き換えて並べます。迷ったときの相談先も同じ行に書きます。
- 2. 使ってよいツールの指定使ってよいものを名前で挙げます。挙げていないものは使わない、と書いておくほうが、禁止リストを作るより運用が続きます。無料版を認めるかどうかも、ここで決めます。
- 3. アカウントの発行と停止の担い手誰が発行し、誰が止めるかを名前か役職で決めます。とくに停止のほうです。退職・異動のときに止める手続きを、既存の入退社の手順書に1行足しておきます。
- 4. 出力を確認する責任者社外に出る文書は、作った人ではない別の人が確認する。社内で回る文書は、作った人が数字・日付・固有名詞・条番号・引用文の5点を照合する。この2段を決めて書きます。
- 5. 困ったときの相談窓口入れてよいか迷った、出力が変だった、うっかり入れてしまった、の3つが来ます。うっかり入れてしまったときに叱られない窓口にしておくことが、ここでは効きます。報告が上がらないほうが被害は大きくなります。
1枚目に書かないこと:細かい禁止事項や、将来の運用体制は初版に入れません。読まれない文書になります。上の5項目に絞り、運用しながら足りないところを足していくほうが、現場に残ります。
部署ごとの最初の一歩|総務・経理・営業・情シス・経営
配ったあとに必要なのは、部署ごとに最初に任せる1業務を決めることです。自由に使ってくださいと配ると、使う人が数名で止まります。ここでは5つの部署について、最初の1業務と、そこで使うプロンプトを1本ずつ示します。実データを貼る前に、社名・担当者名・金額を伏せる習慣をつけてください。
総務:社内向けのお知らせ文の下書き
効果が見えやすく、失敗しても被害が小さい業務です。健康診断、備品の入れ替え、就業に関する周知など、月に何本も出る文書が対象です。件名を複数案出させ、選ぶだけにするのが早道です。
総務のプロンプト:あなたは社員50名の会社の総務担当です。社内向けのお知らせ文を作ってください。目的は、10月から始まる備品の発注ルールの変更を全社員に知ってもらい、10月10日までに各部署の担当者を1名ずつ登録してもらうことです。読み手は全社員で、パソコンを毎日使わない人も含みます。条件は、本文400字以内、箇条書きは3つまで、専門用語を使わない、締め切りと登録先を最後の1行にまとめる。件名は3案出し、それぞれ何を強調した案かを1行で添えてください。
経理:繰り返し届く問い合わせへの返信のひな形
経理は、同じ質問が形を変えて何度も来ます。回答のひな形を作らせて、規程の条番号を入れる場所だけ空けておくと、そのまま使えます。実際の仕訳データや取引先名を貼る必要はありません。
経理のプロンプト:あなたは中小企業の経理担当です。社員から繰り返し届く質問への返信のひな形を作ってください。質問は、出張のときの日当と実費精算の違いが分からないという内容です。条件は、200字以内、社内規程の条番号を入れる場所を丸かっこで空けておく、最後に問い合わせ先の1行を置く。文体は丁寧だが硬すぎない形で。同じ内容を、短い版と、はじめて出張する社員向けの詳しい版の2つ作ってください。
営業:商談メモから次のアクションを抜き出す
営業に最初から提案書を作らせると、事実確認の手間で嫌われます。まずは自分が書いたメモを整理させる使い方から入ると、便利さが先に伝わります。
営業のプロンプト:以下の商談メモを読んで、3つに分けて整理してください。1つ目は先方が決めたこと、2つ目はこちらが期限つきでやると約束したこと、3つ目は先方の社内で確認待ちになっていることです。それぞれ箇条書きで、期限が書かれているものは日付を先頭に置いてください。メモに書かれていないことは推測せず、不明と書いてください。最後に、次回の訪問前に確認すべきことを3つ挙げてください。──(ここに商談メモを貼る。顧客名・担当者名・金額は伏せる)
情シス:手順書を社員向けの言葉に直す
情シスは、問い合わせ対応の文章を書く時間が意外に長い部署です。自分が分かっている手順を、分からない人の言葉に直す作業から始めると、問い合わせの本数そのものが減ります。
情シスのプロンプト:以下の手順を、パソコンの操作に慣れていない社員でも読める言葉に書き直してください。条件は、1手順につき1文、クリックする場所は画面に表示されている言葉をそのまま使う、専門用語を使う場合は初出でかっこ書きの説明を足す、全体を8手順以内。最後に、うまくいかないときに確認する項目を3つ付けてください。手順の意味が変わる書き換えはしないでください。──(ここに現在の手順を貼る。社内のサーバー名やIPアドレスは伏せる)
経営:資料から判断の材料と不足情報を洗い出す
経営判断そのものを任せる使い方は勧めません。前掲の白書の図でも、経営は活用効果を感じる割合が20.1と低い並びでした。向いているのは、読む前の整理と、判断する前に何が足りないかの洗い出しです。
経営のプロンプト:以下の資料を読んで、意思決定のための材料として整理してください。出してほしいのは、1つ目に事実として書かれていること、2つ目に前提や見通しとして書かれていること、3つ目に資料に書かれていない不足情報です。3つ目は、判断する前に誰に何を確認すべきかという形で5つまで挙げてください。文章は使わず、見出しと箇条書きだけで書いてください。数値は資料に書かれているものだけを使い、計算が必要なものは計算の根拠も示してください。──(ここに資料を貼る。社外に出せない数値は伏せる)
社内研修の教材は公的なものが使える|ただし事前連絡の条件がある
研修の資料は、一から作らなくてもすみます。総務省の教材「生成AIはじめの一歩~生成AIの入門的な使い方と注意点~」は、掲載ページから PDF と PPTX の両方をダウンロードできます。掲載ページには、本教材を活用して講座を開催される方向けに、PPTX のデータのノート欄に各スライドで話す内容の参考となるメモを記載しているので必要に応じて活用してほしい、また講座の実施時間や進め方などに応じて内容を編集できる、と書かれています。話す内容のメモつきで、時間に合わせて削れるということです。
ただし、条件が1つあります。同じ掲載ページには、本教材を使用する際は、教材の利用目的や資料編集の有無等の確認と、教材の活用実態の把握のため、下記連絡先まで事前に連絡してほしい、と書かれています。連絡先は総務省情報流通行政局 情報流通振興課 情報活用支援室(偽・誤情報啓発教育教材担当)で、電話番号は03-5253-5743(直通)です。メールに書く項目も示されており、所属(会社名・組織名等および部署名)、担当者名、連絡先(電話番号)、連絡先(メールアドレス)、利用する教材名、利用目的(社内研修、勉強会など)、資料の編集有無(ありかなし)です。編集の有無については、スライドの抜粋のみであればなしと記載するよう注記があります。
段取りに入れておくこと:研修日を決めたら、教材のダウンロードと同時に、上の7項目を書いたメールを送る作業を担当者のタスクに入れます。当日の朝に気づくと、資料を作り直すか日程を動かすかの判断になります。
研修の組み立て方としては、教材の3部構成(基礎知識・どのように使うか・4つの注意点)をそのまま骨にして、最後に自社の5項目ルールを1枚足す形が素直です。教材には章ごとに理解度チェックの問題が用意されているので、聞いて終わりにせず、その場で確認まで回せます。研修の進め方や社内での広げ方は生成AI研修の進め方で解説しています。
最初の1か月のつまずきと、効果の測り方
最初の1か月に起きることは、だいたい決まっています。先に知っておくと、その場で止められます。
つまずき1:無料版に機密資料を貼る
悪意ではなく、便利だから貼られます。止め方は、配布時に、貼ってよい資料の例を3つと、貼ってはいけない資料の例を3つ、実際の社内文書の名前で示すことです。抽象的な線引きだけでは判断できません。
つまずき2:部署ごとにアカウントが乱立する
各部署が別々に登録すると、支払いも設定もばらばらになります。止め方は、発行の窓口を1つにして、申請すればその日のうちに使えるようにすることです。手続きが遅いと、また各自で登録が始まります。
つまずき3:丸投げで出力が使えない
やっておいてと1行だけ書いて、使えない答えが返り、AIは使えないという結論になる例です。止め方は、部署ごとに最初のプロンプトを1本配ることです。前の節の5本がそのまま使えます。型があると、自分で書き足せるようになります。
つまずき4:出力をそのまま社外に出す
社外向けのメールや資料を、確認せずに送ってしまう例です。止め方は、確認の担い手を決めることと、数字・日付・固有名詞・条番号・引用文の5点だけは元の資料で照合すると決めることです。全文を疑うと続かないので、5点に絞ります。
つまずき5:使う人が数名で止まる
気づかれにくいのがこれです。導入したのに1か月後に使っているのが3名、という状態です。止め方は、使ってくださいと言わないことです。部署ごとに1業務を決め、その業務を次からはこの手順でやる、と作業のほうを変えます。使い方の紹介ではなく、業務の指示にするのが分かれ目です。
効果の測り方|1人あたりの削減時間と、1か月後に見る数字
効果は、感想ではなく時間で測ります。測り方は次の手順で足ります。まず対象の作業を1つに決めます。導入前に、その作業を3回分、担当者自身に所要時間を記録してもらい、平均を出します。導入後に同じ作業を3回記録し、平均の差を1回あたりの削減時間とします。月の実施回数を掛ければ、その人の1か月の削減時間になります。全社に広げる前に、1部署1業務で数えるほうが、数字の意味がはっきりします。
1か月後に見る数字は3つです。1つ目は、配ったアカウントのうち、この1か月で1回以上使った人の数。2つ目は、決めた1業務の1回あたりの所要時間の変化。3つ目は、出力をそのまま使えずに作り直した回数です。3つ目が多いなら、プロンプトの型に問題があります。1つ目が伸びないなら、業務の指示になっていません。どちらも、数えていなければ気づけません。
金額に直すときの注意:削減時間に人件費の単価を掛けた数字は、社内説明では使いやすいものの、その時間が別の仕事に使われたかどうかまでは示しません。時間の数字と、その時間で何をしたかを並べて報告するほうが、次の予算の話が通りやすくなります。
個人アカウントのままでは足りない部分を、会社の環境で埋める
UPGEAR AI は、ChatGPT・Claude・Gemini・Perplexity を1つの画面で切り替えて使える法人向けのプラットフォームです。全モデルで学習非利用を標準で適用し、UPGEAR AI 上の会話履歴・操作ログ等は国内サーバー(AWSの日本リージョン)で管理します。UPGEAR AI の料金は月額30,000円(税抜)からで、ユーザーごとの課金はありません(人数の目安はライト1〜5名、スタンダード6〜20名、プレミアム21〜50名)。初期費用100,000円(税抜)が別途かかります。
UPGEAR AIの詳細を見るよくある質問
生成AIの使い方は、何から覚えればよいですか?
無料版のままで業務に使ってもよいですか?
入力した内容が学習に使われないようにするには、どうすればよいですか?
社員が履歴を消せば、入力した内容は残りませんか?
AIが書いた文章を、そのまま顧客に出してもよいですか?
会議を録音してAIに渡すとき、相手にどう伝えればよいですか?
顧客の個人情報を含む文章を、AIに要約させてもよいですか?
社内研修の資料は、どこから用意すればよいですか?
導入しても数名しか使いません。どうすれば広がりますか?
まとめ
生成AIの使い方は、登録する、頼みたいことを文章で書く、返ってきたものを確かめて直す、の3ステップです。操作は数分で覚えられます。仕組みの上では、次に来る語を確率で選び続けているだけなので、事実確認の工程は入っていません。だから、出力を人が確かめるという工程が、手順として固定で必要になります。
業務に当てる順番は、公的な調査が目安を示しています。総務省の令和8年版情報通信白書(概要)の図から読み取ると、日本で活用効果を感じる割合が高いのは議事録・メール作成補助で、社内ヘルプデスクがそれに続き、経営は低い並びでした。まずは文書仕事から始めるほうが、効果が見えやすいということです。
注意点は、総務省の教材が4つに整理しています。情報の正確性、情報流出、知的財産権の侵害、活用者としてのモラルです。情報流出については、規約を確認する、個人情報や機密情報の入力は必要最小限にする、学習に使わせない設定をする、の3つの行動が示されています。入れてはいけないものの例も具体的に挙げられているので、社内ルールにはその一覧をそのまま持ち込めます。
そして、個人アカウントのままでは1点だけ埋まりません。ChatGPT のヘルプには、学習をオフにしても会話は引き続きチャット履歴に表示されると書かれています。Gemini アプリのヘルプには、人間のレビュアーがレビューしたチャットはアクティビティを削除しても削除されず、最長で3年間保存されると明記されています。この事実を会社として確認できないまま業務が回っている状態を、取引先に説明するのは難しいということです。
配る前に決めるのは5つだけです。入れてはいけない情報の線引き、使ってよいツールの指定、アカウントの発行と停止の担い手、出力を確認する責任者、困ったときの相談窓口。この5つが埋まった1枚を先に配り、部署ごとに最初の1業務とプロンプトを渡して、1か月後に3つの数字を数える。ここまでを1か月で回すのが、短い道筋の1つです。
業務でのAI活用をテーマにした記事はAI活用コラム一覧に並べています。社内ルールの整備は生成AIの社内ガイドラインの作り方、点検項目は生成AIのセキュリティ対策チェックリストが参考になります。
